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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
50/87

第五十話 新しい服

10月13日


ラスティが立っている。


「やぁラスティ、愛してるよ」


ラスティは後ろを向いている。


「サクラ様…。」


後ろを向いたまま答えている。


「ラスティ、ベルも愛してるの」


ベルもラスティに告白している。


「ラスティごめんな、こっちを向いてくれないか」


「はい…」


ラスティはゆっくり振り向いてくれる。


「ラスティ、早く顔を見せてくれ」


「にゃ」


えっ?!

振り向いたラスティは、ルースだった。



目が覚めた。


屋敷の天井から、ベルの寝顔、ルースの塊りを見る。

いつもの朝だ。


夢を見てたんだな。

ラスティがルースとは。


これいかに。


昨日ベルに諭されてから、

寝る時にラスティに何て言おうか考えていた。

考えながら寝てしまったようだ。


まぁ俺って寝つき良いからなぁ。


今日は、ラスティの魔法道具屋に行こう。

それから、何て言えば良い?

何て切り出す?


やぁご機嫌よう。


やぁ愛してるよ!


ねぇねぇ何してるの?


「そりゃナンパだろ」


自分の考えに自分でツッコミを入れた。


「くくくく…大ちゃん可笑しいの」


あ、


ベルを見ると小刻みに震えている。


いつもの事ながら、

いつのまにか起きては俺の独り言を待ってるベル。


もうこれは朝の恒例だな。


「おはよう大ちゃん。ナンパって何?」


「おはようベル。ナンパってね、男が女の子に街中で声をかけてお付き合いをお願いしたりする事だよ。」


「ふ〜ん、変なの」


ルースが起きて床に降りた。


「ルースおはようなの」

「おはようルース」

『うむ』


「お前もたまにはおはようくらい言えよ」


『ふん、気が向いたらな、人間の挨拶は面倒だ』


「まぁお前はそうだよなぁ」


俺達は身支度して食堂に行く。

いつものコーヒーをいただきながら考える。


むーん、

ラスティに何て言おう。


『王都に行って、それから旅をするから、下手したら10年以上は帰って来れないかも知れないので、その前に謝りに来ました。ごめんなさい。でも好きです。王都に一緒に行って下さい』


ていう感じかな?

軽いかな?


ま、まぁ流れはこんな感じで良いかな。


俺は無言で難しい顔をしていたんだろう。

セバスチャンが声を掛けてきた。


「サクラ様、どうかされましたか?今朝は様子が違うようですが」


「ん?あぁ、ちょっと考え事をね」


「大ちゃんね、ラスティお姉ちゃんに会いに行くの」


「あ、こらベル!」


「ほほう、あの大食い魔女様ですか、あの方は食べる量は計り知れませんが、器量は良いですね。」


「あら、恋の話ですか?」


ロッテンマイヤーさん食い付いて来ないの。


「意中の女性を口説くには、先ずは服を贈る事ですね、『貴方を包みたい』と言う素敵な意味があります」


「いや、もう贈ったんですが、それが元で拗れてしまって」


「おや、何故それで拗れるのでしょう」


あぁもう仕方ない。

俺は2人に事の顛末を話して聞かせた。

それで今日にでも謝りに行こうと思ってるとも伝えた。


「なるほど、誤解を招いている訳ですね、ですが、問題はもうありませんよね?サクラ様が異世界人と言うのはもう知られてる訳ですから、あとは会ってお互いの気持ちを確かめるだけかと」


「そうですわねぇ、私なら何も知らないサクラ様に対してとった自分の態度が許せないですわね」


なるほど、大人の女性の意見は貴重だ。


「あとは、男らしく攫って欲しいかと。ねぇセバスチャン」


「あ、おほん、ごほん。ま、まぁサクラ様、応援しておりますぞ」


この二人もやはり夫婦なんだな。

ちょっと羨ましく思った。


男らしく攫う…か。

この世界は攫ってもOKなのか?

