表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
12/87

第十二話 炊き出し前日

7月23日


朝が来た。

ベルが来て3度目の朝。


いつも俺の方が早く目が覚める。

相変わらずベルは俺に抱きついて寝ている。


ここまで懐かれると可愛くて仕方ない。

というより愛おしい。


さて、今日の予定は、

炊き出しで何を作るかベルと決めて、

食材の買い出しだ。


俺はとりあえずベルが起きるまで、

昨日マミ婆さんから渡された魔石を手に取り、

魔力を流し込む練習をする。


ベルが抱きついてるので横になったままだ。

魔石は枕元に置いておいた。


さて、流し込むイメージなんだが、

身体の魔力を感じ取らないと出来ないのかな?


マミ婆さんはなんのヒントもくれなかったので、どうすれば良いのか全く解らん。


とりあえず念じてみる。


流れろ〜流れろ〜


又は、


入れ〜入れ〜魔力入れ〜


変化無し。


まぁ当然か。


魔力の流れって血液の流れみたいな物なのかな。

血液の流れを感じてみる。


いやいやいやいやいやいや、

血液の流れなんて感じれねーし。


魔石を額に当ててみる。


冷たい石が額に当たってる感じ。


いやいやいやいやいやいや、

そのまんまじゃねーか、


魔石を見つめてみる。

指先に力を入れてみる。


むぅ、全く分からん。


あ、そうだ。


枕元に置いておいた杖を手に取る。


杖は手に吸い付く感触がある。

これは杖が魔力を吸っているから、そんな錯覚があるんだと思う。

最初に魔法道具屋で持った時より吸い付き感は弱いが、

魔力の流れを感じるきっかけにならないだろうか。


目を閉じて手にした杖の感触に集中する。

確かに何か感じる気がするが、

それが魔力なのか?


小声で唱えてみる


「かっちゃまん」


カチッと火が着く

最近では俺もベルと同じに、

『かっちゃまん』と言っている。

だって可愛いんだもの。


ん?

何か腕から指先にかけて伝わってきた。


すぐに火は小さくなって消える。


「かっちゃまん」


カチッと火が着く。


じわっと何かを感じる。

これが魔力なのか?


「かっちゃまん」


カチッと火が着く すぐ消える。


「かっちゃまん」


カチッと火が着く すぐ消える。


「かっちゃまん」


カチッと火が着く すぐ消える。


なんとなく身体に何か流れてるのが解る気がするが、明確には判らない。


「かっちゃまん」


カチッと火が着く すぐ消える。


「んふふ、ご主人しゃまぁ、火事になっちゃうよ」


腹の上からベルの声がする。


「あ、起こしちゃったか」


「何してるの?」


「魔力を感じ取れないかと思ってね、この火すぐ消えるしさ」


「あそっかぁ、ベルねぇ魔力分かるよぉ」


お、まじか!?


「えっと、お婆ちゃんが黄色で、ご主人さまが青いの」


あぁそっちの『見える』方の解るか。


「でもね、お婆ちゃんは身体を包むような感じだけど、ご主人さまのは、パァッとしてていつも眩しいんだ」


ん?どういうことだ?

俺の魔力は身体を包んでない?


「ベル、もうちょっと解りやすく言えるかい?」


「え?うーんと… お婆ちゃんのは身体を包んでて凄く黄色いの。ご主人さまのはパァって広がってる感じ」


凄く黄色い?

色が濃いって事かな。


「魔法道具屋の店員さんは?」


「オレンジのお姉ちゃんはね、お婆ちゃんと一緒。身体を包んでるみたいな感じだよ」


どういうことだろ?

