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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
18/87

第十八話 使い魔契約

10月13日


朝が来た。

いつもの朝。


ん?ちょっと違うな。

しがみつくベルと、

俺の左胸に乗っかり丸くなってる黒い物体。


昨日ベルの誕生日に来た、

新しい家族だな。


コイツはただの黒猫ではないらしい。

いや、猫でもないらしい。


パーティーがお開きになり、

みんなが帰る時、

マミ婆さんが俺にこっそりと教えてくれた。


こいつは『リュンクス』と言うとんでもない幻獣の可能性が高いのだそうだ。


詳しい事は後で教えてくれると言って、マミ婆さんは帰ったが、

そんな幻獣飼って大丈夫なのか?

いや、居ても良いのか?


そもそもなんでそんな激レアな生き物がここに居るんだよ。


不安があるが、

この寝姿を見ると、

黒猫にしか見えんわ。


実は俺は犬と猫、どっちが良いかと言えば、猫派だったりもするし、

ベルに次いでかわいい奴だ。


黒猫を撫でる。


「ごろごろごろごろごろごろ」


って猫じゃん!


「ごろごろごろごろ〜」


ベルが起きて、猫の真似をした。

可愛い。

朝一で萌え死んだ。


黒猫も起きて、床にストンっと降りて大アクビしながら伸びをしてる。


って猫じゃん!


猫にしか見えねー

マミ婆さん見間違いじゃないのか?


「おはようベル」


「おはよう大ちゃん、猫ちゃん」


「にゃぁ」と返事をした。


って猫じゃん!

もぉええわ!


やっぱり猫だよなこれ。


しかしこの宿屋はペット大丈夫なのかな?

宿主は空気を読んでなのか、

猫を見ても何も言わなかった。

飼って大丈夫かな。


後で確認してみよう。


「ベル、昨日は良かったな」


「うん!うふふふ、すごく楽しかったの。」


ベルが楽しいと俺も楽しい。

サプライズ大成功。


「ベルね、帰って来た時寂しかったの、でもね、みんながいてびっくりして、凄く楽しくなって、これが幸せなんだって思ったの。ありがとう大ちゃん。大好きなの!きゃうん!」


俺の胸に顔を埋めて『照れ隠しの術』だ。

きゃうんて、

本日二度目の萌え死。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


さて、今日はこれから婆さんとこかな。


のそのそと起き出して身支度。

着替え終わってベルを見ると、

昨日、ラスティに貰った、

魔法使いの帽子、ウィッチハットを被ってる。


「なぁベル」


「うん?」


「それ被ってくの?」


「うん!」


「服と合わなくないか?」


「えー」


水色のワンピースに黒いウィッチハット。

さすがに合わないだろう。


「今日は新しい服を買いに行こうか、ローブも買ってあげるから、それまで我慢して」


新しい服というワードに目をキラキラさせるベル。


「うん!分かった!」

聞き分けが良いね。

と言うかちょろいのか。


ウィッチハットを脱ぎ、俺に手渡してくる。

俺は迷わずそれを収納魔法で仕舞う。


さてと、食堂に行くか。

早くコーヒーが飲みたい。


部屋を出る。

ん?

あ、しまった!


猫を忘れてた。


俺は素早くドアを閉めたが、

黒い影はスルッとドアをくぐり抜けて出てきてしまった。


あー逃げられる!


と、思ったが、猫はぴょんとベルの肩に乗った。


「へぇこいつ逃げないな。ベルに懐いてるなぁ」


うちのベルたん可愛いからなぁ。


「うふふ、猫ちゃんも一緒に行く?」


「にぁあ」


「一緒に行くって!」


「ベル、どっかに逃げても知らないぞ」


「ふふ、大丈夫なの」


まぁ良いか。

この世界にも飼い猫はいる。

逃げたら逃げたで、

どうしてもなら仔猫を買うか。


そのまま食堂に行き、

いつもの丸テーブルに着くと、

猫はぴょんとベルの肩からテーブルに乗って、お座りをした。


なんだかずいぶん利口な猫だな。

っていうかほんとに幻獣というやつなのかな?


「お前も食べるのか?」


思わず話しかけてしまった。


「にゃん」


返事しやがった、まじか。

そういえば話しかけると必ず返事をしてる。

気がする…。

 

「お前オスか?」


「にゃ」


「何食う?」


「にゃあ」


「おて」


「…」


さすがにしないか


「うふふふ、大ちゃんおもしろいの」


「毎度、このネコ逃げねぇのか。」


宿主のカリオスだ。


「あぁおはよう。逃げるようすないね」


「何食うんだ?」


「やっぱり肉かなぁ」


俺はちょっと思い付いた。


「食べたいのがあったら返事しろ」


仔猫に向かって俺は言った。

カリオスは呆れた感じで言う。


「返事なんかするわけねーだろ」


「いや、なんかコイツ解ってそうなんだよなぁ、なぁベル」


俺はベルに同意を求める


「うん、なんかね、凄くお利口さんなの」


とりあえず聞いてみる事にする。

これはテストでもある。

もし、これでちゃんと返事ができたら、

人語を理解してる事になる。

するとコイツは猫じゃなくて、

マミ婆さんの言う『リュンクス』の可能性が高くなると言う事だ。


「んーと、じゃあ、パン」


「…」


「野菜」


「にゃぁ」


えっ野菜?猫が?


