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閑話3-1 伝記―カトレア

 カトレアはフォレストリアの孤児院でその幼少期を過ごした。


 カイトと同様に、生まれた直後に孤児院に預けられ、ある程度成長するまで親のことは全く知らなかったし、考えることもしなかった。


 しかし、間もなく15歳となりジョブを得るという頃、偶然知ってしまったのだ。

 自分の出自を。


 特段不幸な生活はしてこなかったし、親の代わりに孤児院の職員達は愛情を注いでくれた。

 学習も訓練も十分にさせてもらったし、そこまで少なくとも人並み程度の人生だっただろう。


 ただ出自を知ってしまった後、カトレアは色々と思い悩むこととなった。


 恨みではない。

 悲しみでもない。

 かと言って誇らしさもない。


 ただ少し特別なことではあるかも知れない。


 そんな自分にこれからの人生で何が出来るのか。


 そんなことばかりを考えるようになった。


 元々は15歳になったら、得られたジョブによって、戦闘職であれば攻略者に、生産職であれば誰かに弟子入りして無難に生産者になるつもりだった。


 無難。

 生まれからしてある意味特別な自分が、無難でいいのだろうか。


 でも今の自分では何が出来るかも分からない。


 分からないなら学ぶしかない。


 カトレアはこの時、ジョブを得て最低限の力を身に付けたら、世の中を知るために旅に出ようと考えたのだった。


ー▼ー▼ー▼ー


 カトレアが15歳になった時、最初に得たのは【平民】だった。

 が、それは一瞬のことですぐに【見習い職人】へと転職した。


 よく分からなかったが、希少職の【平民】でなくて良かった。

 そう思いながら、それからの予定を考える。


 元々【見習い職人】になったら誰かに師事してレベルを上げようと考えていた。


 だが旅に出ようと考えているカトレアにとっては、将来の可能性を狭めてしまうその選択は望ましいものではなかった。


 そこでカトレアは以前読んだ成長するための考察が書かれた資料を元に出来ることは全てやっていった。


 【見習い職人】は【目利き】を使うことで経験を得ることが出来る。

 それ自体が事実であることはすぐに分かった。

 実際にレベルが上がったからだ。


 【目利き】を使うには魔力が必要だ。

 魔力を回復するにはしっかりと休む必要がある。


 カトレアが育った孤児院も、カイトが育った孤児院と同じように16歳になるまでは保護してくれる。


 大抵はジョブを得たらすぐに管理局に登録するか、誰かに弟子入りするのが慣例なので、その制度を利用する者は余り居ない。


 だがカトレアはそれを利用した。

 院長に頼み込み、成長の目処が付くまでの保護を願い出る。


 カトレアは真面目で、意味のないことはあまりやらない子だったので、院長もすぐに許可をした。

 きっと何か考えがあるのだろう、と。


 その成果はすぐに現れた。


 カトレアは午前に【目利き】で様々な品物を見て回り、魔力が尽きると孤児院に戻って一眠りする。

 そして午後になって魔力が回復すれば、再び【目利き】を使用し、街を徘徊。


 カトレアのレベルはめきめきと上昇した。


 珍しい物、完成度の高い物を見るとレベルの上昇も早いことに気付く。


 そしてそれらの品物は様々な街から来ていることも知る。


 フォレストリアはランク5ダンジョンが存在するので、そこから産出されるものも多種多様で、見るものが尽きることはなかった。


 街も大きいので人も物も集まる。


 結果的にカトレアは、通常半年ほどかかる基本職をわずか1ヶ月で終わらせ、【商人】となることが出来たのだった。


ー▼ー▼ー▼ー


 【商人】になったカトレアが次にしたことはマナゴールドを稼ぐことだった。


 【見習い職人】のレベルを上げたようにスキルを使用することは成長の加速に繋がるだろうという予測があったからだ。


 【商人】にはレベル20になると覚えられる【マナゴールドアタック】というスキルがある。

 これはマナゴールドをコインの形で具現化し、それを投げつけることでダメージを与えるというスキルだ。

 与えるダメージは使用するマナゴールドに依存すると言われている。


 つまり、これを使用するにはかなりの金額が必要になると言うことだ。


 それに使用する対象も必要になる。

 【マナゴールドアタック】を使用する対象、それはモンスターしかいない。

 モンスターと戦うにはダンジョンに潜る必要がある。


 ランク1のダンジョンであれば、そこに出現するモンスターはほとんど自発的に襲ってくることはないノンアクティブなモンスターであることが多いが、それでも不測の事態に備えて装備を整える必要があった。


