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俺は昼休み、西城に増田についての考えを話すと、西城も調査の必要性を感じ、彼女と一緒に新聞部部長の中田と、写真部部長の細田と接触した。
「どうした西城? それと……確かお前は護衛の永井だったな」
「俺と中田に何の用だ?」
二人は、早く昼飯が食いたいから手早く済ませてくれといった感じに気怠そうだ。なので俺は単刀直入に言った。
「実は二人に折り入って頼みがある。長谷川が辞退し、代わりに増田が立候補したのは知っていると思うが、その増田について調べてみて欲しい。こいつには絶対に裏がある。二人にしか頼めない事だ、頼む」
「私からも頼みます」
個人の身辺調査において新聞部と写真部の右に出る者は居ない。水島と中野に頼まないのはそういう理由だ。気怠い態度を示しているが、断らないでくれよ。
「まあ、金は貰ってるからそれくらいはしても良いが」と中田。
「おお!」
しかし、
「だが、なぜ調べて欲しい?」
と細田が言った。
まあ、鈍い奴ならそう思っても仕方が無いか。俺みたいに、学校に居る巨乳美少女全員の顔と名前を記憶している奴はそうは居まい。
「あんな巨乳美少女は、この学校に居ないはずだからだ」
俺が堂々と言い切った。すると中田と細田は笑った。
「良いだろう。納得してやる。それに西城が勝たなければ残りの50万を貰えないからな」
と細田。そして、中田は言った。
「それに存在しないはずの巨乳美少女が存在しているこの謎! ジャーナリストの血が騒ぐぜ」
「ありがとうございます!」
「ありがとう、よろしく頼む」
西城と俺は礼を言った。
これで増田については一安心だ。彼らなら、きっと増田に隠された黒い真実を暴いてくれるはずだ。それがどんなことかは分からないが、しかしきっとそれは、俺たちに有利に働くものに違いない。
待ってろよ、風紀委員と増田莉子! 正々堂々暴力で襲ってこずに、卑怯にも選挙で勝とうとしたことを後悔させてやる!
それから三日後、選挙期間も残すところあと一週間というところで、中田と細田は調査結果を持ってきた。この三日間、西城はこの調査結果を今か今かと待っていた。
この三日の間に、風紀委員連中は、わが校に存在する有力宗教団体をも味方につけていた。すなわち『三つ編み文学少女ミニスカ教』と『ボーイッシュロングヘア巨乳教』である(邪教じゃねえか!)。
西城陣営はじわじわと追い詰められていた。世論調査によると増田派70、西城派30という割合の支持率。風紀委員打倒を掲げていても、さらなる巨乳には勝てない。皆、風紀委員に不満を持っていても性欲には逆らえない。
このままでは負けてしまう。中田と細田の調査結果が、きっと現状を打破してくれると、俺と西城は期待してその内容を聞いた。場所は学校近くのファミレスである。
「これを見てくれ」
中田は、まずいくつかの書類をテーブルの上に広げた。
「これは何?」
西城は首を傾げ、つぶやいた。その疑問に中田は答える。
「増田莉子の医療カルテだ。五日前、増田は手術を受けている」
「どこか悪かったんですか?」と西城。
「悪かったといえば、胸が悪かった」
「心臓病か?」
俺が聞くと中田は首を横に振った。
「いや違う。これは整形外科のカルテだ。つまり彼女は豊胸手術を受けている」
「「なんだってっ!?」」
俺と西城は声を揃えて驚いた。
どうりで、と俺は直後に納得した。
なるほど、あの巨乳は偽りで最近できたもの、本当は貧乳だった。だったら俺の記憶にないのも頷ける。巨乳の増田莉子は、手術を受けた五日前よりさらに前には存在しなかったのだ。
「証拠写真もある」
そう言って細田は、いくつかの写真をテーブルに広げた。それは増田莉子の着替えの盗撮で、写真の増田は上半身が裸だった。そして、そのさらけ出された胸を見れば、豊胸手術を受けたことは一目瞭然だった。
「こいつはひでえ……ほとんどボールじゃねえか……」
「そこ!? 手術跡じゃなくて!?」
俺が呟くと西城は驚いた様子で声を出した。
いや、確かに術後五日だから跡が残ってるけど、そんなことよりこの出来の悪いボールの方が悲惨で重要なことだろ! ほとんど一個の球体だぞこんなもん!
そして、中田はこう付け加えた。
「おそらく西城の政権公約に対抗するため、急遽手術することになったのだろう。他に巨乳の候補者を立てられなかったんだな。しかし、そんなにすぐ手術してくれる医者も金も足りていなかった。だから、こんな出来の悪い手術をうけるハメになってしまったんだ」
なるほどな、と俺は手を打った。
中田の見立てはおそらく正しい。このタイミングでの手術、増田はあきらかに手術を急いでいる。それに普通、豊胸手術を受ける女子高生が居るだろうか? 増田のボールは個人的理由でなく、明らかに西城に対抗するために急ごしらえしたものだ。
だが、それならこいつは嬉しい報告だ。増田の巨乳が偽乳であることもだが、そんなことをしないと選挙に勝てないと風紀委員が自白したのも同然だからだ。つまり、増田が偽乳であると全校生徒に宣伝し、西城の人気が復活すれば、風紀委員は武器を失うのでそのまま西城が選挙に勝てるということだ。
そしてさらに付け加えるなら、そのままみすみす勝利を明け渡すわけにはいかないと、暴力に訴えかけてきた風紀委員を俺が返り討ちにすることで、西城は俺に惚れ俺の作戦も成功となる。
俺は思わずガッツポーズをした。そして、興奮気味に西城に提言する。
「このことを、今度の集会で暴露しよう。こんな偽乳見たい奴なんて居ないし、生徒たちを欺いたことで反感を買うはずだ。こいつは奴らを足元から崩れさせる爆弾だぜ!」
「そ、そうだね。もちろん、そのつもりだよ」
かくして、勝利の天秤は確かに西城の側に傾いたのだ。よーし、これからの展開が楽しみだぜ。さらに俺は提言する。
「あと、同時に西城が天然おっぱいだってことを強調して宣伝しよう」
「うーん……ちょっと恥ずかしいけど、仕方が無いのかな……?」
「あとバスト88センチ、Gカップも前面に出していこう!」
「ち、ちょっと! なんで私の胸のサイズ細かく知ってるの!?」
あ、ヤベ、口が滑っちまった。




