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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
29/87

第二十九話 ラスティオ・ザカローラ


こんにちは、私はラスティオ・ザカローラと申します。

親しい人にはラスティって呼ばれてます。


この街、ギオールで魔法道具屋の店員してます。

店員と言っても、

店主はほとんど店にいないので、

実質私が全部切り盛りしています。


そのおかげで、

大好きな魔法道具を好き勝手に仕入れては、

眺めています。


4ヶ月くらい前でしょうか。

店番をしているある日の事でした。


……………………………………


あ、お客さんが来たようです。


子供連れか。

兄弟?

まさか奴隷?

あ、でも奴隷にしては身なりが綺麗ね。

親子には見えないから、

やっぱり兄弟かな。


ふん、どーでもいーか。


実はあたしは今不機嫌なんです。


何故かって?

先日、縁談があったのに、

またダメになったんです。


私が美味しい物をたくさん食べると、

どの男もみんな引いて行くんです。

大食いってそんなに嫌われる事なの?


ふんっどの男もみんな同じ。

あたしがちょっと、かなり可愛いから、

すぐに釣られる癖に、

一緒に食事をするとみんな居なくなる。

そりゃぁさ、あたしも食べ物の事になると止まらなくなるけれど、

化け物でも見るような目で見ないでよね。


良いもん、あたしは魔法道具と美味しい食べ物がたくさんあったらそれだけで生きていけるんだから。


そんな事を考えていると、

お客が一冊の本を持ってきました。


「これ下さい」


あれ?これって落書きされてる本だ。

雑貨屋のマミさんに言われてる。

この本を買う者がいたら、

落書きが読めるのか確認してから売るようにと。

もし、読めるようなら、本を売ってマミさんに伝えるように言われてたっけ。

確かこの落書きは異世界の言語だとか言ってたと思うんだけど。


手に取って確かめてみたけど、間違いない。

くっでも若い男を見るとイライラするわ。


「こんな落書きされてる本を買うのかい?あんたが?」


つい、こんな言い方しちゃう。


「はい買います」


何?このクールな態度。

ちょっとまたイラっとしたわ。


「この落書き意味わかんないけど、ほんとに良いのかい?」


「ええ、買いますって」


こんな小僧が異世界語読める訳ないじゃない。買わせないよ。


「じゃぁズバリ聞くよ、これ読めるのかい?あんたが?」


「『サルでも解る魔法入門』て書いてあるんだよ。金額いくらか言ってくれないかな。」


な、何適当言ってんの?!

サル??

サルって幻獣の事?

頭きた。


ダン!


あたしはカウンターを叩いて、身を乗り出した。


嘘つきだって見破ってやる!


『ルーミーベールー見えろ』


えっ!?

な、何これ、

眩しい、

あ、青?青って何?!


「うわぁ!!」


ガタンっ


あ、あ、あ、青って

は、初めて見た。


「あ、あ、あんた!いや、あ、貴方様は、な、何者ですけ??」


あ、あーとんでもない事したのでは?

あたしやばいんでは???

これは、大魔法使い様レベルだよね?!

こんなに若いのに?!


「ふっ、貴様、さては我の魔力を見たな?勝手に見たらどうなるか解っての狼藉か?!」


「えっ?!は、はい、えーいやいやそんな、も、申し訳ありませんです!ま、まさか大魔法使い様とは知らずに、ひー、ご勘弁を!」


あ、あたし、終わったわ。

お父さんお母さん、

我が儘言ってこんな離れた街に来てごめんなさい。

でも、せめて、結婚したかったなぁ。


「ゆーるーーーす」


やっぱりだめですか。


「そんなぁ!ひーーご勘弁をぉ!…へっ?!許すって?!」


えっ!?

今、許すって??聞き間違い???


「ご勘弁をって言うから、許すって言ったんですよ。さっさと売って下さいよ」


「あ、そ、そうでげすか。えっと1万マネです」


なんか、動揺して変な言葉使いになってしまいました。

でも許されたみたいで一安心です。

この大魔法使い様は慈悲深いのですね。

よくみたら顔も良いかも。


「あ、あの、大魔法使い様。」


あたしは思わず呼び止めてしまった。


「ん?」


「また会えますか?」


あぁあたしは何を聞いているんだろ。


「んー、俺が大魔法使いになったらね」


「へ?」


なんて、間抜けな声を出してしまいした。

大魔法使い様は、大魔法使い様ではないのかな?