いやまてまて、やっぱりコイツはただの黒猫か?


「ふん、やっぱり分かってねぇよ」


「そうだなぁ」


「お肉は?」

ベルはまだ猫に話しかけている。


「…」


「野菜」


「にゃ」


「パンたべる?」


「…」


「野菜が食べたいの?」


「にやん」


「「おおぉ」」


俺とカリオスがシンクロする。


「野菜だけに反応してないか?」


「そうだなぁ、出してみるか。食わなかったらお前が食えばいい」


「ええ?!野菜だけ食うのはやだなぁ」


「ふん、お嬢ちゃんはいつもので良いかい?」


「うん!お願いします」


カリオスは奥へと行き、数分でいくつかの皿を持って戻ってきた。


「ほいお待ち」


コトッと音を立てて猫の前に野菜が置かれる。

いつもはすぐ奥に引っ込むカリオスも、

猫の様子を見ている。


猫はクンクンと野菜の匂いを確認して、

野菜に噛みついた。


「「食ったよ」」

「食べたぁ」


俺達は驚き、ベルは嬉しそうだ。


これもある意味リュンクスなのか?

猫が野菜を食うなんて聞いた事ないしな。


カリオスはしばらく見てたが、間もなく奥に戻って行った。

ベルは朝食、俺はコーヒーを飲んで、


不思議体験は終わった。


外を歩く。

ベルの肩には猫。


微妙に注目されてる。

「見て、可愛い」

などと聞こえる。


マミ婆さんの雑貨屋に着いた。


「おはようマミちゃん」

「おはようお婆ちゃん」


「はいおはよう、ん?リュンクスも一緒かい。懐かれたもんだねぇ」


俺は今朝の出来事をマミ婆さんに話す。


「ひゃひゃひゃひゃ。どれベルちゃん、リュンクスを『見て』みな」


「え?うん」

一瞬戸惑ったベルが猫を『見る』


「あ、この子黄色いよ!」


「ふむ、確定じゃな」


まじかよ、こんな仔猫がマミ婆さんと同じ魔力量って。

しかもまだ仔猫だ。

伸び代がある。

いや、仔リュンクスか。


「リュンクスよ、わしらの言葉は解ってるはずじゃ、お主の狙いはなんじゃ?」


黒猫リュンクスはぴょんとカウンターの上に乗る。

そして自分の肉球に僅かに牙をたてる。


血が垂れる。


何してんの?!馬鹿か?


「ふむ。自ら血を差し出すか。」


マミ婆さんはリュンクスの血を指先に付けてそれを舐めた。


「なっ?!何しとんの?!」


驚いて思わず言った。


「お婆ちゃんそれ美味しいの?」


ベルたんは可愛いねぇ。

ってそうじゃないだろ。


「お前達もやれ。多分じゃが、これで話ができるようになる筈じゃ」


話ができる?

なんのこっちゃ?


しかし何か意図がある事は確かなようだ。

言われた通りにしよう。


しかし猫の血を舐めるって、

抵抗あるわぁ。


仕方なく肉球に指先を当てて血を付けて舐める。

ベルは俺より先に舐めて指を咥えている。


可愛いは正義だ。間違いない。


『老いた人族の女よ、こういうのはあまり好かんが、一時的に話をする為だと知れ』


唐突に女性の声が聞こえた。


んあ?!誰だ!

キョロキョロと周囲を見渡すが誰もいない。


『リュンクスよ、ありがたく頂戴する』


マミ婆さんの声が聞こえてくる。

いや、頭の中に響く。


『なにこれ、楽しいの』


ベルの楽しげな声も頭に響く。

驚いてキョロキョロしてる俺にマミ婆さんが言う。


『ダイサクや、落ち着きな、これは念話じゃ。』


え、念話ってテレパシーってやつか?

すげー、バビル二世になった!


『なにかくだらん事考えてるようじゃが、念じてみろ、話ができる』


『念じる、こうか?聞こえますかー』


『大ちゃん面白いの』


『ダイサク、バカ言ってないでお聞き。今リュンクスの血を取り入れた事で一時的に念話ができるのじゃ。とりあえず黙って聞いておれ』


えっ!?

まじで!?

えっ、?!じゃぁ今の女の人の声って、

恐る恐る仔猫を見る。

仔猫と目が合った。

ニマっと笑った気がした。


『お前がしゃべってんの??』


念話とやらで仔猫に向かって話す。


『そうだ』


『猫ちゃんすご〜い』


ベルは素直だね。

てか、まーじーでー??


