第六十四話 ロマーシア
元盗賊達の元根城の集落。
新たな村、ギガバース村を出て、
王都への旅路に就く。
俺とラスティ、ベルにルース。
そしておまけのマティス。
俺達一行は、愛車のワンボックスで次の街ロマーシアへ向かう。
ロマーシアを抜ければ、
いよいよ王都だ。
途中、街道の警備をしている衛兵隊に出会い、
盗賊団に会わなかったか聞かれたが、
会ってないとシレっと答えた。
しかし、普通は盗賊団に会えばただじゃ済まないんだから、
平和に旅をしている者に、
盗賊団に会ったか?なんて聞く方もどうかしていると思う。
まぁ乗り物が珍しかったから、
間近で見たくて声を掛けて来たんだろうな。
身分を明かしたら直ぐに再出発して行ってしまった。
「平和だなぁ」
「そうだねぇ」ベル
「そう言えば、領壁の外って、魔物とか居るんじゃなかったか?」
「いるよ」ラスティ
「どこにも居ないじゃん。あの森にも居なかったよね?」
「ふん、街道周辺に魔もにょはあまり居にゃい。そもそも魔もにょが少ないから街道ができたにゃ」
「あーなるほどね。あの森にも居なかったけど、街道周辺の森だからか?」
「森には居たにゃ。しかし私に近寄る馬鹿にゃ魔もにょはいにゃいにゃ」
「あ、そう言う事、ルースがいるおかげで魔物の方から遠ざかっている訳か」
「そういう事にゃ」
「ルース凄いの」
「あー疲れた、なかなか大作みたいに魔力操作出来ないよ」
ラスティは魔石を使っての魔力操作の練習をしていた。
移動中暇なので、
ベルと交代で魔石を使って練習しているのだ。
だいぶラスティも魔力操作が上達している。
「ルースから見て、ラスティの上達ぶりはどうなんだ?」
「ふん、最初から比べればだいぶ良くはなったが、まだまだにゃ」
「厳しいなぁ、そう言えば魔力操作が上達すれば、魔力量も増えるのか?」
「違うにゃ。魔力操作が上達すると、体内にょ魔力量が分かるようににゃるにゃ。それが分かるようににゃったら、魔力量をギリギリまで消費してそれを維持するにゃ」
「それって常に魔力疲労の状態って事?!」
「そうにゃ。魔力疲労を回復するにはどうしても魔力を必要とするにゃ、しかしその魔力は常に消費状態。困った身体は魔力量そのものを増やそうとするにゃ。にゃので必然的に魔力量が増える」
「なるほどぉ、俺も増やせるかな」
「お主にそれ以上にょ魔力が必要とは思わんにゃ」
「あたしはどれだけ増やせば良いかなぁ」
「ラスティはベルと同じ量になるのが目標だにゃ、今は橙だったか」
ふと俺はルームミラーで最後部の座席を見たら、マティスは口を開けて間抜け顔で寝ていた。
ちょうど良い。
「ところでさぁルース」
「ん?」
「俺とベルは、その、長生きするじゃんね」
「ふん、300年といったところかにゃ」
「ちょいと言い辛いんだが…」
「にゃんだ?歯切れにょ悪い」
「ラスティもさ、その、あれだ、長生きさせたいんだ」
これはずっと思ってた事だ。
俺とベルはルースの血を舐めた事で寿命が大きく伸びた。
でもラスティは普通の寿命だ。
この世界の平均寿命は知らないが、
このままだと先にラスティが逝ってしまうのは確実だ。
そんなのは嫌だ。
「ベルからもお願いしたいの、ラスティお姉ちゃんとも、ずっと一緒にいたいの」
「良いにゃ!ほれ」
ルースはそう言うとラスティに向かって左手の人差し指を差し出した。
どうやったのか既に少量の血が、
ぷくっと指先に乗っていた。
「いや軽いなおい!」
「拍子抜けなのぉ、ふふふふ」
「ふん、気に入った人間を、私が簡単に手放すと思うにゃよ」
「なんだよそれ?いつ気に入ってたんだよ」
俺は安堵もあって、笑いながら言った。
「ラスティ、早くするにょだ、乾いてしまう」
「えっと、うん」
ラスティは戸惑いながらもルースの指を口元に寄せる。
美幼女の指を美少女が咥える絵と言うのは、
なかなか見ないな。
うん、可愛いは絶対正義だ。
それにしても、
俺が血を舐めた?舐めさせられた?