「あー、我の事は他言無用である」


そう言い残して大魔法使い様は行ってしまった。


それにしてもあんな魔力量初めて見ました。

それに横にいたあの可愛い女の子も、

とんでもない魔力量です。


なんか、縁談の件でイライラしてた自分がばかばかしく思います。


良い男いないかなぁ。


あたしはぼぉーっとしてました。


どれだけ時間が経ったのか分かりませんが、

結構長い間ぼぉーっとしてたと思います。


「はぁ」


何故かため息がでます。そして

大魔法使い様の顔が浮かんできます。

怖いのか優しいのか、

良く分かんない人でしたね。

でもまた会いたいと、

自然にそう思えました。


するとそこへ、突然ドアが凄い勢いで開きました。


どかん!

「おい!杖あるかー?!」


「ぎゃー〜!!」


あたしはびっくりして、

カウンターの後ろに椅子ごと倒れてしまいました。


そして突然の訪問者を見ると、


「だ、大魔法使い様?!」


こんなに早く再会できるなんて。


「うん、杖を新調しようと思ってな、ちょいと急ぎなんだ。」


「ご主人さまぁ〜はぁはぁ、早すぎますぅ」


遅れて可愛い女の子も来ました。

『ご主人さま?』

この子は兄弟ではなかったのですか?

大魔法使い様の奴隷なのでしょうか?


「この子の分も頼む」


この子の分も?

買われっ子なのでしょうか?

なんにしても、ずいぶん特別に扱われてるようですね。


あたしは平静を装って言います。


「何なんですか、ビックリし過ぎましたよ。あぁ杖ですか。」


杖、杖か、


「ちょっと待ってて下さい。大魔法使い様が満足するような杖かぁ」


「初心者の大魔法使い用で頼むよ」


「ちょっと何言ってるか解りませんが、探してみます。」


初心者の大魔法使いって、

どんな大魔法使いなんでしょ。

あ、短杖で良かったのかしら?


「短杖で良いーんですよねー?」


「お願いしまーす!」


うん、大魔法使い様が使うなら、

この辺りかな、

あの女の子の方も相当なものだよね。


あたしは高レベルの短杖を5本選んで戻りました。


「今うちにある高レベルのはこれだけです」


大魔法使い様の前に短杖を並べる。


「ベルもこっち来て一緒に選ぼう」


「はい」


ベル?この子の名前?

なんて素敵な名前。

奴隷か買われっ子か分からないけど、こんな素敵な名前を付けてあげるなんて、

この大魔法使い様は、ほんとに慈悲深いんだ。


なんだかほんとに素敵に思えてきました。

なら、お手伝いさせてください。


「大魔法使い様は何が得意ですか?」


短杖にもそれぞれ得意な属性がある。

魔法使いにも得意不得意があるように。


「家造り」


家造り?

家って、あの住む家だよね?

て事は土属性ね。


「家?!凄いですね。なら、これかな?」


あたしが選んだのは魔木から作られた短杖。

木と土は相性抜群です。


大魔法使い様は短杖を手に取って感触を確かめています。


「それは特に土魔法が使い安いと思います。」


って、あれ?!

大魔法使い様の手元から、

微妙に杖の色が変わってる!


「あっ魔力吸ってませんか?!」


「うん、なんか吸われてる」


「凄いですね。杖が喜んでるみたい。それお薦めしますよ!杖から使って欲しがってるようです!」


こんなの初めて見ました。

杖が自分の意思を伝えてるようです。

凄い、凄いです!


「え?!杖って生きてるの?」


「生きてると言えば生きてます。元々それは魔木で、土の魔素を吸って成長します。樹齢1万年とも言われる魔木で作られた杖は、持ち主を選ぶと言われてるんです。神秘的じゃありませんか??」


あ、いけない、つい話しに熱が、

でも、こんなの初めて見たんだから、

仕方ないよね。


「なるほど、では俺が選んだ訳ではなく杖が俺を選んだという事か。」


「そうとも言えますね。これは持ちたくても持てない人もいますから」


そうなのです。

この短杖は欲しくても持てない人の方が多いくらいなのです。

なのにこの大魔法使い様は、

意図せず杖に選ばれるなんて。

素敵過ぎます!


