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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
24/87

第二十四話 解体開始

11月7日


朝が来た。

いつもの朝だ。


俺にしがみついて寝ているベル、

俺の上で丸まって寝てる仔猫。


外からは鳥の囀りが聞こえる。


俺はベルの頭に手をやり、

起こさないように優しく撫でる。


良い朝だ。

あどけない寝顔に癒される。


さて、

今日はいよいよマルコス様邸の解体開始だ。

ちょっとだけ胸が高鳴る。


「くかぁ……はぁぁ」


ルースがアクビして起きた。

とんっと猫らしい動きで床に降りて、

伸びをする。


俺は猫を目で追い、そしてベルを見やる。


ベルはもぞもぞと動いて、

顔全体を俺に擦り付けるような動作をする。


「ん、きゅぅぅぅ……ぷはぁ」


ぷはぁと顔を上げ、寝ぼけ眼で見上げて来て、にまっと笑う。


「へへへぇ」


へへへって、

即死級の可愛さだ。

萌え即死。


「なでなで気持ちいーの、おはようなの」


撫でてたっけ。


「おはようベル」


「ルースおはようなの」


「にゃぁ」


「さぁ今日から肉体労働だぞ。頑張って働こう」


「おー」


もぞもぞと起き出して身支度。

俺は久々にニッカポッカを着ることにした。

この世界に来た時に着ていた作業服だ。


この世界にはニッカなんて無いので、

珍しい目で注目されるかも知れないが、

今日はこれを着たい気分なのだ。


『なんだその服装は?』


「脚が膨らんでて面白いの」


「これはニッカポッカと言って、俺のいた日本の作業服だよ。動き安くて疲れないんだ。」


『ほぅ疲れない魔法が付与されてるのか?』


「凄いの」


「そう言う訳ではないんだけどね」


今日のベルは、

動き安さを考えた、

ポニーテールに

半袖シャツの上に丈の短めのベスト、

ショートパンツに、

ロングブーツ姿だ。


女の子の服なんて何を選んだら良いのか俺にはさっぱりだ。

なので、いつも魔法道具屋のラスティに暇な時に付き合って貰い、服を選んで貰ったりしている。

いつも買い物に付き合って貰ってるので、お礼にと思ってベルとお揃いの服を買ってあげた事があった。

その時のラスティは何故か顔を真っ赤にして、服を受け取ってくれた。

俺が想像してた反応と違ったが、まぁ喜んで貰えて良かったと思った。

今、ベルが着ている服もラスティチョイスだ。

何気にラスティはセンスが良い。


「にゃぁ」


「ん?どうしたルース?」


ルースはぴょんと俺の頭に乗り、

『魔力吸収マジカルドレイン』を発動した。


「え?!おいルース?」


俺の魔力を吸って床に降りるルース。

そしてみるみる猫髭美少女に変身した。


「どうしたんだよいきなり、敵か?」


「いや、今日は私も人族にょ朝飯を食べようと思ってにゃ」


かくっ


「なんだよ一言いってからやれよ、びっくりするじゃん」


「ルースもベルと一緒の食べるの?」


「そうだ、たまには葉っぱ以外も食べたくにゃってにゃ」


無視かよ、このにゃんこめ。

その姿でも葉っぱだけ食わしてやるぞ。


「支度が終わったにゃら行くにゃ」


「お前が仕切るなよ」


「あはは、大ちゃん面白い」


俺達は食堂に行き、

いつもの席に座る。


店主のカリオスが注文を聞きに来た。


「おい、この美人は誰だ?人んちの宿に連れ込んでんじゃねぇぞって、ん?獣族か?」


あ、そうだった、カリオスはルースの正体知らないんだった。

んもぉめんどくせー猫だな。


「おい店主」


「ん?なんだ偉そうに」


「私にょ目をよく見るにゃ」


「ん?」


・・・・・


「店主、いつもにょ『さんどういっち』と言う奴をベルと私の分にゃ」


「ん?あ、あぁそうだな、お前は?コーヒーだけか?」


「あ、いや、俺もサンドウィッチを頼む。あとコーヒーとジュース2つだ」


「ふん」


カリオスは店の奥に引っ込む。

ルースが何をしたのか察しはつくが、


「ルース何をした?」


「ちょっとした催眠だにゃ、半日もすれば効果はにゃくにゃるにゃ」


「あらそ」


