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6

 二十二日、終業式の日、妙なことが起こった。

 永井と共に途中まで下校し、別れて少ししたあたりから背中に気配を感じるようになった。誰かに尾行されている。しかし、振り返っても姿は見えない。

 一体誰だ? まさか永井暗殺計画に気付いた永井の味方か? 気配の感じから永井ではないということは分かったが、私の力ではそれが誰か特定するまではいかない。

 ただの人間にも思えないが、強化人間の私が負けることもあるまい。障害になりそうなものは排除するまでだ。

 私は滅多に人の来ない路地裏に入ると、立ち止まって言った。


「出てきたらどうだ?」


 するといつの間にか私の前に、私と同じ制服を着た女が立っていた。顔を見て、確か同じクラスの川上桃子だった思い出す。

 クラスメイトが私に何の目的だ? だが、そんなことよりこいつは一体どうやって私の目の前に現れたんだ――っ!? 瞬きはしなかったはずだ。こんなことあり得るわけが――。


「あなた、おかしいですよ」


 しかし考えている暇はないらしい。川上は一歩一歩私へと近づいてくる。


「なにが、かな?」


「とぼけないでください。永井君とあなたを私はずっと見てました。だから分かるんです。永井君とあなたはあまりに出来過ぎている。ラブコメ展開が多過ぎです。そして、それがあなたの仕込みによって起こされているということも」


「ずっと見ていた、って精々学校に居る時だけでしょ?」


「いいえ、私は見てました。あなたが永井君の家でシャワーを借りる所も、裸を見られたところも」


「――っ!? な、なぜそこまで!?」


「私、永井君の家にはいくつか隠しカメラをしかけているので」


 ――こいつ、ストーカー犯罪者だ……っ! ……いや、そんなことより永井でも女子から好かれるのか!?

 私は動揺した。川上はそれをそっちのけで話を続ける。


「私、一番初めはあなたが永井君に付きまとったり、あまつさえ付き合うだなんて認められなかったんです。正直、永井君を殺して私も死のうと本気で思いました。でも、本当に相手のことを愛しているなら相手の幸せを願い、それが何であれ尊重すべきだって最近読んだ本に書いてあって、『じゃあ私も、初めて永井君に彼女ができたのを祝福しなくちゃ』とそう思い直そうとしたんです」


 ……何を言っているんだこいつは。やはり異常者か……?


「でもせめて、相手が永井君にふさわしいのかくらいは確認したいじゃないですか。だから数日前、あなたを付けてあなたの家を確認したんです」


 ――な、なんだって!? 尾行されていたなんて全く気が付かなかったぞ!? こいつ、ただの人間じゃない――っ! ……いや、だったらなぜ今回は私は尾行に気付けたんだ?

 ……そうか、わざと私が気付くように気配を出していたのか……っ! これは罠か――っ!


「そうしたらおかしいんですよね、ご家族の都合で転校したって言う割には家族で住むには狭い部屋ですし、この前侵入して宅配された荷物の中身を見てみたら、爆弾の取扱説明書が入ってるし――」


 そ、そこまで掴まれているのか!? っ私としたことがぁッ!! 


 最早私の行動は決まった。

 こいつは確かにかなりの実力の持ち主らしい。

 だが、私の使命が永井の暗殺であり、こいつがその障害になるのが明らかな以上、私は障害の排除をするまでだ。それにおいて相手の実力など問題にはならない――っ! 




 戦闘は数分続いた。強化人間でなければ、武装すらしていない生身の人間相手に、一方的な蹂躙ではなく戦闘になってしまったのは屈辱の極みだ。しかもそれだけでなく、止めを刺す前に逃げられてしまった。

 ……だが、かなりの深手を負わせることはできた。私も傷を負ったが、永井暗殺に支障を来すほどではない。ここは、戦略的勝利だと思うことにするか。

 私はそう自分に言い聞かせ、拳を握り締めた。


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