「じゃこれで」


あら、あまり感動されずに簡単に決められてしまったわ。


「あたしはこれが気になります」


ベルと呼ばれる可愛い女の子が選んだのは、

あ、ユニコーンの短杖だ。

それだって持ち主を選ぶと言われている逸品。

ま、まぁここにある上級魔法使いが持てるような杖って、そんなのばかりなんだけど、

ほとんどがあたしの趣味なのですが。


「それは一角獣のユニコーンの角で出来た杖です。特に先の方の希少な部分を使った物で、風属性が得意です。お目が高いです」


ベルさんは短杖を構えました。

まぁ、可愛らしい。


「あ」


ベルさんが声あげました。

えっ?!

まさか?!


「どうしましたか?まさか?!『ルーミーベールー 見えろ』」


あたしは見抜く魔法を行使しました。

これは魔力など、

普通目に見えない物を見抜いたり、嘘も見抜ける魔法です。


魔法の効果が発現すると、

とんでもない物が見えました。


あぁ、なんて美しいのでしょう、

短杖から、ユニコーンが出現しています!

なんていう事なの?!

ユニコーンがユニコーンが、

この子に寄り添ってる!!


「凄い!!つ、杖が!あぁなんて事、ユニコーンがあなたに恋をしてます!」


「なに?!」と言う大魔法使い様の声が聞こえた気もします。


ですが、あぁ、そんなのはどうでもいいです。


ユニコーンがこんなに美しいなんて、

しかも、なんて優しい目をしてるのかしら、


あたしはユニコーンと、

このベルという美少女に魅入られました。


「おい!」


「はっ あっ はい!」


突然現実に戻されました。

なんだかまだふわふわしています。


「いくらだ」


「あ、えっと、あぁ、ごめんなさい私…」


あ、感動が押し寄せてきます。

もぅ自分では止められない。

こんなに涙腺が緩むなんて。


「お代はいりません、ぐす、良い物見れました。その代わりまた来て下さい。ぐす。」


あたし、魔法道具屋で良かった。

大魔法使い様、また来てください。

あなたにまた会いたいです。


「それで良いなら貰うけど、ほんとに良いの?まぁ気が変わったら言って、払うから。俺は大工のサクラだ。商人アルバの知り合いでもあるから、聞けば直ぐ分かるはずだよ。」


「アルバ様の、そうですか。解りました。是非また来て下さい。ぐすっ」


大工さんなのですか。

大魔法使い様ではないのですか?

まぁもぉどっちでも良いです。


「ありがとう。これからよろしく頼むよ」


大工さんは最後に優しくそう言って、

行ってしまわれました。


大工さんは、サクラさんと言うのですね。


それからちょくちょく大工さんはベルちゃんとお店に来てくれました。


時にはポーションを買ってくれたり、

時には本を買ってくれたり。

時間がある時は少しおしゃべりも出来ました。

ベルちゃんが買われっ子だという事も知りました。

 

