第三十四話 噂の真相
9月13日
ここは商店街にある雑貨屋、
マミ・タナカの店である。
最近ではマミ婆さんが若返ったと言う噂も落ち着き、
店先に人だかりが出来ることは無くなった。
マミは今は店の奥にある部屋にいる。
10畳ほどの部屋に執務机があり、
マミはそこに座り、
目の前に居る男と向き合っている。
部屋にはマミと男の他に、
男1人女2人の3人がいる。
「首尾はどうじゃ?」
「はい、そろそろバンジスの耳に噂が届く頃と思われます。」
そう言ったのはシンクロ四人組の1人、
アガンだった。
四人組はいつもの雰囲気とは全く違う空気を纏い、マミの前に並んで立っている。
目つきも真剣そのものだ。
「そうかい、餌に食い付いてくれると良いねぇ」
「でも良かったんですか?」
そう言うのはアガンの妻、メーデンだった。
続けてメーデンは言う。
「わざと噂をばら撒いてマミ様を攫わせるように仕向けるなんて」
「仕方あるまいよ、そうでもしないといつまでもバンジスを野放しのままじゃ」
「うん、この数年調査して来たけど、闇の城とバンジスが繋がってるのは間違いないのに、裁けないんだからさ。権力って厄介ね」
そう愚痴るように言ったのは、ティノだ。
「くそっ俺この街気に入ってたんだよなぁ、ベルちゃん達と別れたくないよ、サクラさんも良い人だしさぁ」
そしてグラードも、別れを惜しむような言葉を口にする。
「彼らのおかげで貧民街も救われる、バンジスにも罠を仕掛けられた、私らは仕上げといこうじゃないか。しかしリュンクスが現れたのはほんとに嬉しい誤算じゃったな」
「そりゃマミ様は若返ったから良いよね」
からかうような軽口はグラード。
「ふん、恐らくこれからわしは酷い目に会うんじゃ、それくらいは良いじゃろ?頼りにしとるからの、殺される前に何とかしておくれな」
「縁起でもない事言わないで下さい。事が起きたら迅速に動きますから、耐えて下さい、そもそもこんな無茶な事考えたのマミ様なんですから」
グラードがマミの言葉に不平を言った。
「ふん、お主らやサクラ達を信じとるからこんな無茶を思い付いたんじゃ、それにこうでもしないと貧民街が全滅じゃ、お主達、頼むぞ。」
「「「「御意!」」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから数日だったある日、
雑貨屋に訪問者があった。
「あんた、噂で若返ったって言われてるけど、それほんとかい?以前ここに婆さんが居たけど、あんたその孫とかじゃないのかい?」
この訪問者は初めてマミと話すにも関わらず、太々しい態度で言いたい事を言ってきた。全く遠慮のない話し方だ。
この訪問者は町娘風の女の子だったが、
その好感の持てる風貌とは真逆の態度と話し方だった。
その訪問者はイレーン。
闇の城のギオール支部幹部であった。
イレーンは一人でなかった。
数人の厳つい男達も一緒だった。
全員で5人。
威圧感を放ってイレーンの後ろに立っている。
マミは一人で店のカウンターにいたが、
相手が何人だろうとお構いなしに、
いつもの雰囲気を崩そうとはしない。
「なんじゃお主らは、礼儀を知らん奴らじゃな。商売の邪魔じゃ、帰れ」
イレーンはそんなマミの態度に苛立ちを覚えた。
「おとなしく質問に答えな。お前は若返った婆さんなのか?」
「だとしたらなんじゃというのじゃ、お前さんらには関係ないじゃろうが。さっさと帰れ!」
「そういう態度をとるなら容赦しないよ。若返った秘密を吐かせるまで、どんな事だってしてやる。覚悟はあるのかい?」
イレーンは凄んで見せるが、
マミは馬鹿にしたような態度で答える。
「はんっ小娘が何を言っとる。一人じゃ、か弱いばばぁの相手もできない小心者のくせに、覚悟があるのはどっちか、こっちが教えてやるわい」
「この野郎、下手に出てりゃ調子に乗りやがって。何もしないと思ったら大間違いだ。お前らやっちまいな」
「な、何をするんじゃ!わしは襲われる覚えなどないわい!」
マミは男に囲まれ、あっという間に拘束されてしまった。
本来ならばマミ程の魔法使いなら、
こんな簡単には捕まったりしないだろう。
しかし、今回に限っては、捕まってやったのだった。
シンクロ四人組は異変を察知している。
時刻は深夜だったが、
直ぐ行動に移した。
マミが連れて来られたのは、
闇の城のアジトになっている薬屋だった。
商店街とは離れた所にあり、
裏手にはバンジスの屋敷がある。
表向きは薬屋だが、
その内部は犯罪組織の拠点だった。
マミ達が事前に調査した時も、
この薬屋が拠点だろうと目星をつけていたが、確信が無かった。
しかし今回のマミ誘拐で、
間違いなく薬屋が組織の拠点だという事がはっきりした。
マミはそこの地下室に拘束されてしまった。
「あんなに威勢が良かった割には、ずいぶんしおらしくなったじゃないか?洗いざらい吐いてもらうよ」
「ふんっ誰が話すものか。」
「ふふふ、いつまでそう言ってられるか楽しみだね。おいっ」
「へい」
おいと、呼ばれたのは怪しげな男、
背中は曲がり首を前に突き出したような姿勢をしている。
そのせいのもあるのか、
身長は低いが、決して小柄ではない。
ボロいシャツに毛皮のベストを羽織り、
下は履いているのかどうか分からないが、
シャツが太ももまであり、その下は足がむき出しな格好をしている。
まるでダルマに足が生えたようだった。
男は下卑た笑みをマミに向ける。
「コイツぁたまんねぇなぁ、げっげっげっ」
マミはあからさまに嫌な顔をして、
次にイレーンを睨み付ける。
イレーンはそんなマミの眼光に一瞬気圧されそうになるが、
鎖で磔にされているマミに何か出来るわけもない。
イレーンは一瞬でもマミの眼光に怯んだ事に腹を立てた。
「やれ!」
イレーンのその一言で、
ダルマ男は鞭を取り、
マミに向けて振るった。
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白村
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