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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
20/87

第二十話 血とローブ

雑貨屋を後にした俺達は、魔法道具屋に向かって商店街を歩く。


「なぁルースぅ、お前とんでもない物舐めさせてくれたなぁ」


『ん?』


「ベルぅ知ってたかぁ?俺達500年は生きるらしいぞ」


「そうなの?なんで?」


『私の血を舐めたからだ。あの量だとそうだな、300年というところだろ。』


「あ、300年か、減ったじゃん、ちょっとホッとしたわっておい!」


『なんで念話出来るんだよ、時間切れがあるんじゃないのかよ』


途中で念話に切り替えて話す。

周囲の目があるし、

話しの内容はあまり聞かれちゃまずい。

念話ができるなら好都合だ。


『何を言う、契約したではないか』


『あぁそう言う事?使い魔の方か?』


『そうだ、守護だけなら念話はできん』


『ねぇねぇ、たくさん長生き出来るってほんと?』


『そうだ』


『じゃぁ、大ちゃんとルースと、ずっと一緒にいられるの?』


『お前が望むなら永遠の命をやっても良いぞ』


『いやいや!ダメだろ!だいたいそういうのは好まないんじゃなかったのかよ』


『なんだ、お前も永遠の命が欲しいのか?しょうがない奴だ、お前にもくれてやる』


『いや、いらないってばさ』


『なに?!なぜだ?』


意外!と言わんばかりに、

猫がこっちを見てくる。


ベルも俺を見上げて言った。


『大ちゃんはずっと一緒にいたくないの?』


『あ、そうじゃないんだよベルたん』


ゴホン!


『俺だって大好きなベルとずっと一緒にいたいさ』


ちょっと照れたベル。

やっぱり可愛い。


『ふん、お前達人(ひとはいつの世も我ら幻獣の血を欲しがる。ある時、あまりにもうるさいので、一度だけ血を与えた事がある。そやつは飲まずに持ち帰ったのだが…』


『どうなったの?』


『血を奪い合う戦争が起きた。』


あ、さっきマミ婆さんに聞いた話だ。

本当に戦争になったんだな。


『最後どうなった?』


『私がほろぼした』


まじで?!それはマミ婆さん知ってんのかな。

とんでもねー話だ。


ベルは黙り込んでしまった。

こんな話は聞かせたくなかったな。

ルースの事怖がってしまうかもしれない。


俺はルースのフォローするように話す。


『好きで滅した訳じゃないんだろ?』


『勿論だ、私だって人は嫌いではない、しかし私は過ちを犯した。私が滅ぼす事が私への罰だと、身を切る思いで滅したのだ。あの時の絶望は忘れまい』


なるほど、ルースは悪い奴じゃない。


『ベル、ルースは悪くないと思うよ、悪いのはルースの血を欲しがる人だと、俺は思うよ』


『うん。ちょっとビックリしちゃって』


『すまない、人間の幼な子に聞かせる話ではなかったな』


『それ歴史に残ってるってさっき聞いたぞ』


『多分残ってるだろう。1000年くらい前の出来事だ。ほんとはお前達に血など舐めさせたくはなかったが、何故かそれが正しい選択だと思ったのだ』


正しい選択ねぇ。


『先に言って欲しかったよ。寿命が多少伸びるのは俺だって嬉しく思うけど、馬鹿みたいに長生きしてもどうなのかなぁ。まぁベルと一緒だったのは良かったけどな』


ベルははにかみ顔だ。

しつこいようだが、可愛いすぎる。


『ダイサク、聞くがなぜ私の血を欲しがらない、マミ・タナカが使い魔になれと言った時に、私は覚悟したのだぞ。

お前は私の血を飲み永遠を手に入れ、世界を騒がせるだろうとな』


まさかでしょ。

世間を騒がせて何が面白いんだ?

そういうのは成人式の日に卒業したっつうの。

それに永遠の命ってどうなの?


