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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
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第十七話 誕生日パーティー

宿屋の前に着いたが、ベルは俯いている。

帰りたくないのだろう。


目に涙が浮かんでいる。

10歳、ベルにとっては特別な日なのだ。

何もないのは寂しい。

俺だって、自分の特別な日に何も無いのは寂しい。


しかしここは心を鬼にして、

宿屋の扉を開ける。


そしてベルの背中を押して先に中へ入れた。


宿屋の入り口はそのまま食堂の入り口でもある。


食堂に入ったベルを待ち構えていた連中が一斉に声をあげる。


「「「「「「ベルちゃん!10歳のお誕生日、おめでとう!!!」」」」」」


わーっと歓声と拍手が上がる。

俺もベルの後ろで手を叩く。


驚きながら来てる人達の顔を見ていくベル。


どうやって先回りしたのかわからないが、

マミ婆さん、

シンクロ4人組、

魔法道具屋の店員さん、

ベルの両親に兄弟達、

パン屋のアルトス、

商人アルバ、

順番に顔を見ていく。

そして最後に俺に振り返ったベル。


入り口ですでに涙が溢れそうだったベルの瞳は、違う意味の涙が流れていた。

綺麗な涙だった。


「大ちゃん…」


「うん、ベルは今日の主役だよ」


「うん!」


溢れんばかりの笑顔だった。


「さぁベルちゃんや、こっち来てみんなに顔を見せておくれ」


マミ婆さんがベルに話しかける。

おっとその前に、


俺は涙でくしゃくしゃになったベルの顔を綺麗に拭いてやった。


「うん、超可愛いよベル」


「ありがとう大ちゃん!」


そう言うとベルは俺に抱きついてから、マミ婆さんの元へ走って行き抱きついた。


マミ婆さんがよろめく。


その様子を見て、皆が笑う。

ベルが笑う。


なんて幸せな空間なんだ。


いつのまにか俺も涙が流れていた。


歳をとると涙腺がヤバいね。

おっと、俺は今多分18歳くらいだったな。


店主のカリオスが出てきた。

この世界にはケーキは無いが、

お祝いの料理を次々に出してくれた。


本日は貸し切り。


酒もある。

飲んで食うぞ。


しばらくは歓談が続いた。

皆がベルを囲んでそれぞれに話しかけている。


みんなベルが大好きなんだな。


「さて、ダイサクや、そろそろ良いじゃろ」


マミ婆さんから俺に声がかかる。

俺は頷いて返す。


「さぁベルちゃんや、これは婆ちゃんからのプレゼントだ」


マミ婆さんの出したプレゼントはブレスレットだった。

おいおい、箱にも入れてないで裸かよ。

それがこの世界の習慣か?


習慣と言えば、以前、マミ婆さんが飴をくれようとした時に、ベルは直接受け取る事を躊躇していた。

引き取られた子供は、主人からの物しか受け取れないと言うやつだが、あれは形式的な物で、特に守る事はないんだと聞いた。主人を立てると言う意味合いが強いらしい。俺はベルに、そんなのはバカバカしい事だから、無視して良いと教えた。

それ以来、俺が先に受け取る事は無くなった。ベルは受け取った物はちゃんと後で報告してくれたし、全く問題は無い。


「手を出してごらん」


ベルは言われるままに左手をだすと、

マミ婆さんはブレスレットをベルの手首にはめる。


ぶかぶかじゃん!

と、思ったら、あら不思議、

ブレスレットはベルの手首に合わせて、

大きさが変わった。


すげー初めて見た。


「これはベルちゃんを守ってくれるおまじないが込められているんじゃよ」


「ありがとうお婆ちゃん!」


「ベルちゃん、お誕生日おめでとう、これは私から、」


そう言うのは魔法道具屋の店員さんだ。

名前をラスティオ・ザカローラ


ラスティと呼ばれている。


ここ三か月、ラスティにもお世話になっている。

杖を選んで貰った時に、

また来て欲しいと言われていたし、

ちょくちょく用事もあったのですっかり顔馴染みだ。

最初ラスティは杖オタクだと思っていたが、

実際は魔法道具オタクで、

いろいろと聞いてみたり、

魔法道具などもちょいちょい買っているうちにベルが打ち解けて仲良しになっていた。


俺の事を最初は大魔法使い様と呼んでいたが、俺の本職が大工だと知ると、

大工さんと呼称が変わった。


ちょいと変わり者だけど、

美少女だし、人柄も悪くないので、

俺も仲良くさせて貰っている。


そんな彼女がベルに渡すプレゼントは、

でっかい箱だった。


「開けてみて」


「うん!」


ベルが箱を開けると、中から、

ザ・魔法使いな帽子、ウィッチハットが入っていた。

ラスティとお揃いだな。

ベルは喜んで被っている。


今度ローブを買ってやろう。

帽子だけでは物足りない。


次はパン屋のアルトスがベルの前に来た。

「おめでとうベル、これを」


15センチ角くらいの深さ2センチほどの箱だった。


「開けてもいいの?」


でかいアルトスを見上げて言うベルは天使に見える。

アルトスは顔を赤くして照れてるようだ。

大男も天使の前ではかたなしだな。


「あ、かわいい!ありがとうアルトスさん!」


入っていたのはピンク色のハンカチだった。

俺が贈ったワンピースの胸元の花の刺繍に似た、白い花の刺繍がワンポイントで可愛らしい。


「いや、女の子のプレゼントって分かんなくてなぁ、喜んでもらえて良かった」


「では、次は私、ベル、誕生日おめでとう」


前に出てきたのは商人アルバだ。


アルバが差し出した箱を開けると、中からは筆記用具一式とノートが入っていた。

今も時間がある時に、ベルは読み書きの練習をしているのだ。

しかし使っているペンはだいぶ古い物だったな。


さすがアルバだ、痒い所に手が届く感じだ。


「「「「ベルちゃんおめでとう」」」」


声がきれいに被ってる。

シンクロ4人組だ。


「えっと俺達のプレゼントは…」


そう言って出したのは、

何やら直径2センチほどの丸い穴が空いているみかん箱程の大きさの箱だ。


あの穴はなんだ?