時はルースは仔猫の姿だった。
今は猫髭があるとはいえ美幼女の姿である。
俺もこっちの方が良かったと、
ちらっと思ったのは内緒だ。
「ふん、しかし願いがあるにゃら、命令すれば済む事にゃ、私はお前の使い魔にゃんだからにゃ」
「そう言うのは嫌なんだよ。仲間じゃんか」
「お主はつくづくだにゃ。ラスティよ、これで大食い勝負がずっと続けられるにゃ」
「うん!ありがとうルース」
「大食いって、そこかぁ」
「って、あれ?!」
ラスティは驚いたように、
両手の平を自分に向けて、
自分の身体の様子を伺うような素振りをしている。
俺は思わず車を停めてラスティに声をかけた
「どうした?!大丈夫か?」
「んーん、何でもないんだけど、魔力疲労が引いたの」
「えっ?魔力疲労が引いた?」
「うん、疲れが取れてすごく楽になった」
「血か?」
「ふん、ちょいと魔力を込めておいたが、効果はあったようだにゃ。ついでに血の契約も加えておいたにゃ。これでラスティにも私の加護が付与されたはずにゃ」
「血の契約??石版無しでも契約できるのか?」
「名付けにょもにょとは違うにゃ。あくまで私とラスティの使い魔の契約にゃ。これでお主も安心だろう」
「ああ、ありがとうルース」
「ありがとう」
「ラスティお姉ちゃん、黄色になってるの」
「「えっ?」」
「ほほう、やはり効果はあったようだにゃ」
「すげー!ラスティの魔力増やしたのか?」
「ふん、魔力を増やしたにょではにゃい。元々ラスティには素質はあったが、魔力にょ出し方が間違っていたにゃ。力んで魔力の蓋をこじ開けていた感じだったのを、私の魔力で疲労回復したのがきっかけで、自然に蓋を開く感覚を掴んだにょだろう。試してみるにゃ」
ルースはそう言うと、
ラスティに魔石を使うように促した。
ラスティは言われるままに魔石に魔力を流し込む。
「あ!今までより簡単に流せる!なんか解ったかも!」
さっきまで、うんうん唸って魔力を出してたのが嘘のようだ。
すごくスムースに魔力の出し入れができてるように見える。
「すげー!ルースすげー!」
「ふん、当たり前にゃ」
「てか、最初からそうしてくれたら良かったのに」
「それはダメにゃ。ある程度魔力操作の感覚を掴まないと、悪い癖も分からにゃいからにゃ、それに何度も血を舐めさせる訳にもいかんにゃ」
「それもそうか」
それにしてもルースは万能だ。
チート過ぎる。
そんなこんなで、
数日が過ぎた頃、
ようやっとロマーシアの領壁が見えて来た。
サクラの街に比べると、
ロマーシアの領壁は断然大きい。
「でかいなぁ」
「そうでしょう?」
相槌を打ってくるマティスが、
何故か得意気だ。
王都の隣りに位置するロマーシアは、
サクラの街の10倍はあろうかという規模の大きな都市だ。
途中の行商人に聞いた話しでは、
交易が盛んで、
いろいろな物を生産して外国や他の街に輸出しているそうだ。
特に鉄製品の製造が盛んで、
その中でも鎧や剣などを製造する、数多くの鍛冶屋がロマーシアには居る。
そして、それらの武器防具を宣伝する為に、
ロマーシアには大きな闘技場があり、
鍛冶屋達は自分達が作った武器防具を、
強い冒険者に持たせ、
闘技場で戦わせて宣伝しているのだとか。
そしてそうした装備は、
宣伝の為に冒険者にタダで持たせるので、
腕自慢の冒険者達は良い鍛冶屋に雇ってもらえるよう、積極的に闘技場に集まるのだそうだ。