『お前は、その、リュンクスなのか?』


『そうだ』


仔猫と会話してるなんてとても信じられん。

厨二病ここに極まれり。


と言うか、

人語を解する魔物や魔獣がいるとは聞いていたが、

こんな仔猫が、しかも幻獣って言ったよな。

すげーレアな体験なんじゃないか?


『それでリュンクスよ、何が目的じゃ』


驚く俺を置き去りにマミ婆さんがリュンクスに質問をする。


『人族の女よ、まず名乗れ、それからだ』


おお、リュンクスってなんか偉そうだな。

声は美人だが。


『これは失礼した。ワシはマミ・タナカじゃ、リュンクス様に名前は?』


マミ・タナカ?

ちょっと待て初めて聞いたぞ。


『マミちゃん日本人なのか?!』

思わず話に割り込んでしまった


『ダイサクは黙っとれ!ややこしくなるじゃろ!』


『あ、はい、すんません』


「うふふふふ」

ベルは念話ではなく声を出して笑っている


『名前はない。付けろ、お前達が初めてだ』


『ふむ、目的はなんじゃ?』


『ただの気まぐれだ。しかしこの者達の魔力は気に入った。しばらく居るつもりだ』


『ほぅ、して、報酬はなんじゃ?』


『何が望みだ?』


『ベルの守護、そして使い魔じゃな』


『使い魔だと?はははは!人族の女よ、大した度胸だ。良かろう契約してやる。ベルとやら、お前が名を付けろ』


『えっあたし?!』


『あ、あの、』


恐る恐る手を挙げて聞いてみる。


『『なんだ?なんじゃ?』』

一人と一匹が同時に言う。


『話が見えないんですけど』


『後で説明してやるから、今は待ってるのじゃ、話せる時間が限られとるようじゃからな』


それも良く分からん、まぁ大体想像はできがるが、今は黙っておこう。


『マミ・タナカよ、名付けはできるのか?』


『うむ、出来るのじゃ、急ごうかの、ベルちゃんや、準備するからその間に考えておきな』


そう言ってマミ婆さんは奥にそそくさと行ってしまった。


『うん、猫ちゃんの名前、名前かぁ』


『ベルとやら、良い名を頼むぞ』


『うん』


しばらくするとマミ婆さんが戻って来た。


手には見覚えのある石版があった。


あれはベルに名前を付けた時に使った石版と同じ物だ。

この世界の名付けとはほんとに特別なんだな。


『ベルちゃんや、名前は決まったかい?』


『うーんと』


『ポチはどうだ?』


『ダイサクとやら、悪意を感じるぞ』


『すんません』


『うん!決まったよ!』


『手をおきな』


ベルは右側、リュンクスは左側の、石版に刻まれた手形にそれぞれ手と前足を乗せる。

確かベルに名付けした時も、

俺が右側だった。

名付けする側が右側なんだろうな。


『ダイサクとやら、お主も乗せろ』


『えっ?あぁ、はい』


言われるままにベルの手に俺の手を重ねるように乗せた。


マミ婆さんは少し驚いたようだがすぐに落ち着く。


『始める』


そう言うとマミ婆さんは、

右手の人差し指と中指の2本で、

石版の魔法陣の真ん中辺りに触れた。


「ベル・サクラ、ダイサク・サクラはこのリュンクスに名と魔力を与え、リュンクスは見返りにこの者達の守護と使い魔になる事を誓うか?」


石版が光り出す。


『うむ、龍神レウスザウラとリュンクス族の血にかけて誓おう。』


マミ婆さんは俺達に視線を向ける。


「「誓います」」


ベルと俺、同時に答える。


徐々に光が増す。


「では、ベルちゃん、名前を」


「はい、名前は『ルース』」


石版が輝く、そして光りは徐々に消えていく。


終わったようだ。


商人アルバの時と少しやり方が違う気もするが、まぁ無事に終わったなら良しとしよう。


『ルースか、気に入ったぞ。では、ベル、ダイサク、よろしく頼むぞ』


『それは良いんだけど、どれくらい居るの?』


『ん?そうだなぁ、500年ほど居るかな』


はーいー??


『いやいやいやいや、俺達そんな長く生きれねーし』


『何をいってる?、おいマミ・タナカ、ダイサクは何も知らんのか?』


「ひゃひゃひゃひゃ、ルースよ、ダイサクは異世界人なのじゃ、知らなくて当然よ。まぁこの世界でも、お前さんを知る者は限られとるがなぁ」


マミ婆さんは普通に口で喋ってる。


『ふん、マミ・タナカよ、ダイサクに良く言っておけ』


「んふふ、ルースもこれからは家族だねぇ」


ベルはごきげんだ。


「ダイサク、説明してやるからよくお聞き」


それから長〜い話が始まった。



【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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