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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
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第十五話 大豪邸の予感

午後


約束の時間にギリギリ間に合い、

今は商人アルバと共に馬車で貴族様の邸宅に向かっている。

もちろん俺の横にはベルがちょこんと座って足をぶらぶらさせている。


こういう所がやっぱり9歳で、

可愛いんだよなぁ。


可愛いは正義だ。


まぁそれは置いといて、

俺はアルバに聞きたい事があった。


それはズバリ雇用について。


先日の炊き出しで、

貧民街の人達は普段何をしてるのか疑問に思った。


仕事はしてるのか?


大人達に話を聞くと、

職を失ったり破産したり、

怪我でクビになって治っても復職できなかったり。

意外と働けるのに仕事が無いという人が多い。

そして大人達は元気なのに、やる事が無いので子作りに励むと。

結果食い扶持が増えて食うのに困り子を売るという悪循環。

 

ベルの両親もそんな感じなのだろうか?


まぁ中には気ままに暮らしていたり、やる気のない連中もいたが、そんな奴らは放っておこう。


そして被害を被る子供達はというと、

街でゴミ漁りをしたり、

木の実や、時には雑草を取って食べてるのだとか。

さらに孤児もいる。

孤児院があるにはあるが、

孤児院も受け入れる人数に限りがある上に、やはり経営難なのだそうだ。


孤児院には寄付をすれば良いが、

貧民街の場合は、仕事を与えれば良い気がする。

この街は多分人手が足りているか、もしくは自分達が食べていくだけで精一杯なのではないだろうか。

それであれば、奴隷がこの街に居ないのも頷ける。

奴隷は買えば賃金は払わなくて済むが、食わさない訳にはいかない。つまり衣食住が必要だ。

嫌な言い方だが、維持費がかかる。


そんな憶測をしたわけだが、俺は商人アルバに確認と相談をしようと思い、その考えを話した。

 

アルバの答えは、概ね合ってるそうだ。

そして相談。


「貧民街の人達を日雇いする事は可能ですかね?」


「ひやとい?ひやといとは?」


この世界に日雇いはないらしい。


俺は掻い摘んで説明した。


正式に雇うのではなく、

1日だけ手伝って貰って、

その仕事の内容によって1日分の賃金を仕事終わりに渡す。

希望者は何日来ても良いし、

逆に与える仕事が無ければ募集しなければ良い。

月給制と違って、仕事が無い時には給料を払わなくて良いから、気軽に雇えるし、奴隷と違って衣食住を与える事もない。


これから貴族様邸を建てるにあたり、その時の仕事内容によっては数人雇いたい事もあるので、日雇いができたらありがたい。


商人アルバは俺の話を途中から食い入るように聞いていた。


「そんな雇い方法があったとは、なるほどなるほど。考えように寄っては商売になりますな」


さすがは大商人。

金の匂いには敏感だな。


おそらく日本の派遣会社みたいな物を考え付いたのだろう。


仕事を斡旋する代わりに、マージンを取り、儲けようと言う訳だ。

しかしそれには斡旋する仕事が無いと儲けにならない。

ここギオールの街のように、労働力の需要が無ければ供給もできない。

 

どうするんだ?

