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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第二部 旅路編
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第五十六話 宿場町

2023年 みなさん明けましておめでとうございます。


みなさまにとってご多幸の一年である事をお祈り申し上げます。



龍暦1847年12月13日


サクラの街を出て6日目。

俺達の旅は順調に進んでいる。

車は最初の宿場町に着いていた。

通常なら10日ほどの道のりを、

車では6日で来てしまった。


飛ばしてる訳では無いが、

信号も無く、当然渋滞も無い道のりは、

とても快適なドライブ。

おまけに久々に聴くアニソンと、

可愛い奥さんが横に居るってだけでテンション上げ上げで、ついついアクセスも軽やかになってしまう。


まあ、街道といっても舗装されてる訳ではないので、その辺りは慎重に考えてはいるがね。


今は宿場町の入り口に来て、

町に入る確認をするところだ。


「こんなに早く着くなんて、びっくり」


「途中でたくさん馬車抜いたの、みんなのびっくりした顔が面白かった」


そんな会話の横で、

俺は入り口の衛兵さんと話をしていた。


「子爵様でいらっしゃいますか、王都に行くのですか?」


「あーはい、そうです」


ほんとは伯爵だが、

いちいち説明が面倒なので適当に流す事にした。


「それにしても、この馬車?なのですか?初めて見ます」


「世界で初めての乗り物ですからね。名付けて、魔道荷馬車マジックワゴンです」


「ほぉ素晴らしいですね」


いつまでもまじまじと見てくる衛兵さん。


「あの、通っても?」


「あ!はい!失礼しました、どうぞお通り下さい。」


つい見入っていた衛兵さんの焦った顔が面白かった。


宿場町はいくつも街道が交わる場所に多く存在する。

行商人が行き交い、

旅人が行き交う。

それなりに人も多く、獣族や冒険者が目立つ。

俺達はとりあえず宿を探す。

一応貴族なので、

それなりに高級な宿を探した。


「これはこれは子爵様、ようこそいらっしゃいました。」


出迎えたのは宿屋の女将だ。

さほどの美人ではないが、

身成を気にしているのか、

綺麗な服装だ。


「お世話になります。一応4人なんですが、部屋ありますか?」


ルースは仔猫では無く、

ベルの同い年くらいの猫髭少女のままだ。


「これはこれは、可愛らしい女の子ですねぇ、お連れの方も美しい、羨ましいですね」


ラスティは褒められてちょっと照れてるようだ。

ベルはいつものように俯き加減。

ルースは偉そうだ。


「申し訳ありませんが、今は大部屋が空いてなくて、2人部屋を二つになってしまいますが、構いませんでしょうか」


「良いかい?」


俺はラスティとベルに承諾を求める。

二人とも微妙な顔をした。


まぁ二人部屋に全員泊まっても問題ないか。

ベルも小さいし、ルースは仔猫に戻れば良い。


でも一応二間取っておくかな。


「それで構いません、よろしくお願いします。」


「ではお手数ですがこちらに記入をお願いいたします」


出されたのは宿帳だった。

俺が名前を書き込むと女将が反応した。


「サクラ・ダイサク様…。サクラの街の新しい領主様ですか?」


「ああ、そうだよ」


「これは大変失礼しました。伯爵様でしたか」


女将の顔は真剣だった。

恐縮して頭を下げてくる。

どうやら知らずに子爵と言ってしまった事に恐縮してるようだが、

ろくに説明もしないで肯定も否定もしなかったこちらが悪い。


「ここまで知れ渡ってるんですね。このプレートは以前の子爵の物を仮に使っているんですよ。紛らわしくてすいません」


女将はきょとんとして、

今までにない笑顔になった。


「ふふふ、伯爵様はとても気さくな方なのですね。他の貴族様達とは大違いです。安心しました」


「まぁ異世界人ですから、こちらの世界ではどうか分かりませんが、気軽に声をかけてください」


「ありがとうございます、お噂は本当なのですね。それではお荷物を運びますね」


案内された部屋に通される。

なかなか良い部屋だが、

大工としては内装が気になる所である。

