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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第二部 旅路編
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第六十三話 新村誕生


バンジスと契約する時、

俺はバンジスの名を変えた。


新たな名はバース。


これでこの集落の主要は、

ギースにガースとバースになった訳だ。

ギガゴース盗賊団改め、

ギガバース村の誕生だ。


ちょいと厳つい名だが、

まぁ良いだろう。


俺はそんな事を思いつつ、

車を村に乗り入れた。


「な、なんですかい親分?!この乗り物は?!」


「ん?ああ、言ってなかったな、俺は異世界人なんだよ。これは異世界の乗り物だ」


「異世界人?!」


「ああ、気がついたらこの乗り物ごとこの世界に来てたんだ。それより腹が減ったから、俺達は飯にするよ」


そうは言ったものの、

俺はあんまり食欲が無かった。

盗賊とは言え、

初めて人を(あや)めたのだ。

まだ手に切った感触が残っている。


「大ちゃんどうしたの?元気ないよ」


「顔色も悪いみたい」


「ん?あぁ大丈夫だよ。ありがとベル、ラスティ」


「ふん、おおかた切り捨てた者にょ事でも考えていたにょだろう。いいかダイサク。お前がいた世界はどうか知らんが、こにょ世界は弱肉強食よ。弱い者は死にゅ。現に彼奴らもそう思ってるからお前を恨んだりはしていにゃいにょだ。」


「そういうもんかね」


「ふん、お主にょあにょ時にょ剣技、目を見張ったにゃ。お主はこれからたくさん戦う事ににゃるだろう。その度に考え込んでたにょでは話ににゃらんにゃ」


「俺がこれからも戦うって?どういう事だ?」


「いずれ解るにゃ」


ルースはそれきり黙ってしまった。


ラスティもベルも不思議顔してるだけだった。

ずいぶんと意味深な事を言われた気がするが、

確かにこの後も戦いはあるだろう。

魔物や盗賊がいるこの世界では、

避けられない事なんだろうな。


そーいえばマティスはどうした?

すっかり忘れてた。


あ、いた。


捕まっていた冒険者の女の子と談笑してやがる。

まぁ自分より下のランクの女の子がいて嬉しいんだろうな。


能天気な奴だ。

なんならこのままここに置いて行こう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日、

俺はギース、ガース、バースを呼んだ。

いろいろと聞きたい事がある。


俺の横にはベルもいる。


「で?なんすか?親分」


「うん、他でもない、お前達『闇の城』って知ってるよな?」


「う…知ってますです」


表情を曇らせたのはバースだ。

まぁ元々は『闇の城』と組んでいたからな。


「へぇ知ってますが、『闇の城』が何か?」


「盗賊団は『闇の城』と繋がってないのかい?」


「俺達が盗賊になって間もない頃に声をかけられましたが、断りやした」


「なんで?」


「俺らあいつらのやり方は好かねぇです。魔薬になんざ手を出すもんじゃねぇ。ありゃ世の中滅ぼす代物だ」


「俺からすれば、盗賊も似たようなもんだけどなぁ」


「親分、そりゃねぇですよ、俺ら殺しはやりましたが、世間で嫌われてる奴と、挑んできた奴以外は殺さねぇです。『闇の城』の奴らぁ見境ねぇんだ。女子供関係なく殺しちまう」