俺の考えを察したようにアルバが話す。


「この街は仕事が無いと言えば無いのですが、時期によって人手が欲しい時期があるんです。それにこの街だけにこだわる必要も無い。」


なるほど、他の街や都市なら事情も違うし、人材不足を抱えてる所もあるのだろう。


「日雇いが可能なら、俺は個人的に雇いますよ。マージン取られると困るので」


俺は冗談混じりに笑って言った。


アルバは驚いて俺を見る


「どうして私の考えが解ったのですか?」


「あぁ、俺が居た日本には、人材を派遣して儲けてる人がたくさん居ましたからね」


「なるほど、サクラ殿の国には既にあったのですね。しかしこの世界にはまだそんな商会は無い。チャンスですよこれは」


あ、悪い顔をしてる。


「こんなアイディアを隠してたんですね。ほかに儲ける仕組みがあったらもっと教えて下さい」


「隠してないですよ、たまたま思い出したんです、じゃぁ俺が日雇いを募っても問題ないですね。」


「無いと思いますよ、むしろ物は試しでやってみて欲しいです」


「分かりました、今回のこの仕事の内容にもよりますが、人手がいる時に募りますから、その時は声をかけますよ」


「楽しみですなぁ」


桔梗屋、お主もなかなかの悪よのお、

と言う顔をしてるアルバだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「これはこれはサクラ殿、よくぞ来てくれた」


そう言うのは貴族のマルコス・トリ・ギオール子爵だ。


なげー名前だな。


ギオールとはこの街の名前でもある。

統治している貴族の家名が街の名前になるみたいだ。


何百年前だか知らないが、

王様にこの土地、

つまり領地を与えられたのが、

ギオール家だったそうだ。


という事は、俺が領主になったら、佐倉って街になる。

田中雅之なら、田中って領地か。

微妙だな。


「本日はお招きいただきありがとうございます。こちらは俺…私の下女のベルです。」


ベルを紹介すると、

ベルはきちんと裾を摘んで挨拶する。

良くできた娘だわほんと。

可愛すぎる。


「おお、これはご丁寧に、麗しいお嬢さんですな、羨ましい」


「またまた、イリスお嬢様がいるではないですか。イリス様もなかなかの美麗です」


「あれはおてんばで参ります。気が強くて手に負えない時もありますよ、あほら、噂をすれば」


「龍語なんて、わかんない!ばっかじゃいの!ラーとかルーとか言っちゃって!できなくたって生きていけるわ!!」


「お嬢様!そんな事を仰ったら龍神様のバチが当たりますよ!」


異世界のお嬢様ってのは、

みんな同じパターンなんだな。


魔法でも習ってたらしい。

後を追うのは講師だろうか、

中年の女性が慌ててイリスを捕まえようとしている


「これ、イリス、お客様の前だぞ」


「あら、お父様」


「これは旦那様、申し訳ありません。お嬢様こちらに」


「嫌だって言ってんでしょ!バカ」


「もう良い、下がりなさい」


「あ、はい、申し訳ありません、失礼致します。」


「とんだ所をお見せしてしまって、申し訳ありません、イリスも挨拶しなさい。」


「あら、あなた」


俺の顔を見たイリスお嬢様は思案顔だ。以前俺とどこで会ったのか思い出そうとしてるのだろう。

俺が助け舟をだす。


「こんにちは、イリスお嬢様、以前…」

「知らない!」


はーいー???

人気刑事ドラマの警部みたいなセリフがよぎる。


俺の言葉を遮って言い放つとは。


「それよりこの子よ」


イリスお嬢様は、俺の後ろに隠れて様子を見ているベルに、前屈みになって顔を覗き込んだ。


近いよ。


「あ、あの、えっと」


「わたしの方がかわいいわ!」


はーいー???


