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トンネルを抜けたら異世界だった  作者: 白村
第一部 ギオールの街編
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第十話 貧民街へ


貧民街はこの街の西側のやや北よりの端っこにあった。


路地裏を抜けるといきなり貧民街になったと言う印象だった。


そりゃそうか。

貧民街と呼ばれてはいるけど、

明確にここが貧民街だと区切られてる訳ではないのだ。

『いわゆる貧民街』と言う事だろう。


その貧困層が集まる貧民街に来ると、

ベルは俺の後ろに隠れる様に歩くようになった。

「ベル、多分ベルがここに居たって気がつく人少ないと思うよ。今は見違えるほど可愛くなったからね」


つい数日前までベルはここに居た。

でもたったの数日で見違えるほどに変わっている。

よほどじゃない限り気が付かれないだろう。


しかし、見てみると建物らしき物が見当たらない。

適当な棒で組んであるテントみたいな物が、

三角や四角に組んであったりする。


多分ここは何もない空き地みたいな場所だったのだろう。

そこに行き場を失った人達が徐々に増えて、思い思いの場所に思い思いの寝床をこしらえていって、今の様な貧民街を形成したようだ。

日本にも昭和の頃は公園や河川敷に、ホームレスが集まって思い思いの寝床をこしらえてる場所があったな。


ベルはそんな場所で産まれ、9歳になるまで育った訳か。


予想してたとはいえ、これは少々ショックだな。


ベルは俯いて俺の服をぎゅっと掴んでいる。


「ご主人さま…」


消え入りそうな声で呼ばれた


「どうした?」


ベルは俺を見上げた。

今にも泣きそうな眼をしている。


「置いていかないで…」


全く予想してなかったった。

ベルは置いて行かれると思ってたのか?

たった3日でも一緒にいた仲だし、

これからもずっと一緒だ。


俺はベルを抱き上げた。


「あっ」


戸惑いながらも俺に力一杯抱きついてくるベル。


「俺がベルを置いていく訳ないだろ。ずっと一緒だって誓ったじゃないか。大丈夫だよ。」


「はい、ぐす」

ベルは俺の首に抱きついたまま答えた。


俺はベルを抱っこしたまま歩く。

腕に必要以上に力を入れる、が、あくまでも優しく抱きしめてやった。

少しでも安心させてやりたかった。


貧民街の様子を観察して見る。

この様子だと開けた場所がありそうだな。


「なぁベル、ちょいと広い場所を探してるんだけど、あるかな?」


そう聞くと、ベルは、ちょっと先を向いて見ると、


「このまま真っ直ぐ」


と言った。


あぁ、確かにこの先は開けてそうだ。

100メートルくらい先からは、

テントが無いのが見てとれた。


俺は開けた場所まで行って、広さを確認した。

これなら十分な広さだ。

元は広場だったのかな。


それにしても、みんな覇気が無い。

当然ちゃ当然か。


俺達の存在に気が付いてるはずなのに、

見てるだけで誰も近付いて来ない。


と、一人こっちにくる。

40代後半くらいの、

痩せこけた男だ。


「だ、旦那様、その子は?」


「ん?あぁ俺の娘だ。」


「ご主人さま、だめ、父さん」


小さくベルが教えてくれた。


「と、言うのは嘘だ」


慌てて誤魔化す。

これがベルの父親とはね。

とりあえず気が付いてないフリで話すか。


「まだ9歳だけど、俺が引き取る事に決めた子だ。名前も付けた。10歳になったらこの子の実の親にお金を払う予定だよ」


ベルの父親は、安心したような顔をしたようだが、

汚れているのでよくわからない。


「そうですか、名前を、それは良かった。」


「ところで、ここの皆さんは食事などどうされていますか?」


「見ての通り、貧乏人しかいません。食べる物は近くの森から取れる木の実や、街から出る残飯などで、みないつも腹を空かせています。」


「そうですか、失礼な事を聞きました。すいません。」


「いえ、もぅ慣れてしまったのでかまいません」


「あー、ところでですね。うちの娘が言うんですよ。貧民街を救いたいって。」


そう言うと抱きついて顔を埋めていたベルが顔を上げて驚いて見てくる。


「ご主人さま?!」


小声で、何を言ってるの?!と言う顔で言っている。


「大丈夫」


ベルに小声で答えてから、

()の父親に話す。


「私も可愛い娘の頼みでもあるので、とりあえずここで()()()()をしようと考えてます。数日中にやりますので、みなさん器を持って待っててください。」


「た、炊き出し?だ、旦那様、私らに差し出す物は無いです。」


「え?いりませんよそんなの。あ、後片付けとか、ちょっと手伝ってくれればそれで良いですから。変な警戒しないで下さい。」


「そ、それは大変ありがたいですが…」


「なら、そう言う事で、みなに伝えておいて下さい。今日はその下見に来たんです。」


「わ、分りました」


「では十分下見ができましたので今日はもう行きます。」


「は、はい!ありがとうございます!みなに伝えておきます!」


俺はベルの父親に背を向けて歩き出す。

ベルはまた俺に抱きついて顔を埋めている。


「だ、旦那様!」


「まだ何か?」


「い、いえその、その、その子の名はなんといいますか?」


ピクッとベルが反応する。


「教えても?」


俺はベルに承諾を求めた。


「…うん」


俺は父親に向き一言言い放った


「ベル!」


「あ、ありがとうございます!」


心なしか、父親の声は泣いてるようだった。

いちお親の愛情は、持ち合わせているようで、俺自身少しホッとしていた。


ベルは、より俺に抱きついていた。


「ベル、お前は俺の娘だ」


「…うん…ぐす」


ベルも泣いていた。

【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


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