いやダメだろ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺はお忍びスタイルで商店街に来ていた。

まだ開店してないのに服屋に訪れて、

服を探している。


もちろんラスティに贈る服だ。

今度はついでなどではなく、

誠心誠意選んで贈る。


「すまん店主。まだ開店前だったよね」


「いやいや、そんな滅相もない、サクラ伯爵様には大変ご贔屓にして頂いてますゆえ、これくらいの事は朝飯前でございます」


「そう言って貰えるとありがたい。」


「今日はどのようなお召し物をご所望ですか?」


「女性に贈りたいんだ」


「おお、それはそれは、分かりましたぞ」


この店主、名をウェクス。

なかなかセンスが良くて、

こちらの要望通りに仕立てもしてくれる、

この街きっての服屋だ。


「それで?誰に贈るか聞いてもよろしいですかな?」


ちょっと照れるが、

ウェクスに任せれば間違いないだろう。


「えっと…」


「ラスティお姉ちゃんです!うんと可愛いのが良い!」


言い淀んでいたら、横からベルが言ってくれた。


「おぉ、ラスティオちゃんかぁ。お任せください」


ウェクスは次々とラスティに似合いそうな服を選んで並べていく。


どれもこれも確かに似合うだろう。

可愛らしい服や綺麗な服。

美少女ならどれも大丈夫なんだが、

俺としてはどうもピンと来ない。


二度目だしなぁ、

ちょっとこう、なぁ。


俺が悩んでると、

ベルがまた言う。


「あのね、店長さん、みんな可愛い服で似合うと思うの、でも、二度目なの…」


「おお、左様でございますか。」


二度目って、ちょっと恥ずかしいだろ。

まぁほんとの事だしなぁ。


「これならいかがですかな?」


「え?!こ、これは…」


「これが良いの!これにするの!ラスティお姉ちゃんきっと喜ぶ!!」


そうか、そうだな。

ベルに後押しされて、

ウェクスが最後に持ってきた服を選んだ。


「メッセージカードは付けますかな?」


俺はちょっと思案して、


「付けます!」


ウェクスは綺麗に包装して、

俺に手渡してくれた。


「ちょっと待って」


とベルが言って出したのはリボンだ。

この世界にリボンんをかける習慣は無い。

でもベルは以前、俺が贈ったプレゼントに付いていたリボンを大事に取っておいたみだいだ。


ベルは俺にリボンを差し出してくる。


「結び方分からないの」


「うん、ありがとうベル」


俺はリボンを受け取り、

プレゼント包装にそのリボンをかけ、

リボン結びをした。


「ほほぉ、これは見栄えが良いですなぁ」


ウェクスも関心して見ている。


結び終わり、プレゼントを抱えて店を出る。


「おやじ、ありがとう!」


「いえ、またご贔屓におねがいします。ありがとうございました」


そこから俺は真っ直ぐ魔法道具屋に向かう、

服を選んで買い物してるうちに、通常の開店時間は過ぎていた。


ドキドキウキウキで足取りも軽かったが、

魔法道具屋が近付くにつれて、

足取りも重くなってきた。


うむむ、やはり緊張する。


もう目の前だと言うのに、

俺の足は止まった。


すると横からベルが店の入り口に行ってしまう。

振り返り、俺に手招きしてくる。


行くよ行きますよ行けば良いんでしょ。


覚悟を決めて、

扉を開ける。


「らっしゃい」


中から野太い男の声。


ん??

あれ?


カウンターを見ると男性店員はいるが、

ラスティの姿は無い。


ベルも戸惑っている。


「なんだい?ん?あ、あんた領主様ですか?」


「そうなんですが、あの、ザカローラさんは?」


「ザカローラなら、故郷に行くってんで暫く休みです。ザカローラの知り合いですか?」


「あ、まぁそんな所です」


店主は俺が持ってるプレゼントを見て何か察したらしい。


「領主様、ザカローラは美人だが、あれは底無しの胃袋ですぜ、やめといた方が良い」


ちょっとカチンときた。

お前何様だ?

お前にラスティの何が解る。


ベルも不機嫌顔になっている。


俺はムカついたぞって顔をして、

ちょっと強く言う。


「おい貴様」


「へっ?!」


「仮にも貴様の所の従業員だろ、それを悪く言うとは実に不愉快だ。仮に今の発言が、俺の事を考えての発言だったとしても、余計なお世話だ」


「へっへい!申し訳ありませんです!」


「従業員には感謝するべきだ。分かったか」


「はい!解りました」


「話は戻るが、ザカローラはいつ戻る?」


「そ、それが、11月に戻ると連絡が届いてます」


「そうか、今日は失礼するよ、邪魔した」


俺はそう言ってカウンターに小銀貨を一つ置いて店を出た。


ラスティが故郷に行ってるとは、

とほほだぜ。


それも帰ってくるのは11月か。

11月のいつなんだろうか。


俺達が王都に出発する予定は12月5日だ。


ラスティが帰って来た時に、

すぐに贈り物を渡せたとしても、

直ぐに返事が貰えるとは限らない。


実際に最初にラスティが返事を言いに訪ねて来た時は、

服を贈ってから数ヶ月経っていたし。


まぁ、フラれる前提で服を贈ろうと思ってるから、最悪は本人に直接渡せなくても構わないが、できたら、きちんと謝ってから気持ちを渡したい。


あー、それにしても、何でもっと早く行動しなかったのか。

悔やまれる。

というか故郷に何用で帰ったのだろう。


まさか縁談?!


ううう。


「大ちゃん、きっと大丈夫だよ、帰ってくるまで待つの」


「ああ、ベルは頼りになるね。ありがとう。」


それから俺達は、旅の準備に取り掛かる。

マルコス邸が終わったので、

仕事に拘束されていた時間が無くなり、

その分余裕を持って準備する事ができた。


車で行くか、馬車で行くか悩んだが、

ここは車で行く事にした。


と言うのも、

俺はルースに、簡単な車の構造を説明して、

どの部分にどんなオイルが使われているか、

ガソリンがどう言う物なのかを説明した。


まぁ現物があるので、

エンジンルームを見せて、

オイルやガソリンを手で触って見せる事も出来た。


最終的にルース頼りにはなるが、

ガソリンも問題なく増やせそうだと言う事で、ワンボックスで行く事にしたのだ。


いざとなれば収納魔法でしまって難なく運ぶ事もできるしね。


通常は馬車で王都に行くが、

その場合にかかる期間は約4週間が目安との事。

その間の食料は全部用意出来ないので、

獣などを狩ったりしながらの移動になるそうだ。


しかし俺には収納魔法があるので、

食料も水も4週間分全て用意してからの旅立ちも可能だ。

ちなみに収納魔法の空間の中は、

時間の流れがないらしい、つまり時が止まっている空間なのだそうだ。

なので食料は腐ったりはしない。

でも生き物は収納すると死んでしまうらしい。


4週間か。


道の状態が良ければ、

馬車の速度は大体時速20〜30キロほど。

車なら時速40〜60キロ程度かな。

ほぼ倍の速度で移動は可能だが、

道中何があるか分からないので、

馬車での移動速度を想定しての日程を組んでいた。

それでも初めての旅にしては短い期間の設定だった。

順調に進んで4週間が目安だが、

初心者は5週間以上かかる事も珍しくないそうだ。


マミちゃんの話しでは、

叙爵式は1月15日。

王都には1月5日くらいには来ているように言われていた。


何にしても、今はラスティが早く帰ってきてくれる事を祈ろう。





【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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