大工さんは見た目と違って、

おじ様のように落ち着いています。

不思議な人です。

ベルちゃんは、ラスティお姉ちゃんと呼んでくれるようになりました。

大工さんも、ラスティって呼び捨てにしてくれます。


嬉しいです。


10月12日は

ベルちゃんの誕生日だと聞かされました。

大工さんはベルちゃんを驚かそうと内緒で誕生日パーティーを企画しています。


大工さん素敵過ぎます。


だって、買われっ子にそんな事をしてあげる人はいませんよ。

ベルちゃんは幸せですね。


あたしもパーティーに招待されました。

これはプレゼントを考えなくては。


ベルちゃんが短杖を選んでる時に、

短杖を構える姿がとても可愛かったのを思い出しました。

ウィッチハットを被ったら、

きっともっと可愛いに違いありません。


あたしはベルちゃんにウィッチハットを贈る事にしました。


誕生日パーティーは、

ほんとに良いパーティーでした。

ベルちゃんも大工さんも泣いてたし、

あたしも泣いちゃいました。


そうそう、あたしはパーティーの料理を平らげたい衝動に駆られましたが、

必死に我慢しました。

だって、大工さんに見られたくないんだもん。

大食いなあたしを見たら、

きっと大工さんも離れていっちゃうから。


誕生日パーティーの翌日、

大工さんとベルちゃんがお店に来てくれました。小さい黒猫の仔猫ちゃんも一緒です。

ちょっと変わったお利口な仔猫ちゃんです。


ローブを選びに来てくれたんですが、

仔猫ちゃんが選んでくれました。

凄いですね。

良い使い魔になりそうです。


そのローブですが、

魔力を流すと防御力が上がる物なのです。

でも、あたしの知らない、その先があったんです。

さらに魔力を流すと、

なんとローブが透けて見えるようになったんです。

あたしも知らなかったのに、

大工さんが知っていて、

説明までしてくれました。


大工さん素敵過ぎます。


そのあと、ベルちゃんの服選びとか、

食事にも誘われた事があるけど、

服選びはともかく、

食事は断り続けました。


ほんとは凄く行きたかったけど、

大食いだからダメなんです。

ほんとは美味しいお店を大工さんと巡りたいって思ってるのに、

自分の大食いを呪いました。


そんなある時、

ベルちゃんの服を選んでたら、

なんとあたしの服も買ってくれたんです。


ベルちゃんとお揃いの服ですが、

あたしに服を贈ってくれたんです。


『あなたを包みたい』

と、語ってくれたのです。


とても嬉しい。

喜んで受け取りました。


あぁでもどうしよう。

直ぐに『返事』したいのに、

美味しい物を食べ出したら止まらない、

呪いのようなこの大食い。


大工さんに嫌われたくありません。


あたし、大工さんが好きです。

大工さんからも気持ちを貰いました。

こんなに嬉しいのに、

大食いが邪魔をします。

あたし、少食になれるかな……。


それから、新年が来ました。

あたしが毎年楽しみにしている新年です。

毎年1月3日までの商店街がお休みの時に、

屋台がたくさん出るからです。


美味しい屋台を見つけて、

そこで思いっきり食べ尽くすのが、

あたしの人生の楽しみ、いや、生きがいなのです。

でも、こんな事してたら、

大食いは収まりません。


そこであたしは一大決心をしました。


この3日間で、大食いは卒業しようと。

大好きなダイサクさんと結ばれる為に。


よし、この3日間で、

全て食べ尽くしてやる!

それで食べ納めにして大食いを卒業するんだ!


早速、朝から商店街へ出かけます。


「ん〜〜、良い香り〜〜」


端から食べ尽くしたい衝動に駆られますが、

ここは我慢です。


とりあえず全部のお店を見てから、

良さそうな所から食べて行きます。


あー、この店は良いですね。

ハーブの香りもします。

あたしはハーブが好きです。


食欲を駆り立てます。


一通り見ましたが、

ではまずこのお店から食べますか。


ふふふ、食べるぞぉ、食うぞぉ。


「いらっしゃい!」


「店主、この街は初めてですね?」


「お、良くわかるなお姉ちゃん、そうだよ、初めてだ、食ってくかい?」


「もちろんです。店主、食べ尽くしても良いですか?」


「へ?全部売れるならそれに越した事はないが、冷やかしなら他行きな」


「冷やかしじゃありません。どんどん出して下さい。お金はここに置きます」


店主は置かれたお金を見てぎょっとしています。

毎年この日の為に貯金しているお金です。

あたしの本気が伝わると良いですけど。


この屋台は鶏モモ焼きの屋台です。

まず一枚、焼きたてが出てきました。


「では、食べます!」


がぶっと一口。


ハーブの香りと、肉汁の旨味がお口いっぱいに広がります。


「うま〜い」


至福だわ〜


それからは勢いよく食べまくります。

店主は仰天顔ですね。


「まじかお姉ちゃん!良い食いっぷりだな!惚れたぜ!」


大食いを見ても引かないのは、

大抵はこんなおっちゃんです。


さすがに人が良くてもこんなおっちゃんとはお付き合いできません。


そんなおっちゃんの言葉を無視して、

食べまくります。


あぁ美味しい、止まらない。


結構食べたでしょうか?

