第六十七話 闘技会
俺は今、
闘技場の真ん中で、
一人の男と対峙している。
結局、ダンジョンに行くより闘技会で優勝した方が早く鉱石を手に入れる事ができると言う結論に至ったのだ。
しかもどんなお宝が出るのか不確かなダンジョンより、闘技会の報酬の噂の方が信憑性があるらしい。
ていうか、王都に急がなくてはならないのになぁ。
こんなに長く滞在する予定ではなかったのだ。
ここロマーシアは王都の隣の都市ではあるが、
王都に行くには馬車で3日ほどの道のりがある。
ここまで来るのに予定よりは早く着いたが、
闘技会までこなすとちょいとギリギリだ。
新年の5日までに王都に行かなければならないのに、
この闘技会は年末の恒例行事として、
12月29日から2日間に渡って開催される。
俺的には新年までに王都に付きたかったが、
まぁ仕方ないか。
結局、この闘技会に出ると決めたのは俺だし、
出ない事にはあのルビー級の冒険者がまた殴り込みに来ないとも限らない。
噂の報酬も魅力的だしね。
まったく、やれやれだ。
「始めっ!」
おっと、試合が始まった。
集中しないとな。
最初の相手はフルプレートに身を包んだ剣士だ。
スポンサーは有名な鍛冶屋らしい。
剣士の冒険者ランクは不明。
というのも、冒険者ランクは明かすかどうかは本人の自由になっている。
それも駆け引きなのかも知れないが、
俺にしてみればあまり意味がないようにも思える。
目の前の剣士は盾を左手に持ち、
剣を振り上げて突進してきた。
うーむ。
スキだらけだ。
俺の刀は亀裂が入ってるので、
とりあえずスミス爺さんに頼んで
レイピアを借りてきた。
しかし、この相手には抜くまでもないかな。
あ、でも剣を使わないと鍛冶屋との協賛にならないのか。
そんな事を考えていたら、
剣士が目の前まで来て俺に剣を振り下ろして来た。
既に俺は魔視力マジカルアイを発動している。
この相手は、こないだの奴みたいな幻術は使ってないようだ。
動きも遅い。
俺は振り下ろされる相手の剣を、
レイピアで軽くいなして軌道を変えた。
相手の剣は簡単に軌道を変え空を切る。
俺はバランスの崩れた相手の後頭部のやや下辺りを剣尻で叩き失神させた。
「おーっと、いつのまに抜いたのか?
ダイサク選手のレイピアがいとも簡単に相手を無力化したー!勝者ダイサク!」
どこの世界もこういう実況は同じなんだなぁ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は順調に勝ち進み、
1日目が終わった。
闘技場の選手控え室から出ると、
ルビー級のあいつがいた。
「よぉ、順調に勝ち進んでるな。テメェをぶちのめすのが楽しみだぜ」
俺は話すのが面倒なので、
チラッと見ただけで通り過ぎようとした。
「待てよてめー!何無視してんだこら」
「面倒くせーやつだな。どーせ明日やり合うんだから、いちいち話しかけんな」
「このやろぉ覚悟しておけよ」
俺はそのまま闘技場を出て、
鍛冶屋のスミスの店に向かった。
「大ちゃんおかえり!」
「おかえりダイサク」
ラスティとベルが迎えてくれる。
会場には皆んなで応援に来てくれているが、
人が多くて闘技場内で待ち合わせは大変なので、
こうして鍛冶屋で待ち合わせする事にしていた。
「ただいま」
「優勝出来そうか?」
とはスミス爺さん。
「優勝出来るかは分かりませんが、今日の手応えは、なんか拍子抜けでした」
「あんた強いんだな、あんな奴に負けないでよ」
フォルンだった。
「まぁ幻術を使うようなセコい奴に負ける気はしませんがね」
俺は笑顔で応えるが、
いちお俺より格上の相手だ。
油断は禁物だ。
しかし、あのルビー級の男が見せた、居合切りのような構え、あれがどうにも気になる。
闘技会のルールでは、
他者の試合は見れない事になっている。
対策を立てての試合だと、
詰まらなくなるからだそうだ。
あと、ルールと言えば、
基本的に相手を殺してしまわなければ何でもアリだ。
まぁありがちなルールだな。
「ところで、そのレイピアはどうだ?」
スミス爺さんだ。
「そうですね、凄く扱い易いと思うのですが、俺にはちょっと軽いですかね。」
「そうだな、レイピアは力の弱い者に向いているからな」
「刀はどうにかなりそうですか?」
俺は亀裂の入った刀をスミス爺さんに預けてある。
出来る事なら刀で出場したい。
「やってはいるが、なんとも言えんな」
「そうですか」
刀が明日までになんとかならなければ、
このレイピアで出場するしかないか。
まぁ考えても仕方ない。
「では、また明日来ます、よろしくお願いします。」
俺たちはスミス爺さんの店を後にして、
そのまま宿に戻った。
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白村
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