第八十五話 ギガバース村再び
俺達は旅路を急いだ。
ラスティがどことなく元気が無い。
それは故郷のリピアに、
闇の城が巣食ってるかも知れないからだ。
しかし、急いだ所でそう簡単には着かない。
とりあえずロマーシアを出たら、
ギガバース村に寄らなくてはならないし、
場合によってはサクラの街に立ち寄らなければならない。
「ラスティ、あまり心配しなくて大丈夫だと思うよ、ギオールの時だって、実質的な被害って貧民街の人達だけだったしさ」
だからと言って貧民の人達に被害が出て良い訳ではないが、ここはとりあえずそう言って落ち着かそうとの発言だった。
「うん、ありがとう。大丈夫だよ、心配と言うより、気になってるんだよね」
ラスティさん、
それを心配と言うんだよ。
「まぁもしも、何か起きてても俺とルースでサクッと解決だ。な!ルース」
「ふんっ気楽なもんだにゃ。それより『かようきょく』というじゃんるをかけるのだ」
すっかりカーステがお気に入りだな。
♪ああ〜日本のどこかで〜♪
「どこかとは、どこにゃ?」
「ん?あぁ日本のどこか知らないところに出会いがあるって歌詞だ」
ん?
「おいルース、お前日本語わかるの?!」
「にゃんだ?とっくに覚えたにゃ、アニソンも解るぞ、どうかしたにょか?」
曲聞いてて言語覚えるとか、
とんでもねぇ知能だな。
「まぁ発音がメロディだから、実際に話すとおかしな話し方ににゃるがにゃ」
「ルース凄い」
「凄いの」
「あたしなんてどこまでが単語なのかも分からないよ」
試しに日本語で話してみる
「こんにちは、俺は佐倉、あなたは?」
「わたしは♪ルース」
ぶっ
「はははは!ルース、確かに話し方が歌だ、わたしは♪って、ミュージカルみたいだな」
「ふん、やかましいにゃ」
「まぁそれにしても大したもんだな」
お、そろそろかな?
車はそろそろ森の入り口付近に近付いてきた。
「この辺りだっけ?」
「そうにゃ」
俺は減速して、
周りに人がいないか確認。
ひっそりと道を左にそれて森の中に入って行く。
目的地はギガバース村だ。
1ヶ月ほど経つかな。
どうなってる事やら。
しばらく森の中を進むと、
見えてきた。
連なる大きな石山の壁。
三階建くらいの石山が幾つも並んで、
壁を形成している。
石山の壁はぐるりと円を描いて、
天然の領壁となっているのだ。
この内側にギガバース村はある。
俺は入り口へと入り、
左にカーブした。
「ありゃ?なんだ?」
丸太を縦に組み合わせた大きな柵ができている。
「入れない」
「なんか凄いの出来てるね」
俺は運転席で前のめりになり、
フロントガラス越しに柵を見た。
あ、上に誰かいて何か言ってる。
窓を開けて顔を出す。
「な、何者だ!変な物に乗りやがって!う、馬が居ないじゃないか!」
は?突っ込むのそこ?
てか俺の事知らないの?
と思ったら、
あれ?知らない顔だ。
「なぁ俺はサクラってもんだが、バースはいるか?」
「な、なにぃい!!呼び捨てにしやがったな!様を付けろ!バース様だ!お前怪しいぞてめぇ怪しいぞ!」
なぁんかズレてるんだよなぁ。
そこは『バースの知り合いか?』とかじゃないのかよ。
「怪しいかどうかはバースに伝えてくれよ、ギースでもガースでも良いからさぁ」
「なんだと貴様ぁ!!様を付けやがれ!ぐえっ」
ぐえ?
「サクラの親分!!良く来てくれた!今開けやす!!」
ギースかガースだ。
双子のどっちかだから区別がつかない。
まぁ元々三つ子だったのだが。
間もなくすると門が開いた。
俺はそのまま車を乗り入れる。
内部を確認すると、
ずいぶんと見違えた。
畑ができているし、
建物も増えている。
建物だけじゃなかった。
「なんか人増えてないか?」
「親分!お帰りなさい親分!」
親分かぁ、微妙だなぁ。
「お、おう、ギースか?」
「ガースでさぁ」
「あぁごめんねガース」
「いえ、かまいやせん、それより良く戻ってくれやした」
「うん、なんか増えてるね、いろいろと」
「へぇ、いろいろ報告がありやす。バースさんにも知らせて来ます」
バース「さん」??
