第七十五話 シイ・カニス
更新が遅くて申し訳ないです。
シイ・カニス
龍暦1835年5月10日産まれ13歳
カニス家の次女として産まれる。
カニス家、
マティスは否定していたが、
実は王都でも有数な大金持ちであった。
貴族ではなかったが、
ただの平民からのし上がり、
財産を築いていったカニス家。
そんな財産を狙われて、
シイは5歳の時に誘拐されてしまう。
それまでのシイは、
容姿端麗、頭も良い素直な性格で、
既に良家との婚約も決まっていたし、
そう言った上級な教育も受けて来た。
しかし、誘拐犯から救出されたシイは変わっていた。
目の前で人が殺され、
非力で自分さえも守れない己を呪ったのだ。
それからは剣の稽古に明け暮れる日々。
最初はレイピアを使う稽古だったが、
長いレイピアを扱うにはシイは小柄で、
なかなか上達できなかった。
そんな時、シイは短剣を手にする。
初めて短剣を使ったシイは確信した。
『これだ!』と。
それからはメキメキと上達していった。
しかしある時、
外出先でシイはまた暴漢に襲われてしまう。
しかもその時は丸腰だった。
たまたま相手は弱く、
素手でも倒す事が出来たが、
相手が少しでも強かったなら危ないところだった。
普通の剣士ならば、
相手の剣を奪うなどして、
戦いようはあるかもしれない。
でもシイは短剣使い。
相手の剣を奪う事が出来ても使えなくては意味がない。
ならどうする。
答えは簡単だった。
丸腰でも戦えるようになれば良い。
それからは体術と短剣の訓練が始まった。
長く辛い訓練で、いつしかシイは、強さに憧れを持つようになっていった。
そんなシイには産まれ時から婚約者がいた。
いわゆる許嫁だ。
彼は身体も大きく力もあり、
剣の才能があった。
小さい頃から彼の強さを見て育ったシイは、
自分が彼と結婚するのになんの疑いもなかったし、強さに憧れを抱いたシイは、
彼にも憧れを抱いていた。
ある時、彼と手合わせする機会があり、
自分は胸を借りるつもりで彼に挑んだ。
結果は彼の惨敗。
シイは本気を出す事もなく、
あっさり勝利してしまったのだ。
彼への憧れは哀れみとなり、
自分を守ってくれる存在はこの世には自分以外に居ないのだと悟った。
その後、彼の方から婚約破棄され、
シイはますます格闘剣士の道を歩む事となる。
そしてシイは孤独だった。
幼い頃からの教育もあり、
シイは結婚にも憧れていたのだが、
誘拐事件から変わったシイは、
身内にも理解者がほとんど居なかった。
唯一心の拠り所だった婚約者も、
今はいない。
シイは孤独を埋めるように、
いつからか自分より強い者を探すようになっていった。
一度ロマーシアに強者を探しに行った事もあったが、見た目の幼かったシイをまともに相手をする者など何処にも居なかった。
仕方なく、敢えて生意気な態度で冒険者を挑発し、
やっと強そうな冒険者と戦える事ができたけれども、
幻術という卑怯な戦術でシイは酷い負け方をした。
『違う。これは私が求める強さじゃない…。強さって、こういう事じゃない…』
シイはますます孤独感を感じるようになった。
そしてより一層強い者への憧れを強くし、
本人も気が付かないうちに、
本当の強者、理想の強者に、恋焦がれるようになっていた。
そんなおり、冒険者になって出ていった兄が帰って来たのである。
マティスは決して強くない。
でも強さに憧れを持つという共通点があり、
頼りないがシイの理解者でもあった。
~~~ ここからシイ視点 ~~~
久しぶりに帰って来た兄。
兄は興奮気味に冒険の話しを聞かせてくれた。
残念ながら仲間とはお別れになったようだけれど、
その後に出会ったサクラという人物が、
これまた強いのだと、
兄は夢中になって話してくれた。
私も強い人には憧れているし、
自分も強くなりたいと思っている。
だから、兄の話を聞いていてワクワクしてたけど、
途中から冷めてきてしまった。
なんだか現実離れし過ぎているような気がしてきた。
眉唾物なんじゃない?
そう思えてきた。
剣技も体術も物凄い強い?
嘘だ。
目に見えないくらい素早く動く?
