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最強の戦闘力と魔力。女子力ゼロの無愛想な美少女戦士は、自分を試したい。  作者: buchi
第1章 オーグストス魔法学院

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第38話 アレンのチャレンジ

アレンは一人でウマに乗っていた。




誰も彼も、アレンを過保護に扱う。


城にいた頃から、侍女たちに取り巻かれて、魔力を発揮しないよう監視されていた。


別に礼儀作法の時間やダンスの練習、地理や歴史、外国語の勉強が嫌だったわけではない。


綺麗なドレスは好きだったし、キラキラする宝石にはうっとりした。侍女たちに美しいだの可愛いだの褒められたら嫌な気はしない。


だけど、自分はそこじゃないと思うのだ。


もっと出来る能力がある。どの侍女にも絶対に負けないと思う。


それは誰も認めてくれないけれど、いくらでも魔法を乗せられると言うことだった。



アレンの魔法は特に武術と相性が良かった。


その気になれば、森をすべて焼け野原にすることだってできそうだった。


やらないけど。


何しろ、そんなことをされた日には、猟師も農家も大迷惑だ。


武術と相性がいい魔法と言う意味はそう言うことだ。破壊行為と相性がいいのだ。


従って、魔法を使うなと言われても、仕方がなかった。


大きくなるにつれ、アレンも理解した。



一応一通り、家事魔法も習得したし、令嬢らしく自分を魅力的に見せる魔法とやらも学んだ。


ただし、魅力の魔法はアレンの場合、禁忌魔法の魅了の魔法になってしまうらしく危険なのでこれまた禁止された。


家事魔法はちまちましていて性に合わず、魅了の魔法なんか使ったらストーカーの大量生産になってしまう。自分が被害者になるだけなので、禁止されなくても絶対に使いたくなかった。



有り余る能力を認めてもらえないのはちょっと不満だった。


だから、アレンは剣やウマに熱中した。

武術には技術と理論がある。

弓矢の飛距離を伸ばすために必要なことは何か。それはそのまま、弓矢にどう言う魔法を乗せるかに繋がる。

剣術の技はなぜ技になるのか。やみくもに力を加えるだけでは武器が傷むばかりだ。


砲はどんなものがあり、弾の原料は何か。


魔法を使えなくても、どう使ったらいいのかを研究する必要はある。魔法学院に行くことは嫌ではなかった。


ただ、そこでも、思い切り力を振るうことはできなかった。


リーバー先生と名乗るお目付け役がやってきて、常識の範囲内で納められてしまった。




海を渡り、魔獣相手なら、思う存分力を振るえると思ったのに、ダグに止められた。


「世の中、需要と供給という問題があってね」


ダグに諭された。


「魔獣が大量に市場に放出されたら、値が下がる。他の冒険者たちが大迷惑だ。それに、アレンに魔獣狩りを本気でされたら、魔獣が全滅する」


アレンはブスッとした。魔獣相手でもダメなのか。宝の持ち腐れか。


「ライフガード屋を始めるから。ね? ごく強い魔獣だけを相手にするんだ。冒険者が倒し損ねるような魔獣を。みんなに喜ばれるし、それなら、他の冒険者の迷惑にならないから」




しかし、ケチャックなら!


サックリ大量殲滅しても喜ばれこそすれ、誰からも文句を言われない。


だって、作物を荒らす害獣だから。


どんな大量に狩っても問題なし。


どうせ売れない。したがって市場価格に影響はない。


顔を覚えられて、群れに復讐されると言うのも魅力的だった。


つまり、いつでも戦えるわけだ。群れが全滅するまで戦いを挑んでくるだなんて、志の高い連中だ。



ダグに止められる前にチャレンジしないと!


アレンはウマを急がせた。



そして、農家を巻き込んで阿鼻叫喚が広がる畑を満足げな目つきで眺めた。


ケチャックに追い回されている気の毒な農家をまず助ける。


そして、ケチャックどもの注目を集める。



そのためには、剣だった。


まず一匹。農民に襲い掛かろうとしていた大型のケチャックに切りかかった。


「ピギャー」


大声を出して倒れる。


「ふっ」


アレンは満足そうに笑った。


大勢のケチャックの視線を集めたからだ。


連中は、剣しか持っていないアレンを見ると叫び声を上げながら、集まってくる。


アレンは森の方に向かって走りだした。


襲い掛かって来るケチャックが数匹いたが、いずれも殺さず、振り払う。防護膜を張っているので、ケチャックの爪や牙がアレンに触れることはない。ただ、この防護膜にケチャックが触れると電撃のような軽い痛みに襲われる。


