第二十一話 不穏な情報
マミ婆さんの所に戻ると、
シンクロ四人組が来ていた。
「マミさんマジ綺麗だぜ!」
「いやぁすげー」
などと聞こえる。
なんだ??
「やぁみなさんこんにちは」
四人組に声をかける。
「「「「あ、サクラさん、こんちは!!」」」」
なんかこの四人、スキルシンクロに更に磨きがかかってないか?
「昨日はありがとう!」
ベルが誕生日の礼を言う。
「「「「どういたしまして」」」」
こいつらわざとやってるよな?
なんかそれぞれ声に高低があるから、
ハモって聞こえるんだよな。
なんかみんな俺を見てニヤニヤしてる。
なんなんだ?
雑貨屋に入る。
「なんじゃサクラ、戻ってきたのか」
「お、あら?!?、」
思わずのけぞって変な声あげちまった、
だって、目の前にすげー美人がいる。
誰?!
「「「「ぎゃはははは!」」」」
シンクロした爆笑が聞こえる。
『ふんっ思ったより若返ってるみたいだな』
ルースが念話でそう言った。
若返り?!
ベルはキョロキョロしてマミ婆さんを探すがマミ婆さんはどこにもいない。
そして目の前の美女を見て恐る恐る言った。
「お婆ちゃん?」
「あぁ、そうだよ、お婆ちゃんだよベルちゃん」
パッとベルの顔が明るくなる。
「凄いお婆ちゃん!美人さんになってる!!」
そう言って美女に抱きつく美少女。
絵になる。
とりあえず状況は飲み込めた。
『血だな?』
『あぁ、血だ』
……………………………………
「おお、似合いますね」
「マミさん可愛いっす」
俺が買ってきたローブをさっそく纏ったマミ元婆さんを、
シンクロ四人組がを褒めている。
若返っても同じ服装にローブを纏っていたので、俺が贈ろうと思って買ってきたローブはちょうど良かった。
あの婆さんが今は20代前半か、
下手したら10代でも通用しそうに若返ってる。
リュンクスの血恐るべし。
まぁ、老婆に似合いそうなローブと言って選んだのは内緒だ。
若返ったマミ元婆さん、面倒だからマミちゃんでいいか。
四人組には若返った理由を、
たまたまリュンクスの血があったから舐めたと言ったらしい。
ラッキーだったぜなどと言っている。
まぁ嘘ではないが、
伝説級のリュンクスの血が早々ある訳無いのに、四人組はすっかり「「「「そんなラッキーにあやかりたい」」」」などと言っている。
アホ四人組だな。
ここにそのリュンクスがいるんだけどな。
『なんか言ったか?』
『いやなんも』
『ふんっ言っとくが、私はマミは好かんかったんだ。それがあんな、きょ、美女になるとはな』
今巨乳って言いそうになってたよな?
念話の声は女の声なんだが、リュンクスは巨乳好きか?
まぁ俺は控え目な方が好きだ。
というか幻獣でも人族の見た目は気になるのか?!
まぁどーでもいーか。
「マミちゃん、そのローブを気に入って貰って良かったよ。じゃ俺達はこれで失礼するよ。」
「まちな、話があるんじゃ」
「その年季を感じる話し方なんとかならんの?せっかく若くなったのに」
「ほっとけ、話しとは、こないだお前さんがビンタした奴の事じゃ。」
あいつか。
何か解ったのか?
「おっと、ベルちゃんや、そこの四人と遊んどいで、これから難しい話をするから、退屈じゃろうからな。」
「ベルちゃんお話ししよ!そのローブ可愛いね」
「うん!」
ベルは四人と連れ立って、
店先で歓談をする。
ベルに聞かせるような内容ではないか。
「マミちゃん、奴がどうかしたのか?」
「奴の事が解ったから、お前さんに教えてやろうと思ってねぇ」
『おい、奴とは何だ?』
あぁ、ルースは知らないな。
俺は昨日の出来事をルースに説明した。
『お主は甘いな』
ルースはそう言って仔猫らしくアクビをして丸まって寝てしまった。
俺が甘いって?
猪木のビンタより強烈なビンタだったと思うがね。
それにしてもマミちゃんだ。
奴の事が解ったって言うけど、
マミちゃん探偵か何かか?
「マミちゃんは何者だ?」
俺は疑問をそのまま投げかけた。
「ん?私か?」
ちょっと意外そうな返事をして、
マミちゃんは答えた。
「情報屋ってところかね。私の裏の顔になるのかの。入り口の四人も仲間さ、雑貨屋なんてやってるが、カモフラージュにはちょうど良いんじゃよ。ひゃひゃひゃひゃ」
情報屋?!
まじか、ちょっと驚きだ。
住む世界が違う人の話しだと思ってたが、
こんな身近に居たとは。
まぁ異世界だから、住む世界は違ってたんだけどな。
というより、物語の中だけの職業と思ってた。ほんとに居るとは。
そんなマミちゃんは、
驚く俺をほっといて話し出す。
「まず奴の名前はウラ。悪党を絵に描いたような奴じゃ…。」
マミちゃんが仕入れた情報によると、
このウラと言う男、悪事なら何でもする。
強盗、傷害はもちろん、誘拐や殺人も。
そして特に胸糞悪いのは、貧民街で気に入った子を見つけると、まずは自分で散々オモチャにした挙句に売るらしい。
とんでもないクズ野郎だった。
もっと徹底的に痛めつけてやれば良かった。
ベルがこいつの毒牙にかかるところだったと思うと、身震いがする。
でも、ベルのお姉さんが既にこいつに買われてしまってる。胸が締め付けられる思いだ。
しかしそんな悪い奴が、何故捕まらずにいられるのか?