『うーん、だってさぁ、考えてもみろよ、永遠に生きるって怖くないか?自分の好きな人達がみんな死んじまうんだ。自分は死なないから、永遠に好きになった人達の死を見なきゃいけない。そう思うと遣る瀬無いし、寂しいだろ。

それにもしこの世が滅んでも生きてたとして、それ生きてると言えるか?俺は思わない。

お前こそ、何で俺達に血をくれる気になったんだよ、過去がトラウマになってるから、血を出すのが嫌なんだろ?』


ベルは何故か泣いていた。

思うところがあるのだろうか。


『お前のような人族ばかりなら、私はもっと生きやすかっただろうな。

お前の言うとおりだ。永遠に生きるという事は永遠に死を見るという事だ。他の者どもはそれが解らない、特に権力を持つ者ほど愚かだ。

お前達に血を分けたのは、私が常に空腹でもあったからだ。お前達ほどの魔力を持つ者をここ数百年私は知らない。空腹は辛い。トラウマに囚われてる場合ではなかったのだ。

あとはさっきも言っただろう、何故かそれが正しい選択だと思ったのだ』


なるほど。

確かに正しい選択だと思ったと言っていた。

しかし他の理由が空腹だったからとか、

なんだか気が抜けるな。

リュンクスが魔力を食べると言うのは、

ほんとだったようだな。


あ、俺はある事に気が付いた。

まずい事言ったなぁ。


『ルース、俺、無神経な事言わなかったか?だとしたらすまん』


『ん?いや、お主の言う通りだからな、的確に的を得た事を初めて言われた。謝る事はない』


『俺は、永遠に生きてるお前の気持ちも考えずに知ったふうな事を言ったと思うんだ。いや、ほんとすまん』


『ふふふ、お主は変わった奴だな。ますます気に入った。しかし私が気に入った者は必ず私を置いて逝ってしまう。知った風かもしれないが、そんな私を気遣う者が現れようとは思ってもなかった。

確かにお主らに血を分けたのは正解だったようだ』


『まぁ、俺は永遠を生きたいとは思わないが、3人で居られるなら永遠も良いかもな。』


ベルは俺とルースのやりとりを黙って聞いていたが、

今の一言で嬉しそうな顔になった。


『その言葉忘れるでないぞ。私は孤独だったが、お主に救われたな。一つ、私が何故この姿なのか教えてやろう』


そうか、お伽話ではウサギの筈だ。

何故また仔猫なんだ?


『単純に身体が小さいと血が少なくて済むからだ。あはははは』


がくっ


「なんだよそれ、はははは」


俺は思わず声に出して笑っていた。

ベルも笑っていた。


『あ、そうだ、魔力を食うのは構わないが、

魔力疲労起こさない程度に頼むよ。』


『心得ている、心配するな』


『ん?もしかしてさぁ、ルースは魔力量わかるのか?』


『もちろんだ』


そりゃそうか。


『ちなみにベルの魔力量はどれくらい?』


『えっ?ベルの?!』


『今の私とお前の間くらいだ。』


魚魚!(ぎょぎょ)


