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 一時間目が終わって、教科書を机の中にしまっているときのことだった。


「ねえ、ちょっと良いかな?」


 西城が俺に話しかけてきた。クイクイと親指で廊下を指す。「ちょいと面貸せや」ということらしい。

 も、もしかして風紀委員潰しの手始めに俺を潰す気か? 当選前から実績作りってか!?


「……なんか変なこと考えてる? 大丈夫安心して――いや、あんまり安心できる内容じゃないか……?」


 や、やっぱりそういうことか。この言い方、金玉つぶしみたいな残虐なことはしないが、爪をはがすくらいのことはすると、そういう意味と捉えて良さそうだな……。


「悪いが、いくら西城でもそれは勘弁だ。俺はここから動かないぜ」


「……はあ。仕方がない。ちょっと耳貸して」


 西城は、そう言って俺の耳元に顔を近づける。耳に彼女の温かい吐息がかかり、ピンチだというのに思わず興奮してしまう。西城は小声で耳打ちした。


「ハジメに、私の護衛を頼みたいんだけど」


 それだけ言うと西城は顔を俺から話した。えー、もっと耳元で話して欲しーいーっ! しかし西城は、俺の心を無視して普通に話し出す。


「ほら、私さっき風紀委員に宣戦布告しちゃったでしょ? だから身を守ってくれる人が必要だって考えたんだ。で、勝手なんだけどハジメが強くて頼みやすくて同じクラスだし、一番の適任かなって」


 確かにそいつは勝手な話だと俺は思った。まあ、巨乳美少女から頼られて悪い気はしないので頼みは受けるつもりだが、その前に俺は一言、言いたいことを言った。


「だったら宣戦布告しなけりゃ良かったんじゃないのか?」


 これに西城は毅然とした態度で答えた。


「それは駄目。他の三人より票を集めるためには、風紀委員に不満を持つ層を取り込まないといけない。それに、私自身あいつらを倒したい気持ちに嘘をつきたくない」


「なるほどね。だが、俺が断ると言ったらどうするつもりだったんだ?」


 そのうえ俺は風紀委員だ。

 俺のセリフに西城は微笑した。


「ハジメは断らないよ」


 そのセリフに俺まで思わず笑った。はは、全くいつの間にか随分信用されていること。「それに――」西城は続けた。


「一応断られたときのために、別の人にも頼んであるよ」


 なんじゃそりゃ! 俺はずっこけた。そこに西城が、ちょっとだけ慌てた様子でフォローを入れる。


「でもハジメは同じクラスで長い時間側に居られるし、それに一番強いと思うから――」


「いやありがとう、もう良いよ。引き受けるさ」


「ホントに!? ありがとう!」


 西城の表情はパーッと明るくなり、今にも飛び跳ねそうな勢いで俺に礼を言った。

 まあ、こんなにも喜んでくれるなら引き受けた甲斐があったってもんだな。これ、もしかして脈在りか? このまま選挙活動で仲を深めていき、西城が当選した暁には二人は付き合い始め――あり得るな。

 よし、ここは他の男に任せてそいつといい雰囲気になって欲しくなかったから引き受けた、とか余計なことは言わんようにしとこ。





 俺は昼休み、食事中このことを水島と中野に話した。


「お前風紀委員なのに良いのか?」


 すると、水島からこんな言葉が返ってきた。確かに風紀委員である俺が風紀委員を敵に回すのは、もしも西城が当選しなかった時に非常に立場がマズくなる。

 それに、せっかく風紀委員のおかげで甘い汁を吸えていたのが、それを失うことに自ら手を貸すことになる。

 だが、それでも手を貸すだけの十分な理由があるんだ。


「まあ、確かに風紀委員を敵に回し、あまつさえ潰しちまうなんてのは俺に何の得もないだろうな、普通なら。だが、これで西城の好感度を上げて彼女にしちまえば、風紀委員でセクハラする必要なんてなくなる。それに実は、風紀委員の連中には個人的な恨みもある」


 詳しくは『Hの後に愛はあるか?』を参照して欲しい。


「それは分かったが――」

 中野は箸を止め、


「――勝つ見込みはあるのか?」


 俺に問うた。それに俺はあっけらかんと答えた。


「まあ、大丈夫なんじゃねえの? 見た感じ策はありそうに感じたぜ。それに脱ぐって言ったときのあの歓声、勝ったようなもんだろ」


「おいおい、そんなんで大丈夫なのか?」


 水島は呆れたように言った。


「大丈夫大丈夫。それに、今日の放課後に西城陣営の会合があるんだ。もしそこで駄目そうだと思ったら、手を引くことにするよ」


 俺はそう言うと、またうどんをすすり始めた。水島と中野は何か言いたげだったが、結局何も言わず二人とも食事を再開させた。

 俺はああは言ったが、正直勝ち目が薄くても西城の裸写真が見たいので、西城に味方したい気持ちの方が大きかった。




 わが校の生徒会選挙は、そんな名前をしておいて実は生徒会長しか決めない選挙だ。他の役職は、当選した新生徒会長の指名によって決められる。

 今回の選挙の立候補者は西城を除けば三人、そのうち一人、長谷川という二年生のそこそこ美少女が、風紀委員の推薦を受けた最大の敵だ。こいつに勝たなくちゃならない。他の二人はどうせ票を集めることはできないだろう。俺も、もう顔も名前も覚えていない。

 西城は、この長谷川に如何にして勝つつもりなのか。確かに、当選すれば脱ぐという政権公約は破壊力ともいえる魅力があるが、それだけでは風紀委員の後ろ盾は破れない。これは風紀委員の立場である俺だから断言できる。


 さあて、西城は長谷川に実際どうやって勝つのか、会合にて教えてもらいましょう。

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