「でしょ?お父様」


イリスお嬢様はマルコス子爵に向かって言う。


「あぁ、イリスはかわいいよ」


お父様、あんた甘やかし過ぎだ。

でも確かにイリスお嬢様は整った顔立ちをしている。初対面でも思ったが、美人さんだ。


でもうちのベルたんの方が100億倍可愛いよ。


「ははは、イリスお嬢様は相変わらずですね」


アルバが声をかける


「あら、アルバ、久しぶり」


「この間うちの新築パーティーで会ったばかりですよ」


「そうだったかしら?あ、」


イリスお嬢様は俺の顔を見上げた。


どうやらパーティーで会った事を思い出したようだ。


「さてイリス、これから家の建て替えの打ち合わせなんだ。」


「はい、じゃぁ失礼しますわ」


そう言って裾を摘んで挨拶して、去っていった。なんだかチャチャっと済ます感じだった。

まさに嵐のようなお嬢様だな。


「いつもあんな調子でして、困ったもんです」


ほんとに困ってんのか?このおっさんは。

誰も見てない時は娘にでれでれなんだろう。


俺達は応接室に通された。


さすが貴族だ、飾り棚や壁に掛けてる絵もなかなか高級そうな感じだ。

俺には価値は分からんけどな。


ソファを勧められて俺とアルバが座る。

ベルは俺の横で控えている。


「良く教育されてるようですなぁ、幼い見た目なのにしっかりしてる。君の名前は?」


「はい、ベルと申します」


「ほほぅ良い名前だ。誰に付けて貰ったのかな?」


「はい、旦那様に頂きました」


「マルコス様、ベルはサクラ殿に拾われるまでは貧民街に居ました。マルコス様のお屋敷に入れる身分では無いのは承知しておりますが、契約上離れる事が出来ませんので、連れて参りました。事前に相談もなく申し訳ありません」


アルバが気をきかせて説明してくれた。

契約と言うが、命令すれば済むはずなんだけどな。


「うむ、良い、私とアルバの仲だし、これからはサクラ殿にも世話になるからな、それにこれほどの器量がある娘ならば、どこに行っても通用しそうだ。ベル、貧民街は辛かったか?」


「はい、あの、」


「率直に言ってくれたまえ」


「はい、食べ物がない時や、病気になった時は、辛かったです。」


「今はどうかな?いや、聞くまでもないな」


「はい!」


ベルは控えめに、だが嬉しそうに答えた。


マルコス子爵は俺に向き直り言った。


「サクラ殿、炊き出しの話は私も知っています。子供達を救っていただき、ありがとうございます」


突然頭を下げられて困惑する。


「家、とんでもない、やめてくださいマルコス様」


マルコスは頭を上げて続ける。


「私も貧民街をどうにかしたいのです。予算を割いて、助けられる命は助けたい。何度も会議で訴えてますが、反対する者がいるのです。」


おぉ、この貴族様は実は良い人なんだな。

身構えてたけど、杞憂だったようだ。


ベルも真剣に話を聞いている。


「なぜ反対されるのですか?」


反対派の理由を聞いてみる。


「いや、それがよくわからないんですよ。貧民に出す金はないだの、奴らは自業自得だの、正当と言える反対理由が出てこないのです。」


この街は7人の貴族が治めている。

新しい政策などの可決には、

5人の賛成が必要になるそうだ。


貧民街に助成金を出すことに、現在3人が反対している。


なるほど、貧民層が放置されているのはそう言う理由からか。


それにしても、反対理由が、子供か?!


マルコス子爵は悔しそうだ。

ベルもやるせないといった感じだ。


ん?ちょっとフラついてるか?

まだ魔石訓練の疲れが残ってるのかも。


「マルコス様、今回炊き出しをしたのは、このベルの希望があったからなんです。何かできない事はないかと考え、炊き出しを思い付きました。また来月もやります。毎月やって、順調にいけば毎週でもやりたいと思っています。」


「なんと、君の願いがあったからこそだったのか、君にも礼を言う、ありがとう」


この人は分け隔てないな、元貧民だと知ってなおこの態度が取れるとは、貴族様なのに尊敬できる人だ。

かっこいーぞ。


「ベル、辛いなら座っても良いんだよ」


俺は少しずれて座れるようにする。

この子爵様ならこんな事で怒ったりしないだろう。


「あぁ、これは気が付きませんでした。どうぞ君も座って」


「ありがとうございます」


そう言って俺の横に座る。

ふぅっと息が漏れる。


やはり辛かったんだな。


「実は午前中、魔力操作の練習をしまして、少々頑張り過ぎて、二人してぐったりしてしまったんです」


「ほほう、魔力操作を、二人とも魔法使いになるんですか?」


そう言えばそうだな。

俺は魔法使いになりたいのか?

