2-14 銀と金
今日で2章終了まで行きます。
1/3 今日も16:00と20:00更新予定です。
「っ!今度は『ゴールドスライム』だ!」
ゴールドスライムはシルバースライムと同じ特性を持つ、所謂色違いで、倒し方も同様だ。
「フェリア!シルバースライム対策と同じだ!」
「分かったわ!」
カイトはしっかりとシルバースライムへの対策を立てていた。
フェリアにも危険がある・・・ような気がする作戦だが、シルバースライムは討伐時と逃走時にしか攻撃はしてこない。どうせ範囲攻撃だし関係ないと割り切ることにした。
その作戦とはこうだ。
フェリアが【精霊弾】を連発してシルバースライムの気を引く。ターゲットを取る、ヘイトを取るという行為だ。
カイトはその隙に【アサシン】の【カモフラージュ】と【狩人】の【気配隠蔽】を使用して、シルバースライムの(恐らく)背後に回る。
そして【不意打ち】を使用して攻撃するのだ。
【アサシン】の【カモフラージュ】からの【不意打ち】は一撃で属性ベビースライムを屠れるが、クールタイムが長く、10分に1回しか使えない。
【カモフラージュ】というのは周りの風景に溶け込んで周りから見えなくする光学迷彩のようなスキルだ。パーティメンバーであれば薄らと見えるらしいが、パーティを解除すると全く見えないらしい。とは言ってもそこにいるのは変わらず、姿を見えなくしているだけなので、息遣いや足音などは聞こえるようだ。
カイトの技術では【狩人】の【気配隠蔽】を併用しなければ、属性ベビースライムにすら気づかれてしまい【不意打ち】が不発する始末だった。ノンアクティブなのに気付くらしい。
これで【不意打ち】が発動しなければこの作戦は失敗である。
フェリアに【精霊弾】で気を引いてもらった上で気付かれるのであればこれ以上方法はないからだ。それにクールタイムも長い。
そして本当に【不意打ち】で倒せるのかどうか。
ただカイトにはある確信があった。
【不意打ち】成功時は『相手の防御力を無視してダメージを与えられる』ということを。
属性ベビースライムを相手に試し打ちした際に感じたことだった。
相手ははじけ飛ぶくらいのダメージを受けているのに、カイト自身の攻撃が強力になったわけではなかったからだ。
さすが【アサシン】である。背後から気付かれないうちに必殺の一撃を放つイメージにぴったりのスキルだった。
ー-かくして。
「フェリア!徹った!備えろ!」
ダメージを与えたことを確信して、討伐時に使用される【マジックバースト】に備える。
そうして放たれる【マジックバースト】。
「ぐっ・・・。」
「うぅ・・・・。」
【パラディンガード】がない分先ほどよりも痛い。
カイトが前にいて壁になっていた効果もあったのか、フェリアも先ほどより辛そうだった。経験していた分耐えられているが。
【マジックバースト】による衝撃が収まったあと、そこには何も残されていなかった。
5分はまだ経過していない。
討伐に成功したのだ。
「カ、カイト・・・。」
フェリアが不意に話しかけてくる。
「ん?」
「お金が・・・すっごく増えてる!」
マナゴールドが1,500ほど増えていた。
フェリアの分と合わせると3,000マナゴールド。
ランク2モンスターとしては破格である。
「ゴールドスライムの恩恵はマナゴールドか・・・。となるとシルバースライムは・・・経験値?」
「そうなの?」
「いや、ただの予想だ。ドロップかも知れないし。」
と言ってもカイトはほぼ確信していた。
日本の某有名ロールプレイングゲームの銀色のスライムと同じであると。
「しかし、えげつないよなー。」
「何が?【マジックバースト】だけだし、少し痛いけど危険はないよね?」
連戦となると分からないが、確かに脅威というほどではない。
カイトたちにとってゴールドスライムとシルバースライムは倒せるか逃げられるかということだけだ。
「だって倒すには『防御無視攻撃』が必要だろ?今のとこ分かってるスキルでは【マナゴールドアタック】と【不意打ち】だけだぜ?」
「うん?そうだね?」
