第六十二話 思わぬ再会
ギースとガースをはじめ、
盗賊達は抵抗をやめておとなしくなった。
俺とルースで生き残った全員を縛り上げる。
「ふう、これで一安心かな。後でこの場所を知らせて、衛兵隊に引き渡せば完了だな。」
「あっちにまだ人の気配がするにゃ」
「えっ?」
ルースが指すのは牢屋だった。
「あ、捕まってた奴隷がいるのか」
俺は牢屋の中を確認する。
暗くてよく見えないが、
確かに子供や大人までもいるようだ。
「聞こえるかな?今出してあげるよ」
鍵を壊し扉を開ける。
「さぁ、出てきて良いよ」
最初はオドオドしてたが、
一人が出ると、
また一人、また一人というふうに全員が出てきた。
総勢13人。
16歳以上の成人してるだろう大人が、
男2人女3人
少年少女が8人だった。
全員猿轡をされて、
後ろ手に縛られていたので解いてあげた。
一人、見た目は18歳くらいだろうか、
男が必要以上に怯えていた。
可哀想に、よほど酷い目にあったのだろう。
俺は焚き火の周りにみんなを集めて、
盗賊達の残り物で悪いが、
そこにあった食べ物を与えた。
腹が減っていたのだろう、
皆ガツガツ食べている。
「ねぇダイサク」
と、そこへラスティが話しかけてきた。
「この中に犯罪奴隷はいないの?」
「あ!そうか、犯罪奴隷なら助ける必要ない、のか?」
その言葉に、怯えていた一人の青年が、
あからさまにビクッとして、
こちらを見る。
俺と一瞬目があったが、
直ぐに逸らされてしまった。
あれ?あの目、どこかで…?
まぁいいか、今の反応から、
彼は犯罪奴隷なのだろう。
というか、全員奴隷なのかな?
少なくとも盗賊に攫われた人達だ。
元々は奴隷ではない可能性もある。
「どうしたらいいんだろ?」
「うーん、とりあえず街道を巡回してる衛兵隊に言って、引き渡す感じかなぁ」
「それって全員だよね?みんな奴隷になっちゃうのかな?」
「分からない、でも売られた子は奴隷商に引き渡されると思う」
「そかぁ…」
「大ちゃん、なんとかならないの?」
なんとかしたいのは山々だ。
この子達が皆奴隷になるのは気の毒だ。
しかし、今は旅の途中。
正直どうする事もできない。
「引き渡さずにここに居させたらどうにゃ?」
「へ?ここに?」
「そうにゃ。ちょうどここにゃら周りが岩に囲まれていて天然の領壁のようににゃっているにゃ。こにょ場所は発見されにくいし、危険はすくにゃい。逆にあにょ盗賊共を奴隷契約して守らせれば良いにゃ」
「「なるほどぉ」」
「でも、そんな事して王様に怒られないか?勝手に住むんじゃない!とかなんとか」
「そう言う人間にょ都合は知らんにゃ」
「ねぇダイサク、普通は街の外とかには住めないんだよ。魔物が出たりして危険だから。それでもたまに小さな集落とかあったりするんだよね」
「そうなんだ」
ふむ、今はそれが最善か。
でもこれ、後で王様に報告しないと駄目だよなぁ。
その前に衛兵隊か。
まぁ有名な盗賊団をやっつけたんだから、
大目に見てくれるかな?
とりあえずはここに居させて、
王都の用事が終わったら一旦様子を見にくる。
その時に必要ならサクラの街に連れて行く。
俺の領地ならどうとでもなるだろう。
しかし犯罪奴隷はここには居させられないから、まずは犯罪奴隷を見つけなければならない。
まぁそれは簡単だ。
質問してベルに嘘をついてるかどうか『見て』もらうだけだ。
俺は順番に聞いて行く事にした。
まずは一番怯えていたあの青年。
まぁ犯罪奴隷だろうな。
「ちょっと質問させてくれるかな?」
俺が青年に話しかけた時、
ルースから待ったがかかる。
「おい、ダイサク、バンジスは犯罪奴隷だろう。いちいち聞くにゃ。時間の無駄にゃ」
は??
