第七十話 決勝戦
闘技場に出ると物凄い盛り上がりと歓声が響いている。
相手はやはりルビー級の馬鹿男だ。
まずいな…
「どうした小僧、顔色が悪いぞ。やっと理解したのか?ぐふふふ」
「いちいち絡んでくるな馬鹿」
「まだ立場を分かってないようだな、思い知らせてやる」
俺と馬鹿男は所定の位置に立った。
歓声がさらに大きくなる
実況が手を上げた。
会場は徐々に静かになっいく。
実況は手を上げたまま静かに話し出した。
「さぁ、いよいよ決勝戦。魔剣のダイサクか、幻術のヴォールか、果たして勝つのはどちらか」
実況のボルテージが段々と上がっていく
「泣いても笑ってもこれが最後の決勝戦だぁ!!さぁ!行くよーーー!!」
「「「「うおおおおおおお」」」」
「始めーーーーー!!!!」
実況が勢いよく手を下ろす。
始まりの合図だ。
あの馬鹿の名前はヴォールというのか。
イビキの音みたいな名前だな。
ヴォールは盾を構えゆっくりと間合いを詰めてくる。
当然であるように薄気味悪い笑みを浮かべながら、半ば無防備だ。
俺は短杖を刀の柄に当てながら刀を抜いた。
「出た〜魔剣だぁ!今回はどんな効果を見せてくれるのか!」
「はんっ魔剣だと?やってみろ。ぐふふふ」
ヴォールは盾を構えて挑発してきた。
なら望み通りお見舞いしてやる。
俺は中段から水平に刀を振った。
当然水刃も発動している。
水刃は刀の軌道と同じような形で形成され、
勢いよくヴォール目掛けて飛んでいく。
「出たぞ魔剣の水刃!まだまだ威力は衰えていないようだ!」
いや、威力抑えてるんだけどね。
ヴォールは驚きを隠せないでいたが、
意外と冷静に盾をガッチリと構えていた。
ルビー級は伊達ではないわけか。
盾に水刃が当たる。
『ぎゃぁぁああ!!』
「うわっなんだ?!?!」
耳元に女の悲鳴が聞こえた
俺は思わず周囲を見渡してしまった。
その隙にヴォールが間合いを詰めて攻撃してきた。
「しまっ…!」
俺は脇腹にもろに蹴りを食らってしまった。
「ぐっ、がはっ」
「おいおい、よそ見すんなよ。誰かの悲鳴でも聞こえたか?鍛冶屋の娘の悲鳴かもなぁ」
「て、てめぇ…」
脇を押さえながら立ったが、
これまずいな。
「あーっとどうした事かぁ?ダイサクがモロに蹴りを食らったぞ!」
「どう言う事だ…」
「へっ、てめーの攻撃がそのままどこかに伝わってると言ったら解るか?ダメージは俺じゃなく違う誰かに行ってるとしたら?」
「なっ?!」
最悪だ。
なんて鬼畜な野郎だ。
「ほらほら行くぞ!」
ヴォールは剣をやたらめったら打ち込んできた。
俺は刀で受け流しているが、
一太刀ずつが重い。
やばい、刀が折れるかも。
てか蹴られた脇もやばい、
内蔵イッてないか?これ。
しかし、こいつの言ってる事がほんとなら、
攻撃したくても出来ない。
俺の攻撃のダメージはフォルンに行ってしまう。
「くっ」
「おらおらどうした?がははは、おもしれー!」
「あーっと、ダイサク防戦一方だ!このまま終わってしまうのか?!魔剣はここまでなのか??」
くそ、気が遠のく。
やばいぞこれ。
ヴォールの剣がぼやけて見える。
剣を受け流そうと剣ばかりに気を取られた隙に、
また奴の蹴りがきた。
「ぐばっ」
俺は吹き飛ばされた。
ダメだ、やられる。
と思ったその時。
『ダイサク待たせたな』
『ルース?!おっせーよ何してたんだよ』
『すまんな、ちょいと古い知り合いに捕まっていたのだ』
『ダイサク大丈夫?!?!』
『大ちゃん!!』
今まで聞こえなかった念話が次々入ってくる。
どう言う事だ?