「そうなのか、そりゃ悪かったな」


「いや、とんでもねー、こっちこそ(なま)言ってすまねぇです」


「いや良いんだ。言ってくれた方が助かる。まぁ、これからは挑んできた奴も殺さないでやってくれよ」


「へぇ、分かりやした、悪人は良いんですかい?」


「良いんじゃね?なぁバース」


「ひっお許しを!」


「冗談だよ、もう怯えるのやめろよな」


「親分、このバースは何したんで?」


「こいつ『闇の城』と組んで悪さしてたんだよ。とある王族の姫君と俺とで『闇の城』の支部を潰したのさ。その時にこの、元バンジス子爵が裏にいたのさ。」


「この野郎、とんでもねぇ野郎だったのか、親分こんな奴殺した方が良いですぜ」


「まぁまぁ、コイツ実は、とある呪法で不老不死にされたんだ。そのおかげで拷問で何度も殺されたはずだ」


「ぎゃぁーー言わないで…下さい…」


あ、落ちた。

今回は失禁してないな。


「不老不死?!まじですかぃ」


「ああほんとだよ。本人思い出すだけでコレだから、余程酷い目に遭わされたんだろう。約1年拷問されて殺され続けてたはずだ」


「うえ、1年殺され続けるって、えげつねぇ」


「コイツは多分40歳前後だ、醜いデブのおっさんだったのが、不老不死のおかげで若返ったんだ。1年で痩せこけて、ここで最初見た時は分からなかったよ。そんな訳で、コイツはもう罰を受けてる。反省してるし、これからはお前達と同様に、世の中に役に立って貰うぞ」


「へい!もちろんだ!」


「それにしても、不老不死の呪法なんて聞いた事ねぇな」


「不老不死になりたいか?」


「…若返りたいとは思いやすが、永遠の命はいらねぇですわ」


「だよな、俺も同じ考えだ。実は俺も若返ったんだ、不老不死ではないがね。この世界に来た時に何故かそうなってた」


「そうなんですか、羨ましいですわ」


「まぁ話を戻すと、『闇の城』は敵だ。今後なんかあったら教えてくれ、お前達が見境ない悪じゃなくて良かったよ」


「いや、とんでもねぇです、俺らもあいつらは好かねぇ、何でも協力しまさぁ」


「うぅ…」


「お、目を覚ましたか。なぁバース、お前は何で『闇の城』と手を組んだんだ?」


「は…はひ、それはですね、えっと向こうから私に声をかけられました。最初はうまい商売があると言われて、向こうも貴族らしかったので話しに乗ったんです。そしたら品物が、その、禁止されてる物で、さすがに私もそれはダメだと思ったんですが、手を組んだ時点で同罪だと言われまして。そのままズルズルと悪人になってました」


「そりゃ本当だろうな?親分に嘘付いたらただじゃおかねぇぞ」


「ひー嘘じゃないです!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「まぁ今更嘘は言わないよ。自慢じゃないがうちの娘は嘘を見破るしね」


「そうなんですか?」


「嘘わかるの」


「な、可愛いだろ?」


「へぇ、癒されますわ」


「まぁバースも利用されたって事だな、いずれは壊滅させなきゃならないな」


「まったくですが、親分が戦うんですか?」


ん?そう言えばそうだ。

何で戦う気でいたんだろ?


俺は勇者ではない。


悪者は全て俺が倒す!


と言う使命がある訳でもない。


何故かそう思っていた。


そもそも闇の城がどの程度世界に蔓延しているかさえ知らないのに。


マミちゃんの影響もあるのだろうか。


「うん、なんかいつの間にか戦う気になってたけど、無理だよな?」


「へぇ、闇の城ってのはずいぶんと古くからある組織みてぇです。相当ヤバい奴もいるみたいですが、やるんなら俺達もお手伝いしやすよ。そんときゃ呼んでくだせぇ。それまでにもっともっと強くなってみせまさぁ」