しばらく待ってサンドウィッチが出て来た。


「「いただきます」」


「にゃぜお前達はいつも、いただきますと言うにょだ?」


あー説明めんどくせ


中略


「命を頂くか、お主は変わった事を考えるにゃ」


「もぐもぐ、俺の国は、むぐむぐ、そういうのを大切にする民族なのさ、ごくん」


「はむはむ、ルースもこれからは、もぐもぐ、言おうね、ごくん、とおとい意味なんだよ」


「がぶがぶ、ベルたんは偉いね、もぐもぐ、ルース見習え」


「がぶ、…もぐもぐ…ごくん。にゃかにゃかイケる食べ物だにゃ」


「がぶがぶ、おい人の話し、もぐもぐ、聞いてるのか?ごくん」


「はむはむ、でしょー、もぐもぐ、ベルのお気に入りなんだよ、ごくん」


「がぶがぶ、うむ、これにゃら毎日、もぐもぐ、食べてやってもいいにゃ、ごくん」


「もぐもぐ、お前何で毎日、むぐむぐ、葉っぱ食ってたんだよ、ごくん」


「がぶがぶ、葉っぱの味しか、もぐもぐ、知らにゃかったからだにゃ、ごくん」


「もぐもぐ、何だそりゃ?ごくん」


「「「ごくごくごくごく、ぷはぁ」」」


「これも美味いにゃ!」


「オレンジジュースなの」


「おい、髭に何か付いてるぞ」


「にゃ?」


「おいその姿で顔を洗うな」


「あははルース可愛い」


何やってんだか


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


さて、マルコス様邸に来た。

今は誰もいない。


どーんと建っている目の前の建物は、

およそ築100年、総床面積は500坪を超える大豪邸だ。


今からこれを解体していく訳だが、

ただ解体じゃつまらない。


本来ならば、解体には人手を使い、

徐々に上から壊し、

瓦礫を運び、

また壊しては瓦礫を運ぶ。

人力で壊していくので、

時間も労力もかかり、

それだけ費用も嵩む。


通常のやり方だと、

この建物なら3ヶ月はかかるだろう。


しかしだ、ここは日本ではない。

魔法が存在する素敵世界なのだ。


と、言う訳で、

俺とベルとで、

この建物を魔法の練習台にしようと思う。


だって壊したい放題で、

いろいろと試せる機会なんて早々無い。

威力の検証にもなるし、解体は出来るし、

あわよくば数日で壊す事が出来れば、

期間の大幅短縮にもなる。

一石何鳥だって話し。


マルコス子爵様には既に許可を得ている。

気になる埃も敷地が広大な上に周りは高い塀で囲まれているので、問題は何も無いのだ。


「さて、どうする?」

「どうするの?」


いざ魔法を行使!と思うと、

何から始めたものか迷ってしまう。


『破壊すれば良いんだろ?私が一瞬で消し飛ばしてやろうか?』


「いやいやいやいや、待て待て待て待て、それじゃ俺とベルの練習にならないだろ。しかも消し飛ばすってあんた、近所にも被害がでそうだぞ。ルースは手出し無用だ」


『ふん、つまらん』


とりあえず試すのは、

アレだな。

氷の魔法だ。


「ベル、氷の魔法をぶつけてみよう」


「うん」


俺とベルは短杖を出す。

短杖を出すのも久しぶりだな。


イメージは氷の槍。

なるべく大きくて硬い氷。


杖を構えて魔力を杖に注ぐ。


杖の先に細長い氷が出現した。

氷はイメージ通り大きくなっていく。

ベルの方も俺と同じく長細い氷の固まりが、

杖の先に出来上がって行く。


名付けて


氷柱砲アイシクルキャノン!」


杖の先から空気の衝撃波を残して氷塊はとんでもない勢いですっ飛んでいく。

建物の最上階にあたる3階の中央辺りに命中。


氷塊は建物に直径1メートルくらいの穴をを穿ち、

氷塊自体も粉々に砕け散る。


建物は石材なので、

流石に氷では貫通は出来ない。


氷柱砲アイシクルキャノン!」


続いてベルも氷塊を放つ

俺が開けた穴に氷塊が命中、

当たった向こうの天井部分が少し崩れた。


「ベルすげー。俺と威力変わらないじゃん」


「へへへ」


壊れた辺りを『魔視力マジカルアイ ズーム』で観察してみた。

なかなかの破壊力だ。


『なっとらんな』


ルースからダメ出しされた。

そりゃルースからしたらダメかもしんないけどさぁーあ


『お主達、魔力が有り余ってるんだから、氷塊に魔力を纏わせてみろ』


なぬ?