ガースは走って行ってしまった。
あのガースが、
バースをさん付けなんて、
どういう変化だろう。
まぁ会えば分かるかな。
車を適当な場所に停めて降りる。
みんなも降りて来た。
「ここは?」
シイだ。
シイは初めてこういう村に来るのだろう。
普通は魔物が出るから、
領壁の外で人が暮らすような所はあまり無い。
「ここは、前は盗賊の隠れ家だったんだよ。その盗賊の親玉の1人をダイサクがやっつけて子分にしたの」
ラスティさんや、
おおむね間違っちゃいないが、
なんだろう、このモヤモヤは。
「あ、大ちゃん」
「ん?」
ベルが見る方を見やると、
体格の良い男がこちらに走ってくる。
後ろにはガースとギースがいる。
すると先頭は??
「サクラ様!」
ええー?!
バースぅ???
ひょろひょろで頼りない雰囲気のバースが、
一瞬誰だか分からないくらいに逞しくなっていた。
俺の前にくると、
跪き話し出す。
「サクラ様、よくぞ来て下さいました。このバース、心より嬉しく思います」
「よ、ようバース。その、なんだ、見違えたな」
「はい、思うところありまして、農作業に励んでおりました」
「おい、ギース、バースさん思うところあるんだとよ」
「そうだなガース、想う人の間違いじゃねえか?」
「「がはははは!」」
「おい!お前たち、サクラ様の前だぞ!やめてくれよな」
「ん???」
「ま、まぁここではなんなので、お茶でも飲みながらお話しさせて下さい」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
バースに案内されて来たのは、
新しく作った建物の一室。
食堂のような所だった。
わずか1ヶ月でこんなの建てるとは、
なかなか侮れない。
そして、俺達はお茶を振る舞われ、
この1ヶ月の事をバース、ギース、ガースから聞かされた。
人が増えているのは、
街道を通り掛かった奴隷商らしき一団とやり合って、奴隷を招き入れた事がきっかけらしい。
子供も大人も合わせて15人ほどが増えている。
さっきの門番だった奴もその一人。
なんだか突っ込む所がほんのちょっと微妙にズレてて面白かったと話したら、
いつも話が噛み合わないと苦笑いしていた。
バースはしかし、
ほんとに見違えた。
どうしてそんなに変わったかと聞いたら、
ガースとギースは大笑い。
なんでも招き入れた奴隷の中に、
歳のいった女性がいたらしい。
いわゆるおばさんだったが、
奴隷から解放されて凄く喜んで、
バースの役に立ちたいと、
常にバースの側にいたらしい。
それがどういう訳か、
ある日突然バースが変わり出して、
今は夫婦のようにイチャイチャしてるとか。
あれあれ?
バースってば不能はどうしたんだ?
どうやらバースは熟女が良かったらしいな。
本人も気付かなかった性癖なんだろう。
男としての自信が持てるようになって、身も心も逞しくなったようだ。
そしてバースは、
村を見事に仕切ってるようだ。
そんなバースを見て、
ギースとガースは尊敬してるんだそうだ。
この建物も、畑もバースの指導で作られたそうだ。
まぁ元々ギオールは農業が盛んな街だ。
もと領主の一人だったバースにもその知識があったのだろう。
バースとはいろいろあったが、
ちゃんとやってくれているので安心した。
この様子なら、ここの人々はこのままここにいても平気そうだな。
サクラの街に連れ帰る事もないようだ。
しかし、バースに愛する者が出来たか。
多分、バースはまだ気付いていない。
永遠に生きるという事の恐ろしさを。
悲しみを。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一通り話しを聞いたが、
恐らく問題はないだろう。
そして俺からも報告があった。
この村の、この場所の処遇についてだったが、
王族から直々に許しを貰ったと伝えた。
それを聞いたバース、ギースガースは喜んでいた。
これで堂々と外部とのやりとりが出来るようになるという事だ。
ギガバース村は謂わば『隠れ里』みたいな感じだが、
許しを得た事で、
辺鄙な場所の村。
という感じになるのかな?
鉱物を掘り出して、それを外部との交易に使うのだそうだ。
ちょうど村の真横には切り立った山があり、
そこからは鉱物が採れるそうだ。
一通り話しが終わり、
とりあえず今日はここで一泊する事になった。
【読者の皆さま】
いつも読んでいただきありがとうございます。
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白村
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