「今なんて?!」
「だから、バンジスには確認はいらにゃいと言ったにゃ」
「「「バンジスゥ?!」」」
怯えていた青年は、
顔面蒼白であわあわしている。
確かに言われて見れば、
似てなくもないが。
あいつもっとブタだったよな。
今は見る影もなく痩せているし、
以前の太々しさの微塵も感じないぞ。
「ルース本当なのか?!」
「にゃんだ?気が付いてにゃかったにょか?私が血を与えた人間にゃ。間違える訳にゃいだろう」
「ひっやっぱりあの時の化け物?!」
「化け物とは失礼にゃ。一度殺してやろう」
「あーーごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!」
なるほど、怯えてたのはこういう訳か。
てか、何でこんな所にコイツがいるんだ?
「おいバンジス」
「ひーお許しを!」
「何にもしねぇよ!とりあえず質問に答えろ」
「お前が何でここにいるんだ?」
「わ、わたしは…」
バンジスの話しによると、
犯罪奴隷として強制労働するのに王都に向かう途中に、
ギガゴース盗賊団に襲われて捕まっていたそうだ。
「それでは話が違うにゃ。此奴には永遠にょ苦痛を与えるとにょ話しだったはずにゃ。だから罰として血を与えたにゃ、やはりここで何度も殺して苦痛を与えたのちに消し去ってくれる」
「ひーーー!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!それだけはごめんなさいごめんなさい!」
うん、ルースの気持ちも分かる。
マミちゃんに託すからこその血だった訳だが、
今のバンジス見てると可哀想に思えてくるな。
「おいバンジス。拷問はどうだった?」
なんとなく意地悪な質問をしてみたら、
バンジスの顔色はますます悪くなり、
白目を剥いて気絶してしまった。
うわ、漏らしやがった。
しかし、思い出しただけで気絶するとは、
いったいどんな事をされたのか、
想像したくないな。
「ルース、これ相当だぞ」
「なんだか可哀想なんだけどなぁ…」
そう言うベルは微妙な表情だ。
そりゃそうだ。
ベルのお姉さんスズの事があるからだろう。
とりあえず、バンジスはほっといて、
犯罪奴隷がいるのか確認を先にする事にした。
結論から言えば、
犯罪奴隷はもう一人の男と女一人が犯罪奴隷だった。
後の女性2人は女性と言っても16歳で成人したばかり。
冒険者になって男女5人のパーティーを組んでいたが、
旅の途中で盗賊に襲われて、男3人は殺されて女2人は連れて来られたそうだ。
子供達は6人が売られた子供で、
後の2人は孤児だった。
いずれも帰る場所も行く宛も無いという事だった。
犯罪奴隷は衛兵隊に引き渡すとして、
残るのは子供8人と女2人。
ここに留まるとしても、
リーダーは必要だ。
しかし、この面子を見る限り仕切れそうなのが居ない。
どーしたもんか。
「うう、あ、また漏らしちまった。うぅぐすっ」
バンジスが目を覚ました。
自分の粗相を見て泣いてる。
こいつ哀れだなぁ。
「なぁルース、こいつどうする?このままだとなんか弱い者虐めしてるみたいで嫌なんだけどさぁ」
「ふん、同感だにゃ」
「しかしだ、おいバンジス」
「ひっは、はい、ぐずっ」
きったねー顔だな。
「お前はそこの、俺の娘のお姉さんを攫って酷い事をしたんだぞ」
「はっそうなんですね!あ、あなた様の姉上がいたんですね!申し訳ありませんでした!」
地面に這いつくばってベルに全力で謝罪しているバンジス。
もう哀れみしか感じない。
「もーいーよ、許してあげるの」
ベルもそんなバンジスを見ていたたまれなくなったようだ。
考えてみたら、
バンジスが捕まったのは去年の事だ。
一年近く拷問されていたとしたらどうだろう。
この怯えた態度もわからなくもないし、
思い出して気絶するのも頷ける気がする。
どんだけ酷いことされたのか考えたくもないがね。
「許していただけるんですか?あ、ありがとうございます!うわーん、おーいおーい」
「ルース、永遠の命の事でお前と話したの覚えてるか?」
「うむ、覚えてるにゃ」
「こいつもさぁ、この先愛する人が出来ても、必ず先立たれるんだよな。もぅ充分罰を受けてるし、この先の事考えると、許してやって良い気がするよ」
「ふん、いざとにゃれば、私が滅ぼしてやるにゃ」
「それが良いな」
これでも元は子爵で、街を収めてたんだからなぁ。
ん?
収める?
