第七十一話 幻獣ラークーン
時は少し遡り、
闘技会二日目の朝。
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鍛冶屋のスミスの店から、
ルースが勢いよく飛び出して行く。
目的はフォルンの奪回。
とりあえずルースは一旦街を見渡せる高い所を目指す。
サクラの街と同じように、ここロマーシアにも時計塔はある。
ひと際高く聳え立つ時計塔は街を見下ろすにはもってこいの場所だ。
「ふんっ」
疾走しながらルースは黒仔猫姿に変化した。
この黒仔猫の方が、人型でいるよりも身軽で、
時計塔のような建物ならば、
簡単に登れてしまう。
ルースは時計塔のてっぺんに登り、
そこで気配を探る。
見付けた。あそこだな。
ルースの驚異的な索敵能力はいとも簡単にフォルンの気配を見つける。
さっそく救出に行こうとルースが時計塔を降りようとしたその時だった。
む!
突然、今まで見ていた世界の色が変化した。
鮮やかな色が失われ、
全てが白黒に変わった。
これは…!
『ようリュンクス。久しぶりだな』
ルースに念話が届く。
ルースをリュンクスと呼ぶ存在。
そして幻獣であるルースに気安く念話を送れる存在。
その念話の声に、ルースは聞き覚えがあった。
そしてこの白黒の空間を作り出せる存在。
ルースには心当たりが、あり過ぎるほどの存在だった。
『貴様は、ラークーンか!』
ラークーンと呼ばれた者は、
ルースの目前の空間に現れた。
茶褐色の獣、
目の周りに隈。
黒い手足。
体躯は今の黒仔猫のルースの倍ほどの大きさをしている。
そしてこの色の失われた世界にラークーンだけが、
色を保っていた。
ラークーンは空中にとどまって、
ルースと対峙した。
『狸、貴様、わたしに何の用だ。わざわざ異空間を用意するとは、ここでいつぞやの決着でもつけるか?』
ルースはこれからの行動を邪魔され、めずらしく苛立ったようすだ。
『ふふふ、リュンクスよ、そう怒るな。同じ幻獣の吉見ではないか。』
『ふんっ、貴様のような卑劣な奴と慣れ合うつもりはない。邪魔をするな』
『まぁ待て。今日は挨拶だけだ。解っているのだろう?近いうちお前とは決着を付ける時が来る。それまでせいぜい今の餌と仲良くする事だな』
『ふんっ格下の癖に言うではないか。今すぐ決着をつけてやろう』
ルースはそういうと黒仔猫の姿から、
真の姿へと変化していった。
『ふふふ、慌てるな。俺も昔のままではないのだ。今はお前よりも格上になっているぞ。その時になったら思い知らせてやるわ。それだけ言いたかったのだ。がはははは!じゃぁな!』
ラークーンはそう言って姿を消した。
しかしラークーンが消えても、世界は白黒のままだった。
ルースは異空間の中で思う。
ー―― やられたな…この空間はちょっと厄介だ。急いでるというのに狸め、やってくれる… ――ー
ルースは異空間の中を観察する。
どこかにあるはずだ。この異空間を維持している魔石が。
ラークーンが現れた位置からそう遠くない筈だとルースは考える。
そして見つけた。
白黒の世界であっても、
色を無くさない魔石。
大人の男の握りこぶしほどの大きい魔石をルースは破壊した。
空間が元に戻る。
破壊された魔石を中心に、色が戻っていく。
それに合わせてルースも黒仔猫姿に戻った。
急ぐとしよう。
異空間では時間の流れが変わる。
異空間での一分は現実の10分にも20分にもなってしまうのだ。
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「うわっ!なんだこの猫は?!」
「にゃぁ!!」
ルースはフォルンを拘束しているヴォールの仲間たちに問答無用で襲い掛かる。
先程のイラつきをぶつけるように、
それはまさに八つ当たりだった。
「ぎゃぁあ!」
「こ、こんな仔猫に…ぜ、全滅かよ…こいつ何者だ…」 がくっ
三人いた男達は、あっさりと仔猫のままのルースに無力化されてしまった。
ルースが椅子に縛り付けられているフォルンを見る。
「ゔーー!!ゔーーー!!」
猿轡をされいるフォルンが近寄るルースに怯えて騒いでいる。
ルースはフォルンの前で猫髭幼女に変化した。
「ゔっ!!」
フォルンは目を見開いて驚いている。
「助けに来たにゃ。静かにするにょだ」
「うんっうんっ!」
フォルンは勢いよく頷きを繰り返す。
ルースは猿轡を外した。
「ぎゃーー!あんた!何者だあ?!殺されるぅうう!!」
「やかましいにゃ!そもそもダイサクと一緒に居たにゃ!たわけめ!」
ともあれ、無事にフォルンを救出したルースだった。
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白村
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