ギャラリーも集まってきました。

でもまだまだ序の口です。

あたしは、これを最後に少食になるんだと思うと、何故かますます食欲がたぎります。


でもそこに声が聞こえます。


「ラスティ?!」


えっ!?


聞き覚えのあるとても好きな声。

毎日でも聴きたい声。


でも、今は聞きたくなかったその声の主に振り返ります。


「ん、あ!ふぁいふふぁん?!」


あぁ1番見られたくない人に、

1番見られたくない姿を見せてしまった。

そうよね、ダイサクさん達だって屋台にくるよね。

あーあたしの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!

何でそんな事に気が付かないの?!

食べ物が絡むと冷静な判断力が無くなるのね…。


「んー!もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ごっくん!」


「あ、ラ、ラスティさん、奇遇だね」


あぁ、やっぱり引いてる。

また失恋だ。

これが大食い最後にしようと思ってたのに…

んーん、食べ収めなんて考えなければ良かった…。


「あ、え、えと、大工さん、とんだ所を…」


恥ずかしい。

悔しい。

あたし今どんな顔してるんだろ。

せっかく服まで贈ってくれた相手に、

こんな姿を晒すなんて。


「ラスティお姉ちゃん凄い、これ全部たべたの?」


ベルちゃん、

そうよ、全部あたしが食べたの。

お化けみたいでしょ?

でも、もっと食べたいの。

止まらないの。

なんか悲しくなってきた。

あ、涙が出そう。


やだ、駄目…。


「おっさん、俺達にも鶏モモ焼きちょうだい」


「あいよ!」


「わたしも食べるにゃ」


「ベルも食べる!」


ちょっと聞き慣れない声がしたけど、

ダメ、今ダイサクさんの顔見たら涙が止まらなくなりそう…。


「ちょっと待ってくれな、そこのお嬢さんが焼き置きを全部食っちまったからな、新しいの焼くからよ、はははは!ねーちゃんすげー食いぷっりだぜ!惚れたぜ!はははははは!」


やめて、慰めにもならないから。


「俺も食いっぷりの良い女の子は好きっすよ、惚れそうだ、ははは」


えっ!?

今なんて言ったの?!

ダイサクさん?!

今なんて言ってくれたの?

本気で言ってくれたの?

それとも、ど、同情なの?!


「人間のくせに、にゃかにゃかやりそうだにゃ。ラスティ、どちらが多く食べるか勝負だにゃ、おやじ人間、あるだけ焼くにゃ、ふふふ、食うぞぉ、食うぞぉ、ふふふふ」


えっ!?誰?!

獣族?

凄い美人。

髭生えてるけど。


「お、獣族のねーちゃんか、新年早々大繁盛だな、はははは!ほいっ焼けたぜ!」


「美味い!!こりゃぁたくさん食いたくなる。」


「ほんと、美味しいの」


「もぐもぐ、オヤジ人間、むぐむぐ、にゃかにゃか、ごくん、美味いではにゃいか、どんどん焼くにょだ。」


「ふふふ、そうだろう?自慢の鶏モモだぜ」


そうなの、美味しいからたくさん食べたいの。

ていうか、

この獣族の美人さん、

凄くない?

あたしと同じくらいの速さで食べてる!

あ、あたしの分が…。


「お前、どこにその量が入ってんだよ、腹出ねぇのが不思議だぞ」


「もぐもぐ、お前達人間と、がつがつ、出来が違うにょだよ、ごくん!まだまだ満たされん。ラスティ、わたしが全部平らげてしまうぞ、ふふふふ」


やだ、あたしの分も無くなっちゃう。

この獣族何者なの?

もぉ、どうせダイサクさんに見られてるんだ。

もう、やけ食いよ!!


