第七十六話 緊急会議
ここはギルドのホール。
受け付けカウンターがあり、
掲示板には依頼が張り出され、
冒険者達が集まる。
ホールにはテーブルが多数おかれ、
飲み食いもできるようになっているし、
冒険者同士の憩いの場としても活用されている。
その中の一つのテーブルに、
俺達さくら組と、
目を覚ましたマティとその妹シイが顔を合わせて座っている。
俺の右にはベル、
左にはラスティ、
二人とも俺の腕にしがみつくようにして、
べったりくっついている。
シイはソッポを向いて膨れっ面して座り、
マティはオロオロしている。
それにしてもラスティとベル。
くっ付きすぎだろ。
まぁ嬉しいんだけど、
シイに俺が取られるとでも思ってるのだろうか?
うちの奥さんと娘はなんて可愛いんだろ。
可愛いと言えば、
シイもかなりの美形と言える。
お淑やかにしてればモテモテだろうに、
会ったばかりの俺に結婚してとは、
びっくり仰天だ。
「おい、なんにゃのだこにょ状況は、早く屋台を平らげに行くにょだ」
「いや、俺に言われてもさぁ」
シイがキッとなって俺の左右の二人に言う
「あなた達くっ付きすぎじゃない?!離れなさいよ」
「やだ」
「やです」
「シイ、お前どうしたんだよ」
「あたしサクラが好きになったの。結婚したいの。第4夫人でも良い」
シイはラスティとベルを俺から引き離すとかは考えてないんだな。
ん?第4?
「サクラさん、すいません、こんな妹で」
「いいよ、それよりちょいと誤解があるようなので、ちゃんと紹介しようか」
とりあえず俺たちの事をかいつまんで話した。
ラスティが妻である事、
ベルは、将来の第二夫人候補である事、
そしてルースは実は魔獣で使い魔である事を話した。
「という訳です。シイさん、あなたの事を聞いても良いですか?」
シイはしばらく沈黙してたが、
ゆっくりと話し出した。
「あたし、誘拐された事があるの」
「「「えっ?!」」」
「お、おいシイ、それは…」
「良いの。サク…ダイサクさんには知ってもらいたいから」
誘拐された事があると切り出したシイ。
シイはそれから自分に起こった出来事を話してくれた。
救出されてから強くなりたい一心だった事、
婚約者に婚約破棄された事など、
おおよそ人には聞かれたくないだろう事を、
いろいろと話してくれた。
その間、隣に座っているマティは、
心配そうにシイを見つめていた。
シイは何かを堪えながら、
時には涙を浮かべて話してくれた。
おそらく、今話してる事はシイのトラウマなのではないだろうか。
話している本人には相当キツいだろうに。
ベルと変わらない歳のこの少女は、
重い過去を背負ってるのだと思うと、
俺の中に熱いものが込み上げてきた。
話を聞いているうちに、
いつのまにかラスティとベルは俺にくっついてるのをやめている。
マティは悲しげな顔で、
黙って聞いている。
ほんとはマティはシイを守ってやりたかったんじゃないのか?
強くなる為に冒険者になったとか?
そんな想いもあるのだろう。
「あたし、さっきの手合わせで、自分でも分からないけど、ダイサクが好きになった。多分この先ダイサクみたいな人居ないと思う」
「なんでそう思う?単に強いやつなら俺以外にもそのうち出会うと思うけど」
「あたしより強い奴はたしかにいるけど、あなたがあたしを殴らなかったから」
「え?当たり前じゃん、手合わせなんだから手加減するだろ?」
「しないよ、あの場面で拳止めるなんて、少なくともあたしは経験ない」
「ダイサクさん、シイは以前ロマーシアでの手合わせで、大怪我させられた事があるんです」
「え?ほんとかよ?」
「あの時、本気で殺されると思った。私はあいつを、あの卑怯者を許さない。」
「卑怯者?どんな奴だった?幻術とか使う奴?」
ロマーシアの卑怯者といえば、奴を思い出す。
あれ程の卑怯者はそうそう居ないだろう。
幻術に誘拐までする、とんでもない卑劣な奴だった。
「な、なんで分かったの?幻術でいつのまにか倒されてたの」
「あ、まじで?やっぱりあいつかぁ」
「知ってるの?!」
「ふふふ、あいつならもうダイサクがやっつけちゃったよ」
ラスティが言った。
その言葉にシイの目が見開かれる。
「ほんとに?」
「まぁちょっと苦戦したけど、仕掛けが分かれば底の浅いマヌケでしかなかったね」
「ふんっ油断しとるからにゃ」
「大ちゃんかっこ良かったの」
「あ、アイツだったのか、シイに大怪我負わせた奴だったなんて。」
マティもシイを怪我させた相手は知らなかったようだ。
「ダイサクが仇を取ってくれてたんだ…」
「たしか、ブ、ボ…」
「ヴォールだよ」
「そうそう、そんな変な名前だった。まぁ知らずにやっつけてたから、仇打ちとかじゃないけどね」
「そっか、アイツやっつけたんだ。やっぱりダイサクは凄い」
「俺はそんなに凄くないよ。ヴォールはともかく、やっぱり普通は手合わせで本気で殴ったりしないだろ」
「そんな事ない」
「まじで?ルースだって手加減するじゃん」
「あたしとお前にょレベルを何と思ってるにゃ、一緒にするにゃ。そもそもお主相手に本気になどならんにゃ」
「は?!」
反応したのはシイだった。
「ダイサクより強いみたいな事言ってるけど」
「ん?あぁ、こいつ滅茶苦茶強いよ。いつも組み手してコイツに鍛えて貰ってんの」
「うそ…そんな強い魔獣なの…」
信じられないと言う表情を浮かべているシイ。
だが直ぐに別の疑問を口にした。
「じゃぁ、ラスティさんとベルさんも強いの?」
さっきまでの態度と違い、
ちゃんと名前で、さん付けで呼んでくれた。
ベルもラスティもシイの話を真剣に聞いていたから、
何か伝わる物があったのだろう。
根は素直で良い子なんじゃないか?
「ルースから見てどうだ?」
そんなシイの疑問を、俺はルースに分析してもらおうと思い、ルースに振った。
「ふん、シイの懐に入る技術は大したもにょにゃ、ラスティは今のままにゃら敵わんにゃ。でもベルにゃら無詠唱があるからにゃ、懐に入られなければベルに分があるにゃ」
「ほんと?」
シイがパッと明るい顔になる
「うん、コイツの強さは次元が違う、だから俺たちに対する分析もけっこう正確なんだよ。コイツに褒められるなんて凄いよ」
「ふんっ褒めてにゃいにゃ」
「ていうか、ベルさん無詠唱ができる魔法使いなの?そんなの聞いたことない」
「あぁそれもほんと。それは俺が最初に教えたんだけど、今の師匠はやっぱりルースだ。俺達のチームは魔獣様々なんだよ」
「兄さんが言ってた事、本当だったんだ。ごめんね」
シイはマティに向かって言った。
そんなシイを見て俺は、
やっぱりシイは根は素直なのだと思った。
「いーよ、分かってくれて良かった。じゃぁそろそろ帰ろうか」
そう言うマティにシイは反論する。
「何言ってるの!あたしもぅ帰らない、ダイサク達と一緒にいたい」
「えっ帰らないって?!」
「ねぇダイサク!あたしもパーティーに入れて!連れてって!」
と、その時だった。
ギルドの入り口から大声が響く。
「ダイサクはいるかぁああ!!」
ビックリして振り返ると、
そこには懐かしい面々がいた。
「マミちゃん!!」
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白村
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