どこに行ってもそうだが、

建物の内装や外装などを職人目線で見てしまう。

職業病のような物だな。


「寝る場所どうするの?ベル一人はいやだなぁ」


ベルは寂しそうにそう言ってきた。

今までずっと一緒だったから、

急に離れるのは嫌なんだろう。

それもそうだが、

いちお俺とラスティは新婚だ。


結婚してから何日か経つが、

いわゆる『初夜』はまだだった。


でもまぁ仕方ない。


「ベル、一応2部屋取ったけど、寝る時はみんな一緒で良いでしょ。ベッドくっつけたら広いよ」


若干ラスティが膨れた気がするが、

後でちゃんと埋め合わせしよう。

俺だって二人きりになりたいのだ。


「ラスティお姉ちゃん良いの?」


ベルがラスティに気を使って聞いている

膨れていたラスティだったが、

ベルに言われて笑顔で答えた。


「うん、良いよベルちゃん。ダイサクさん独り占め出来ないもんね」


そう言われて、ベルはちょっと間を置いて、


「ありがとう、じゃぁ『寝る時は』一緒だよ!」


なんだか間があって意味深に聞こえたが、

まぁ気のせいだろう。


「んじゃ美味いもんでも食いに行こうか。ラスティ腹減ったでしょ」


「うん!食べる食べる!」


旅の途中は、収納魔法で食材をほぼ無限に持ち歩く事が出来るとは言え、さすがに毎回ラスティの腹を満たすまでは食べていられない。

とりあえずラスティ一人で大人5人前くらいの量で我慢して貰っていた。


ここは宿場町、思う存分食い溜めして貰おう。


女将にお勧めの店を聞き出し、

いざ食い倒れツアーだ。


外を歩いていると、

「おい見ろよすげー美人」

「貴族様か?男も男前だな」

「凄い可愛い子よ!」


などと聞こえてくる


俺達はだいぶ目立つようだ。


店に入ってもそれは同じで、

「あの四人美形じゃね?」

などと聞こえてくる。


しかしラスティが食べ始めると、

また違った声が聞こえてくる。


「どんだけ食うんだ?!」

「大食い魔女だ」

「あのちっせー獣族もすげぇ」

などと聞こえてくる。


おい、ルース、お前はムキにならなくて良いんだぞ。


忘れがちだが、ルースは俺とベルの魔力を食べる為に使い魔の契約をしている。

人間の食事は基本的には必要としていないのだ。


そんなこんなで、目立ちつつも食事を済ませ、

宿屋に向かったのだが、その途中の道でルースが言った。


「ダイサク、敵意が来るにゃ」


「そうなのか?」


けっこう人通りも多いと思うのだが…。


サクラの街はかなり治安が良いと聞いていた。

旅に出るなら、盗賊や魔物には十分注意するように言われていた。


早速やってきたと言う訳だ。


「強そうか?」


「…んにゃ、雑魚にゃ。3人だにゃ」


「ダイサクさん、大丈夫?」


ラスティが不安気に聞いてきた。


「ん?問題ないよ。ルースが雑魚って言うんだからさ、俺の後ろにいて」


ベルはそんなラスティの手を握り、

ラスティに向かって微笑んだ。


「ラスティお姉ちゃん、大丈夫だよ」


天使の笑顔だ。


「おい」


あら、早速来たね。


「ルース、なんか臭くないか?」


「そうにゃぁ、にゃんか臭って来たにゃ」


ルース、ノリが良いね。


「おい!」


「うわっますますクセー!便所の匂いが口から出てるぞ!」


俺は鼻を摘んで、

声をかけてきた男の口を見た。


「てめぇふざけた態度とりやがって」


「そうだぞこの野郎、俺達は闇の城だぞこの野郎」


「娘を置いてけ」


男達は人目も気にせずに脅してくる。


「闇の城?病んだ人の間違いじゃね?口くせーし」


いつのまにか出来たギャラリーから笑い声が聞こえる。


「てめー!闇の城知らねーのか?!あ?!」


「知ってるも何もなぁ、ギオール支部潰したの俺達だし、なぁルース」


「うむ」


「えっ!?ほんと?」


とは、ラスティだった。

ラスティは闇の城との一件を知らない。

それを聞いて、何か勘違いした男が言った。


「はっ!ハッタリじゃねぇか!娘をよこしやがれ!」


男達は一斉に襲い掛かって来たが、


遅い。


全員足払いで転ばしてやった。


「な!?」


「なぁ、やる気ないなら失せろ。めんどくさい」


何が起きたかわからない顔をしてる男達に、

俺は上から言ってやった。


「ち、ちきしょう!!」


一人の男が立ち上がりベルに向かって手を伸ばす。


