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集会が終わった。集会はこれ以上に無い有意義なものとなった。
解散する生徒の話声を強化人間イヤーで聞いてみると、
「偽乳なんて最悪だ!」
「西城に投票しよう」
「正直おっぱいはどうでもいいけど、嘘つきに票は入れたくないわね」
といった、増田を非難する声と、西城を称賛し彼女への投票を決定したという声がほとんどだった。
集会は狙い通り成功し、西城の勝利はうんと近くなった。
混雑に巻き込まれたくないので、人が減るのを舞台上から待っていると、西城から声をかけられた。
「お疲れ様。大成功だったね!」
西城が勝利に興奮していることは、表情からも話し方からも見て取れた。
「ああ、そうだな」
「ハジメのおかげだよ。ただ情報を明かすだけじゃなくて、心に訴えかける名演説だったと思うよ。だから皆、あんなに熱狂したんだろうね――」
と、ここまで言ってから西城は少し考える素振りを見せ、そして言った。
「……いや、迷演説だったかも? さすがにあそこまで言われると、少し恥ずかしいっていうか、アレな感じ?」
「何を言うんだ? その天然巨乳は恥ずべきことじゃない。誇りに思うべきだ」
「なに、その堂々とした言い方? いや、巨乳であることを恥ずかしいと思ったことないけど……まあ良いか。とにかくありがとう」
西城は笑顔で礼を言った。面と向かって言われると結構照れる。
「それを言うなら西城の元々の政権公約が良かったのさ」
しかし、俺たちがこのように勝利の余韻に浸っているとき、また敗北を受け入れられない者も居た。同じく舞台上で風紀委員長は地団太を踏み、増田は彼に平謝りしていた。
特に、風紀委員長の悔しがりっぷりには鬼気迫るものを感じた。あれは下手しなくても俺たちを恨み、実力でもって復讐するに違いない雰囲気だ。まさか、ここまで悔しがるとは思わなかった。
この集会では俺たちの望む成功と勝利を得られた。しかし、これは一つ計算外だったかもしれん。
つまり俺たちは勝ちすぎた。この敗北は風紀委員長には屈辱的だったろうし、追い詰められたものは例えネズミであったとしても猫に噛み付くという。そして、この風紀委員長はネズミなんてちゃちなもんじゃない。この学校を支配する風紀委員の頂点、いわば王、つまりは獅々だ。
こいつは西城の身が危ない。投票日前に西城を排除せんとする行動が必ず起こされる。
ここは俺の出番だ。この大きすぎる勝利は俺のせいでもある。それに俺の仕事は元々護衛だ。西城、お前の身は絶対に俺が守ってやるからな! そして守り切って最後にはこうだ!
「ありがとうハジメ! 私の身を守ってくれたんだね! 大好き! エッチしよう!」
そう言う西城を俺は優しく抱きしめる。もちろん場所は、放課後の教室。時刻は夕方。
さあ風紀委員長! どこからでもかかってこい!
◇
「そんな……馬鹿な……っ!」
最悪の事態だ。俺は唇をかみしめた。
自分の見立ての甘さを今頃嘆いてももう遅い。西城を守り切るなんて、あの時の俺は何を馬鹿なこと言って浮かれていたんだ。そんなこと、できるはずが無かったんだ。成功した後のことより、成功するかを考えるべきだった。結局俺は何もできなかった。
その結果がこれだ……っ!
「生徒会長――西城さん」
投票結果が出ても風紀委員長、何もしてこないのだが!? くっそー、襲い掛かる敵を倒して格好良いところを見せるつもりだったのに、誰も襲ってこないんじゃ意味がねえ。こんなことなら、誰かが襲ってくるのを待つんじゃなくて、自分から行動すべきだった! なにもしないまま全てが終わってしまった!
――あの集会から今日まで、結局風紀委員は何もしかけてこなかった。集会終わりに俺が思ったことは完全に杞憂に終わってしまった。
安全が保たれた西城と、平和を愛するこの世のすべての人は、寧ろそれを喜ばしいことだと考えるだろうが、俺からすると最悪以外の何物でもなかった。俺の当初の作戦、西城を敵から守り格好良いところを見せて惚れさせる作戦の失敗が確定となったのだ。
ロングホームルーム中、開票結果を知らせる放送を俺は心から喜んで聞くことができなかった。
くっそー、こうしちゃいられねえ。一時間目の途中だが、風紀委員長に問い詰めてやる!
俺は優子先生の止めるのも聞かず教室を飛び出し、風紀委員長のクラスに怒鳴り込んだ。中に入り風紀委員長を見つけるなり、胸ぐらを掴んで尋問した。すると奴はなんと答えたか?
「……あの段階で実力行使に出てももう遅い。そもそも、実力行使は立候補を取り下げさせるために行うもの。西城はきっと実力行使では取り下げないだろう……。それなら、生徒たちの中に隠れボール偽乳好きが居る可能性に賭けるしか……」
「居るわけねえだろうがッ!」
俺は思わず風紀委員長をぶん殴った。しかも、居たとしても選挙に勝てるくらい居るわけねえだろ。そんなに居たらもう主流派だろ。なんで隠れてんだよ。
くそが。なんで実力行使に意味が無いことが分かるくらい頭を使えるのに、ボール偽乳好きの可能性に賭けちまうんだ。だったら実力行使の方に賭けろよ。
「糞がッ!」
腹が立ったので、俺はさらにもう一発殴った。風紀委員長は意識を失った。