いや、そうじゃない、

魔法が使えたら良いなあって感じだったんだが、

俺はいったい何を目指してるのか?


「言われてみればそうですね、何でこんな事してたのか、最初の何がキッカケだったのかさえ曖昧ですね。ベルはどうなんだ?」


「ベルは…あ、あたしは旦那様のお役に立ちたいと、あとは貧民街の事や、やはり旦那様をお守りできたらと…」


「ふふふ、サクラ殿、ベルの方がしっかりと目的を持っているようですなぁ」


マルコス子爵が言った。


「お恥ずかしい、ほんとにこのベルは良くできた娘です。誇りに思います」


「しかし、魔法使いも悪くないですよ、大魔法使いになれれば叶わない事の方が少ないでしょう。そして賢者になれば」


「アルバよ、それは無理と言うものだ」


「マルコス様、そうでもないんですよ。サクラ殿、マルコス様になら、言っても良いと思う」


「俺もそう思います」


「なにがだ?」


俺とアルバのやりとりで不思議がるマルコス子爵。俺は自分の魔力量、ベルの『見える』能力、魔石の訓練をする事になった経緯を話す。


「それは本当か?!ベル、私を『見て』もらえるか?」


「はい、…すいません、何もないようです。ですけど、イリスお嬢様は、赤い魔力があります」


「イリスが。やはりそうか、ありがとう、礼を言う。それにしてもサクラ殿、サクラ殿の魔力量は常識ではありえないぞ。訓練したのならともかく、しかも人族でその魔力量とは、私も賢者を目指した方が良いと思いたくなる」


それほどなのか。

ま、まぁ賢者を目指すかは置いといて、魔法の修行は続けよう。


しかし、ベルの考えを改めて聞いた。

俺や貧民街を守りたいとは、

毎回思うが、この小さな身体でほんとに大したものだ。


俺はベルを守ると誓うよ。


「サクラ殿」


マルコス子爵が真剣な眼差しで話しかけてきた。

急にどうしたんだろうか。


「サクラ殿に敵意や害意が無いと私は感じておりますが、サクラ殿の力は脅威になり得る。それを自覚して頂きたい。もし、貴方が、貴方様がその気になって魔法を習得すれば、こんな街などいとも簡単に消し飛ばす力を得ましょう。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、これは事実なのです。貴方様はそれほどの力を秘めていると、今一度自覚して下さい。」


マルコス子爵は真剣に俺に話した。

嘘では無い事が伝わってきた。

信じ難い事だが事実のようだ。


「はい、正直言ってそんなのはあり得ないと思ってました。他人事のようでした。ですが、アルバさんやマルコス様のお話しを聞いて、自分の事だと改めて思いました。俺は、このベルを守りたいし、貧民街を変えていきたいと思っております。貧民街を変える事は、多分この街を良い方向に変えることではないかと思い始めています。もし俺が間違った方向に向かおうとしてたら、遠慮なく仰って下さい。ベルも、俺が間違ってたら何でも言ってくれな」


「「解りました」」

「はい」


賢者か…、賢者とはこの世界ではどんな存在なのだろう。

このあいだ商人アルバにこんこんと言われたが、いまいちピンと来なかった。


今度ちゃんとマミ婆さんに聞いておこう。


さてと今日はこんな話に来たのでない、

建て替えの打ち合わせに来たんだよ。


「では始めますかな」


アルバが口火を切る。

ナイスタイミングだ。


まず建て替えをするのは構わないが、

俺が考える規模とだいぶかけ離れている気がする。

そう思うのは今いるこの建物のせいだ。


てゆうかデカすぎるだろ!

