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9(終)

 一時間目が終わり、自分の教室に戻ってくると西城から、今日の放課後開かれる祝勝会に参加して欲しいと誘われた。

 俺は二つ返事で誘いを受け、さらに「当選おめでとう」と言った。


「ありがとう」


 西城は笑って返すと、体を翻し城ケ崎の方に歩み寄っていった。城ケ崎のことも誘いに行ったのだろう。俺は二人が楽し気に談笑する様を遠くから眺めた。







 祝勝会は最初の会合を開いた、あの学校近くのファミレスで開かれることになっている。出席者も集合場所もあの会合の時と全く同じだ。

 最初、ファミレスには俺、西城、城ケ崎に三人で行くかと思われたが、何やら城ケ崎は野暮用があるらしく、そちらを片付けてから行くとのことで、先に俺と西城の二人だけで向かうことになった。


 二人で談笑しながら歩いて向かう途中、西城は「そうだ――」と何か思い出した。


「お願い、何が良い?」


 お願い、そういえばそんな話もあった。西城に協力し選挙に勝った暁には、報酬として俺の頼みを聞いてくれると。

 風紀委員撃退とか「なんで風紀委員は襲ってこないんだ!?」ってことばっかり考えていて、俺としたことがうっかり忘れてしまっていた。よって急に聞かれても困る。


「えーっと、そうだな……」


 俺は考える素振りを見せつつ、実際真剣に脳みそをフル回転させた。


 だが、報酬として付き合ってもらうというのは絶対にありえない。まず単純に格好悪いし、なにより報酬として付き合うって、そこに愛があると言えるのか? 俺が求めるのはイチャイチャラブラブエッチ。報酬とは言わば交換条件。やはりそこに愛は無いだろう。

 だから、たとえ風紀委員撃退により格好良いところを見せて惚れさせるという作戦が失敗した今でも、俺は口が裂けても「付き合ってくれ」とか「エッチしてくれ」とは言えない……っ!


「どーしたの? そんなに悩むこと?」


 西城はからかうように、にやにやしながら俺を見る。


 そうだぜ、そんなに悩むことだ。女子ってのは男子に軽々しく「お願い聞いてあげる」なんて言ってはならないのだ。なんなら俺のお願いは「『お願い聞いてあげる』とか軽々しく言わないで」だ。……嘘、やっぱり言って欲しい、それもできるだけ軽々しく言って欲しい。

 いや、だが男というのは難しい決断をしなければいけないものだし、常に難しい決断に迫られるものだ。

 俺は言った。


「……そうだな。今度の休み、付き合ってくれないか?」


 そうだ、俺は次に賭ける。今回は上手く行かなかったが、次への布石を打つこのチャンスをみすみす逃すことはしない。


「……なに? それ、デートってこと?」


 西城は相変わらず、俺をからかうようににやにや笑う。寧ろ、それは俺が返事をしてからの方がより顕著だった。

 きっと俺が「デートして欲しい」と中々言い出せなければ、そうとはっきり言わなかったことの原因が、羞恥心にあると推理したのだろう。実際には違うのであるが。


「……ああ、そうだ!」


 俺は『羞恥心から突っぱねるように言った』ように見えるように言った。


「結構可愛いところあるんだね。良いよ、それくらい」


 西城は快く了承した。


 この時、俺は安心すると同時にふと思った。

 デートをこんなにすんなり了承してくれるってことは、それなりに俺に気があるってことだ。いやそれ以上に、西城は自らわざわざデートという言葉を持ち出し、二人で一緒の外出をただの遊び以上の意味合いにしたのだ。

 言い換えれば「嫌いな奴とは一緒に遊びに行きたくないけど、まあ普通くらいの相手なら暇だし良いか」ってのじゃあないってことだ。普通くらいの人と行く暇つぶしの遊びを、わざわざデートと名付けはしない。これに脈が無いと言ったら他に何と言えるのだろうか。


 俺は「イケる」と確信を持ち、足を止めた。西城は少し遅れて、俺の少し前で止まって、振り向いた。


「どうしたの?」 


 俺は思い切って言った。


「西城、付き合ってくれ」


 届け、俺の思い……っ!


 すると西城はきょとんとした。


「……うん? だからデートするよ?」


 しまった。いや、違う。西城がこんなときにありがちな小ボケを挟むのが悪い。俺は慌てて訂正する。


「そうじゃなくてだな。……俺の彼女になってくれ」


 今度こそいっただろう。


「ごめん、それは無理」


「え!? なんで!? デートはオッケーなのに!?」


「デートするのと付き合うってのは、また別でしょ?」


「え、じゃあなに、デートはオッケーで付き合うのは無理の理由は? ラインはどこ?」


「だって、あんなおっぱいについて熱弁する人、彼氏にしたいって普通思わなくない?」


「いやいや、名演説って言ってただろ!?」


「あれは生徒たちを熱狂させた演説の結果から言っただけで、私個人の感想じゃないし、そのあとは迷演説とも言ったよね?」


 そんな馬鹿な! こんなことってあるか!? 西城のためにしたあの演説がこんな形で足を引っ張ることになるなんて! 確かにあの瞬間、あの演説は多くの人間の心を掴んだはずだった。だが俺は肝心な、一番大切な人の心を掴むことに失敗していたのだ!


「あ、それより――」


 西城は体を翻し、また歩き始めた。


 ……「それより」って、おい……。普通にちょっとへこむぜ……。

 ああ、なんか帰りたい気分になってきた。今、西城とこれ以上一緒に居られねえ。いや普通、振られた後そのまま振ってきた相手と一緒に居られますかっての。負けず嫌いの前向き精神の俺でも、軽いナンパじゃなくてガチ告白の時に、面と向かって振られるってのは結構つれえわ。精神的にかなり来る。

 くそ、なんで今、告白しちまったんだ。


 そういうわけで、心共々、中々足を前に進められないでいると、西城は振り向き手招きして言った。


「早くおいでよー。このままだと祝勝会に遅れるよー」


 あ、そっか。そういえばこの後祝勝会だったわ。……え、この後、祝勝会なの? 気まず……っ。

 くそ、なんで、今告白しちまったんだ。どうせするなら祝勝会後に振られれば良かった……。







 数日後、正式に生徒会長に就任した西城は、他の役職の人物を指名すると素早く有言実行。風紀委員を解体した。

 そして俺に言った通り、新聞部と写真部との約束を破り、彼らの強すぎる権限を剥奪、学校は西城体制とも言える状態になった。


 そしてもっと肝心なところ、当選したときの約束は守られ西城の全裸になり、その姿をおさめた写真は全校生徒に配られた。

 写真はそれはもうエロいの一言。どれくらいエロいかというと、いくつもカップルが消滅したくらいだ。

第十四話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


以前あとがきで書いた伏線とやらを今回、回収する形になりました。おかげでいつもよりも長い話になってしまいました。


今回はかなり苦戦しまして、話の展開やネタは何度も変更を加えました。

毎度のことながら、このシリーズは全体的に出オチ気味のせいでオチに悩むし、狂った前提で話が進んでしまいます。書いている私も頭がどうにかなりそうです。

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