第五十二話 帰らないラスティ
11月に入った。
ラスティが帰って来るのは今月の予定だ。
魔法道具屋に行って、
何日頃になるか聞いてみよう。
俺は魔法道具屋に行き、
扉を開ける。
手にはプレゼントを持っている。
11月に入ってすぐラスティがいるとは限らないが、念のためだ。
わずかばかり期待したが、
やはりいたのは店長のおやじだった。
「あ、こ、これは領主様。この間は大変なご無礼をして、してしまうまで、も、申し訳ありません」
しどろもどろの店長。
「あーもーいーよ、それよりラスティって、何日頃に帰って来るかわかります?」
「そ、それが、11月に戻るとだけ手紙に書いてあっただけでして、何日頃になるのか分からないのです」
えー、そうなんだ。
「そうなんですか…。分かりました。また来ます」
俺は魔法道具屋を出た。
まぁ今日は居ないとは思ったが、
何日頃かもわからないとは。
なんだろう、この胸騒ぎは。
「大ちゃん大丈夫?まだ早いんだよ」
不安げな顔をしている俺に、
ベルが声をかけてくれる。
「そうだよね。ありがとうベル」
☀︎✴︎
次の日の夕方、
魔法道具屋に行った。
まぁ、まだだよね。
また次の日も、
その次の日も。
そして2週間が経った。
夕方、もういつもの時間。
魔法道具屋の前にいた。
すると扉が開いた。
中から店長が出てきた。
「領主様、今日も帰って来てません」
「そうですか、ありがとう」
項垂れて帰ろうとする俺に、
店長が声をかけて来た。
「あの、領主様、俺なんかがこんな事言ったら無礼かも知れませんが、いや!無礼を承知で言います!あんた男だ!俺は領主様の一途に惚れやした!今晩付き合って下さい!」
「えーーー?!?!、ごめん店長、俺にそう言う趣味は無い!」
道ゆく人達が俺達を見る。
「領主様ですよね?」
「異世界人の趣味でしょうか?」
「まさか男色とは…」
そんな声が聞こえてきた。
そもそも俺に言いよって来たのは店長だろう?
「ちょっとまてーい!俺が好きなのはラスティだ!店長ではなーい!」
周りに聞こえる勢いで言ってしまった。
「あ、しまった」
「おおぉ」
と言う声が聞こえて、
何故か拍手される。
ベルも拍手してた。
解せぬ。
「あ、あの領主様。申し訳ありあせん。今晩、一杯どうですか?と言う意味です、俺にも女房子供居ますです」
店長が申し訳なさそうに言ってきた。
「そう言う事はさぁ、ちゃんと言ってよ」
俺は今はお忍び。
フードを被ってはいるが、
ベルとルースを連れている時点で、
街のみんな、特に商店街のみんなには、
俺が領主である事はバレバレだ。
それでも商店街では暗黙の了解で、知らん顔してくれている。
会話する時もなるべく素知らぬ感じでいてくれる。
俺もそれが良いのだ。
なので、魔法道具屋の店長も、
そんな暗黙の了解でいるのだろう。
気安くされるのはありがたい。
俺は焼き肉食べ放題店に、
店長と一緒に入った。
酒と言えば焼き肉だ。
そこで、店長といろいろ話した。
主にラスティの事を話すのが多かったが、
第一印象の悪かった店長だったが、
意外に良い奴だった。
「へー、この食べ放題って異世界にある物なんですねぇ、ラスティオが喜んでましたよ。いくら食っても300マネだってね。」
「ほんとですか?それは嬉しい、この店はラスティの為に考案したようなものだから」
店長は驚いた顔をしていた。
そして真面目な顔になった。
「旦那、ラスティオをお願いします。あの子はちょっと変わった子ですが、ほんとに良い娘なんでさぁ、何度も縁談があったのに食うだけで嫌われちまって、でもいつも笑って言うんです。財布と心の小さい男には用はねぇって。旦那には本当に失礼した。またラスティオが傷付くかと思っちまって、ついあんな事言っちまいやした、旦那ならラスティオも幸せになれるはずだ。頼みます」
言われるまでもない。
でもね、ラスティが帰って来ないと話も出来ないんだよ。
それにしても、店長。
あんた良い奴じゃないか。
「俺がフラれない事を祈ってて下さい。」
「あのね、店長さん、ラスティお姉ちゃんと大ちゃんほんとは仲良しなの。あたしもラスティお姉ちゃん大好きなの。早く帰って来て欲しい」
「ベルさん、あんたも良い子だなぁ」
こうしてその日は終わった。
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切ない、寂しい、逢いたい。
期待と不安が入り混じる。
しかし、日が経つにつれて、
不安がどんどん大きくなる。
ほんとはこのまま帰って来ないんじゃないか?
もう逢えないんじゃないか?
街の名前が俺の名前になった。
もうそんな街には居たくないんじゃないか?
そこまで嫌われてしまったのではないだろうか?
不安が思考をマイナスに導く。
今日こそはと、
今までそう思ってた。
必ず帰って来てくれる。
そう信じてた。
そして11月30日
とうとうラスティは帰って来なかった。
魔法道具屋からの帰り道。
ベルと手を繋いで歩いてた。
ベルも元気がない。
きっとベルもラスティに会いたいんだろう。
俺達がサクラの街を発つまであと5日。
せめて一目でも逢いたい。
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白村
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