ケチャックは無傷なのだが、痛みがあるので悲鳴を上げて転がっていく。


別にアレンは足が速いわけではないので、森の端にかかるころには、ほとんどのケチャックがアレンにまとわりついて、団子状態になっていた。


無傷なのに、地面に転がされたケチャックたちは余計に興奮してアレンに寄って来る。


完全に森の中に入って、視線がさえぎられた時点で、アレンは、防護膜の電撃のボルテージをあげた。


それはビリビリ来る痛みで、膜の近くにいたケチャックは即死した。


バタバタ倒れる音を聞いて、アレンは笑った。


痛快だった。団子状態は解けない。事情が分からないケチャックは次から次からアレンにつかみかかって来る。その都度、力を流され衝撃で心臓が止まり死ぬ。


何度目かの衝撃でようやくケチャックの興奮が治まった。治まったと言うより、仲間の死体を見て気がついた。


アレンは危険だと。


遠巻きにされた。


見えない電撃を周囲のケチャックにかける。外側からだ。


怯えたケチャックは、前の方に押し寄せ、前の連中は電撃膜に押し込まれ、電撃を喰らう。


バンバンと言う音が響き、アレンのまわりを取り囲んでいたケチャックがバタバタ倒れていく。


「そうは言っても、数十匹。残りは後日のお楽しみか……」


隠蔽魔法で、アレンは姿を消した。


村は大騒ぎだろう。


姿を消して、いったん村の外に出たアレンは何食わぬ顔で村へ入り直した。


「ライフガード屋でーす」


「ああっ、遅いじゃないかっ」


文句を言われた。


「ケチャックは撤退したよ!」


「多分、ダグでしょう」


アレンはしれっと言った。


「ライフガード屋の僕の先輩ですよ。きっと知らせを聞いて、遠隔で助けたんですよ。すごい魔法でしょう?」


ダグなら、どうにか辻褄を付けてくれるだろう。


「僕はケガを治すために来ました」


「えっ? そうなのか? ありがとう」


「皆さんはどちらに?」


村の広場は、ひどい有様だった。


みんなケチャックに引っ掻かれたり、噛みつかれたりで結構なケガをしている。


ケチャックは比較的小柄なのと魔獣にしては魔力が弱い。


おかげで死ぬほど酷いケガを負った者はいなかった。


ただし、獲物としては価値がない。


アレンは苦手領域の治癒魔法を少しづつかけていった。このジャンルなら、さほど目立たない。


そのうち、ギルドが来るだろう。

あと、ダグも。


「すごいな、ダグさんは」


寝ている農家の親父が素直に感謝してくれた。ヒゲ面のたくましい体つきの中年男だったが、腕や足に結構ひどいひっかき傷があって、血が流れていた。


アレンは丁寧に血を洗い流した。アレンの魔力を少し流し込んだ水で、これで洗えば傷は膿まない。


それから布で巻く。


「三日間、この布を外さないでくださいね」


切り傷をまた開かせないためと、傷口に別な汚れを寄せ付けないためだ。


「ありがとうよ、ライフガード屋」


今度はお礼を言ってもらえて、アレンも満足した。


「ケガの程度の重い方から、治癒魔法をかけていきますね」


にっこり笑って、アレンは言った。


農民たちはきれいな顔につい見とれた。


「なるほど。ライフガード屋は戦闘のダグさんと、治癒の少年の二本立てかー」


正確に言うと治癒魔法ではない。アレンは本当の治癒魔法は苦手なので、水と布に魔力を込めたのだ。


その時、大慌てのウマが二頭到着した。


アレンは呑気に見物した。


「あ、ダグだ」


背後からは、真っ黒な眉毛の間のシワを極限にまで深めたダルクバートンも、汗みずくになって一緒に登場した。


アレンはちょっとだけ嫌な予感がした。



***************


彼らの会話は、変に盛りあがり、どんどん横道に逸れていった。


「いや、フローレン嬢には薔薇色のドレスも似合うと思いますね! まあ、こんな田舎で仕立てたところでロクなドレスにはなるまいが」


ダルクバートンが持参の果実酒をダグに進呈しながら言った。


「一体、こんな田舎のどこに、そんなドレスを披露する場所があるのだ。せめてマドレーユとかならいざ知らず」


ダグは酒の封を空中で切ると、くるりと後ろを向いてカップを二つ取り、一つをダルクバートンに渡した。


「最悪、ハウゼーマン殿の屋敷がありますよ」


「最悪じゃないか。あそこの娘は、なんだか壮大な勘違いをしていたぞ?」


ダルクバートンは肩をすくめた。


「あの母親もでしたね。有無を言わせず、口を封じておきました。魔法力の使いどころですよ。うるさくて仕方ない」


ダルクバートンは言い放った。


ダグは抗議した。


「侯爵家とは言え、少々横暴だろう」


「そんなことはありません。アレンを婿に迎えたいなどと言っていました。アレンの身分を知らぬこととは言え、大変に失礼でしょう」


「なるほど。それは仕方ない」


ダグとダルクバートンは、うっかり話が嚙み合っていた。


だが、その時弱々しいノックの音がして、婆さんが恐る恐る現れた。


「お話し中のところ、誠に申し訳ございませんが、ライフガード屋に依頼が来まして……」


ダルクバートンが眉をひそめた。


大事な話の途中なのだ。


誰がアレンのドレスを仕立てるかと言う問題と(これは婚約者の決定に関連する、一歩も引けない重要問題だった)、ドレスの色とデザインの問題だった。

二人とも濃い色が似合うと言う点では一致したが、赤系統を推すダルクバートンと青系統を推すダグが対立した。結果、紫系統でといったんは落ち着いたのだが、前回のドレスが灰紫だったので、被ると言うことで、さらに議論が深まったのだ。


「それで?」


ダグも顔をしかめた。


せっかく兄特権で、ドレスを作るのはダグに決まりそうだったのに、水を注されて不愉快だ。


「ええと、それを聞いたアレン様が飛び出してゆかれました」


ガタン! と椅子を蹴飛ばして立ち上がったのは、ダグである。


ダルクバートンも立ち上がっていた。彼は(かたわら)の見事な銀装飾の剣を握りしめた。


「一体、どこへ!」


二人は声をそろえた。




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