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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第二部 旅路編
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第五十七話  魔剣


朝目が覚めた。


宿屋の天井が見える。


左腕にはラスティの頭が乗っている。

ラスティは俺に抱きついて寝てる。

愛しい、愛し過ぎる。

昨夜の事を思い出してニヤけてしまう。

超可愛かった。


ふと右側に熱を感じる。


ベルがいつものポジションで俺に抱きついて寝てた。

昨夜は結局、『寝る時は一緒の部屋が良い』と言ったベルの言葉を思い出して、

ベルとルースが眠る部屋に戻り、

ラスティと二人、ベルとルースが眠るベッドにもう一つのベッドをくっつけて眠りについた。

 

ベルはいつのまにかベッドを移って来たんだな。

こっちも可愛い、可愛すぎる。


嗚呼、なんて幸せな朝なんだろう。

日本にいた頃を考えると、

こんな朝が迎えられるなんて夢のようだ。


「夢だったらどうしよ」


「「ぷっ」」

「うふふふ」

「ほんとだ、ふふふふ」


あ、また声に出してたか。


「やぁおはようラスティ、ベル」

「おはようなの」

「おはよう」


「ラスティも寝たふりしてたの?」

「うん、ベルちゃんに、朝は面白い事があるから、寝たふりしてると良いよって教えて貰ったの、うふふふ、起きてるのに寝言言う人初めて、あはは」


「ベルはね、この面白い朝を共有したかったんだぁ」


「俺と共有してたじゃぁないか」


「えー、そう言うのとはまた別だよぉ。ねぇー」

「ねぇー」


美少女二人は意気投合していた。

萌え萌えだった。


俺達は身支度を始めた。


本日の予定は食料の調達だ。


予定より出発が3日遅れたが、通常10日かかる最初の宿場町まで6日で着いている。

それを踏まえると、とりあえず急がなくても大丈夫だ。


そう言う訳で、観光という訳ではないが、いくつか街道が集まるこの町をゆっくり散策しても良いだろう。


あとは、俺達はどうやら、かなり目立つみたいだ。

服装は貴族みたいな派手な格好ではないが、

それなりに良い服を着ている。


それだけなら良いのだが、

問題は俺以外の3人だ。


ラスティ、ベル、ルースもだ。

3人ともかなりの美少女だから、

思った以上に目を引くようだ。

そしてそれを連れた俺は、

男達から見たらムカつく存在のようだ。

何気に俺も、

自分で言うのもなんだが、

日本にいる時はイケメンで通っていた。

何故かモテなかったがね。


そんなイケメンと美少女軍団は、

どうしたって目を引く。


と言う訳で、

ちょいと変装と言う訳ではないが、

冒険者風の装いでカモフラージュしようと思う。


やって来たのは武器と防具の店。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


出て来た店員は、獣族の少女だった。

何の獣族だ?

犬?

いや狼か?


