3-3 洞窟ダンジョンと大ナメクジ
双子の手助けをすることが決まった翌日、カイトとフェリアは元々の予定だった洞窟ダンジョンを訪れていた。
洞窟ダンジョンはスライムダンジョンとは反対方向、ノースアクアリムの南に2時間ほどの所にある。
実働12時間と仮定すればスライムダンジョンより2時間長く活動できる。疲労などもあるから必ずとは言えないが。
さらに一度ダンジョンに入ってしまえば、次からは【ダンジョンワープ】が利用できる。移動時間ほぼ0のノースアクアリムダンジョンから移動できるからだ。
人の多いノースアクアリムダンジョンに飛ぶわけには行かないから帰りは利用できないが。
カイトの【ものまね】は【ヒール】。【職業体験】は【軽戦士】に設定してある。
【軽戦士】の情報は次の通り。
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【軽戦士】
基本3次職
転職条件
パワーアタックを150回使用する
成長条件
特になし
レベル上限:50
習得スキル
【パリィ】(1)
【カウンター】(20)
【フルスイング】(40)
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本当は【パラディン】にしたかったのだが、レベル1の魔力量では【パラディンガード】は使用できなかった。
【パリィ】は恐らくアクティブスキルだが、消費はないか、ほとんどなく、いくらでも使える。その代わりにタイミングを合わせて使用しなければならず、簡単に言うならば、受け流しの際武器を保護するようなスキルだ。【カウンター】は【パリィ】成功後、少ない消費で強力な攻撃を放てるスキルで、今回カイトはこの2つのスキルを中心に大ナメクジを討伐しようと考えている。
フェリアは相変わらず【精霊弾】担当だ。レベル1でも消費がなく、精霊依存なのでダメージも【精霊の友】の時と変わりはない。非常に頼もしい。
そうして二人はダンジョンを進んでいく。カイトを先頭に、そのカイトの左手にはランタン。
スライムダンジョンとは違って足場も悪く、道も曲がりくねっている。1階層から3階層はベビースライム系しか出現しないため、用意した地図を見ながら、どんどんと進むだけだ。
「ねぇ、カイト。」
「ん?」
「あの二人、お人形さんみたいでとっても可愛いね。」
「あーそうだな。見た目は可愛いかもな。」
「見た目はって。あんまり仲良くないの?」
「いやそんなことはないぞ。5年くらい一緒にいたわけだし。ただ・・・ネグレクトされてた子達に必要以上に構っていいものかわからなくてな。そもそもの感情も乏しいし。」
「ネグレクト?」
「あー育児放棄されてたってことさ。」
「なるほど。じゃあ何で今回は助けることにしたの?」
「んー、明らかに力になれることだったのが一つ。あとはあいつらが望んでいたことだからってのが一つかな?」
「望んでいた?管理局が孤児院に頼んだんでしょ?」
「本当に嫌ならあの二人は自分の世界に閉じこもるからな。話しかけても何の反応もしないよ。」
「反応してたってことは助けて欲しいからってこと・・・ね。なんか羨ましいわ。」
「羨ましい?なんでだ?」
「だって少なくともそれが分かるくらいには近かったってことでしょ?私にはそんな相手いなかったから。」
「あー、なるほど。もしかして15歳になるまで存在を明かされていなかったから友達も作れなかったとか?軟禁状態?」
「そこまでではなかったと思うけど。たまには街にも出てたし・・・。でもそうね。フォレストリアの娘だと認識されてたわけじゃないから、そういうこともあるかも知れないわ。」
カトレアには、カトレアが認識していた噂の内容は確認していない。本当に隠されていたりする可能性も否定できなかった。
「まぁこれからは俺がいるし、もしかしたらあの双子も・・・な。あいつらはちょっと頼りないかも知れないけど、慣れてくると二人で調子の良いこと言ったりするから面白いかもな。」
「そう・・・ね。楽しみにしてるわ。」