 カトレアがマナゴールドを稼ぐにあたってまず最初に行なったのは、院長から少額のお金を借りることだった。

 少額でもしっかりと借用書を作り、どのようにしてお金を稼ぐかを説明する。


 カトレアがやろうとしていることは、商売の基本である、『安く仕入れて高く売る』ことだ。


 【見習い職人】であった1ヶ月の間に、カトレアは市場調査を十分に済ませていた。


 大規模にやると問題になる可能性はあるが、カトレアが一人でやる分には問題のない範囲でことを進める。


 最初にやったことは同世代の攻略者からの『スライムゼリー』の買い取り。


 カイトに提示した、管理局の買取額の2倍で引き取るというものだ。


 ベビースライムと言うのは駆け出しの攻略者がまず間違いなくお世話になる入門用モンスターだ。

 スライムゼリーはほぼ間違いなく毎日産出されているが、ある程度まとまらないと個人的に販売することは出来ないし、大抵はその前にベビースライムを卒業する。


 なので大抵の攻略者は、いくら管理局がその販売価格を買取価格の10倍に設定していようが、管理局に買い取ってもらう。


 一般の商人にとっては、商材としてはかなり安いので、かける労力に見合わないためスライムゼリーを取り扱うことはほとんどない。


 1リットル分のスライムゼリーを2,000マナゴールドで集めて、8,000マナゴールドで売却する。

 その差額6,000マナゴールド。


 買取には困らなかった。

 ほとんどの商人はプライドを持って仕事をしているため、わざわざダンジョンにまで出向いて買い取るなんてことはしないからだ。

 ダンジョン前で声を掛けると、スライムゼリーは面白いように集まった。


 売却先には困らなかった。

 市場調査中に親しくなった【工芸士】が何人かいたからだ。

 1リットル単位であれば問題なく買い取ってくれた。


 そんなことをしていると攻略者の知り合いも増えていった。


 中でも驚いたのが、フォレストリア家に所属する攻略者が懇意にしてくれたことだ。


 フォレストリア家の従者が中心で構成されるパーティ。

 そんなパーティはカトレアに非常に優しく接してくれ、カトレアのために行き掛けの駄賃でスライムを倒し、スライムゼリーを集めてくれたり、格安で使わなくなった装備をフォレストリア家から持ってきて、売ってくれたりした。


 特筆すべきは魔法銃が手に入ったことだ。


 銃系統の武器は使用者本人の攻撃力にほとんど依存しないため、生産者でも戦う力を得ることが出来る。


 逆に言えば、攻撃力に依存しないため攻略者は余り使わない。


 希少ではあるが、使い道が余りない。

 そんな武器であるから、それなりに値段は張ったが買うことが出来た。


 それからカトレアは自身でもダンジョンに潜るようになった。


 倒すのはランク1ダンジョンのスライムだけだったが、魔法銃で効率よく倒すことでレベルは上昇し、【マナゴールドアタック】もそれなりの回数使用してとうとう【商人】をマスター。

 通常2年かかるところを半年でこなしてしまったのだった。


 旅をするには【行商人】が都合が良かったのだが、転職したのは【交渉人】。

 買取や売却で交渉をメインにしていたのが、【交渉人】を得た理由だろうか。


 やや方向性は変わってしまうことになったが、カトレアが【交渉人】を得たことで、カトレアのやるべきこと、やりたいことの方向性が定まった。


 カトレアのやるべきこと、やりたいこと。

 それは自分のような孤児が安心して暮らせる、フォレストリアの孤児院のようなところを、他の街でも作ること。

 そんな風に目標が定まったのだった。


閑話あまり用意してません・・・。


明日からは4章をお送りします。

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