まさか…


ベルが箱を開ける。


「きゃっ!」


箱から勢いよく黒い物が飛び出した。


「なに!?」


飛び出したものは、テーブルの上に、

トンと降り立つ。


えっ?!猫?!


「フーーーーっ!!」


と周囲を威嚇する仔猫。

黒猫だ。


「あーだからダメだって言ったじゃない」

「お前が良いんじゃないかって」

「俺はそんな事言ってねーよ」

「みんなで決めたんでしょ!」


「「「「ごめんベルちゃん」」」」


見事に最後はシンクロを見せる4人。


「おや?これは猫かい?」


マミ婆さんが目を凝らして黒猫を見てる。

普段は開いてるのかどうか分からない目が、

珍しく両目を開いて猫を見ている。


何を疑ってるんだ?


「フーーーーっ」


黒猫はマミ婆さんを威嚇する。


いや、どう見てもただの子猫だろ。


「俺達、森を探索してたら、いきなりコイツが来て、妙に懐いてきたんでさ」

「そしたらこいつが、ベルちゃんにどうだって言って」

「あたし言ってないわよ!」

「あんたでしょー!?」


「おだまり!」


マミ婆さんがピシャリと言う。


4人は同時に自分の口を手で塞ぐ。

また見事なシンクロっぷりだ。


しかしこの黒猫どうしよ。


そんなふうに思ってたら、ベルが黒猫に近づく。


黒猫はベルを威嚇し出す。

んーこいつが4人組に懐いてたって?

威嚇しまくりじゃねーか。


「ベル、大丈夫か?」


「うん大丈夫」


と言いながらベルはそっと黒猫に手を伸ばしていく。

黒猫は威嚇する。


『大丈夫、怖くない』


と言うセリフが聞こえてきそうだ。

噛まないだろうな。


ベルは指を黒猫の鼻先まで伸ばした。

すると、今度は黒猫が動き、

指先をクンクンと嗅いでいる。


うん、その動きは間違いなく猫だな。


黒猫は嗅ぎ終わると、ぴょんとベルの肩に乗った。


あ!と思ったが杞憂だった。

黒猫はベルに頬ずりしている。


「うふふ、可愛い!」


お前は今日から『テト』だ。


「「「「ほっ」」」」


シンクロしてほっとしているおバカ4人。


「ありがとうみんな!」


天使の笑顔だ。


あ、シンクロ4人組、今同時に萌え死んだ。

死ぬ時もシンクロなんだな。


「うふふ、君は男の子なの?女の子なの?」


ベルはご満悦だ。


そして次は、

ベルの家族。


「ベルおめでとう」

「お姉ちゃんおめでとう」

「はいこれ!」


一輪の花だった。


妹はベルの髪に摘んできた花を挿した。


良く似合うよ。


「ありがとう!」


今までと違う優しい笑顔で応えるベル。

良い娘だな。


そして最後は俺だ。


「ベル、誕生日おめでとう。これは俺からだ」


俺は綺麗な包み紙に包装され、

リボン結びで縛ってある、

長細い箱を手渡す。


「「「ほほお 初めて見る結び目だ」」」


そんな声が周りから聞こえてくる。


戸惑うベルに、

「端っこ引っ張ってごらん。紙は破いて良いんだよ。」


ベルが紐の端を引っ張ると、

スルッとリボン結びが解ける。


「魔法みたい!」


はしゃぐベルは紙を大事そうに剥がして、

中の箱を開けた。


俺の贈り物はペンダントだ。


この日の為に、ベルに内緒で造って貰った物だ。

どこに行くにも俺にべったり着いてくるから、内緒で注文するのが大変だった。

マミ婆さんに手伝って貰ってなんとか出来上がったんだ。


ペンダントは銀製で、

桜の花をモチーフに、

真ん中にラピスラズリと言う宝石を嵌めてある。

透明感は無いが、濃い青が印象的な宝石だ。


「綺麗、大ちゃんと同じ色」


「その花の形は、俺がいた日本の花で、桜って言うんだ。真ん中の宝石はラピスラズリと言って、石言葉は健康、愛、永遠の誓いだ。気に入って貰えたかな?」


ベルは無言で、自分の首にペンダントをかけた。


はにかんだ顔で

「に、似合うかな」


これがベルの答えだ。


「とても可愛いよベル!ベルが世界一だ!おめでとう!」


「ありがとう!」


ベルが俺に飛びついて頬にチュウをしてきた。


俺は完全ノックアウトだ。


周りから歓声と拍手が上がる。


今日もいろいろあったけど、

最高の日になった。


ありがとうみんな、

ありがとうベル。


おめでとうベル。

【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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