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 その話が終わると、西城はこの選挙までに準備してきたことや考え、例えば以前から人助けをしてきたなんことを自慢げに語り始めた。さらには。


「――だから普段から胸元開けてたんだけど、選挙に勝つためにはその程度じゃ知名度足りないと思って、文化祭のミスコンにも出ようとしたんだよねぇ。でもアレは写真部が楽屋の写真撮るじゃん?」


「ん? それはそれで、裸写真が出回れば知名度は上がるんじゃないか?」


「駄目だよぉ! だって私、選挙に勝ったら脱ぐって言ってるんだよ? それなのに先に裸の写真が出回っちゃったら、私の裸を見たいって人が減っちゃうじゃん!」


「なるほど……」


 と、口では言っておきながら俺はそうでもないだろうと思っていた。実際、夏の旅行中に撮影した西城の裸映像を持ってる俺でも、当選したときの西城の裸は気になる。男は、そういうエッチなものは常に新しいものを求める。イカみたいに、エッチなものには鮮度があるんだ。

 そうやって会話していると、いつの間にか西城の家の前に着いていた。


「送ってくれてありがとう」


 西城は笑顔で俺に言う。いつもながら可愛いが、さっきの姉の事情を聴いた後だと切実っていうか健気っていうか、より一層かわいく見えやがるぜ。だったらと、それに俺も笑顔で応え、宣言した。


「西城! 俺が居るから安心しろ! どんな風紀委員の魔の手がお前に差し掛かろうと、護衛の俺が全部ぶっ倒してお前を守ってやる! お前が選挙に集中できるようにな! だからお前は――」


 その続きは西城が言った。


「うん、絶対勝つよ!」


 え、これもう以心伝心じゃん。雰囲気出てるくない? これ選挙に勝ったら付き合っちゃう流れだよな?


 それから俺たちは「おやすみ」と別れの挨拶をし、西城が家に入ったのを見送った俺は、我が家に帰るべく歩き始めた。


 さて、絶対守ると宣言したからにはバリバリ活躍してやるぜ。活躍したら俺に感謝してくれるイコール俺に惚れてくれる可能性が上がるからな。さあ、これからの選挙活動期間中、強くて格好良いところ西城に見せつけるために風紀委員ども、バンバンかかってこいや!







「ふざけやがってぇッ!」


 ガシャン!


 それから三日後、俺はとてつもなく苛立っていた。どのくらいかって、空のゴミ箱が目に着けば蹴飛ばすくらい苛立っていた。あくまで空だ。中身が多ければ多いほど後始末が面倒になる。

 それで、何故こんなにも苛立っているかというと、三日前の挨拶で西城が風紀委員どもに宣戦布告、生徒会選挙が始まった。にもかかわらず、全く、一切、何にも風紀委員どもが手を出してこないからだ。

 今回、俺は襲い来る風紀委員どもをバッタバッタとなぎ倒し、格好良いところを見せなきゃならんのに、何故奴らは西城を襲わないんだ。

 このままじゃマズい。早く西城を襲ってくれ!




 休み時間、むしゃくしゃしながら廊下を歩いていると、掲示板に貼られた選挙ポスターが目に付いた。俺はストレス解消のために、ポスターの一枚を引っぺがした。もちろん、それは西城の物ではない。

 そして、はがしたポスターをクシャクシャに丸めて、壁に向かって思いっきりぶつけるようにして投げた。他人の目など気にしない。

 これで少しはスッとすることができた。床に落ちたクシャクシャのポスターを、ゴミ箱に捨てるために拾い上げようとして屈んだ時、俺はスッとしたおかげであることに気付いた。

 拾ったポスターを広げると、それとまったく同じものが他にも掲示板に貼られていることが分かった。

 さらに観察すると、貼られている選挙ポスターは十枚であるのに、西城の一枚を除いた残り九枚のポスターは、全て同じ候補者のポスターだったのだ。他にも候補者は居たはずなのに、これはおかしい。何故か同じ候補者のポスターばかり貼られているのだ。

 さらにさらにそのポスターをよく見ると、『風紀委員推薦』と書かれてあった。しかし、不思議なことにそのポスターの写真は美少女ではあるが、以前挨拶していた長谷川ではなかった。

 いつの間にか別人が立候補している。だが、そんなことは彼女のプロフィール、そして政権公約と比べれば些細なことかもしれない。


『バスト93センチ、Hカップ。当選したら脱ぎます!』


 こ、こいつは西城のパクリじゃねえか! しかも! 以前旅行中に盗撮した映像を分析したところ、西城はバスト88センチ、Gカップなのだ。

 こいつはマズい! 単純バストもカップも負けているとなると、大衆はこの風紀委員の推薦を受けた美少女の方の裸を見たいと思うに決まってるじゃないか!

 で、それはそうとこのバスト93センチのHカップちゃんはいったい何者なんだ?


 もう一回ポスターに目を通すと、『バスト93センチ、Hカップ』より若干小さい字で書かれているのを見つけた。


 『二年A組、増田莉子』




 この衝撃の発見から教室に戻ると、俺は西城に真実を教えられた。すなわち、二人の有象無象候補者と長谷川は立候補を取り下げ、風紀委員は長谷川の代わりに巨乳美少女の増田を推薦したというのだ。その際、西城の選挙公約をパクるなんて、なんて汚い連中なんだ。

 奴らが、西城の政権公約をパクるために立候補者を変えたのは明白だった。長谷川は顔は良かったが、おっぱいは大きくなかった。風紀委員は西城に勝つために、わざわざおっぱいの大きな美少女を見繕ってきて、選挙公約を西城と同じにしたのだ。


 

 

 それから授業が始まっても俺の怒りは止まらなかった。西城の政権公約をパクったこともそうだが、暴力に訴えてこないせいで俺の活躍の場が奪われたからだ。奴らが暴力を仕掛けてこないのは、そうしたとき、下手したら西城が悲劇のヒロインとして、逆に票を集めてしまう危険性があるのと、同じ裸ならより巨乳の自分たちが勝てると思っているからだろう。

 それは俺も事実だと思う。実際、俺も西城より巨乳の、この見ず知らずの増田莉子という女の裸を見たくなってきている。だが、それでも念には念を入れてとか、適当な理由を付けて襲い掛かってくれないと、俺が困る――あれ? 俺はここまで考えて、一つ引っかかるものを感じた。


 今さっき、俺は増田のことを『見ず知らず』と思ったのか? だが、そいつはよく考えなくてもおかしなことだった。俺が把握できていない巨乳美少女など、この学校に一人たりとも存在しない!

 俺は入学前に学校の全巨乳美少女、及び先生を含む巨乳美人を機関の人間に調べ上げさせた。そして、俺はほぼ毎日学校中練り歩いてナンパしているから、たとえ巨乳美少女転入生が来たとしても、その日のうちに存在を把握している。

 それだというのに、俺の記憶データベースの引き出しをいくら開けても、増田莉子という巨乳美少女は見つからない。


 こいつは何か裏がある、と俺は思った。

 何故、風紀委員は長谷川を一度立候補させたんだ? 増田という逸材が居るなら、西城の政権公約など無くとも最初っから増田を推薦するんじゃないか?


 俺は、増田を調べる必要があると思った。

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