魔力の量かとも思ったが、

魔力量は色の違いのはずだ。

見た目の多さではないはず。


だとすると、魔力をコントロールしてるかしてないかの違いか。


俺は何も訓練してないし魔力を意識もしてない。

予想だと、

魔力ダダ漏れ状態が今の俺。うまくコントロールして身体に留めているのが、マミ婆さんや店員さんの状態。

という事ではないだろうか。


「なぁベル、店員さんも、すごくオレンジかい?」


「うん、なんで分かったの?」


やはり


「俺の考えが合ってれば、マミ婆さんや店員さんは魔力を抑えて身体に集めてるから、色が濃くなるんだと思う。俺は何もしてないから、広がってて色が薄いんじゃないか?」


「うん!そんな感じだよ!ご主人さま凄い!」


ベルがぎゅっと抱きついて顔を埋めてくる。

可愛いし嬉しいけど、

今はそれどころではない。


ふむ、まずは、

ダダ漏れ状態の魔力をどうしたら留める事が出来るのか?


目を閉じて身体全体を意識する。

ベルが抱きついてるのでその重さや密着度がよく解る。

それ以外に意識を向けて、

イメージする。


身体からオーラが出てるイメージ。


スーパーサ○ヤ人を思い出した。


戦闘民族の人は、『はぁあ!』とか言って『気』を解放してたな。


「はぁああ!」


オタク根性で、真似してしまった。


「ご主人さま、凄い、大きくなった」


え?『見てた』の?


