第四十二話 引っ越し
10月11日
バンジス邸改め、サクラ邸。
そう、結局俺はバンジスの物だった館に住む事にした。
決めるのは早かった。
何せ館には取り残された少女達、
総勢19人がいたのだ。
この子達の面倒を見るとなると、
どうしても広い館がいる。
新たに邸宅を建てる事も考えたが、
この規模だとまた数年かかるし、
俺は今マルコス邸を建てている。
順番からいってもマルコス邸を完成させてから自邸を建てる事になる。
そうすると合計で4年くらいかかりそうだ。
しかも俺は王都にも行かなければならないし、
建ててる間の19人の少女たちの居場所も問題だ。
新築は現実的ではなかった。
なので妥協したのだった。
まぁ俺は大工だし、
自分でリノベーションしてくか。
よくリフォームとリノベーションを取り違えている人がいるが、
リフォームは修繕で、
リノベーションは新たな価値を与える事だ。
間取りを変えたり、
形を変えて、
住む者に新鮮な気分を与える。
それがリノベーションだと、俺は思っている。
話が逸れたが、
引っ越しを決めてからは早かった。
まずは邸内の大掃除。
趣味の悪い物は一掃し、
新たに装飾品などを揃えた。
家具も同じく、
全て処分し入れ替えた。
床を始め、壁天井も綺麗にしてもらい、
玄関にちょいと細工をして土足禁止にし、
下駄箱を設てスリッパ生活にした。
地下室は、少女達にとってはトラウマなので、完全に埋めて、入り口のあった場所も塞いで完全に判らなくした。
過去の記憶に関しては、ルースに頼んで消して貰った。
これで夢で魘される事もないだろう。
そして、人材も確保した。
俺は王都に行って正式に白爵位を賜るので、
長期的に留守にする。
その間少女達19人だけで生活させる訳にもいかない。
そこで新たにメイド長と執事を雇う事にしたのだが、
これがまた良い人材がとても意外な所で見つかったのだ。
まず筆頭執事はセバスチャンと言う名前の男性。
メイド長にはロッテンマイヤーと言う女性。
この2人、実はベルの両親なのだ。
元々召使いの家系で産まれた二人は、
ある貴族に仕えていたのだが、
その貴族が亡くなり、
バンジスに仕えるようになったそうだが、
真面目で仲の良い2人は、
バンジスに目を付けられ、
ロッテンマイヤーは毒を飲まされたそうだ。
そうとも知らないセバスチャンは、
妻の病気を治そうと、
薬屋の処方した薬を買って与えたのだが、
この薬がとんでもなく高額で、
バンジスに借金をしてしまったんだそうだ。
その後にバンジスから毒を飲まされたと気がつくのだが、
訴えてもバンジスの権力で揉み消され、
どうにも出来ないままに貧民にされ、
稼いだ金は借金だと巻き上げられ、
やむなく愛する子供達を売ってしまったと言う事だった。
うちに両親を呼んで、
その時にベルの姉と再会した時の喜びようは、やはり感動的だった。
何度も何度も感謝の言葉を聞かされて参った。
そしてセバスチャンは出来る執事だった。
最初、俺に細かいアンケートみたいな質問をしてきて何かと思ったが、
その後は俺の好みなどを把握して、
俺がいちいち指示しなくてもベストな仕事をしてくれた。
街に対しても顔が広く、
良い御用聞きを知っていて大助かりだった。
ロッテンマイヤーも優秀だ。
立ち所に19人の少女達をまとめ上げ、
礼儀作法からの教育を施していた。
ベルが優秀なのも頷けた。
ロッテンマイヤーにいろいろ教えて貰ってたんだろう。
この両親の立ち居振る舞いが、どことなく違って見えたのにも納得したのだ。
そして俺はと言えば、
まずは少女達の服装を揃えてやった。
おそらくは皆、俺の屋敷でメイドになるだろうと思いメイド服を設た。
もちろんこの世界のメイド服ではなく、
元いた世界のメイド服だ。
服屋も、こんな服を見るのは初めてだと、
感動していた。
19人が全員メイド服で勢揃いした姿は、
さすがに目を奪われた。
みなそれぞれに美少女なので、
全員が良く似合っていた。
ベルはちょっと羨ましそうにしてたが、
ベルはメイドではないので、
そこは諦めて貰った。
そしてだ、俺はもう異世界人だと隠さない事にした。
だからさ、良いよね?
と言う訳で、街外れに隠していた愛車のワンボックスを邸内に持ってくる事にしたのだ。
エンジン始動!
心地良く響くエンジン音。
懐かしさを噛み締めて俺の屋敷まで運転してきた。
途中驚かれたけど、パニックにもならずにすんだ。
この世界の人達は、龍神やお伽話を真実だと思ってる人がほとんどだ。
加えて魔法や、魔物といった、日本では考えられない事象や生き物もいる。
だからだろうか、意外とあっさり受け入れられたりするのだ。
この世界に来た時の最初のパニックが嘘みたいだ。
助手席に乗ったベルも、
最初は、仰天した!
と言う感じだったけど、
乗り心地の良さが気に入ったのか、
凄くはしゃいでいた。
いつも無関心風でクールなルースも、
興味深々と言う感じで面白かった。
屋敷に着いて直ぐにエンジンを切ったら、
『何だもう終わりか?』
と聞かれたので、
ガソリンという燃料がないと動かなくなるから、そのうち物置きだなと言うと、
ルースは簡単に言った。
『その燃料とやらを増やせば良かろう』
と、そこで思い出す。
そう言えば炊き出しの豚汁の味噌だ。
ミソモドキとマミちゃんが言っていたやつ、
あれ魔法で増やしてたじゃぁないか!
ガソリンも増やせるかもしれない。
何で早く気が付かなかったんだろう。
「ルース、ガソリン増やせるか?例えるなら火が着く水のような物だぞ」
『どんな物か今度見せてみろ。まぁ多分増やせるだろうがな』
流石ルースだ。
しかし車と言うやつは維持するのにいろいろと手間がかかる。
オイルも必要だし、オイル交換もしなきゃならない。タイヤも減るし、ただガソリンが有れば解決という物でもないのだ。
ここは慎重に考えておこう。
でもうまくすれば王都に車で行けるかもしれないな。
などと希望的な事も考えていた。
あと俺がした事は、
用心棒探しだ。
屋敷に信用出来る用心棒が欲しい。
白爵位ともなると、
門番として衛兵も付くのだが、
それだけでは心許ない。
なのでマルコスやアルバに頼んで、
信用の置ける用心棒を探していた。
しかしそう都合良く見からない。
今までが順調過ぎた。
まぁゆっくり探していこう。
そしてそうこうしてるうちに、
今日は引っ越しの日。
既に大きな家具やらベッドやらは、
新しい物が設置済みである。
なので引っ越しと言っても宿屋の荷物を持って来るだけで大した事ではなかった。
数人のメイドを連れて、
宿屋に行き荷物を運ばせて終わりである。
俺は宿屋の主人カリオスに今までの感謝の気持ちを伝え、
宿屋を後にしたのだった。
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白村
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