第四十一話 自邸
俺がこの世界に来てから早3年以上。
その間ずっとお世話になってるのが宿屋だ。
ほとんど寝るだけで不便は感じた事はない。
庭も使えるし言う事は無かったが、
確かに自宅があった方が良い。
ていうか、俺伯爵なのに宿無しってヤバくないか?
「ベルは、みんなで住むお家が欲しいのかい?」
「うん、なんかずっと食堂に帰るって、いつも変だと思ってたの。知らない人いるし」
考えてみたらそうだな。
ずっとアパートの一人暮らしだったから、
気が付かなかった。
「そうか、そうだよなぁ。俺ずっと一人暮らしだったから気が付かなかったよ。ごめんなベル。よし、土地も手に入るし、自分家建てるか」
「やったー」
ベルは無邪気に喜んでる。
やっぱり可愛いのだ。
「あ、あの、サクラ…様?」
声に振り返るとアルバとマルコスが立っている。
「あぁアルバさん」
「この度は伯爵叙爵おめでとう御座いますサクラ様」
「あーもー、勘弁して下さい。今まで通りでお願いしますよ」
「で、ですが、そのですね…」
「ほらぁアルバさんだってやりずらいでしょ!俺は何も変わってませんから、そもそもまだ伯爵になってないですよ」
「ま、まぁそうなんですが、しかし驚きました。伯爵になられるとは」
「それもこれも元を辿ればアルバさんのお陰ですよ。路頭に迷ってる俺を拾ってくれたんですから」
「それはそうですが、あの時は不思議な魔法道具をお使いだったので、つい、ですね」
魔法道具…。
魔法道具屋のラスティを思い出したではないか。
「まぁそうなりますよね、今後の接触の仕方が分からなくなりましたから」
そう言うのはマルコス卿だ。
「何も変わりませんって、それよりアルバさん、今まで宿屋暮らしだったのですが、自宅を用意したいと思います。何か良い物件とかありますかね?」
「あ、えーっと、あ、あのでねぇサクラ様、伯爵になられるんですよね?そんな方に用意できる物件なんて早々ありませんよ。はぁ確かにこう言うところはサクラ様ですね」
半ば呆れ顔で言うアルバ。
いつもの調子が戻って来たようだ。
「あ、そっかぁ、せっかく領地を貰ったんだから、建てるかなぁ」
「あのぅサクラ様、バンジスの館がありますよ。あれはもうサクラ様の物です」
と、マルコス卿。
「へっ?!そうなんですか?ああ、なるほどそうかぁ。しかしなぁバンジスの家かぁ、微妙だなぁ」
「ご覧になられた事があるんですか?」
「無いですよ、バンジスの持ち物ってだけで嫌悪感がありますので」
「もうその主もいません。一般的には次の貴族が住むのが普通ですよ。使用人などもまだ居るはずですし、きっと新しい主を待ってるはずです」
「えーそうなんですか?マミちゃん何も言ってなかったなぁ、ベルどうする?」
「ベルはどんなお家か見てみたいの」
「そか、なら見てみるか。でも使用人が気になるな。バンジスみたいな奴が居なきゃ良いけど」
「そうですなぁ、あそこには奴隷もいるようですし、気にはなりますな。ご一緒しましょうか?」
「それはありがたいです。ほら俺異世界人なので使用人の接し方とかあるでしょうし、俺とベルでは不安です。ルースは無関心だしな」
『む?そうでもないぞ、未知の迷宮はおもしろいのだ』
『いや、迷宮じゃないから』
「アルバさんも来てください、奴隷がいた場合、処遇がわかりませんので」
「はい、解りました。では早速行きますかな?」
そうだな、今日は日雇いの皆さんも居ないし、
元バンジス邸の内覧会といこう。
というか奴隷がいる?