「うん、頼むよ。きっと戦いはあるだろうと思うし、俺達はギオール支部を潰した時のメンバーだからな。間違いなく目を付けられてるよなぁ」


「まぁしょうがねぇです。俺達は親分に惚れ込みやしたが、闇の城の奴らぁ執念深いですから」


うへ、やだねぇ執念深いとか、やめて欲しいわ。


「それにしても親分達は強えですが、ベルのお嬢は、嘘を見破ると言ってやしたね、もしかして『見える』んで?」


「あぁ、能力持ちだ」


「それはすげぇ、将来は大魔法使いですかぃ、いや、その若さなら賢者も夢じゃねぇか。」


「いや、ギース、親分のあの動きも、ただの人間とは思えねぇぞ」


「いったいどうしたらそんなに強くなれるんですかい?」


「俺は魔力を身体強化に使ってるからなぁ」


「「すげぇさすが親分だ」」


そんなこんなで話しをしてたが、

キリがないので引き上げた。


俺は全員を集めて、

これからの事を説明した。


「みんなはここにいる盗賊達にここに連れてこられたと思うけど、俺達はみんなをここから連れ出す事が出来ません」


「なんでですか?」


女の子が怯えたように言った。


「これから俺達は王都に急いで行かなければならないからです。今4人で旅をしていますが、君たち全員を連れて王都に行くのは無理なんです。」


「そんな…」


今にも泣きそうな女の子に、

俺は笑みを浮かべて言った。


「大丈夫だよ。もう怖い事はないから」


「そうなの?」


「うん!だろ?ギース、ガース」


「へぃ。もぅ怒ったりしねぇです」


「ね、だからもぅ大丈夫。あとね、衛兵さん達に、君達を引き渡す事も考えたんだけど、そうするとさ、ほとんどが結局は奴隷にされちゃうと思うんだ。だから、とりあえずここに残るのが良いと判断した。」


「…分かりました…」


「王都で用事済ませたら、またここに来るから、その時にまた考えよう」


「用事って?」


「えっと、俺は今、仮の伯爵なんですが、王様に会って正式に伯爵を叙爵する為です」


「伯爵様だったんですか?!」


「ま、まぁいちおうね」


「親分、こう言っちゃなんだが、あんたみたいな貴族は居ねぇですよ。みんな威張り散らして胸糞悪い連中ばかりだぜ」


どんな目にあってきたのかは分からないが、

貴族に対する印象は最悪のようだ。

中にはマルコスさんのように良い貴族も居るんだがね。

これも偏見か。


偏見と言えばだ。


「なぁギース、お前達はこの子達に偏見はないのか?」


「俺達も元はと言えば孤児でさ。そう言う意味じゃ偏見はねぇが、弱いこいつらは商品でしかねぇって思ってやした」


強い者が弱い者を食い物にする。

正に弱肉強食か。


「バースはどうだ?」


「わ、私は、その、()()()には、な、何も思わないです」


 ん?その子?


「嘘なの」


ベルが言った。


「おいバース!」


「うわーごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!ほんとは好きなんです!牢屋で優しくされて、感謝してます!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


