第四十八話 竣工
年明けの騒ぎから時は流れ、
10ヶ月ほど経った。
俺は今現場を歩いている。
ベルとルースを連れて、
一部屋一部屋丁寧にチェックしていく。
最後は玄関ホールをチェックした。
良し。
「良し、良し!良し!!よっしゃーー!!!完成だぁああ!!」
「わーやったー」
玄関から外に出る。
日雇いの皆さんがいた。
「みなさん!完成です!ありがとうございましたあ!」
「やったー」
「おめでとう」
「お疲れ様〜」
約2年だ。
長かったけど、
あっという間だった。
やはり、いつだってこの完成の瞬間は嬉しい。自己満足も、達成感もあって、最高の気分になる。
「思ったよりも早く工事が進んだのも、日雇い労働者の皆さんのお陰です。では日当を渡します」
俺は一人一人に、
「お疲れ様でした、ありがとうございました」
と、声をかけて日当を手渡していく。
渡された労働者はそれぞれに帰宅して行った。
最近では、貧民街の人達以外にも、
働きたい者には日払いで来てもらっている。
アルバの日雇い派遣商会を経由してだけど。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
年が明けてから、
俺の周りは劇的に変わった。
いや、変えたと言うべきか。
まずは、留守中の執務をお願いできる人材を雇った。
俺がこれから王都にいき、世界を旅する間、長期的に留守にするので、その間の執務を執務官と筆頭執事セバスチャンにやってもらうためだ。
次に警備の強化。
用心棒は結局、良い人材が居なくて、衛兵隊の警備を強化する事に決まった。伯爵権限で出来る事を、わざわざ用心棒を雇う事も無いというのも理由にあった。
敷地は広いので、24時間体制で警備出来る宿舎も用意した。
外の警備も、元の薬屋を使って衛兵詰所を半分、薬屋を半分にした。何せ地下通路が屋敷に繋がってるので、警備に使えると言う事で、利用する事にした。
執事も増やした。
何せ大人は二人だけで、後はか弱き少女が多数だ。
力仕事がある時に人手が足りない。
そして貧民街の改革。
まずは住む所をどうにかしたいと思い、
日本で言う、災害時の仮設住宅に似た感じの住まいを建てた。昔で言うと長屋かな。これは俺が建てたんじゃなくて、貧民街の日雇い労働者に建てさせた。
何せマルコス邸で建築の事を覚え始めて来てるから、結構要領良く建てたものだ。
今ではテント住まいの者は半数を割ってきている。
まだまだ足りないが、一年後には立派な長屋街になってそうだ。
日雇い派遣商会もアルバが立ち上げて、
順調に進んでいる。
炊き出しもまだ続けているが、
そのうち屋台だけで済ましても良さそうだ。
炊き出しに関しては、
もう俺はノータッチで、
セバスチャンが頑張って引き継いでいる。
長屋に簡単な定食屋でも作っても良いかもしれない。
商店街の雑貨屋は、
木のおもちゃを売り出してみた。
異世界のおもちゃ屋と名付けた。
売ってる物は日本の伝統、
駒と剣玉だ。
他にもいろいろあるが駒と剣玉は割と好評だ。
焼き肉食べ放題店も順調だった。
ラスティも常連になってると聞いて、
凄く嬉しい。
その食べ放題店も、
焼き肉以外にビュッフェ、
しゃぶしゃぶ、
すき焼き、
と増やしてみた。
ビュッフェは割と好評みたいだが、
すき焼きの生卵は忌避感があるらしく
どうも足踏み状態らしい。
しゃぶしゃぶは、
まずまずと言った所だ。
まぁ経営はアルバに任せておけば間違いないだろう。
そんなこんなを忙しくこなしつつ、
今日はマルコス邸の完成だ。
明日はマルコス卿を呼んで一緒に見て回る予定だ。
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そして次の日。
マルコス邸の前である。
「やあサクラ様、おはよう御座います。」
「おはよう御座います」
マルコス卿は奥様方と数人の子供を連れて来ていた。
「では、早速参りましょう」
みんなで門をくぐり、
玄関へと向かう。
直ぐに建物の全容が見れる。
「おお、これは素晴らしい」
「ほんと素敵」
まずは外観。
この世界の建物は、
何故か外観が素っ気ない。
王城ともなると違うのかもしれないが、
少なくともこのサクラの街は、
貴族の屋敷も含めて、
飾り気が無い。
そこで今回俺が建てたマルコス邸だが、
イメージは西洋のお城。
まぁ本格的なお城の外観にするのは難しいので、それなりに見える感じで豪華にしてみた。
かなり好評のようだ。
そして中に入る。
玄関ホールは広目にとって、
3階までの吹き抜けにした。
正面に階段があり、踊り場まで真っ直ぐに登り、踊り場からは左右に伸びる階段にしてみた。
当然、玄関では靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて上がる。
「おお、この広がりのある空間、素晴らしい」
「ほんと素敵ですわぁ」
「広いねー」
一階は大広間や、応接室、そして大きな和室を設置して、広縁も設けた。大広間と広縁からは、直ぐに庭に出れるように配慮してある。パーティーなどに最適化したのだ。
「素晴らしい!!」
「あなたさっきから素晴らしいとしか仰ってませんわよ」
「お前こそ素敵としか言ってないぞ」
「早くここに住みたい!」
マルコス一家は微笑ましいね。
2階にもパーティールームがあり、
バルコニーを設置した。
映画とかでよくある光景が見れる事だろう。
リビング、キッチン、食堂、風呂場は2階、居住区は3階と言うふうにした。
一通り見たマルコス卿は、かなり満足してくれていた。
マルコス卿の家族も、
早く住みたいと言ってくれていた。
俺としてもやり甲斐のある仕事ができて、
大感謝だ。
「伯爵様、この度は本当にありがとうございました。家族一同大いに感謝しております」
「家家、やめてください。私が大工でいる時は、伯爵ではないつもりですから。」
「あなた様は本当に謙虚なのですなぁ。しかし、時には権力を見せる事も大切です。お忘れなきように」
「はい、先輩貴族の助言としてありがたく受け取っておきます。では、私はこれで失礼します。もし建物でお気付きの事がありましたら、直ぐに仰って下さいね。」
「あ、お待ちを!謝礼を受け取って頂かないと、貴族として誇りが持てませんぞ」
「あ、いけね、そうでした。」
てへっと言う感じだった。
「大ちゃん…」
「ではこちらです」
「ありがとうございます、ありがたく頂戴いたします」
重い皮袋。
恐らく2000マネ、独自の目安だが日本円にして約2億円相当が入ってる。
俺は大事に収納魔法に仕舞った。
「便利な物ですなぁ、魔法が使えるとは羨ましい限りです」
「はい、私も恵まれたと、感謝しております。では、これで失礼します。あ、私はあと二カ月ほどサクラの街に居ます、その後王都に旅立ちます。後の事、申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」
「いえ、とんでもありません。伯爵様、お気をつけて旅をして来てください」
こんなやりとりをして、
俺達はマルコス邸を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あと二カ月ほどで旅立ちか。
それまでいろいろ準備しなきゃな。
ラスティともお別れだ。
最後に挨拶だけでもするか。
知らなかった事とはいえ、
傷付けたんだもんな。
キチンと謝ってから旅立とう。
【読者の皆さま】
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白村
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