「えーっと、防具から揃えたいんだけど」


「冒険者にでもなるのか?金持ちのボンボンが怪我するからやめた方が良いと、内心思う」


と、獣族の店員が言う。


「今内心と言ったよね?声に出てるぞ」


「そんな訳ないです」


なんだろうこの面白い生き物は。


「んー」


回答に困ってるとラスティが話しかけて来た。


「ねぇダイサク、私とベルちゃんならローブとウィッチハットで良いんじゃない?」


「あ、確かに、でもブーツとかシャツとか、それなりの着てた方がカッコ良いでしょ」


「大ちゃん冒険者になるの?」


「いや、今のままだと目立つからさぁ」


「冷やかしなら帰って欲しいと、内心思う」


「だから声に出てるってば。まぁ良いけど、君のセンスで良いの見繕ってよ」


「めんどくさいけど、選んでやろうかな。どうせ金持ちのボンボンだから、適当に選んでもわからないだろ。と内心思う」


「適当じゃ困るが、よろしく頼むよ」


「しょうがない、お前達は剣士か?魔法使いか?」


「俺は…なんだと思う?ラスティ」


「ダイサクの魔力量を考えると、大魔法使いなんだけど、変わった剣持ってなかった?」


「刀の事か。んじゃ魔法剣士だな」


「ベルとラスティお姉ちゃんは魔法使い!」


「お前、魔力量がどうとか大魔法使いとか、ボンボンが憧れるのは勝手だけど、怪我するからやめとけ、と内心思う」


話しかけて来たと思うんだが、

やべ、マジで面白え店員だ。


そう言えばルースは、

黒ずくめの格好だが、

服はどうしてるんだろう。


「ルースはどうする?」


「私は要らにゃい、必要にゃら変えられるにゃ」


「ところで、お前もう仔猫にはならないのか?」


ルースはラスティとの会話の為に猫髭少女になったままだった。


「うむ、もうこにょままでにゃじんだにょだ」


「そうか、じゃぁ店員さん頼みます」


「こっち」


俺達は店員さんについて行き、

あれこれと見繕って貰った。


それぞれに着替えて、

ラスティとベルは自前のローブとウィッチハットを被る。


「おお、二人ともすげー似合ってるね!」


「私が見繕ったんだから当然!と内心思う」


「適当にやるんじゃなかったのかよ!」


「大ちゃんも似合ってるの」

「うん、ダイサク素敵」


でへへへ


「ところでベル、その短剣は豪華過ぎじゃないかな」


ベルはマミちゃんに貰った短剣を下げていた。


「はっ、そ、それは?!王族の紋章?!と内心思う!」


もはや口癖なんだろうな、

ほっとこう。


「これ目立つから、短剣も見繕ってくれ」


「ベルこれお気に入りなんだけどなぁ」


「なんか紋章が王族の物らしいね。それはマミちゃんに貰った特別な物だから、大事にしまっとこうか、新しいの選ぶと良いよ」


「うん」


ベルが短剣を選んでる間に、

俺は鍛冶屋に作って貰った日本刀もどきを腰に下げる。


「前から思ってたんだけど、その剣てなんで曲がってるの?」


ラスティが聞いてきた。


「これは刀と言って、俺の故郷の伝統的な剣を真似て作ったんだ」


そう言って数歩下がって刀を抜いて構えた。


「なんか、切れそうな剣ね」


「うん、包丁より切れると思うよ、普通の剣と違って、鋭く研いであるからね」


そう言って俺は刀を納めた。


西洋の剣の多くは鋳造(ちゅうぞう)で造られる。

そのせいかもしれないが、

鍛造(たんぞう)で鍛えて作る日本刀とは違い、

剣には刃は付いていない。


切ると言うより、ぶっ叩くと言う表現が合うと思う。

多分だが、そういう使い方をするから、

刀身の幅が広いのではないだろうか。


中にはレイピアなどの例外もあるが、

基本的に剣は切れない物なのだ。


だから剥き出しで持つ者が多い。

鞘の無い剣は切れないと見て良いだろう。


そして鋳造で造られた剣は脆い。

横っ腹に一撃入れるとよく折れる。

というか、割れると言う表現が正しいだろうな。


「それ凄い剣だな。見せて欲しい。と内心思う」


いつのまにか戻ってきた店員さんが、目をキラキラさせてる。


むむ、ラスティと同じ匂いを感じる。


ラスティは魔法道具オタクだ。

この店員さんは剣オタクなのかな?