「纏わせる?」


『そうだ、氷塊に魔力を纏わせれば砕け散る事は無い。やってみろ』


「なるほど、ちょいと小さな氷で試してみるよ」


『うむ、見せてみろ』


俺は目を閉じて小さな氷塊のイメージを考える。

初めて行使する魔法は、

最初だけはイメージしやすいように、

俺は目を閉じている。


そうだな、形は短い矢、

ちょいと太めのボーガンの矢をイメージ。

そうだ回転を加えてみよう。

高速で回転。

そして魔力で包むイメージ。

いや、魔力でラップするイメージに修正。

目を開ける。


短杖の先にはイメージ通りの氷塊が高速回転している。


『ほぉ』


よし、技名も決まった。

名付けて、


氷柱矢アイシクルアロー!」


ヒュンッと風切り音を立てて氷柱矢アイシクルアローは飛んでいく。

ほぼ時間差無しにバキッと建物に当たる。


「どうなった?よく見えなかった」


「大ちゃん凄い、氷壊れないで飛んでっちゃった」


「まじで?すげ〜」


『うむ、なかなかの出来だ。回転を加えるとは良いアイデアだぞ、どれ、手本を見せよう』


そう言うとルースはまた俺の頭に乗り、

魔力を持ってった。

そして猫髭娘に変身する。


「おいルース、手本は良いけど近所迷惑するなよ」


「心得てるにゃ、心配するにゃ」


てかさぁ、念話と猫髭娘の時とのギャップが激しくて笑いそうなんだけど。


ルースはそんな俺にお構い無しに、

人差し指を建物に向ける。


氷柱矢アイシクルアロー


ヒュンっ バガァーン


「えっ?!」


人差し指から何か出たか?

見えなかった。

レベルが違い過ぎる。

しかも命中した辺りが半径60センチくらい爆破されたように壊れている。


「ルースすご〜〜〜い」

「何したのかわかんねーよ、手本にもならないじゃん」


「ただ魔力を纏わせただけにゃら貫通するだけにゃ、魔力にちょいと細工する事で爆裂させる事ができるにゃ。魔力次第でどうとでも変わるにゃ」


なるほど、それは良い事を聞いた。


「じゃぁ氷柱砲アイシクルキャノンにそれやったら、結構な威力になるかな」


「うむ、相当にゃもにょではにゃいかにゃ」


この世界で魔法に触れてから約三ヶ月半。

自分に魔力があると言われたけど、

全く自覚は無かった。

大魔法使い?賢者?

何それ美味しいの?


それからマミちゃんと出逢った。

最初は収納魔法が覚えたかった。

炊き出しの道具を仕舞う為に。


しかし覚えさせられたのは体内魔力操作だった。

何故か何も疑問に思いもせずに魔石をいじっていた。

そして、マミちゃんにいろいろ教え込まれているうちに、魔法に馴染んでいた。


空間

などなど、


いろいろと教えてもらった。


俺が魔法を使っている。

それが当たり前になっていた。


信じられるか?俺、魔法使いなんだぜ。


それにしても、改めてルースの凄さが分かる。

氷柱砲アイシクルキャノン、

氷柱矢アイシクルアローにしても、

ルースがやると別の物なんだよな。


俺達は、短杖の先に氷塊を生成してから打ち出す。

しかし、ルースは生成される氷塊すら見えずに瞬間的に打ち出している。


ルース曰く、

『全て同時』に行っているのだそうだ。


生成

魔力を纏わせる

発射


これを同時。

つまり、発射と同時に生成が始まるから、

人の目には何もないように見えるのだそうだ。


なるほどと、納得はしたが、

納得できねーよ。


発射から着弾までの、

あの短時間で生成してるなんて、

やはり幻獣だけに、人間技では無い。


『タイミングを掴め』


ルースはそう言った。

タイミング?

ルースはタイミングとコツさえ掴めばすぐに上達すると言った。


練習あるのみね。


そうそう、

いつもこんな感じで、

いつの間にか魔法の練習してるんだよな。


まぁ嫌いでは無いし、

むしろ楽しいからやってるんだけどね。


俺とベルはルースの指導の元、

魔力疲労を起こさない程度に練習を繰り返した。


いちお言っておくが、

これは解体作業の一環なので、

俺達は仕事をしているのだ。


それにしても、

でかい建物だ。

まだまだ壊すにも時間かかるし、

瓦礫を運び出すのも時間がかかるだろうな。


こうして解体1日目は終わった。






【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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