答えは、裏で操ってる黒幕がいるそうだ。
そしてその黒幕が権力者で、ウラが捕まらないように陰で操作してるらしい。
黒幕の権力者か。
悪代官といったところか。
金に目が眩んで悪事に手を出す権力者。
どこの世界にもいるんだな。
さらには奴隷をも貢がせてるらしい。
お前の血は何色だ?
そしてその黒幕が、何を隠そう、
この街を収めている一人、子爵のバンジス・ジ・ギオールだ。
厄介な事に、ギオールの街の権力者No.2に位置していて、逆らえる奴が殆どいないらしい。
そして貧民街改革の反対派筆頭だ。
そりゃそうだろうな、貧民街が無くなれば、
甘い汁は吸えなくなる。
こいつさえ居なくなれば、
貧民街改革は可決されるだろう。
くそ殺してやりたいくらいだ。
もっとも、ほんとに人は殺した事なんてないし、俺が他人を殺せるとも思えない。
ボクシングや空手をやってたとは言え、
あれはルールに守られた上での競技だ。
殺し合いではない。
しかしそんな権力者がバックにいるとは、
俺、けっこうヤバいんじゃないか?
俺がそのバンジスという子爵なら、
罪をでっち上げて俺をしょっ引く。
それからはやりたい放題だろう。
当然ベルも捕まる。
あ、でもベルは俺との名付けの契約で、
俺に付き従うように縛られている。
俺が命令しなければ、ベルだけでも大丈夫か?
そこで一つの疑問が浮かんだ。
俺が死んだら契約はどうなる?
一通り話を聞いて考え込む俺は、
マミちゃんに尋ねる。
「俺がもし死んだらベルはどうなる?」
「名付けの契約じゃな?それは無効になる。新たな契約でもしない限り、ベルちゃんを縛る物は無くなる」
て事は、捕まれば俺は確実に殺される訳だな。そして強制的にベルは他の誰かと契約させられるだろう。
最悪だ。
これはかなりまずい。
でっち上げられた罪で、俺を捕まえに兵隊でも寄越されたら抵抗できない。
日本なら公務執行妨害、この国なら反逆罪か何かか?とにかく抵抗した時点で冤罪ではない、ほんとの罪が確定してしまうだろう。
「事の重大さが解っておるようじゃな。じゃが、お前さんには切り札があるじゃろう。」
「切り札?」
マミちゃんは視線をカウンターで丸まっている仔猫にうつす。
「ルースか…」
「うむ、そして、私じゃ」
ルースが戦力としての切り札なら解るが、
マミちゃんが切り札?
「どうしてマミちゃんが切り札なんだよ?」
「ひゃひゃひゃひゃ、それはな、秘密じゃ」
がくっ
なんだよそれ。
「勿体ぶらずに教えてよ、気になるじゃん」
「ひゃひゃひゃひゃ、それより、ウラにはもう一つ情報があるぞ。聞くか?」
まだあるのか。
というか昨日の今日でよくこれだけの情報を集めたもんだ。
「どんな情報だよ」
「奴は犯罪組織『闇の城』の一員じゃ」
犯罪組織?
マフィアみたいなものか。
この世界にもそんな物があるんだな。
「バンジス子爵と闇の城との繋がりがあるかどうかはまだ調査中じゃが、ウラは間違いなく闇の城の一員じゃ。まぁ十中八九バンジス子爵も絡んでいると見て良いじゃろ。お前さんは偶然とは言えウラにビンタして追い返した。あいつらの商売を邪魔した『敵』として見られとる。そのうちお前さんを消しに来るじゃろう」
ビンタの仕返しに殺しに来るってのか?
厄介な奴に手を出しちまったんだな。
でも後悔はしてない。
後悔はしてないが、
これからどうする?!
敵は組織だ。
貴族も敵になるだろう。
くそ、俺にも力が欲しい。
「ダイサク、これからも私らはお前さんの味方じゃ、一人で暴走するんじゃないぞ。そうじゃろ?ルースよ」
『ふん、人族の争いなどに興味はないし、ウンザリだ。だが、お前達は別だ。仕方ないから守ってやるわ』
ルースは寝たまんまの形から動きもせずに、片目だけ開けて俺に言った。
寝てたんじゃねーのかよ。
そもそもお前はベルの守護幻獣だ。
役に立ってもらわねば困る。
「マミちゃん、申し出はありがたいが…」
「もう巻き込んどるよ、後には引けん、それに私らはもう家族なんじゃろ?」
マミちゃんは俺の言葉を遮って言った。
家族、先日俺がマミちゃんに言った言葉だ。
くっここで引き合いに出されるとは。
反論できん。
「それに、家族ならベルちゃんはワシの孫じゃ、誰にも渡さん」
そうだ、ベルは俺の娘だ。誰かになんぞ渡してたまるか。
えっ?て事はマミちゃんは俺の…
考えるのはよそう。
それにしても、この婆様は。
ほんとにありがたい、感謝するよ。
「そうそう、ダイサクや、お前さんは、マジックドンチャンって言ったか?それをもっと磨いておきな。魔法ももっと教えてやるから、しっかり修行しな」
「マジックドーピングな。分かった、俺はもっと強くなる」
ドンチャンてなんだよ。
突っ込みたいがここは我慢しとこう。
とりあえずウラがいつ攻めて来るか分からない。
敵が来る前に少しでも強くなっておこう。
「ところでダイサク」
「うん?」
「お前には人を殺す覚悟はあるか?」
マミちゃんは鋭い視線で俺に聞いてきたのだった。
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白村
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