表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
26/87

第二十六話 平穏な日々

12月1日


日雇い開始からニ週間経った。


12月と言えば、

日本では寒い季節だが、

この国には四季は無い。

多少の気温の変動はあるものの、

年間を通して穏やかな気候だ。


穏やかと言えば、

最初のウラの襲撃以来何事もなく、

平穏な日々が続いている。

仕事の方も忙しくあるが、順調に進んでいる。


最初の襲撃から一ヵ月。

マミちゃんにもその後何もないのか尋ねたけど、

今はまだ探ってる最中だと言われた。

バンジスはなかなか尻尾を出さないらしい。


襲撃されるのを望んでいる訳ではないが、

何も無いというのが不気味だ。


まぁいつ来ても良いように備えるしかないか。


俺は現場を見やる。

労働者のみなさんは、だいぶ仕事に慣れたようだ。

最近の集まる人数は20人前後。

ほとんどがリピーターだった。

リーダーになる人も決まって来た。

その中にベルの父親もいる。

人を纏める素質があるようだが、

初めて会った時からベルの父親には、

何か違う物を感じる。

立ち居振る舞いがちょっと違うんだよね。

それが何故かは分からないのだけれど。


それはさておき、

全体的に良い傾向だ。

このまま育っていくと良いな。


瓦礫もだいぶ減った。

瓦礫に埋もれてた未解体部分がだいぶ出て現れてきている。

そろそろ解体を再開しないと、

労働者さん達の手が空いてしまうな。


当初の予定では、

解体する間は、労働者さん達には休んでもらうつもりだった。

一週間毎に解体と瓦礫運びをするつもりだったが、せっかく慣れた労働者さん達を休ませるのは勿体ないと思い始めた。

だからと言って、みんなが見てる前で、

俺とベルで魔法をバンバン使って解体する訳にもいかない。


一度解体風景を商人アルバに見てもらった事があったが、


「やはり!」


と言って喜んでいた。

アルバによれば、

俺達は既に、冒険者ランクで言うところの、

白金級かエメラルド級ではないかと言う事だ。


ハテナ顔の俺にアルバは説明してくれた。


冒険者にはランクがあって、

下から、


白金

エメラルド

サファイア

ルビー

ダイアモンド

アレキサンドライト


この9段階

通常、白金級なら、5年以上、

エメラルド級なら10年以上、

冒険者として修行しなければ成れないらしい。


そう言われるとなんとなく凄いんだなと納得する。


まぁ、俺はともかく、ベルがそんなレベルの魔法をみんなの前で行使する訳にもいかない。

俺もあまり強力な魔法を行使し過ぎると、

皆が怯えてしまうかも知れない。


さて、どーしたものか。


と、思案している俺に声がかかる。


「あの、旦那様」


「あ、はい?」


見上げるとベルの父親が恐縮してる。


「あの、休憩してもよろしいですか?」


えっ

俺はベルを見る。


「少し前にお昼の鐘鳴ったの」


考え事に夢中で気が付かなかった。


「あぁ、すいません、休憩にして下さい」


ベルの父親は昼休みだと皆に伝えに行った。


「俺達も飯にしよう」


昼休みも考える。

瓦礫のそばに立ち、

残りの未解体部分を見上げる


まだまだ2階部分も残っている。


下を見ると細かい瓦礫が結構ある。


これ集めるの大変だよな。

もっとこう、

ちょうど良い大きさで解体出来ないかなぁ。


ふと、木の棒が目に止まった。


「これ木刀になるかな」


棒を手に取る。

棒を見つめ目を閉じる。

棒に魔力を流してラップするイメージ。


出来た!


目を開けて棒を構える。

未解体の柱を魔力を帯びた棒で叩く。


ガンッ


柱に棒が減り込んだが、

棒も壊れた。


「ありゃダメか」


『ふん、当然だな』


「大ちゃん凄いの、なんかかっこよかったの」


いつのまにか俺の所に来ていた二人に言われた。


「あら見てたのね。ルース、この柱とか、粉々にするんじゃなくて、スパッと切る事出来ないかな」


『出来ない事も無い』


「棒じゃなくて、もっと丈夫な剣とかだったらできるか?」


『切れるとは思うが、剣なら数回が限界だろう』


「氷が貫通するのに、剣でも数回なんだ」


『ふむ、氷はそもそも魔力で作った物だ、魔力で作った物に魔力を纏わせるのと、そうで無い物に纏わせるのとでは全然違う。オリハルコンなど、魔力と相性の良い物ならば、スパスパできると思うがな』


あーなるほど、

そういう事か。


『ふむ、これならどうだ?ちょっとどいてみろ』


ルースは柱から離れた所から、

猫パンチをした。

目にも止まらぬ右フック。


ザシュッと音と共に、

柱は斬られていた。


なぬっ?!