まぁ考えるのは後だ。
『大丈夫、これくらいわけないよ。ルースありがとうな、これから反撃だ』
とは言ったものの、
ちょっとヤバかった。
「ダイサクダウンかぁ!立てないなら終わるが、どうだぁ!!」
実況うるさいわ。
くっそ、あばら何本かイカレたな。
「いってててて」
俺はそう言いながら身を起こした。
とりあえずヴォールが近寄れないように短杖だけを振って牽制する。
勢いよく水刃が飛んでいく。
「おーっとダイサクはまだやる気満々だ!!って、あれ??ダイサクが今振ったのは杖だ!剣ではない!今までのは魔法だったのか??」
「あーもーうるさいよ」
「どこ狙ってるんだ?それとも当てられないのかぁ?ぐふふふ」
俺は体内魔力操作とマジックドーピングを駆使して痛みを和らげ、
何とか立ち上がって、
今度はアイシクルアローを放った。
氷の矢はヴォールの盾に防がれる。
そして同時に女の悲鳴が聞こえた。
『ぎゃあぁぁ!』
「馬鹿め、また女に攻撃しやがったな」
ゲスな笑みを浮かべヴォールが言った。
「ふっ、ふふふ、あははは!そう言う事か!」
ルースが戻ってきている。
それはフォルンが解放されている事を意味する。
ならばこの悲鳴は、ヴォールの奴が作り出した幻聴だ。
なんてバカバカしい。
騙されていた自分がおかしくて笑えてくる。
ヴォールの底の浅さも可笑しくて、さらに笑いが込み上げてくる。
「な、何だ!何がおかしい!」
「お前の幻術って声も聞こるんだな。タネが分かるとバカバカしい能力だ。くだらねー、やべ、笑わすなよ痛ぇだろ」
「な、なんで…」
「解ったかって?教えてやんねーよバーカ」
「ぐってめぇ、どっちみち死に損ないだろぉがよ。人質もわすれるなよ。それに俺はルビー級だぞ。直ぐにトドメを刺してやる」
「ふぅぅ」
よし、何とか痛みは我慢出来るな。
マジックドーピング、マジカルアイ発動。
刀に魔力被膜マジックコーティング。
よし。
「馬鹿なお前に教えてやる。本当に強い奴は強さをアピールしたりしないもんだ。あと、お前自分で悪行ばらしてんぞ。つくづく間抜けな馬鹿野郎だな」
実況はヴォールの言葉を聞いて衛兵を呼んでいる。
俺のヘルイヤーで会話は全て聴こえている。
ヴォールは顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。
「てめぇ、許さねぇ、ぶっ殺してやる。お前も人質も、爺い全員ぶっ殺してやるうう!!」
ヴォールは俺目掛けて突進してきた。
突進しながら、こないだの居合斬りのような構えをした。
そして俺の腹を割ろうと横一閃に剣の一撃を入れてきた。
しかし、それは幻術を使ったフェイクだった。
俺のマジカルアイには、本当は上からの一撃で俺の頭蓋骨を割ろうしているのが見えている。
なるほど、単に横薙ぎの構えをあからさまに見せる事で、
上段を手薄にしようっていう姑息な作戦だっただけか。
くだらない。
俺は偽の横薙ぎを無視して、
スキだらけになった盾を持つ左腕を狙った。
ふんっ
俺の下からの一閃で、奴の左腕を斬り、ついで上からの攻撃を防ぐ。
ガキーン。
「へっ?あ、ぐわぁああ!!」
一瞬何が起こったのか分からずに、
ヴォールは変な声を上げて、
自分の左手首が先から無いのに気がつく。
「て、てててめーなんでだ?!」
「二度と同じ手に引っかかるかよ。マジで何度も通用すると思ってたのか?本当に能無しだな」
落ちた盾と手首。盾は裏返しになって転がっている。
その裏側には魔法陣があり、左手首の甲には魔石があった。
おそらく幻術の魔法陣とそれを発動させる為の魔石だろう。
こいつ魔力すら持ってないただの雑魚だったのか。
まったく、なんともお粗末な仕掛けだ。
「くだらない仕掛けだな。底が浅い。さてトドメを刺してやるか?」
「あ、待て待て、いや、待ってくれ!まいった!おれの負けだ!」
ヴォールは後退りしてつまずき、尻餅をついた。
俺は脳天から叩き割ろうと刀を振り下ろす。
「あーーー殺さないデェえええ!!」
俺は刀をヴォールの顔面スレスレで寸止めした。
ヴォールは白目を剥いて、
お漏らしして気絶していた。
汚ねぇ奴だな。
「ふぅ。」
俺は刀を鞘に収め、
実況に振り返る。
「しょ、勝者ダイサクーーーー!!!」
「うおおおおおおーーーーーーーー!!!!」
大歓声の中、
闘技場に入って俺に駆け寄る姿があった。
ラスティ、ベル、ルースだ。
「ダイサク!」
「大ちゃん!」
「大丈夫?!」
ルースが直ぐに治癒魔法をかけてくれた。
嗚呼、助かった。
「二人とも心配かけたな。大丈夫だよ」
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白村
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