もしかしたら……。
「ダイちゃんどうしたの?」
ちょっと考え込んだ俺にベルが声をかけてきた。
「いや、なんでもないよ、じゃぁ行きますか」
「やったぁ」
『迷宮か』
『いや違うから』
俺達は元バンジス邸に向かって歩いていく。
商店街を通るのが近道だそうで、
魔法道具屋の前を通る。
あ、ラスティだ。
「そう言えば、サクラ様はいつ発つのですか?」
とはアルバだ。
「え?」
「王都に行かれるのでしょ?」
「あぁそれはマルコス様邸が完成した後です、それまではこの街にいます」
「おや?まるで戻って来ないような言い方にも聞こえますが?」
「ええ、とある王族の方に、見聞を広げろと言われまして、まだ決めた訳ではないんですが、あちこち旅しても良いのかな?と。この街の行政など俺には分からないので、マルコスさん達には悪いんですけどね」
「なるほど、それは良いかもしれませんね。私も若い頃は行商であちこち行ったものです。お陰で今の商会がありますからね」
そこへマルコス卿が話し出す
「あれはサクラ様考案の食べ放題店ですね」
「そうなんです、あと少しで開店です。今から楽しみですよ」
「これが成功したら、次はパンの食べ放題とか、いろいろな料理を置いて、立食形式の食べ放題とかやってみるのもおもしろいと思います」
「おお、素晴らしいですな、さすが異世界人と言うところか」
「家家、私も好きだったので、こちらでもウケるかなぁと思っただけですよ」
「今度異世界の話をお聞かせ下さい、大変興味深い」
「はい、是非とも」
途中雑貨屋の前を通ったら、
店の中は片付けられていた。
この店は自由にさせてもらおう。
そして元バンジス邸に着いた。
まぁ言ってしまえばサクラ邸なんだが、
まだ住むとは決めてない。
門を潜り、広い敷地を邸宅に向かって歩く。
建物も大きい。
取り壊す前のマルコス様邸より大きいようだ。
外見はやはり飾り気も少なく、
まるで校舎のようで、
冷たい印象すら受ける。
「さすがに大きいですな」
とアルバ
「庭の手入れはまぁまぁですかな」
とマルコス
「大きくてなんか迫ってくるみたいなの」
どベル
『小さい迷宮だ』
とルース
『おい!』
と俺
扉の前に着いた。
「何故でしょう、緊張するんですが」
「ええ、私もです」
「実は私も」
「なんか変だよみんな」
ベルは俺を見上げて不思議顔だ。
ま、まぁ緊張してる場合ではないな。
俺は扉を叩いた。
ゴンゴン
「どうぞお入り下さい」
中から女性の声がした。
俺は扉を開ける。
3人の少女がお辞儀をして迎えてくれた。
「「「ようこそいらっしゃいました、ご主人様」」」
「む」
「これは」
二人が反応する。
少女達はボロを纏っただけで、
露出が多い。
あの豚野郎の趣味なんだろうな。
「バンジスに家族っていたんですか?」
俺はマルコスに聞いてみた
「さぁそう言った話は聞いた事がありません、普通は貴族になれば2・3人の妻は迎えるのですが…」
「あ、あの」
出迎えてくれた少女の一人が声を上げる
「新しいご主人様ですか?」
少女達は少し怯えてるようだ。
マルコスが言う
「妙ですね、メイドには見えません、それにメイドだとしても、普通はメイド長が出迎えるものです。お前達、メイド長はどうした?」
少女達はビクっとしたように見えた。
怯えてるよな?
「メ、メイド長は居ません、居なくなりました…」
「じゃぁお前は何だ?メイドにも見えんが」
マルコスの口調はいつも通りなのだが、
命令口調が威圧感を出していた。
「ちょっとマルコスさん、怯えてますよ、俺が話します」
「あ、あぁ失礼した」
俺は前に出る。
少女達はやはり怯えていたが、
後退りしたい気持ちを抑えているようだ。
顔色も悪い。
「ベルおいで」
「うん」
「ルース俺の上に来て」
ベルは俺の横に、ルースは俺の頭に乗った、
俺は床の上で膝立ちになって、
少女達に目線を合わせる。
「こちらはベル。貧民街の子だったんだ。こいつは使い魔のルース。仔猫だけど凄く強いんだ。そして俺は佐倉大作。君達の新しい主だ。よろしくね。あの人達は付き添いだ、怖くないから安心して」
俺は出来るだけ優しく話した。
ベルとルースを前に出して、
安心させるようにもした。
少女達の反応は、特にベルを見ていた。
多分同じ貧民街の子だったのだろう。
驚きや戸惑い、
羨望が混じったような複雑な顔をしていた。
そして俺を見て、少し安心したようだった。
まぁ年齢53歳とは言え、
見た目18歳くらいだから威圧感はないのだろう。
少女の一人が口を開く
「はい、ご主人様、よろしくお願いします。私共をどうかお見捨てにならないで下さい」
「うん大丈夫だよ、俺は君達を見捨てない。何があったか教えてくれないか?と、その前に中に入っても良いかな?」
「あ、はい、失礼しました、こちらへどうぞ」
「これが異世界人か。改めて恐れいった」
「はい、これが佐倉大作という人物ですね」
マルコスとアルバの会話だった。
何に恐れ入ったのか分からないが、
まぁ放っておこう。
3人の少女達は前を歩いて案内してくれている。
一人はちらちらとこちらを見ている。
やがて応接室のような部屋に着く。
壁には趣味の悪い絵画なのか?
