第四十九話 3度目の誕生日
10月12日
早いもので今日はベルが俺の所に来て3度目の誕生日だ。
今日でベルも12歳。
あっという間だった。
考えてみたら、ベルが来てから俺の周りは劇的に変わったと思う。
全てが順調と言っても良いくらいだ。
俺にとってベルは幸運の女神なのかも知れない。
まぁラスティの事はちょっと失敗だったけど、あれは俺の無知が招いた事だ。ベルのせいではない。
「ベル誕生日おめでとう」
「ありがとうなの」
あ、ちなみにこの世界では、
成人である16歳を過ぎたら、
特に誕生日を祝う風習はないらしい。
どうりで俺の誕生日を誰も聞いてこない訳だ。ちなみに俺の誕生月は8月である。
朝の身支度を終えて、
いつもの食堂に入る。
セバスチャン、ロッテンマイヤーを始めとするメイド達が勢揃いしていた。
「ベル様、誕生日おめでとうございます」
全員が一斉にベルに声をかける。
ベルは少しはにかんで、
「ありがとうなの」
と答えた。
屋敷でのベルの立場は、
時期伯爵夫人だ。
なのでみんなベルの事は『様』付けで呼んでいる。
4年後、ベルが成人した時に、結婚しなかったらどうなるのかな?
とか思ったりする。
実際に、現時点ではベルは俺の愛しい娘であって、恋人ではないからなぁ。
ベルは俺のお嫁さんになりたいって言ってくれてるが、
いつ俺がフラれてもおかしくはない。
まぁそれは置いといて、
今日の誕生日は、屋敷で行う事にしている。
外に出ると何かと目立つからだ。
ベルを誕生席に座らせて、
同じ誕生月のミキとマドカもベルの近くに座らせる。
専属のコック達に作らせた料理が続々とテーブルに運ばれてくる。
今日はご馳走だ。
ちなみに他のメイド達も、誕生月にまとめてお祝いをしている。
ほんとは個別に誕生日を祝ってやりたいが、それを言ったらセバスチャンに、
「それはやり過ぎです」
と言われた。
普通は召使い達の誕生日など主が祝う事はないらしい。
俺はみんなと家族同然になりたいんだけどなぁ。
仕方ないので、妥協案として、
誕生月にまとめてお祝いする形となった。
それでもみんな大喜びしてくれてた。
これが階級社会なんだなと改めて思った。
さて、料理が揃った所で、
お祝いの始まりである。
ベルを始め、豪華な料理をみんな大喜びで食べている。
ラスティにも食べさせてあげたかった。
あーいかん、料理が絡むとついラスティを思い出す。
「大ちゃん、今ラスティお姉ちゃんの事思い出してたでしょ?」
えっ?!
「なななな、な、なんで?」
すげー動揺してる俺。
「だって、渋い顔してたもん。美味しい物ラスティお姉ちゃんにもご馳走したいって考えてる顔だったの」
す、すげ〜
全てお見通しだ。
「恐れ入りました」
「茶化さないの、ベルは大ちゃんにちゃんとラスティお姉ちゃんとお話しして欲しいの」
「うん、いちおう考えちゃいるんだ。王都に行く前に、きちんと謝ろうってさ」
「あのね、ベルね、大ちゃんがラスティお姉ちゃんの怪我治した後ね、大ちゃんはラスティお姉ちゃんの事大好きだよって言っておいたの」
「な、なななな、なんですと?!」
「だって、ラスティお姉ちゃんも大ちゃんの事好きで、大ちゃんもラスティお姉ちゃん大好きなのに、今みたいなのっておかしいと思うの。ベルはラスティお姉ちゃんとも一緒にいたいの、仲良くして欲しいの」
凄く驚いた。
ベルは子供だと思ってた。
いや、実際は確かに子供なんだが、
こんなにもちゃんと周りを見ていたんだと思うと、驚き以外に言葉がなかった。
確かにベルには『見える』能力はあるが、これはそう言う問題ではない。
しかもベルちゃんてば、
だんだん俺のお姉さんみたいな感じになってきてる気がする。
あんなに幼くて、
守ってやらなきゃって思ってた少女が、
年々逞しく成長しているんだな。
「ごめんなベル。俺もラスティと仲良くしたいんだ。でもラスティが怒ってるんじゃないかと思うと、勇気が持てなくてさ」
かく言う俺も、
ベルにだけは本音で話せる気がする。
まぁ嘘ついても『見抜かれる』んだけどね。
「うーんとね、ベルだったら、大ちゃんがどう思ってても、ベルの気持ちちゃんと大ちゃんに言うよ。言わないままお別れしたくないもん」
!!!
目が覚めた思いだ。
まさか、12歳の少女に教えられるとは…。
自分の想いを伝えられない事を、相手のせいにしていた。
しかもそうだ、ラスティが怒ってるって、誰が言った?
ラスティ本人か?
いや違う。
俺が勝手に決めつけていた。
相手の心は相手にしか分からないじゃないか。
逆に俺の心も俺にしか分からない。
伝える前に、どうして相手の気持ちを決める事ができようか。
それにベルの言う通りだ。
このまま別れたら必ず後悔するだろう。
「ベル」
「うん?」
「ありがとう」
「ベルは何もしてないの。大ちゃん頑張ってなの」
今日はベルの誕生日なのに、俺の方がプレゼントを貰ったようだ。
「うん頑張るよ。ありがとうベル。じゃぁこれは俺からのプレゼントだ」
俺は懐からプレゼントを取り出す。
小さな四角いプレゼントだ。
可愛らしいリボンで結ばれている。
「ありがとう大ちゃん、開けても良い?」
「もちろん」
ベルはリボンを解き、
包装紙を丁寧に剥がしていく。
中に濃い青色をした箱が出てくる。
箱を開ける、そこには指輪が入っていた。
「わぁ、指輪なの!大ちゃんありがとう」
俺は女性に指輪など送った事は無い。
ベルが初めて贈る相手だ。
「付けてみて、人差し指でも中指でも良いよ」
「うん」
ベルは言われるままに、左手の中指に指輪をはめる。
指輪はベルの指にはブカブカだったが、
指に嵌めるとピタッとベルの指のサイズに縮まった。
「凄い!綺麗なの」
やや太めのリングに、小さな水色の石が嵌め込まれている、なんの変哲もないリングだったが、よく見るとリングには魔法陣が刻まれている。
「じゃじゃーん」
俺はそう言うと、懐からもう一個指輪を出した。それは箱無しの剥き出しで、直ぐに指に嵌められる。
指輪は今ベルに贈った指輪と同じ物だ。
「もう一つあるの?」
「そ、これは俺の分」
そう言って俺は自分の左手の中指に指輪を嵌めた。
「お揃いだ。もし、俺と逸れた時とか、困った時は、指輪に話しかけてね。王子様が助けに来るよ」
「うん、ありがとう!」
「これはミキとマドカの分ね」
俺はリボンだけを結んだハンカチを二人に贈った。
「「ありがとうございます」」
簡単なプレゼントだったが、
2人共にこにこしている。
喜んで貰えたようで何よりだ。
それからは他愛もない話をして時間が過ぎていった。
パーティーも終わり、
俺達は寝室に行き、
今日という日に別れを告げた。
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白村
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