一体なんLDKなんだよ。

この建物と同規模の物を建てるとしたら、

費用がいくらかかるか見当も付かない。

いちお念のため聞いとくか。


「あの、建て替えるのはこのお屋敷ですか?」


「はいそうです」


だよねー


「ちなみになんですが、ここを建てるのに期間はいかほどかかりましたか?」


「え?そうですねえ、どれくらいだったかな…たしか2年くらいだったと聞いています」


2年。


すげー


個人の家で2年かけるなんて、庶民の俺には想像できましぇん。


「そうですか、俺にできるかなぁ」


「いやいや、やって貰わないと嫌ですよ」


弱音を吐く俺に慌ててマルコス子爵が言う。


「アルバの家を建てたのに、私の家ができないなんて、妻達になんて言えば…」


妻…達??

聞き捨てならんワードだ。

しかし今は我慢だ。


「アルバさんの時とは規模が違いますし、アルバさんの家だって初めての大きさだったのに、このお屋敷は何倍あるんですかぁ」


「むぅしかし、サクラ殿にやってもらうと、もう決めてあるんだ」


勝手に決めないで欲しいわ。


日本で言う小中学校の校舎くらいと言えば分かるだろうか。

基本的には石造りなのだが、

俺は大工で石工いしくではない。

費用もわからないし工期も分からん。


完全に気遅れしてしまった。


「旦那様ぁ」


不意にベルが俺を呼んだ。


「ん?なんだい?ベル」


「旦那様なら出来るの。ベルにはそれが『見える』の」


まじで?!

そかぁ見えちゃったのかぁ、

ベルにこんな事言われてしまった。

ちょっと考え直すか。


そうだな、食わず嫌いだったかな。


「ベルありがとう。もしかしたら後悔するところだったかも」


「サクラ殿、じゃあ」


「検討はしますが、期待しないでください、いくつか聞きたいのと、後でちょっと建物の中見せて下さい」


「えぇ、えぇ、構いませんとも!ベルありがとう」


ベルに礼を言う子爵様。

そうだな、こんな良い子爵様の願いを頭ごなしに断っちゃ悪いよな。


「えっとまず参考に、この建物の総工費はいくらでしたか?」


「お待ち下さい、確か記録があります」


そうだよ、図面とかないのか?見積書とかあればすげー助かるんだけどな。


「書類があるなら、全部見せて貰っても構いませんか?」


「おい!」


応接室の隅に待機していたメイドらしき女性に、マルコス子爵は事付けをする。


「はい、すぐに用意いたします」


そう言うとメイドは素早く部屋を出て行った。


5分ほど待っただろうか、

丸まった物、束になった物などをワゴンに乗せて数人のメイドが運び入れてきた。


すげー


どれどれ?

俺は立ち上がりワゴンの上の書類やらを見ていく。


図面があった、

あとはよく分からないが、調度品や器具などなど、たくさんのカタログのような物がある。

見積もり?

よく分からないけど金額が書いてある書類を見つけた。


「これはなんの書類ですか?」


金額の書いてある書類をマルコス子爵に見せる。


「あぁこれです、あ、あった、これがこの建物の総額のはずです。」


どれどれ、ん?


いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…


23,654,000マネ と、書いてある


え?にせんさんぴゃく…


日本円にして約2億3千万くらいの価値…


まじで?


「す、凄い金額ですね」


「サクラ殿、もしサクラ殿がやってくれるなら、報酬として2000万マネ出します!是非お願いします!」


2000万マネ?

いやまて、報酬としてと言ったか?