「ゴールドスライムで3000マナゴールドしかもらえないなら、【マナゴールドアタック】で倒したところで赤字だろ?」
「あー、うん。倒す意味ないよね。」
「それで【不意打ち】の方は【アサシン】のスキルだ。」
「【マナゴールドアタック】よりはコスパいいね!」
「でも【アサシン】は4次職なんだよ。それだとランク2であるゴールドスライム・・・はお金だから意味はあるけど、シルバースライムは経験値だとしたら意味がない。」
「あーランクが2つ離れると経験値がもらえなくなるってやつね。」
そう、3次職になってからはランク1モンスターでは経験値がもらえない。
いくらレベル1の状態で倒してもレベルが上がらないのだ。
レベル1になって弱体化しているのに、ランク2モンスターを倒す必要があるのは危険なことである。
そして同様に4次職である【アサシン】がランク2のシルバースライムを倒しても経験値はもらえない。
「だから実質【マナゴールドアタック】しか討伐方法がないようなもんだろ?」
「お金を使えば経験値が手に入る・・・かも知れない。ってことは・・・。」
「元貴族ならなんとなくわかるだろ?そういうことだよ。」
「お金を払って倒してもらう?」
経験値を得るには貢献が必要だからそこまで単純ではないが、フェリアのように気を引くことは出来るだろう。十分貢献とされるはずだ。
「そうだ。でもゴールドスライムとシルバースライムは討伐時にも【マジックバースト】を使うから・・・。」
「あ、そうか。私達くらいまで上がってるならともかく、最初からだとそれだけで死んじゃうかも知れないんだ。」
「そうそう。パワーレベリング防止のついた討伐する価値の低いレアスライム。えげつないだろ?」
「確かに・・・。まぁ普通に倒せちゃうカイトには関係ないね!」
「それもフェリアが気を引いてくれたからだろ?」
「まぁまぁ、二人のおかげってことで!」
「そうだな。あとはシルバースライムの恩恵が経験値だと尚いいな!」
ー▼ー▼ー▼ー
翌日に出現したシルバースライムを無事に倒した結果、シルバースライムは案の定大量の経験値を持っていた。
1匹倒すだけでカイトもフェリアもレベルが上がったのだ。
「属性ベビースライムでも思ったけど、これだけ効率のいいダンジョンなのになんで全く知られていないのかしら。」
「効率いいのは知られていないからだよ。他の人がいたら即座に効率の悪いダンジョンになるさ。」
「あーなるほど。確かにこの効率は独占できているからこそね。」
「そうそう。」
「ボスの攻略法もはっきりしたし、次からはどうするの?」
一応目標であったスライムダンジョンの攻略は達成した。
「ん-今日はボスだけだったけど・・・、20分に1回入場可能で、5分以内に討伐できる。それでいて、30回程度戦った中で、シルバースライムが2回にゴールドスライムが1回。確率としては、もっと回数こなさないと何とも言えないけど、今の段階で10分の1。ボス待ちの時間で9階層を1周すれば、もっと効率がよくなるんだよなぁ。」
「でもカイトの消費は?」
「そこはほら、俺が【マジックボール】じゃなくて武器で直接攻撃すれば。多少ロスがあっても20分でボスと9階層1周は出来るんじゃないかなと。」
「じゃあ3次職の転職までここで稼ぐの?」
「シルバースライムだけなら卒業してもよかったけど、ゴールドスライムのお金は見逃せないよなーってね。【精霊契約】にも結構使うだろうし、俺の武器だけじゃなくて、二人とも防具含めて整えないとだから。」
「確かにそうね・・・。うん、ここで3次職まで行くのは賛成だわ。でも転職はしちゃだめだからね?」
「ああ、そうか。ここじゃ転職するとレベルも上げられないんだな。」
「ええ、そうよ。私としてはカイトに追いつけるって意味でもここの方が嬉しいかも!」
最初の頃は大きな差であったが、今となってはほとんど差はない。
それでもフェリアにとっては重要なことのようだ。
「まぁちょっと早いけど、無駄に長く頑張る必要もないし今日は帰ろうか。」
「ええ、そうしましょう。」
そうしてカイトとフェリアはシルバースライムとゴールドスライムの討伐に成功して帰途に着くのであった。