「バンジス、もう責めたりしないから泣くのやめろよ」
「う、うぅ、はい…ひっく、ありがとうございます」
「お前さぁ、ここに残ってみんなを仕切る気はないか?」
「「「えっ?!」」」
ルース以外、みんなが俺の発言に驚いている。
「だってさぁ、ここのリーダーになる適任者って、元貴族のバンジスしか居なそうだからさぁ、仮にも街を収めてた一人だし」
「ゆ、許されたばかりか、そのような大役は、私にはお受けする資格はありません!私は大罪人です、皆がご納得はしませんです」
「みんなはどう思う?」
「ベルは、大ちゃんの考えだから良いと思うの」
「あたしも、この人が何したか知らないけど、今のこれ見たら充分反省してるみたいだし、良いんじゃない?」
「ふんっまた悪さしたにゃら、何度も殺してやるまでにゃ」
「だそうだ。反省してるなら、ここを見事に仕切ってみせろよ。これは伯爵様の命令だ」
「は、伯爵様?」
「そ、俺はこれから王都に行って伯爵を叙爵するんだ。ギオールの街は、すでにサクラの街って名前に変わってるんだぜ」
「そ、そうでしたか!ご無礼いたしました!」
「で?やるのやらないの?反省してるんだよな?」
「や、やります」
「叙爵式終わったら、またここに寄る。その時におかしな事になってたら、わかるよな?」
「は、はい!分かりました!全力で頑張ります!!」
さて、リーダーは決まった。
次は盗賊団だな。
こいつらがいないとここを守れない。
俺はギースとガースの前に行った。
二人共ものすごく大人しくなっている。
「ここまで話は聞こえたか?」
「へぃ、八割がた聞こえてました」
「ずいぶん大人しくなったな」
「俺達は、強い者に憧れてるんでさ。もぅあんたに逆らう気も無いし、寧ろ俺達はあんたに付いて行きてぇと思ってる」
「えっ?まじで?!俺お前達の兄弟殺してるんだぞ?憎いだろ普通」
ベルが俺の横に来てくれた。
「いや、それは俺達があんたに歯向かった報いだから、恨んじゃいねぇです。寧ろあんな呆気なくやられて、情けねぇです。だからあんたに従って、さらに強くなりてぇ。なぁそうだろ?ギース」
俺と話してたのはガースの方か。
「あぁ、ガースの言う通りだ、あんたの圧倒的な強さに惚れた。しかも慈悲深いところも俺は気に入ったぜ。皆殺しにされると思ってたからな」
俺はベルに視線を向ける。
『嘘は言ってないの。本心だと思うの』
念話が返ってきた。
さすがベルだ、聞きたい事を答えてくれた。
うちの子最高だぜ。
「お前たちの気持ちは分かったよ。でも、俺についてくる事は出来ない。ここであのバンジスって元子爵に従って欲しいんだ。」
「あんたの命令なら従う、でも他の奴の命令ならごめんだぜ」
「お前たちはそもそも犯罪者だろ?衛兵隊に突き出す事も考えたが、今度はお前達が彼等に従って罪滅ぼししろ。奴隷になれとは言わないが、お前達が彼等を守れ。命令だ」
「…分かった、いや、分かりやした親分」
親分て、どこのヤクザだよ。
「もぅ悪さすんなよ。寧ろ善行をして世間に貢献しろ。あと、念の為お前達と俺で契約する。構わないか?」
「もちろんだ親分、それで信用されるなら願ってもねぇ」
「なら縄を解いてやるから、契約の石版を持って来い」
「へい!」
ガースは石版を取りに行った。
やっぱり契約の石版持ってたんだな。
盗賊なら持ってるんじゃないかと思ったが、
当たりだったようだ。
そのあいだに盗賊達を解放して、
牢屋に入れていた者達に謝罪をさせた。
残った盗賊達は10人、女5男5だ。
フィーリングカップルが出来そうだ。
盗賊達に怯えている子供達も、
やがて慣れるだろう事を祈ろう。
ガースが持ってきた契約の石版で、
俺とギース、ガースは契約をした。
これで命令には逆らえなくなった。
「ちなみに俺の魔力量は青だから、上書きして解放は無理だぞ」
脅したつもりで言ったが、
「「青?!すげー!さすが親分だ!!」」
と絶賛されてしまった。
それからバンジスとも契約をして、
とりあえずはひと段落かなぁ。
まだいろいろ確認したい事とかあるけど、
ひとまず車を取ってくる事にした。
腹も減ったし、
車取ってきたら飯にしよう。
昭和のTV番組で、
「フィーリングカップル5対5」という番組がありました。
ダイサクは昭和生まれなので、
表現が古いのです。
【読者の皆さま】
いつも読んでいただきありがとうございます。
小心者の私に、
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白村
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