3-4 双子のレベル上げ
それから3日後、カイトとフェリアはルナとレナの双子を伴ってスライムダンジョンへと赴いていた。
二人にはカイトたちのジョブやスキルは説明しており、パーティを組んで【ダンジョンワープ】と【ダンジョンウォーク】を利用して9階層最奥の10階層へ続く階段前まで移動している。
ちなみにカイトとフェリアは残り2日間の狩りで共にレベル5まで上がっている。欲を言えばもう少し上げたかったのだが、3次職であるし、一撃で死ぬことはないだろうと判断した。
そうして双子の序盤をある程度世話したあとはゴールドスライムやシルバースライム狙いでマジックスライムを狩ることにしたのだった。
それであればカイトやフェリアも経験値が得られるからだ。
「よし、じゃあまずは検証からだな。俺とフェリアでぎりぎりまで弱らせるから止めを魔法銃で無属性、火属性、水属性、風属性、土属性の順で倒していこう。」
魔法銃で5属性、これが5種類とカウントされるのであれば、過去10回と違う方法で倒すという成長条件は達成しやすくなる。
そうしてルナとレナの訓練を開始する。
最初は調整で、段々と与えるダメージを減らして、ぎりぎり倒さないダメージ量を見極めた。
そこからはルナとレナが交互に同じ手段で倒していく。
そうして5匹、先に始めたルナが水属性の魔法弾で倒した時点で二人のレベルが上がる。
「上がった。」
「上がった。」
「お、良かった。とりあえず属性が違えば同じ武器種でも違う攻撃と判断されるというのは確定だな。それにしてもめちゃくちゃ早いな?」
カイトの疑問通り、二人のレベルアップはかなり早い。
これにはいくつか理由があり、まず一番大きなものとしては【雑用士】のスキルである【雑草魂】に内包される経験値上昇効果は2次職だけあって5倍でなく10倍である。これはカイトも予想していた。
ちなみに【雑用士】は二人の前職である【見習い戦士】の【身体強化】の他に、【見習い職人】の【目利き】も適用されていた。
そして、これはカイトも知らないというか、この世界の誰も知らないことであるが、パーティの仕様だ。
パーティの仕様にあるのは、『経験値分配方式』と『パーティボーナス』である。
経験値分配方式とは、モンスターの討伐経験値の分配をどのようにするかという設定で、『貢献度に応じて按分』か『パーティメンバーで等分』をパーティ結成時に選択できるというものだ。
ただし、そのようなアナウンスがあるわけでもなく、パーソナルカードに設定欄があるわけでもないので、この世界では『按分』が基本だ。
カイトは無意識的に『等分』が基本であると考えているので、そちらが適用されている。
もしも適用されていなければ、フェリアが大半のダメージを与えているのに、カイトのレベルが上がるわけもなかった。
カイトはターゲット取得とタンク役でほぼ等分されていると考えていたようだが。
そしてパーティボーナスとは、パーティの人数が増えれば、モンスターから得られる経験値が増えるというものだ。
ソロとペアでは等倍、3人では1.5倍、4人では2倍となっていて、ソロでそのモンスターを倒した時得られる経験値から、等分設定では半分が、按分設定では最大1倍までもらえる。
ちなみにパーティボーナスの最大は6人で3倍までで、それ以上に多くなると、分けられる人数が増えることで、一人当たりの経験値はどんどんと減っていく。そのため、多くのクランでは6人組を作ることが多い。
当然討伐経験値は離れていると入手できない。按分であれば当然だが。
索敵・補助魔法などでも成長できるため、必ずしも攻撃しないといけない訳ではない。
正確な範囲は分かっていないが、経験値を得るには少なくとも同じ階層にいる必要はある。
【モラトリアム】を始めとする経験値増加効果は取得時にかかるためパーティメンバー全員に適用されるわけではない。
そして、ランク制限による経験値ゼロも入手時に適用されるため、今回のカイトのパーティではカイトとフェリアに入る経験値は無駄になる。