「お前は人質だぁ!…え?」


男は宙を一回転して地面に叩きつけられた。


ベルの合気道が見事に決まった。


ラスティもビックリして見ている。


「ベルちゃん強〜い」


俺は立ち上がるのも忘れて唖然としているリーダーらしい男の襟首を掴んで、

片手でそのまま持ち上げてやった。

『魔筋力強化マジックドーピング』発動だ。


男は俺の手首を両手で掴み、

浮いた両足をばたつかせている。


「ぐえっウソだろぉっ?!」


「次は殺す。他に仲間とか知り合いが居たら伝えろ。俺達に手を出したら皆殺しにてやる。俺達にはその力がある。分かったか?あと二度と世間様に迷惑かけんな」


「わ、分かった、ご、ごめんなさい、すいません」


俺はパッと手を離してやった。


無様に尻餅を着いた男はそのまま逃げて行った。

他2名も後を追って路地裏に消えて行った。


ギャラリーから拍手が起こる。


て言うか、ただ見てないで助けるとかないのかね。

もっとも助けのスキも無かったとは思うが。


「ダイサクさんかっこいい」


ラスティが羨望の眼差しで俺を見ている。


へへへ。


宿屋に着いた。


先にベルが湯浴みして、次に俺が上がって来ると、既にベルは眠っていた。

ルースも仔猫姿ではなく、

猫髭少女のまま、ベルと一緒のベッドで眠ってしまっていた。


珍しい事もあるもんだ。


俺はもう一つのベッドに座り、

二人の寝顔を見ながらラスティが湯浴みから上がるのを待つ。


ベルの寝顔は相変わらず超可愛い。

ルースもこうして見ると、

美少女ではある。

猫髭がちょいと残念だけど、

見る人によっては、

この猫髭も可愛いと思うのかな?


ラスティが上がって来た。


「二人とも疲れて寝ちゃったね」


「ベルはともかく、ルースは食い過ぎだろ」


俺達は笑い合った。


二人きりのこの時間。

もしかしたらベルは気を使って先に寝たのかも知れない。


ならば、この時間、有効に使わせていただきます。


俺とラスティは、付き合って僅か2日目で婚姻。

新婚とは言え、まだまだぎこちない二人。


「ラスティ、初めて会った時の事覚えてる?」

ラスティは自然に俺の隣に座って寄り添って来る。

頬が赤い。


「うん…」

「本を買おうとしたら、あれ、見える魔法だっけ?あの時のラスティの顔」


ふふふと笑うと、


「だって、あんなの見た事なかったんだもん」


「杖の時もさぁ」


「もぅ恥ずかしいからやめて」


「ははは、でも、今思えばあの時からラスティが気になってたかも」


「ほんと?あ、私も、あの時から多分好きだったと思う」


「まじで?!でもさぁ、食事誘っても断られてたから、脈は無いんだと思ってたよ」


「だって、私たくさん食べるから、嫌われるかと思って。」


「いやいや、まさか、こんな美少女が大食いなんてギャップ萌えだし、俺の方だって異世界人なんだ。気味悪がられるかも知れないって思ってたよ」


「ギャップ萌えが何か分からないけど、異世界人だなんて素敵だと思った。むしろ伯爵様になると聞いた時の方が、違う世界に行っちゃったと思って諦めたよ」


「そうなんだ!あぁ分かってればもっとアタックしたのに。でも服を贈る意味を知らなかったから、結局はフラれてたかもね。

俺が伯爵だなんて、まだ実感ないなぁ。ラスティは伯爵夫人だぜ。実感ある?」


「ない」


俺達は笑い合った。


「うーん……むにゃむにゃ……」


おっと、ベルを起こしちゃうかな。


俺とラスティは、借りているもう一つの部屋に移動し、

二人きりになって話をつづけた。


他愛のない話を二人夢中になって話した。

 

この感じは何年ぶりだろうか。


日本でも女性と付き合った事はある、

付き合った初めの頃は、

よくこうやって話し続けものだ。

どんな会話でも、好きな人と話すのは楽しい。


どれくらい話ただろうか。

だいぶ夜も更けてきた。

 

「そろそろ寝ようか」

「うん」


俺はランプの灯を消す。


月明かりに照らされたラスティは美しかった。


そうして、俺とラスティは、

結婚7日目の夜に『初夜』を迎えた。








【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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