「た、食べさせていただきます!」


あたしと獣族の美女は、

あっという間に鶏モモ焼きを食べ尽くしました。


「閉店だ!また明日やるから来てくれな!」


「にゃかにゃかであった。ダイサク次行くぞ。ラスティ、美味い店を教えるにょだ」


この美人はやっぱりダイサクさんの知り合いで間違いないみたい。

もう流れでこのまま食べ尽くしてやる。

獣族の美人さん勝負よ。


「はい、次は串焼きの美味しい屋台ですよ」


「二人とも凄いの、ベルもたくさん食べたら大きくなれるかな?」


「ベル、食べ過ぎると横に大きくなるから、やめておきな、この二人が特別なんだよ」


「そうかぁ、ベルも美味しいのいっぱい食べたぁい」


うう、そんな事ダイサクさんが言わないで。

やっぱりさっきの食いっぷりが良い女の子が好きって発言は、

気を使って言ってくれただけなんだ。


でも、確かめずにはいられない。

ここは勇気を持つのよ。


「あの、大工さんは、大食いな女は嫌いじゃないんですか?」


「なんで?見ていて清々しいよ。嫌いになる理由が分からない、それにそんなに食べても太らないなんて羨ましいしね。」


ほ、ほんとに??

信じて良いの?

嫌らってないの?!


「そんな事言われたの初めて。私がたくさん食べると、みんな引いてしまって…」


「そうなんだ、みんな心と胃袋が狭いんだね、ははは、それに…」


いつもの声、

いつもの感じ、

やっぱりこの人素敵です。

素敵過ぎます。

良かった、嫌われてない!


そう思ったら、急にまた食欲が。


「あ、そこの串焼きです!とても美味しいんですよ!」


ダイサクさんが何か言ってた気がしたけど、

嬉しくてつい話を遮ってしまった。

美味しい屋台をどんどん紹介したい。


「わぁ、ほんとに美味しそうなの」


「うむ、他にょ屋台とは違うようだにゃ」


「ほんとだ、美味そうだ。ラスティ、いつも世話になってるし、今日は奢るから思う存分食べて」


「うむ、勝負にゃ」


「えっでもそれじゃ」


えっ、あたし今日の為にお金貯めてたの、

それにあたしの食べる量だとお金足りなくなるよ。


そんな心配とは裏腹に、

ダイサクさんは屋台のおじさんに注文してしまいました。


「らっしゃい、いくつ?」


「ありったけ焼いてくれ」


「ん?ありったけ?」


屋台のおじさんはあたしの顔を見てきました。

ちょっと驚いたようすです。


「うおっ大食い魔女?!」


げっ

なんて事言うのこのオヤジ。

ただでさえダイサクさんに見られて恥ずかしいのに、

その二つ名まで…。


「大食い魔女って?」


ベルちゃん聞かないで。


「あぁ毎年美味いと思う店に現れては、全部平らげてくれる有り難い魔女様だ。大食い魔女様が来てくれるって事は、味が認められたって事だし、全部食ってくれるから、俺達にはとっても有り難い魔女様なんだ。ほら、あっちの屋台の看板見てみな」


屋台の親父が指す看板を見ると、


『大食い魔女様が来た屋台』と看板が出ています。


ぶっ

そんな恥ずかしい看板があるなんて知りませんでした。


「ラスティお姉ちゃん凄いの」


ベルちゃん言わないで。


「ほんとだ、ラスティすげー、おっちゃん、今日は魔女様と幻獣様の二名だ。どんどん焼いてくれ」


ダイサクさんまでなんて事を。

幻獣様とかって言っちゃってるし。


でも、恥ずかしいけどそんなに嫌じゃないかも。

この獣族美人と一緒だから少し楽なのかな?


たくさん食べて良いなんて、

初めて言われたかもしれない。

んーん、好きな人に言われたのは初めて。


ダイサクさん、あたしにはあなたしか居ません。


「ふふふ、全て食い尽くすにょだ。早く焼くにょだ」


「嬉しいねぇ、これで俺も看板が出せるぜ、がはははは!」


あたしは出された串焼きを、

獣族美人と一緒に食べ出します。

もう迷いはありません。


あぁなんて美味しいんでしょ。

今までで一番美味しいかも知れません。


そしてとても幸せです。


でも、さすがに呆れられてないかしら。

と、思ったら。


「なぁラスティ」


と、声をかけられました。


「もぐもぐ、はい?」


「今度デートしよー」


えっ?!

聞き違いじゃないよね?


「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ…ごくん…」


あたしは急いで飲み込んで、


「こ、こんなあたしで、良ければ…」


こう答えた。


ダイサクさんの温かい笑顔が、

とても印象的でした。




【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

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