「すげー猫パンチだ。どうやった?」


『猫パ…解る言葉を言え。正体は水だ。水をナイフのように鋭くし、魔力を込めて打ち出している。』


「あぁなるほど、水のカッターか」


「凄いの、ベルもできる?」


『簡単な水魔法だ。ベルでもできる、お主もやってみろ』


俺はルースの指導の元、

水カッターを何度も試して、

昼休みが終わる頃にはなんとか、

柱を3分の2程度まで抉る事ができた。


労働者さん達もいつのまにか周りに集まってきて俺の練習の様子を見ていた。


「旦那様は魔法使い様だったんですね」


そう言うのはベルの父親だ。


「大した魔法使いじゃないけどね。これからこんな感じで切ってやろうと思ってます。

この方が運びやすいでしょうから」


練習を見られていたのはかえって都合が良い。

いきなり凄い魔法を見せられるよりは、

ちゃんと練習して上達してるんだよって所も知ってれば、怖がらせる事も無いだろう。


「確かにそうですね。細かい瓦礫は集めるのも運ぶのも面倒ですから。」


「では、俺はこれからちゃんときれいに切断できるように頑張ってますので、何かあれば声をかけて下さい。」


「はい、分かりました旦那様」


さて、練習練習。


とりあえずベルには『見る』だけにしてもらって、みんなが見てない所で実践させてやろう。


ルースはと言えば、

いつのまにか日向で丸まって寝ていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


今日も一日が終わる。


俺はと言えば、

午後はずっと水カッターの練習をしていたが、なかなかルースのようにはいかなかった。


皆に今日の分の手間賃を渡してからも、

どうしたらいいのか考えていた。


何か道具が有れば、

壊れない剣が有れば切れるのではないか?


水カッターを行使する上で、

俺とルースの決定的な差は、

ルースは水の生成から射出までを同時に行ってるが、俺はまだまだ同時には出来ない。

しかもルースは猫の姿のままで人型にすらなっていないのにあの威力だ。


ん?猫の姿のまま…?


ルースは鋭い猫パンチを放っていた。

俺はどうだ?


ただ短杖を水平に振ってただけだ。


ふむ、試してみるか。


俺は短杖を竹刀に見立てて、

上段に短杖を構える。

まぁ短杖と竹刀とでは差があり過ぎて、

左手は添えるだけになった。


呼吸を合わせて、

気合いを入れる。


「えいっ!」


腹から声をあげ、

一閃、袈裟斬りの動作で短杖を振り下ろす。


バシュッと音を立てて石の柱は斬られた。


『うむ、出来たじゃぁないか、上出来だ』


「大ちゃん凄い」


以前、ルースがタイミングだと言っていたが、意味を理解した。

タイミングと言うより、

リズムと呼吸か。


リズムは重要だ。

バイクならブレーキングで俺はコーナーに入るきっかけを作り、そこからリズムに乗せて体重移動してコーナーに突っ込む。

スキーならストックを付いてリズムを取り体重移動する。

ゴルフもそうだ。チャーシューメーンと言ってリズムを取っている。

初心者にはなかなかこのリズムが分からないものだ、しかしこのリズムを感覚的に覚えると格段に上達が早くなる。


俺は掴んだ体内魔力操作のリズム感を忘れないように、

袈裟斬りを繰り返した。


良し。


「ベル、全部『見てた』かい?」


「うん、見てた、でもなんかね、今までの『見る』と違って、身体でも分かったの、うまく言えないんだけど、すぐ真似出来そうな感じなの」


おっと、ここに来てベルもレベルが上がったようだ。これは将来がますます楽しみだ。


「凄いぞベル、やってみるか?」


「うん」


ベルは自分の短杖を取り出し、

俺と同じように上段に構えた。


紛れもなく俺と同じ姿勢、構え、

手の形まで一緒だ。


「ふぅぅ… えいっ!」


一歩強く踏み込み、体重を乗せた振り。


上手い。


バシュッと音を立てて柱が斬れた。

俺の練習と合わせて何箇所も斬られた柱は、

ついに崩れた。


「ふぅ」とため息をつくベル。


ん?何故ため息を?

俺はため息なんてしてないよな。

ベルをよく見ると、

若干顔色が悪い。


「ベル大丈夫か?おいルース!」


『ん?おい魔力疲労だぞ、どういう事だ?』


「ん、大丈夫なの、なんか見てたら疲れたの」


俺はベルをお姫様抱っこした。


「大ちゃん?」


「ベル、一度見ただけで全部覚えるなんて凄いなお前は。でも多分、その『見える』能力でたくさん魔力を使ったみたいだ。気付かなかったよ、ごめんな。これからは気をつけような」


「うん、ありがとう」


『どういう事だ?』


「ルース、ベルの『見える』能力が向上してたんだよ。それが思ったより魔力を使ってたみたいだ」


『ふむ、そういう事か、すまん、私もうっかりしていた』


「んーん、二人とも優しいの、ベル嬉しい、うふふ」


『まぁ休んでいれば収まるからな』


「今日は帰ろうか、ゆっくり休もう」


「うん!」


ベルは俺の首に抱きついてきた。

なんか久しぶりだな。


ここのところ忙しくてかまってやれてなかった。

だから一生懸命だったのかも知れない。


これからはもっとかまってあげよう。


あと、ベルに剣道を教えるのも良いかも知れない。


美少女魔法剣士ベル。


カッコいいじゃない。


飲み込みの早いベルなら、

直ぐに覚えるだろう。


俺はそんな事を思いながら、

ベルを抱っこしたまま宿に戻って行った。






【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