第四十六話 お祭り騒ぎ
演説が終わり、俺は部屋で呆けていた。
何を言ったっけ?
あんまし覚えていない。
変な感覚だった。
外は物凄い騒ぎのようだが、
どこか他人事みたいだった。
それから自宅に戻って、
いろいろと予定をこなして、
やっと1月3日になって外出ができた。
普段着だが、フード付きのローブを被り、
なるべく目立たないように出かける。
ベルも俺と同じようにフードに被り目立たないようにしていた。
ルースだけは猫髭娘になって、
嫌でも髭が目立っていた。
「目指すは商店街だ」
「うむ、今年もたくさん食うにゃ」
「ベルもたくさん食べたいな」
商店街に着くと、今年は去年よりもたくさん出店が出ているようだ。
なんでも中央広場にもたくさんあるとの事だった。
『サクラ』効果なのだろうか?
何にしても、経済が回るのは良い事だ。
出店は相変わらず肉系の焼き物が多い。
串焼き、
焼き鳥、
牛ステーキなどなど。
それでも皆楽しそうに見てまわってる。
俺も美味そうな肉を見つけたら食うぞ。
と、前方に人だかりだあった。
あぁ、やっぱり居るよねぇ。
「大食い魔女様だ!」
「すげー食いっぷりだ」
などと聞こえてくる。
「いたにょだ、今年も勝負にゃ」
俺も期待しない訳が無い。
必ずラスティが来てるとは思っていた。
しかしですよ、先日のスピーチを考えると、
完全にラスティに向けてのメッセージあったよね。
はっきりとは覚えていないが、愛する人がいるなんて言ったのは覚えている。なんて事を言ったのかとちょっと恥ずかしかった。ましてや、自分の女々しさから出た内容だったから余計に恥ずかしい。
でもそんな俺の想いなど関係なく、
ルースはラスティに勝負を挑みに行ってしまった。
ルースがラスティに合流すると、
周囲からは、
「おお、大食い魔女様に続いて、大食い猫様だ!!今年も勝負が見れるぞ!!」
と聞こえてきた。
ルースにも二つ名が付いたか。
俺はベルにこっそりとお金を渡して、遠目から見ていた。
猫髭ルースを見たラスティは、
キョロキョロと周りを見たが、
その後は気にする事も無く肉に齧り付いていた。
あんなラスティも愛おしいんだよな。
ベルはルースにお金を渡して戻ってきた。
「仲直りしないの?スピーチでラスティお姉ちゃんの事言ってた癖に。あれラスティお姉ちゃんの事だよね?」
「うぅ、それがあるから余計に気まずいんだよ」
愛する人とか言っちゃってて、
それで余計に怒ってたら、
もう立ち直れないよ。
いや、多分怒ってるよなぁ。
民衆に向かって言うなんて、
恥をかかせたようなもんだ。
はぁ。
「ベルにはよく分かんないの、ラスティお姉ちゃんなら、お嫁さんにしても良いのに」
それを言うなよ。
余計に悲しくなる。
俺は、ルースは放っといて先に進んで行った。
それにしても、凄いお祭り騒ぎだ。
「ベル、はぐれない様にな」
「うん」
手を繋いで出店を見て歩く。
「お、ここは腸詰めの店か、美味そうだな」
腸詰めとはすなわちソーセージ。
串焼きになっている。
「美味いよ!食っていってくれ」
「一つ下さい」
焼きたてのソーセージをがぶり。
ぷちゅっと肉汁が弾ける。
美味い!
「ベル味見してごらん」
ベルも一口がぶっといく。
ベルもラスティもそうだが、
可愛いらしく、
おちょぼ口で『カプ』とか、
『あむ』とか、
そう言う、女の子女の子した食べ方では無い。
美少女なのに豪快にがぶりとしてくる。
それでいて下品ではないんだ。
俺はそう言う食べ方の方が好きだ。
「もぐもぐ、うーん!おいひー」
「がつがつ、オヤジ、もう一つくれ、もぐもぐ」
ビールが欲しいぜ。
そう言えば、ホットドッグって見た事ないかも。
今度考案してアルトスにでも作って貰おう。
「なぁおやじ、2ヶ月にいっぺんくらい、出店を出す気はないか?」
「ん?どういう事だ?」
「毎月炊き出しやってるんだが、その時に出店も呼んでるんだ」
「へぇ、いや、ちゃんと金になるんなら構わないぜ」
「そうか、じゃぁ後日でも良いから、サクラ邸て来てくれ」
俺はそう言いながらちらっとフードを上げて顔を見せた。
「あ、あんたは、伯爵様!」
「シーッ シーッ じゃぁよろしくな」
「へいっ!分かりやした!いやぁ大食い魔女様を待ってたら、すげー大物が来てくれた」
「うん、この味なら大食い魔女様来るかもなぁ。おやじハーブはあるかい?魔女様はハーブがお好きだ」
「え?ほんとですかい?」
「ああ、これでハーブが効いてれば間違いなく魔女様が来るね」
「な、何とかしましょう」
「じゃぁ一応渡しておくよ。これで全部ご馳走してやってくれ」
俺はそう言ってお金を渡した。
「ま、またこれは豪気なお方だ、大食い魔女様来なかったどうしましょう?」
「みんなにタダで配れば良いんじゃね?」
「なるほど、はい、分かりやした!ありがとうごぜぇます!」
「うむ、苦しゅうない」
さぁ次だ。
ベルと歩き出す。
「ねぇ、苦しゅうないってどう言う意味なの?」
「さぁ?偉い人が言ってるから真似してみた」
「うふふ、変なの」
俺とベルは買い食いしながら出店を見て回ったが、全部見切れずに屋敷に戻った。
まだ時間はあったが、あまり遅くなるとメイド達が出店に行く時間が無くなるからだ。
ルースは置いてきたけど、まぁ問題ないだろ。
俺はロッテンマイヤーにメイド達のお小遣いを渡して、出店に遊びに行くように言ってから自室に入った。
「ふう、疲れたな」
「うん、お疲れ様なの」
考えて見たら、来年には王都にいるから、
今度の年越しは王都か旅の途中だ。
何年後か分からないけど、
しばらくはこの街の出店には来れないのか。
というか、あと一年足らずでお別れか。
戻ってくる頃には、
ラスティもきっと結婚してるんだろうな。
その時は心から祝福してあげよう。
さてと、また明日から忙しい。
気を引き締めて、
今年も頑張るか。
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白村
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