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最強の戦闘力と魔力。女子力ゼロの無愛想な美少女戦士は、自分を試したい。  作者: buchi
第1章 オーグストス魔法学院

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第27話 ライフガード一択

ブゴイの件のあとになって、


「猟はやめよう」


ダグが提案してきた。


「ライフガード一択で」


「なぜ?」


「面倒くさい」


「確かに、それは言えるかもしれませんが……」


ブゴイの件は大騒ぎになってしまった。十頭も呼びこまなくて本当に良かった。最初は狩りが初めてだったので緊張したが、大した獲物ではなかった。


ブゴイは突進してくるしか能がなかったのだ。


「もっと、知能犯もたくさんいる。そういう魔獣の方が厄介だ」


「でも、僕は一通り、魔獣を狩りたい」


ダグは、うなずいた。


「お前、聖魔法が使えるな?」


渋々うなずいた。


「なぜわかったんですか?」


「なんとなく」


後でカマをかけられただけだったことがわかったが、時、すでに遅し。まあ、この前ケガを直したことがあるので、バレて当然かもしれない。


「生活魔法も使えるな?」


仕方なかった。これは証拠が上がっている。

宿の婆さんが不精なので、朝の火おこしや湯沸かしは、自分でやった方がマシなのである。


アレンは、ダグと違って、性格はケチで細かい。


部屋があまりにも散らかっていると、さすがにイライラするし、宿のかまどを使っていると、宿のババアが自分の火種として、ゆうゆうとアレンの火を利用するので、それにもイラッとする。


宿の料金を取っているなら、他の客の分は自分でなんとかしろよと思うのだ。


なので、便利な魔道具を開発した。


学院で作成中のものを見かけたことがある。携帯式のコンロだ。名前がコンロになっているかどうかは知らないけど、似たものを作成した。


要は、空気の取り入れ口と燃料を入れるところがあればいい。その他は空気を加減して火力を決める。

不精は偉大である。


とりあえず煮炊きはこれですむ。婆さんには無論内緒だ。種火は魔法だが、それも秘密だ。


毎日のことなので、宿のばあさんにコンロの存在がバレて、何とか手に入れようと再三粘られているが、二台も作る気はない。




結局、押し寄せる野次馬や面倒くさいファンは、もう宿のばあさんに任せて、ダグはライフガードに徹することになった。


「少しくらい勝手に魔獣狩りしても、大丈夫だろう。聖魔法が使えるならな。でも、ライフガードに入った方が勉強になると思う」


ライフガードは、プロの冒険者が手に負えなくなった場合だけの参加になる。


冒険者は、チームを組んで狙った獲物を狩りに行く。普通はそこまでピンチにならないし、なったらなったで救出が難しいケースがほとんどだ。


「そう言う魔獣と魔獣への対応の仕方を勉強するのは悪くない。いろんな冒険者と知り合いになれる。どういう対応をして、ピンチになったのか、何の種類の魔獣だったのか」





アレンが参加したライフガード救援要請第一号は、シープドッグに襲われたと言うものだった。


チームは四人でシープドッグを探して洞窟に入り込んでいた。


シープドッグは、大型のイヌに似ているが、角と毛皮が高く売れる。たいして強い魔獣ではないので、冒険者が良く狩っていた。


ただ、群れで生活する生き物で、今回は思ったより巨大な群れで、予想を誤った点が問題だった。


洞窟内だったので、身の安全を確保できる場所は見つけられたが、数百単位のシープドッグに回りを取り囲まれて、脱出できなくなってしまった。


数が多すぎるので、退治することもできない。蹴散らしたいところだが、もう武器が不足していた。

持久戦に持ち込まれたら、人間の方が死ぬしかない。



「帰ってこないんだよ。食料はもうないはずなのに」


ゲート長が心配そうに、ノボリを見上げた。「ライフガード」と書いてある。


「二組もこんなことになるだなんて」


昨日、早朝にダグは叩き起こされた。


ブゴイの群れに出くわしてしまったそうだ。これまた四人のパーティである。


「最近、ブゴイをなめてないか?」


アレンも強く共感するところだった。たった二人で超巨大ブゴイをサックリを片付けて帰ってきた手合いがいたので、警戒心が薄れ、向こうを張ってチャレンジする連中が増加したのである。


「途中であきらめて帰ってくれて来くりゃあ、大したことにならないのに……」


勇気を振り絞って、チャレンジしたそうである。


「そりゃ勇気とは言わない。無謀だな」


先輩で師匠のダグは、革のジャケットを羽織ると、必要な武器を詰めたカバンを背負い、腰の周りに太い革ベルトを巻き付ける。


背が高いので、細いように見えるが、がっちり筋肉質な体は無駄がない。


かっこいいなと思う。自分ではああはいかない。ゲート長も頼もしそうに見送った。




そして後にシープドッグの事件が起きた。


「こっちの方が深刻だ」


ゲート長はそわそわしていた。


「ダグはいつ戻るんだろう。帰ってすぐ頼むのもきっと具合が悪いだろうねえ」


アレンは黙って見ていたが、「僕、行きますよ」と言ってみた。


「あ? ああ、ありがとう。だけど、危険度としてはこちらの方が高いのでね。ダグでもどうかと思うんだ。正直、どうすればいいのか、思いつかない」


「行きますよ。どこですか?」


「でも、君に万一危険があったら、ダグが黙っていないと思うんだ」


ゲート長は禿げ頭の小太りの中年の男だった。


一緒に痩せてメガネをかけて、なんだかカサカサして見える若い娘が付いてきていた。


「場所はこちらです」


地図を渡してくれた。


「洞窟の入り口はこちらだけ。三日前に入りました」


「そうなんだ。もう四日になる。食料と、何より困ったことに水がないんだ」


ゲート長が額に流れる汗を拭いた。


「洞窟内には、普通、水が流れていますよね?」


「ここのは毒なんだ。飲んだら死ぬ。わかっていると思うんだが」


「でも、切羽詰まったら、どうするかわかりませんから」


娘の方がはっきり事実を言った。だが、心配していないわけではないらしかった。


ゲートでは装備品や食料品の一覧を記載してあった。


「ガン・ベロデス、エメリン・ランハイト、ナッシュ・ターン、アガリー・キン」


さっと目を通し、地図を受け取るとアレンは真面目な顔をして自分の荷物を手に取った。

ブゴイの売上で、彼も自分用の装備をやっと手に入れることが出来たのだった。


「まさか、いくんですか?」


「行きますよ」


いかにも当然と言った様子で、颯爽と(と自分では思っていたが)アレンは宿を出て行った。

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