ありえない。
そんなの人間技じゃないでしょ。
兄はたまにこういう大袈裟な所がある。
あーはいはい。
そんな感じで、途中から私が冷めた風に聞いていたのを、
兄は気に入らないようだ。
だって、そんな強いだなんて、そんなの御伽噺でもあるまいし、
興奮している兄がどうかしてるし、滑稽にみえるんだもん。
でも、兄は嘘ではないとしつこかった。
「じゃぁ会わせてよ。紹介してくれたら信じるよ。」
その一言で、兄はサクラという人物に会わせてくれた。
でも、ただ会っただけじゃ強さは分からない。
私は勝負がしたかった。
兄には申し訳ないけれど、
私はいつも通り生意気な態度で挑発した。
そうでもしないと私みたいな小娘とは戦ってくれないから。
サクラという人物。
私の第一印象は、
顔は良いけど、全然強そうじゃないし、
女の子3人も連れて変態なの??
っていう印象だった。
どうやって兄さんを騙したか知らないけれど、
まぁ確かめてあげる。
化けの皮を剥いであげる。
それでおしまい。
そんな軽い気持ちだった。
私が逆に馬鹿にされて、挑発されるとは思ってなかったけれど、
まぁコテンパンにして謝らせてやるわ。
そして修練場に来た。
一気に畳み掛けて終わり。
そう思ってた。
あれ?あたしの剣がことごとく裁かれる!?
こんなの初めて!
『ドキン』
何?胸が高鳴る。
戦いの高揚?
この人、確かにそこそこ強いのね。
でも、やっぱり兄が言う程素早くないし、
そこまで強いと思えない。
これでどう?
だいたいこれで勝負が決まるんだよね。
私はフェイントを使って、
横に行くと見せかけて、
下の死角に素早く入る。
ふふふ、消えて見えたでしょ?
あとは転ばして、スキを見せた所で終わり。
そう思って、
予定通りに足払いを決めた。
ところが、この人は倒れながら牽制してきた。
えっ?!
そこ普通は受け身をとりに行かない?!
受け身は本能みたいな物、
訓練すればするほど、
受け身は身に染みて勝手に身体が動くはずでしょ?!
私は距離を取るしかなかった。
けど、次の私の速攻でおしまいにする。
『ドキン』
また胸が高鳴る。
ふふふ、こんな強敵は初めてかも。
少しは認めてあげる。
「なかなかやるね。でも兄さんが言う程、やっぱり強くない」
「いやぁシイさん、強くてびっくりです、もうやめにしませんか?」
どこまでも馬鹿にする態度だね。
やっぱり許せない。
「ふざけないで!バカにした分の制裁はきっちり受けなさい!」
これでおしまいにする。
私は一瞬の隙を見逃さない。
サクラが目線でよそ見した瞬間に、低い姿勢から一気に間合いを詰める。
って、あれ!?
急にスピードが増した!?
いつの間にか私より低い位置に来てる!
「なっ!?」
あれ!?
当てられた!?
このあたしが?
しかも、力のないゆるい当て方をされた。
「くっ手加減したのか?!」
「そりゃぁするよ。女の子に怪我をさせる訳にはいかないでしょ?」
「ふざけないで!」
どこまで馬鹿にしてくるの!
『ドキン』
『ドキン』
嘘、こんなに馬鹿にされてるのにどうして胸が熱いの?。
『好き』
えっ?!今のは何?!
ダメ、ここは集中しよう。
この人体術もいけるって兄さんが言ってた。
なら、これは?
私は短剣をしまって体術の構えをとった。
サクラも剣をしまった。
受けてたとうと言うわけね。
ならこれはどう!!
ほらほら、あたしの蹴りは止まらない、
なんとかしてみなさ…
えっ?!
「えい!!」
な、何が起きたの?
あれ?私倒されてるの?
『ドキン』
目の前に彼の大きな拳が見える。
『ドキン』
顔の前で止めてくれたんだ。
ロマーシアに行った時には、
私みたいな生意気な小娘は、
当然のように殴り飛ばされ、嘲笑われていた。
闘技場の全員が私を嗤っていた。
でもこの人は…。
なんて人なの…。
『ドキン』
凄い。
『好き』
兄さんの言った通り?
んーん、それ以上かも。
『好き』
やっと出会えたんだ…本当の強者に…。
あ、だめ、あたし好きになっちゃったみたい。
「凄い!好き!」
あたしは何を言って…
だめ、止まらない
「サクラ様!結婚して!」
【読者の皆さま】
いつも読んでいただきありがとうございます。
小心者の私に、
↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。
よろしくお願いします!
白村
↓ 作品一覧はこちら ↓
https://mypage.syosetu.com/1555046/