「まじで?そのまま『見て』て」


「うん」


今ので大きくなった。

じゃぁ今の感じの逆か。


解放する逆、引っ込める感じ。

あ、なんかわかった気がする。


「ご主人さま、小さくなった」


「どれくらいになった?」


「んー、いつもの半分より少ないくらい」


「うん、良〜い答えだ」

天空の城に出てくる老婆の船長風に言う。

ベルはハテナ顔だ。

すまんね、慣れてくれ。


なんとなく掴んだ。

あとは反復して練習するのみ。


「よし着替えて食堂いくか」


「うん!」


俺達は身支度して食堂へ行った。


今日は俺も朝飯食うかな。


「「いただきます」」


揃って手を合わせていただきますをする。


「ご主人さまぁ、どうして『いただきます』って言うの?」


「ん?、もぐもぐ、命を頂くって言う、むぐむぐ、尊い意味があるんだよ。」


「はむはむ、尊いってなに?もぐもぐ」


「もぐもぐ、尊いって言うのは、むぐむぐ、凄く大切な事って意味かな?ごくん」


「もぐもぐ、命を頂くって、ごくん、大切なの?」


「がつがつ、ベルはなんで生きてると、もぐもぐ、思う?」


「もぐもぐ、んーと、食べてるから?もぐもぐ」


「正解、もぐもぐ、今食べてるパンも、はむはむ、元は生き物だろ?ごくん」


「むぐむぐ、あぁそうかも、ごくん」


「命を頂いて、ベルは生きてる。ゴクゴク、ぷはぁ、でしょ?」


「ゴクゴク、はい」


「大切な命を頂いて、俺達は生かされてる。そう思ったら、自分の命は大切だと思うだろ?」


「はい、大切だと思う」


「な。と言う訳で、明日は炊き出しをします。貧民街を変える為の第一歩だね。何を振る舞おうか、なんか良いメニューあるかい?」


俺は続けて言う


「何を作るかは決めてないけど、とりあえずパンは大量に買おうと思ってるよ」


「作るものかぁ、ベルはなんでも良いと思うんだけど、こういうのはご主人さまの方が解ると思うの。」


「まぁ、そうかな、じゃぁ具がたくさん入ったスープはどうかな?肉も入れて濃いめの味付けでさ。俺の世界に豚汁ってのがあって、炊き出しには定番メニューだったよ。」


「とんじる?初めて聞くけど、それで良いと思うの。ご主人さまが作ってくれるなら、きっとおいしいから」


「俺が作って美味しいかはわからないけど、そんじゃ具沢山汁で決定しよう」


メニューの方針が決まったところで、

マミ婆さんのとこによって食材の調達だ。


俺達は早速マミ婆さんの所に向かった。


「おはようマミ婆さん」

「おはようお婆ちゃん」


「はい、おはようさん」


マミ婆さんはベルに向かって笑顔で応える。

俺は空気かよ。


「今日は明日の食材を揃えようと思うんだけど、この世界に『味噌』ってあります?」


「みそ?マサユキもそんな事言ってたけど、結局自分で造っちまったよ。『ミソモドキ』ってのがあるから、それがお前さんの言うミソに近いんじゃないかい?」


「おぉ、さすが異世界人のパイオニアだ。味噌を再現してたんですね。どこで売ってます?」


「ちょっとまちな、しかしマサユキもそうじゃったが、お前さんもたまに意味不明じゃな」


そう言ってマミ婆さんは奥に行ってしまった。

どうやらミソモドキってのがありそうだな。

意味不明ってのは、パイオニアって言った事かな。

まぁこの世界の言葉ではないからな。


間もなくしてマミ婆さんは手に壺を持って戻って来た。

小玉スイカほどの大きさの壺で、

皮で蓋がしてある。


「ほれ、これがミソモドキじゃ、味見してみぃ」


マミ婆さんは蓋を開けて勧めてきた。


小指の先にほんのちょっと掬って、

匂いを嗅いで見る。


おお、懐かしい匂いだ。

そしてパクッと味見。

ベルも真似してパクッと味見している。


「はい、味噌です」

「しょっぱい」


ベルさんや、それはそのままだとしょっぱいんだよ。


ミソモドキって言うけど、普通に味噌だと思う。これなら豚汁ができそうだ。


「どこで売ってます?」


再度聞いてみる。


「売ってはいないのじゃ。これはマサユキが独自に作った物じゃから、世間には広まっておらん。これはわしが昔マサユキに教えて貰ったのをたまたま作ったんじゃ。わしもこの味は嫌いじゃないからの。」


そうかマミ婆さん手作りなのか。

しかしこの量では到底足りないだろう。


何せ六尺くらいの中華鍋で豚汁を作ろうとしてるんだから、今ある量の10倍は欲しい所だ。


追加を作るにも明日には間に合わないだろう。

さてどうしたもんか。


「どうしたのじゃ?難しい顔してからに」


考え込む俺にマミ婆さんが問いかける。


「いや、どう考えてもこの量じゃ足りないので、どうしたもんかなと」


「なんじゃそんな事か、魔法で増やせば良いじゃろう。」


へ?増やせるのか?魔法って便利だな。

というか、魔法はほぼ万能って話しだから、増やす事もできるって事か。


「増やせるんだ。思いもしませんでした。なら大丈夫ですね。食材を買って来ますよ」


「じゃぁお前さんが行ってる間に増やしとくかの。ベルちゃんはここに居て手伝っておくれな」


俺はベルを伴って商店街へ行こうとしたが、

マミ婆さんにベルを呼び止められてしまった。


ベルは俺の顔を伺っている。

ベルに不安がってる様子はないようだ。

むしろここに残る許可を待ってるみたい。


「大丈夫かい?」


俺はベルに確認する。


「うん!」とベルは元気に返事をした。


あぁ、もう俺がいなくても平気なのか。

ちょっとさみしい。


俺はベルから肩掛け鞄を借りて、一人で商店街に出た。


まずはパン屋さん。

この世界にもパン屋はある。

日本のパンに比べたら、硬めのパンだが、ちゃんとしたパンだ。

食パンはないが、一時期日本で流行った塩パンのようなパンが主流となっている。


パン屋に入り、カウンター越しに座っている男の店員に声をかける。


「すいません、明日の昼なのですが、大量にパンを買いたいのですが、どれだけ準備できますか?」


カウンター越しに座っていた店員が、

のそっと立ち上がる。

それを視線で追って俺は徐々に見上げる。


で、でけー


身長190センチくらい、30代半ばだろうか。

厳つい顔つきに、筋肉隆々。

着ている白シャツは袖が無く、胸板や腹筋まで分かるくらいピチッとしている。

元は袖があったみたいで、肩口あたりが切られたようになっていた。


まるで腕が太すぎて千切れたかのようだ。


その立ち上がる動作には迫力さえある。

まさに、

ゴゴゴゴゴゴ…という擬音が聞こえてきそうだ。


胸に7つの傷とかあったりしますか?