予想外のバースの言葉にベルを見やると、


「本当なの」


と言われた。


「おまっ、今好きって言ったか?」


「いやいやいやいやいやいや、そう言う意味じゃないですよー!」


「そう言えばお前の奴隷達は幼女ばかりだったな。ロリコンか?」


「あわわわ、誤解です!僕は何もしてませんからぁ」


「ん?何もしてない??」


思わずベルを見る。

ベルもちょっと驚いた顔をしている。


「嘘じゃないの…」


「バース、改めて聞くが、あの全裸の奴隷達は何だったんだ?」


「それはその…、僕のアレが…ごにょごにょ…」


「聞こえないぞ」


「僕は出来ないんです。使い物にならないんです。だから、何とかしたくて、あの子達にしてもらおうと思って…。でも何も出来なかったんです…ぐすっ」


う、なんとなく察してしまった。

男として凄く気の毒になってしまった。

しかも手も出せない臆病者だったとは。

あんなに威張ってたクセに。


「本当なの…」


ベルが安堵したように呟く。

少し涙が潤んでいるようだ。


旧バンジス邸の地下室にいた少女達は、

全裸ではあったが、

特に酷い事はされてなかったんだ。


「親分…」


「あぁ分かってる。バース」


「はい、しくしくしくしく」


こいつ、本当は可哀想な奴なんだなぁ。


「すまん」


俺のこの一言でバースは号泣してしまった。


やれやれだ。


俺はギースとガース、その部下達に、

俺の国や世界の事を話した。


弱い者を強い者が守る。

それが美徳とされている事。

奴隷制度はあったが、

それは戦争によって廃止された事など。


弱肉強食のこの世界では、

弱きを守ると言う考え方はなかなか慣れないようだったが、

何とか納得してくれたようだった。


「と言う訳で、これからはお前達がこの子達を守ってやってくれ。これはお前達がこの子達の奴隷になるんじゃなくて、お前達が強いからなんだ。」


「へぃ、何となく分かりやした。考え方はどうあれ、守れば良いんですよね」


「ん、まぁそんなとこだ。頼んだよ」


ギース達と話してる間に落ち着いたバースに、

これからこの集落をちゃんとまとめるように改めて伝えて、俺たちは再出発の準備に入る。

王都に行かなければならないので、

そんなにゆっくりしている時間はないのだ。


準備している俺達の元に、

マティスと冒険者の女の子2人がやってきた。


「あの、サクラ様」


「ん?どうしたマティス」


「この子達が、この後どうしたらいいかって」


「私達はこれからどうすれば良いですか?」


そう言えばそうか。

この2人は元々冒険者で、

5人のパーティの生き残りだ。

たまたま盗賊に捕まっただけで、孤児と言う訳ではないし、

一応帰る所もあるのだろう。


しかし、

2人でここを出て旅をするには危険すぎる。

できたら残って欲しいかなぁ。


俺は2人に事情を説明して、

再びここに戻るまではいて欲しいとお願いした。

もっとも、仮とは言え俺は伯爵。

お願いというより、

命令に近かったとは思うが、

ここは我慢して貰おう。


俺はふと気になり、

犯罪奴隷の2人にも話を聞く事にした。

ベルを連れて2人がいる牢屋へと赴く。


「こんにちは、ちょっと聞きたいんだけどいいかな」


俺はなるべく気安く声をかけた。


2人は格子越しに、俺の元に来た。


「何でしょうか」


答えたのは女のほうだ。


「率直に聞くけど、君らは何をして犯罪奴隷に落ちたんだい?」


俺のその一言に、

俯き加減だった男が、

パッと顔を上げて言った。


「き、聞いていただけるんですか?!」


「あぁ、その為に来たんだよ」


「お、俺は何もしてないんです!嵌められたんです!」


なんだかよく聞く話しのようだと思い、

詳しく聞いてみると、

やはりよく聞く話しだった。


通りすがりの兄ちゃんに身体が当たって、

そのまま歩いていたら男に呼び止められて、

ポケットを見せろと言われて、

中を見たら身に覚えのない宝石が入っていたと言う。

男には泥棒と決め付けられて、

何一つ言い分を聞いて貰えずに、

あっという間に犯罪奴隷にされていたと言う訳だ。


いちおこの話を聞いた時にベルに確認をしたが、嘘は無いとの事だった。


もう1人の女の方も、

似たような感じで、

犯罪者に仕立て上げられて、

奴隷落ちしたらしい。


こんな話し、よくある事なのか?

と、後でギースに聞いたら、

良くある事なんだそうだ。


しかし、なぜそれをもっと早く言わなかったんだと問いただしたら、

何を言っても聞いて貰えずに諦めていたとの事だった。

だから俺が何をしたのかと聞いた時には驚きと喜びがあったそうだ。


なるほどね。


ともあれ、この2人も衛兵に引き渡す理由は無くなった。

ここに留まって貰おう。


そんなこんなで、

結局は牢屋に入れられていた全員が、

ここに残る事になった。

後は王都からの戻り道に寄って、

改めてどうするのかを決めよう。


翌朝、皆に見送られて、

俺達は王都への道程に戻ったのだった。





【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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