「良いですよ。切れ味が良いので、刃にはくれぐれも注意してね」


そう言って腰から刀を外して店員さんに渡す。


「凄い…初めて見るのだ…」


鞘から少し刀を抜いて眺める店員さんは、

実にうっとりしていた。


俺は横のラスティを見てちょっと笑った。


「な、なに?何かおかしい?」


「だって、ベルが短杖選んだ時、ラスティも同じ顔してたよ」


「えっ?!ほんとに?!それやばいわ。」


「これ欲しい、と内心思う」


「それはこの世で一本しかない一振りだけど、業物では無いよ、なにせ俺が研いだやつだしな」


「えっ?!そうなのか?お前凄い奴なのか?」


「は?俺?俺は凄くないし」


「大ちゃん凄いよ」


「私もダイサクは凄いと思う」


「おいおい、誤解されるから変な事言わない」


これ以上ここにいてもしょうがないので、さっさと刀を返して貰い、会計を済ませて出てきた。


俺達はルース以外着替えている。

ラスティとベルはウィッチハットを被っているので顔も目立たなくなった。

俺も冒険者風になったので、

前ほどは目立たないだろう。


さて、食料の買い出しに行こう。


俺達は市場に向かった。


市場には出店もあって、

結構賑わっている。


食材だけでなく、

武器や防具、魔法道具なども並べられている。

まるで出店のイベントのようだ。


「そこの冒険者のお兄さん、変わったレイピア下げてるねぇ、魔剣には興味ないかい?」


「魔剣?」


「魔力を纏わせて切ったり、魔力を込めればにゃんらかにょ魔法効果がある剣にゃ。まぁインチキじゃにゃければにょ話しにゃ」


「おや、獣族のお嬢ちゃん詳しいね。うちのはインチキじゃないよ」


「へぇ見るだけ見ても良いかい?」

「ベルも見てみたいの」

「魔剣…」


おっとラスティさん、

目の色が変わってます。


魔剣て魔法道具に分類されるのだろうか?


「見るだけ見ていきなよ」


店主はそう言って、

魔剣を取り出して見せた。


魔剣と言った剣は短剣だった。


なんの変哲もない短剣。


「ベル、分かるか?」


「んー、よくわかんないなぁ」


「ラスティは?」


「んー、期待した割にはなんかがっかり」


「ルースは?」


「かすかに魔力の波動らしきもにょを感じるくらいだにゃ。魔剣と言えば魔剣にゃのかにゃ」


「店主、期待はずれだ」


「えー?!これは確かに魔剣なんですよぉ、あなた達に見る目が無いんじゃないんですかぁ?!」


「俺はともかく、この3人の目は確かだぞ。それよりほんとに魔剣なのか?」


「大ちゃん、嘘は言ってないみたいなの」


「む、ベルがそう言うなら嘘じゃないか」


「ちょっと私に見せて下さい」


ラスティはそう言うと短剣を手に取って見る。


「あ!これは…」


「何か分かった?」


「店主、これおいくらですか?」


「うん、魔剣は魔剣なんだけど、実はよく分からないんだよね。安くしとくから買ってよ。1000マネで良いからさ」


「売れ残りじゃねぇか。ラスティ買うかい?ラスティは短剣持ってなかったし、ちょうど良いんじゃない?」


「…買います」


短剣を買って、

店から離れたところでラスティが話し出す。


「えっと、多分この短剣。杖みたいに魔法の触媒で使うんだと思う。こんな短剣凄く珍しいよ」


「ふん、にゃるほど。だとするとその剣には魔法を封じ込める使い方も出来るかも知れにゃいにゃ」


「魔法を封じ込める?」


「そうなの、例えば氷の攻撃魔法をこの短剣に放つと、この短剣はそれを吸収して封じ込める効果があるはず。そして封じ込めた魔法は、逆に剣から放つ事ができるわけ」


「ほほぉ、それは凄いのかな?」


「あぁダイサクは異世界人だからピンとこないんだね。使い方によっては凄いんだよ。でも、何が凄いって、こう言う魔剣は短剣じゃなくて、大きな剣にしか無いのが普通のはずなんだけど、こんな小さな短剣でそれが出来るのは凄いと思う。そんな凄い短剣がたったの1000マネだなんて」


あ、ラスティがウットリしてる。

そんなラスティも可愛いんだが、

こっちに帰ってきてください。


「掘り出し物だった訳か。ラッキーだな。じゃそれはラスティが使ってて」


「えっ?良いの?」


「もちろん、俺とベルは剣持ってるからね。これでラスティも腰に下げられるね」


「じゃぁ、この短剣に名前付けちゃおうかな」


ラスティさん、厨二病ですか?





【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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