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最強の戦闘力と魔力。女子力ゼロの無愛想な美少女戦士は、自分を試したい。  作者: buchi
第1章 オーグストス魔法学院

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第52話 偽・新婚旅行

リンツは美しい街だった。


古い歴史を感じさせる。


高級ホテルが並んでいて、洗練された雰囲気が漂う街だった。


着いたのが夜遅かったので、翌朝、部屋の窓から、薄靄のかかった街をぼんやり見ていると、霧の向こうに灰色の崩れかかった城塞が見えた。


砲弾を受けた名残らしい。今では木々が生い茂っていて、ところどころしか見えなかった。


とてもロマンチックな風景だ。


「おはよう。もう起きてたの?」


隣の部屋から、寝ぼけた様子でローブ姿のダグがやって来た。


乙女の部屋に入るな!と言いたいところだが、ライフガード屋をやっていたころは、ずっと同じ部屋で暮らしていた。それを思うと、この距離感に今更苦情を言う理由はない。


ただ、ドレスを着たり上等の厚地の絹の夜着を着ていると、ビストリッツの頃を思い出す。その頃、男性は絶対にフローレンの部屋に入れなかった。


だが、ダグは平然と入ってくる。そこは違和感だ。


今更、文句を言うのは、どうも余計な緊張感を呼ぶ気がするので、黙っていた。


「あそこに城が見える」


フローレンは窓の外を指した。


「ああ。この辺には廃城がたくさんある」


「どうして?」


「ずいぶん前だけど、戦争になってね。それ以来、ずっと防御のための城を築き続けた」


「それで?」


「城って金がかかるんだよ。そのせいで王朝は倒れたって言う。本末転倒だよね。朝食はここへ運んでもらう? それとも食堂へ降りてみる?」



快適なホテルで……信じられないくらい贅沢だった。


直前が、ボロボロの宿で、仕事が魔獣退治だったという落差があるだろうが、マドレーユ以上に富裕な街だった。


王都はどんななのだろう。


フローレンは田舎の城で大事にはされていたが、ビストリッツは山深く、劇場もレストランもカフェもない場所だった。ここには、ダンスホールや、女性は立ち入れないがにぎやかな酒場が数多くあった。


「国中から、貴族たちが集まってくる。国外からも」


フローレンはちょっと不思議そうな顔をしてダグの顔を見た。


「古くて、歴史があって、でも一皮むくと享楽の町でもある。だが、礼儀作法には厳しいぞ」


「ここに魔法は?」


「そんなものはない。ここにあるのは駆け引きだけだ」


「駆け引き……」


「なんでも力づくで済ませる世界じゃない。お金や気の利いた会話や人付き合いが求められる世界だ。ハウゼーマン家の令嬢では務まらない。お山の大将だからね」


ふと気がついた。


自分もそうだったかもしれない。


国内でも有数の名家の令嬢だった。


大勢の、賢い侍女たちに取り囲まれていた。フローレンの希望に、フローレンより先に気がつくような侍女たちだった。


彼女たちは、フローレンが破格の魔力を爆発させないように、いろいろな意味で気を遣っていたのだろう。できるだけ、女性らしい趣味を持つようにとか、破壊行為に興味を示さないようにとか。


今ならわかる。


そして、それにもかかわらず、天性というか、フローレンは剣や投擲用の武器に詳しくなってしまった。


女らしくないという言葉に過剰に反発したが、あれは逆だ。そういう言い訳を侍女たちが乱用したにすぎない。


うっかりフローレンに魔力のテストなんか始められたら、どんな悲惨な事故が起きたかわからない。


その後の学校では……自分のことは自分でしていた。友達は同年配で、嘘も何もなかった。ただ、ダグが目を光らせていて……暴発しないように、みんなに抑えられていた。


「街を歩くときは、俺にくっついておいで」


「どうして?」


今だって、ダグが目を光らせている。魔獣退治で、フローレンは一応、戦闘力の発揮方法は学んだ。限界値はまだ知らない。だけど、魔法学院とダグのおかげで、魔力のない世界で、トラブルを起こさないように暮らす手段は立派に身につけたと思っているんだけど、まだ、足りないの?


「そろそろ一人前だと認めてほしいなあ……」


ダグが思わず口元を緩ませた。


「そうだね。頑張ってきたものね。だけど、これは俺のせいじゃなくて、ここの風習の話なんだよ」


「風習?」


「魔力のない世界……中でも、こんな繁華街での注意事項だな。ここに魔法はない。フローレンが俺より強いだなんて誰も知らない。そんな女はいない。舐められてはダメだし、力任せに解決するとあっという間に注目を浴びてしまう。出来たら目立ちたくない。令嬢として目立つのは構わないけど。ああ、でも、そうなるとフローレンと結婚したい男性が大勢現れて面倒なことになるかもしれないな」


「面倒だ」


「そのうち、ステキな人が現れるといいね。生涯を共にしたいような人が」


フローレンは仏頂面で聞いていた。


「とにかく、そういう街なんだよ。だから、新婚夫婦の設定なんだよ!」


「ここに長居する必要はないんじゃないか?」


ダグは顔を顰めた。


「夕べ言ったろう! ルーン・バルトマルグに会いに行くって。そして、傭兵になるための技術を学ぶって。そして、合間に社交界を勉強するんだ」


「勉強づくし……」


「言ったろう? マリアが国王と結婚してくれる。それが済むまでは自由になれない。結婚式が終われば、ビストリッツに帰れる」




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