なるほどねぇ。
武器と言えば、
ラスティが持ってるのは、
かなりレアな魔剣なので、
ラスティには新しい物は必要無い。
でもベルはマミちゃんから頂いた、使う訳にはいかない大事な短剣と、
安いとりあえずな短剣持っているだけなので、
ちゃんと使えて、ベルに似合う短剣が欲しい。
そして俺。
俺の刀はサクラの街の鍛冶屋で作ってもらい、
自分で研いだ日本刀もどきだ。
しかしこないだゴースをぶった斬った時に、
実は刀身に亀裂が入って、
今にも折れそうになっている。
なので新しい刀を作れる鍛冶屋があれば、
製作を依頼したいと考えていた。
領門に着き、衛兵の検問を受ける。
三度目ともなるとだいぶ慣れた。
俺は貴族証を見せて、
仮ではあるが伯爵である事も話した。
車も異世界の乗り物だと説明したら、
直ぐに門を通された。
簡単なものだな。
門を潜るといつものように広場になっている。
宿屋の呼び子が客引きしていたり、
荷馬車が多く停まっている。
ここでもやはり例外なく、
貴族御用達の宿屋がある。
今までと違うのは、
貴族専用の広場があるということだ。
馬に乗った衛兵の先導で、
門を潜って直ぐに右手に進むと、
通常の広場より小綺麗にされた広場と、
そこには高価そうな服装を纏った、
美人な呼び子が何人も出ていた。
そのうちの一人に、
先導していた衛兵が声をかけ、
何やら話しをしてから、
呼び子が俺の所にやってきた。
「伯爵様、遠路お疲れ様でございます。私は宿の主をしております、テルと申します。よろしくお願い致します」
優雅な振る舞いで挨拶をしてきたテルと名乗ったのは、スラリとしたスレンダー美人の女将だった。
呼び子かと思ってたら、
女将自らお客を出迎えているんだと、意外に思ったが、
貴族専用の宿ならそれもあるのだろうと、
妙に納得した。
「こちらこそよろしくお願いします」
「では、さっそくご案内しますが、あの、このような乗り物は見た事がありません。大変申し訳ないのですが、このまま旦那様の手で移動して頂いてもよろしいでしょうか?」
テルは凄く恐縮した様子でそう言ってきた。
貴族の手を煩わさないようにするのが通例なのだろう。
しかし俺達が乗ってるのは馬車ではない。
異世界の自動車なのだ。
俺以外運転はできない。
むしろ他の誰かに任せるなんてできないのだ。
「もちろん構いません。このまま先導して下さい」
俺が笑顔で答えると、女将はホッとしたようだ。
貴族相手は大変だな。
案内されるがまま、
馬車が並ぶ一角に車を停め、
宿の部屋に案内してもらった。
取った部屋は4人部屋と1人部屋の二つ。
当然マティスは1人部屋だ。
「どうして僕だけ1人なんですかぁ」
「いや当たり前だろ、俺達は家族なんだから、他人のお前は別室。むしろ貴族専用の宿に泊まれる事に感謝しろよ」
「確かにそうなんですが、僕は護衛を依頼した依頼主なんだけどなぁ」
「心配するな、何かあってもルースが何とかするから」
「にゃに?わたしか?しかたにゃいにゃぁ」
「何か釈然としませんが…」
そんなやりとりをしつつ、
俺達はそれぞれの部屋に入って一晩を過ごした。
【読者の皆さま】
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白村
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