「報酬としてとは?」


「完成までの経費とは別と言う事です。アルバに話は聞いています。毎月の生活に必要な費用も10万づつ、これも経費としてお支払いします。最後に完成報酬として2000万お支払いします」


要するに月々給料が出て、さらに完全したら高額ボーナスが貰えると…。


うーん


俺はこめかみに人差し指を当てて唸る。


高過ぎる。

いくらなんでも怖い。


この世界で一般的な4人家族が暮らすとしたら、月に4万マネあれば暮らしていける。

日本だと月に40万円あれば暮らしていけるだろう。

俺はその生活費を目安に、日本円に換算して考えている。


つまり日本の10分の1


そう考えると2000万マネは、

日本の価値に直すと2億円。


これヤバいだろ。


月々の給料だけで後の2億は要らないよ。

でもぶっちゃけ完成報酬は魅力的だ。

しかしそれも100万マネもあれば十分だ。


唸ってる俺に。

アルバが言う。


「安い、ですかな?」


「いやいや、ちょっと待って下さい。逆です、俺には破格も破格、怖いくらいですよ、いったいこの世界の相場はどうなってるんですか?!」


マルコスは、ん?と言う顔をする、思わず口走ってしまった。『この世界』と言うワードに反応してるのだろう。マルコスは俺が異世界人だと知らない。

俺も普段は気をつけてるが、マルコスの人柄が良いので油断したのだろう、あとは動揺してたってのもあるか。


アルバはちょっと呆れたような顔をしたが、開き直ったように言う。


「佐倉大作殿、異世界人のあなたに改めて説明します」


と、マルコス子爵にも解るように、異世界人と言って切り出した。


商人アルバの説明だと、この報酬は確かに破格らしい、それでも通常の2倍くらいだとか。最初にアルバの家を建てた時は、アルバ自身が俺の技術が解らないので、相当安くしてしまったそうだ。でも後で相応の報酬を払おうとしたら俺が拒否したので、心苦しく思っていたらしい。

今回の完成報酬の2000万マネには、実はアルバ邸の報酬も含まれているのだそうだ。

そして今回相場が跳ね上がる原因が他にもあった。

アルバは完成後、初めてみる様式の建物なので、鑑定士と言われる者に見て貰ったそうだ。主に強度や耐用年数に関して。

日本で言う住宅検査官みたいなものだろう。

すると驚いた事に、俺が建てたアルバ邸は200年は耐えるとの結果が出たそうだ。

構造に関しても申し分無しとのお墨付きを頂いたらしい。

だからこそのこの報酬だと、アルバに改めて言われた。


しかし200年てすごくね?


「どんな魔法を使えば200年以上耐える建物を造れるのかと、鑑定士も驚いていましたよ」


と、アルバが誇らしげに言うと、

ベルが俺を見てる。

何か言いたげだな。


「ベル、何か言いたい事があるなら、言って良いよ」


「うん、あの、旦那様が造った中庭の椅子、多分だけど、旦那様の魔力篭ってる、あの椅子もきっと長く使えると思うの」


まーじーで?!


そんな魂や怨みを込めた覚えは無いぞ。


「それは凄い!」


声を上げたのはアルバだ。


「魔力を物に込めるなんて、鍛治士以外聞いた事がない!しかもその鍛治士でも、100年に一度現れるかどうかの匠クラスだ!サクラ殿!いや、サクラ様!貴方はもっと誇らしげにするべきだ。」


まーじーでー!?


驚く俺にマルコス子爵がアルバに続いて言う。


「まず、今までのやりとりで、サクラ様は知らない事が多いと感じていました。

正直建て替えをお任せするのがここに来て不安だった。しかし、サクラ様が異世界人だと分かり、納得しました。

それに、その豊富な魔力を使っての建築。素晴らしいとしか言いようがない。私はこの報酬しか準備出来ません、ハッキリ申しましてこれでは足りないと思いました。サクラ様には大変な高額に思われるかもしれませんが、これがこの世界なのです。」


ふぅと息を吐き、天井を仰ぎ見る。

綺麗な絵が描かれていた。

天使と龍だろうか。


なんだかいろいろあって疲れた。

正直もう帰りたい。


ベルに、『出来る』と言われた。

これはやるしかないと思っている。


ああそうだよ、報酬が高過ぎてビビってるだけなのさ。


ここは覚悟を決めるか。


「やります」


たった一言だった。


よし、1000年耐える大豪邸を建ててやるぜ。



【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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