一緒に魔石の訓練をしてる時から、

ベルも魔力量が多いのではないかと思っていたが、やはりだ。

ちょっと想像より多かったがな。


『さすがベルだ』


頭をなでなでする。


「えへへ」


俺達は目的の魔法道具屋に着いた。


「こんちはラスティ」


「あ、大工さん、ベルちゃん、いらっしゃい、あら、今日はちっちゃい子も来たのね」


「ラスお姉ちゃんこんにちは、昨日はありがとうなの。この子ルースって名前付けたの」


「へぇ良い名前ねぇ、凄く懐いてるみたいだし、良かったね!」


ルースは雑貨屋を出てから、

ずっとベルの肩に乗っている。


「うん!」


「ラスティ、昨日はありがとう。今日はラスティがくれた帽子に合うローブを探しに来たんだ。見せてくれないか」


「あ、そっか、そうだよねぇ、帽子だけじゃダメだったね、ごめんね」


『ベルのローブか?』

ルースが反応する。


『うん』


『そうか、見繕ってやろう』


ラスティがローブがある場所に案内してくれた。

「小さい子用のはこの辺りかなぁ」


『なかなか良い物を取り揃えているようだな』


そう言ってルースはベルの肩からトンっと降りて、ローブを眺める。

その様子を見ながら俺は話す。


『このラスティは魔法道具オタクなんだよ』


『おたく?』


『あぁ、魔法道具愛好家ってとこかな』


『なるほど』


ルースはローブを一通り見回し、

一着のローブの前で言う。


「にゃぁ」


うーむ、念話とのギャップがハンパないわぁ


「ルースはこれが良いみたい」


そう言ってベルがローブを手に取る。


「えっ、凄く軽い!」


「どれどれ、あ、ほんとだ、すげぇ軽」


色は深い緑。多分これはベルの魔力カラーだ、俺が青、ルースが黄色ならベルは緑で間違いないだろう。

デザインも悪くない。


「それは魔蟲の繭糸から織られているローブです。凄く軽いのが特徴で、魔力を通すと防御力も上がるんですよ。この猫ちゃん見る目ありますねぇ」


ラスティが説明してくれる。

最後は冗談で言ったつもりだろうけど、

実際は本当だ。


『ふむ、この娘もそこそこ詳しいようだが、それだけではない。ベル、着てみろ、教えてやる』


「これ着てみる」


その場でラスティがハンガーから外して、ベルにローブを着せてくれる。


とっても似合うよベル。

機能はもうこの際拘らない、

可愛ければ良い。


可愛いは正義だ。


『魔力を流してみろ』

「少し魔力を流してみて」


ルースの念話と、念話の聞こえないラスティとの言葉が被る。


「流してみた?」


「うん」


ラスティはベルの腕を取り、

ちょっと強めにローブの上からベルの腕を叩く。


「どぉ?」


「痛くない!」


「でしょう?凄くないですか?」


「すごーーい!」


ベルが目をキラキラさせて感動している。


『もっとだ、もっと魔力を流してみろ』


「え?」


ベルは思わずルースを見るが、

ラスティには分からない。


「あーおほん、ベル、もっと魔力を流すともっとズゴイ事があるみたい、いや、あるんだよ」


念話の聞こえないラスティにも分かるように、俺が話す。


「うん、やってみる!」

「え?」


ワクワクが止まらない顔のベルとは反対に、

ラスティは困惑顔。


そんなラスティの前でベルはローブに魔力流す。

すると。ローブの深緑色が薄くなっていく。

みるみるうちに色を無くし、

透明になってしまった。

しかもそれは、ローブを纏っているベルまでも透明だった。

もっともローブからはみ出した所は見えている。

ちょっとホラーだ。

と言うか、透明部分は少し歪んで見えるな。

光学迷彩に近い感じだ。


すげー、攻殻機動隊員ベルの誕生だ。


「す、凄い」


言葉を失っているラスティ


『この魔蟲の生息地は薄暗い森だ。繭を作って蛹になるが、普段は弱い魔力を流して繭を強化している。だが強力な魔物が来るとさらに魔力を込めて、このように景色に溶け込んでしまう。薄暗い森では見つける事は難しい。』


ルースの説明を、

俺は自分の言葉に直してラスティに言った。


「詳しいんですね、知りませんでした。凄いです!」


と言うラスティは、

羨望の眼差しに、ちょっと頬が赤い。

俺に惚れるなよ。


まぁルースの知識なので、あまり威張れない。


ベルはあちらこちらに行って透明感を楽しんでいる。


これ生地だけで売ってないかな。


「ベル、それにするか?」


「うん!これがいー!」


「それじゃぁこれと、他に大人用の見繕ってよ。老婆に似合いそうなやつ」


俺はラスティに頼んだ。

ラスティは快よく引き受けてくれる。


ちなみにローブには2種類の分類がある、

一つはただの上着として、

もう一つは、魔力を込めると何らかの効果を示す物。

それぞれ、服と魔法道具に分類される。

魔力持ちのベルに着させるなら、

もちろん魔法道具の方だ。

なので今回は魔法道具屋のラスティに世話になったのだ。


後に選んで貰った老婆に似合いそうなローブの方は、

マミ婆さんに贈るためだ。

いつも世話になってるし、

マミ婆さんのローブは着こなされてだいぶ痛んでいるようだった。


新たにラスティが選んでくれたのは、

グレーがベースの落ち着いた感じのローブだった。

魔法の効果は『温調』。

つまり、寒い時には暖かく、暑い時には涼しく、着る者に快適な温度をもたらしてくれると言う物だ。

うん、年寄りには丁度良いね。


俺は迷いなく購入した。


さて、また雑貨屋に戻るとしましょう。



【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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