いやそれとも拳王とかって名乗ってたりします?!


ベルが居なくて良かった。

こんなの見たらかなり怯えていただろう。


「からかってんのか?あんちゃん、俺様を誰だと思っていやがる」


し、知らねーよ。

誰だよお前。


とは言えずに、


「か、からかってませんよ。ま、まじです」


「いきなり来て、どれだけパンを用意できるか聞いて来るなんざ、よほどナメてるとしか思えねー。てめぇ何様だ?」


お客とは、常にいきなり店にくるものだと思うんだけどな。

でも、俺の言い方も悪かったかな。

この店員にしてみたら、いきなり上から目線でものを言われたように感じたのかも知れない。


「あぁ、大変失礼しました。俺は大工の佐倉大作って者です。決して悪気は無いんです。急で申し訳ないんですが、明日のお昼頃に、たくさんのパンを貧民街の人達に振る舞おうと考えています。特に子供達にはお腹いっぱいになって欲しくて、考えなしに先のような発言になってしまいました。申し訳ありません」


出来るだけ真摯に、相手の感情を逆撫でしないように話して、素直に頭を下げた。


男の店員は無言だった。

俺は下げた頭を上げて、店員の顔を見た。


げっ

何で泣いてんの?!

厳つい顔つきでぐしゃぐしゃに涙を流している。

こえーよ!まじこえーよ!


「い、いー奴だなぁ、お前、いー奴だなぁ、ぐずっひっく、事情は解ったぜ、ぐずっ任せておきな、いや、任せでぐださい。必ず満腹にさせでやるがら、うわーん、俺は感動している!うわーん!」


ひっ 引き受けてくれたみたいで、

何よりだ。


どん引きだけど。

べ、ベルが居なくてほんとに良かった。


「じ、じゃぁ、すいませんが、俺は雑貨屋のマミ婆さんの所にいますので、俺が居なくてもマミ婆さんに言って貰えれば、代金は払います、よ、よろしくお願いします。」


「うおー、今俺は猛烈に感動しているーうおー」


なんか雄叫びに変わってる。

大丈夫だろうか。

まぁ信じるとしよう。


俺はパン屋から逃げるように出てきた。

外まで雄叫びが聞こえる。

苦笑しながらも次の店に向かった。


一通り買い出しを済ませ、

雑貨屋に戻って来た。


「ご主人さまおかえり〜」

ベルが俺に抱きついてきた。


おーよしよし。


大量の食材をマミ婆さんの収納魔法で預かって貰う。


「そうかい、パン屋のアルトスがねぇ、ひゃひゃひゃひゃ。」


パン屋での一件を話すと、

マミ婆さんは楽しそうに笑った。


「こっちもミソモドキを増やしといたよ」


「お婆ちゃん凄かったの、ミソモドキがどんどん増えたんだよ」


ベルも嬉しそうに言う。


「ベルちゃんにはしっかり『見て』もらってたからねぇ、今は無理でもそのうち出来るようになるじゃろ。」


あー、それでベルを残したのか。

えってか俺も見たかったなぁ。


「ありがとうマミ婆さん」


「良いって事よ、ベルちゃんはわしの跡取りになって欲しいのぉ」


なに?

今なんて??

雑貨屋の跡取り?!


「あ、跡取り?!」


ベルはハテナ顔だ。

可愛いは正義だ。


「冗談じゃ、気にするな」


冗談に聞こえないから怖い。


明日の打ち合わせをして、

今日は宿に戻る事にした。


魔石の課題もあるしね。


昼食を済ませ部屋に戻る。


今朝やった魔力を膨らませたり引っ込めたりをして感覚を掴む練習をする。

ベルも一緒に俺と同じ練習をした。


魔石を使うのは感覚を掴んでからだ。


そうやって1日が終わった。



【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