それならばパーティを分ければいいと考えるかも知れないが、そうすると今度はパーティ同士の制限がかかる。
複数のパーティが攻撃に参加した場合与えたダメージによって討伐経験値が按分されてしまうのだ。
そんな訳で、細かい設定を知っている人間は誰もいないが、現在はカイトとフェリアが削り、ルナとレナが止めを刺すというルーティンが続いた。
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スライムダンジョン9階層を1周、32匹。
1周目が終わった時点で二人のレベルが4になっていた。
2周目ではレベル6。
時間はカイトとフェリアのように1周10分という訳には行かず、30分ほどかかっているが、かなりのペースだ。
1時間経過しているので、小休止を挟んで居ると。
「カイト。」
「フェリア。」
「ありがとう。」
「ありがとう。」
ルナとレナがほぼ同時にそんなことを言う。
「えーっと・・・どういたしまして?」
慣れていないフェリアは戸惑っているようだ。
「どういたしまして。どうしたんだ?改まって。」
「ん、ちょっと諦めかけてた。」
「ずっと二人が良かった。」
ルナとレナは昔から二人で一人分の発言をする。
慣れない人間には何を言っているかいまいち分からないことだろう。
「まぁ俺にできることだったからな。」
「ん。頑張る。」
「うん。楽しみ。」
「カイト?」
フェリアは通訳してほしいようだ。
「えーと、成長できるように頑張る。どう成長できるか楽しみ。ってところだと思う。なんとなくでいいんだよ。」
「そんなんでいいの?」
「いいんだって。精霊との会話だって分かるようになってきたんだろ?」
「そう言われればそうなんだけど・・・。」
「ん、それでいい。」
「それでいい。」
双子もそれで問題ないようである。
「それでいくつか疑問が出てきたんだが。」
「疑問?」
「ああ、一つは『常に二人同時にレベルが上がっていること』、もう一つは『常にルナが倒した時にレベルが上がっていること』。まだ回数は少ないけど、気になるんだよな。」
「ん?疑問?」
「疑問って?」
少し遅れた反応を見せる双子。
「それの何が疑問なの?」と言う意味でカイトへの鸚鵡返しではなかったりするのだが。
そしてそれをフェリアがそのまま言う。
「それの何が疑問なの?」
「えーっと、まずパーティの得られる経験値ってのは貢献度に応じて按分されるってのが通説だろ?でもルナとレナは毎回同時に上がっている。普通であれば止めを刺した人はいいとしても、もう一人は何もしてないって判定されて経験値なしでも不思議じゃない。なしじゃないにしても減るとかな。それなのに同時に上がるのは疑問じゃないか?」
「そう言われると確かに。」
「ん?なんで?」
「どうして?」
「理由は分からないし、他に例があるか分からないけど、俺たちに関しては等分されてるんじゃないか?」
「まぁ私はそれだとしても問題ないけど。」
「んー。ルナはちょっと・・・。」
「レナもちょっと・・・。」
双子の言葉には「申し訳ない」が続くのだろう。
「やることは変わらないから気にしなくてもいいさ。」
「それでもう一つの疑問の方はどうなの?」
「そっちは、まだ偶然かも知れないんだけど、『レナの攻撃が過去10回の討伐方法と同一として認識されて、カウントされていない』ってなってるかもなぁと。」
「もしかして・・・。」
フェリアは何か感づいたようだ。
双子は揃って首を傾げている。
「ああ、過去10回ってのは『パーティ内の討伐方法』かも知れない。『パーティ内の【雑用士】の討伐方法』ってのもありえるけどな。」
後者は考えにくい。【雑用士】は希少職で、同じパーティに複数入ることはほぼあり得ないと言えるからだ。
「それじゃこれからはその辺りの検証をしながら?」
「それがいいだろうな。ある程度レベルさえ上げてしまえばマジックスライム周回もありだろうし。」
そうして休憩後はさまざまなことを検証していった。