そんなことを話していると、大ナメクジが出現する4階層に到達した。
大ナメクジもノンアクティブらしいので、そこまで警戒する必要はないが、ここからが本番である。
二人は気合を入れ直して、手順を確認する。
「まず慣れるまでは戦いやすい環境を確保する。場が整ったら俺が攻撃を仕掛けるから、マジックスライムみたいに相手の攻撃が終わったら【精霊弾】で攻撃してくれ。」
「ええ、分かったわ。」
「あと何回攻撃したか数えておいてくれると助かる。」
「了解。」
そうして少し歩くと大ナメクジと遭遇した。幸いやや開けた場所で武器を振り回すのに苦労はしない。
「行くぞ!」
カイトが攻撃を仕掛ける。
新しい武器はやや重いが、その分しっかりと斬る感触をカイトに与えた。
攻撃された大ナメクジはカイトに向き直り、やや体を縮める。
大ナメクジの攻撃は口から粘液を飛ばし、拘束したあとにのし掛かる方法のみだ。
よって最初にしてくるのは粘液飛ばし。
カイトは後ろのフェリアの位置を確認しながら飛んできた粘液弾を回避した。
レベルが低くてもこれならば問題ない。
その隙にフェリアが【精霊弾】を3発叩き込む。
さすがにランク2だけあって、それだけでは倒れなかった。
【精霊弾】を受けて大ナメクジがフェリアの方を向こうとする。すかさずカイトが追撃を加えてヘイトを取り返す。
再びの粘液弾。
カイトは危なげなく【パリィ】。そして【カウンター】。
粘液弾は潰れずそのまま通り過ぎて行った。
そうしてフェリアの再びの【精霊弾】が大ナメクジに直撃し、その姿を煙へと変えた。
「2回目の1発目で倒せた気がするわ。実質4発というところね。」
「俺の攻撃力が下がってるから分からないところではあるけど、属性ベビースライムの4倍ってところかな?俺のレベルが上がって【精霊弾】の数が減ったら確定しそうだな。とりあえず次は最初から【パリィ】してみるよ。」
レベルが下がって敏捷性も落ちているが、カイトの回避に危なげはない。敵の攻撃が連続攻撃だったり予備動作が無ければ敏捷がものを言うが、そうでなければ知識とセンスだ。そういう意味ではカイトには回避のセンスがあった。
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そうして狩りを続けること25匹目。やっとレベルが上がった。二人同時だった。ここまでの所要時間は4時間。
「さすがに時間がかかっている気がするわね・・・。」
レベルが下がっているとは言え、モンスターと相対している時間が長いわけではない。
まぁ普通であれば、これでも十分早いのだが。通常3次職のマスターまでには15年から20年かかると言われている。
「まぁスライムダンジョンと違って出てくる場所も一定じゃないからな。」
「とりあえず危なげもないし、5階層に降りるのはどうかしら?」
「そうだな。モンスターの出現数も増えるっていうし。」
そうして5階層へと降りていく。そこでさらにカイトがある提案をする。
「【ヒール】全然使わないから【気配探知】にしてみようと思う。」
「それなら探す時間も減るかも知れないわね!」
ノンアクティブであれば数が増えても危険は上がらないだろうと考え、【ものまね】を【気配探知】に切り替えた。
スライムダンジョンではルートも出現する位置も決まっていたから必要なかったが、洞窟ダンジョンでは効果的だった。
【気配探知】はアクションスキルで、使用した瞬間半径300m以内に存在する気配を把握することが出来る。ソナーのような感じと言えばいいだろうか。
モンスターはもちろん人も感知することが出来るが、常時感知ではないため、そのすぐあとには移動している可能性はある。地形も把握できず、ただの直線距離での探知なのであまり便利とは言えない。
それでも動きの鈍い大ナメクジであれば問題なく機能する。
そうして新たに【気配探知】を組み込んで行なった狩りは、残りの2時間でそれまでと同数の30匹を超える数を狩ることに成功し、カイトとフェリアが共にレベル3になった時点で終了となった。