女性のヌードや下品な絵がかけられている。
バンジスの趣味なのだろう。
理解できない。
広いローテーブルにソファー、
どこの世界にもよくある応接セット。
少女達はソファーの後ろに立ち、
俺達にソファーを勧める。
遠慮なく座る。
俺の背後にはベル。
「ベル、大丈夫か?俺の膝に座っても良いよ」
「んーん、大丈夫なの」
そのやりとりに少女達は驚いていた。
俺は3人に向き直り、
「君達は座らなくて良いのかい?見上げると疲れるから、できたら座って欲しいんだが」
「サクラ様それはさすがに…」
「いや、ここはサクラ様の邸宅です、我々が口を出すのは控えましょう」
そんなアルバとマルコス二人のやりとりがあったが、
少女達はソファーに座ってくれた。
「いろいろ聞くけど、怒ったり責めてる訳じゃないから、怖がらないでね。まずここには君達だけなのかな?」
「いいえ、地下室にも奴隷がおりますが、他は私達だけです」
「他の人達はどうしたの?」
「みんな、次は俺達だとか言って、出て行ってしまいました」
その発言にマルコスが反応する
「おそらくバンジスの犯罪に何らかの形で関係してたのでしょう、それで捕まる事を恐れて逃げ出したのかと。」
「屋敷の中は衛兵に調べられたりしないんですか?」
「当然、調べますよ、でも無関係な者は放置ですな」
「なるほど、じゃぁ君達、悪いんだけど地下室の人に会わせてくれないか」
「はい」
3人は立ち上がって、
また俺達一行を案内し始めた。
今度は地下室へと。
階段を降りる。
地下室は昼間とは言え薄暗い。
俺は嫌な予感がした。
薬屋の地下室の拷問部屋へと続く通路が、
ここと似たような雰囲気だったからだ。
そう言えばそうだ、
何故出歩ける奴隷がこの少女3人だけなのだ?
動けない理由があるんじゃないか?
「ルース」
『ん?』
「治癒魔法が使えるようにしといてくれないか?」
ルースは無言で俺の頭に飛び乗り、
俺の魔力を吸う。
とんっと降りて、猫髭娘に変身した。
「「きゃぁっ」」
「うおっなんじゃ!?」
「あー、ごめんなさい!言ってから変身させれば良かった、ルースは魔獣なんです!怖くないからさ、ごめんごめん」
「騒がしいにゃ、お前達に危害は加えんにゃ」
「す、すごい」
「なんと、これが事件解決に一役買ったと言う魔獣か、美人ではないか」
髭が見えないのかよマルコスさん。
まぁ確かに美人ではあるが、
残念美人だ。
「娘達、案内するにょだ」
「はい」
通路を進むとすぐに扉があった。
左右に二つずつの扉で四つの部屋がある。
少女達は通路の脇に控えて言った。
「ここでございますご主人様」
「ここの部屋全部かい?」
「はい」
まず右側の扉に手をかけ、
恐る恐る開ける。
「誰かいますかぁ」
と、そうっと開ける。
いた。
数人の少女が寄り添ってこちらを見ている。
全員が全裸だった。
薄暗くてよく見えないが、
凄く怯えてるように見える。
「あぁ、助けてあげるから怖がらなくて良いよ」
「ルース、あの子達健康か?」
「健康かにゃどと聞くにゃ、あたしは医者ではにゃい。一応治癒魔法はかけてやるにゃ」
少女達は4人いた。
全員に治癒魔法をかけてから、
どうして地下室から出ないのかと聞いたら、
強く出るなと言われていたそうだ。
少女達は恐ろしくて部屋から出る事が出来なかったそうだ。
酷い事しやがる。
残りの部屋も同じような状態だった。
そして最後の部屋に入ると。
こちらを見た少女の一人が声をあげた。
「あ」
その声にベルが反応する。
「えっ、お姉ちゃん?!」
そう、今まで忘れていた訳では無かったが、
手掛かりが失われてどうするか悩んでいた、ベルの姉探し。
ここに来る前に、奴隷がいるかもと聞いて、
もしかしたらと思っていた。
ここの地下室に来て嫌な予感はしたが、期待もしていた。
監禁されていた少女達はみな容姿が良かったからだ。
ベルの姉を知ってた訳ではないが、
ベルの姉が可愛くない訳がないだろう。
かなりの確率でバンジスが囲っていると思っていたが、
思った通りだった。
「お姉ちゃぁぁん、うわーん」
ベルは姉に駆け寄り抱きつく。
姉もベルに抱きつく。
感動の再会だった。
【読者の皆さま】
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白村
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