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このエピソードはすでに一度、二万字程度で完成させたのですが、クオリティーに納得がいかないため書き直すことになりました。そのせいで投稿がいつも以上に遅くなると思います。どうかご容赦ください。
体育祭も文化祭も終わったこの二学期に、いったいあと何が残っているというのだろうか。一年生には修学旅行もない。残りの日々に起こることは全て些事ではなかろうか?
「なあ、お前らもそうは思わんか?」
昼休み、いつも通りに水島と中野たちと一緒に食堂で昼飯を食っている最中、俺は余りの退屈さについ二人に同意を求めた。
「いや何のことだよ」
「急に口を開いたかと思えば」
ちぇー、こいつら『ツーカー』っていうかさ、それくらい共通認識持っといてくれよ。
「お前らさあ、皆まで言わせるなよな」
「いや、皆どころか一っつも言ってねえわけだが」
「左様」
俺はため息をつき、仕方が無いので一から話すことにした。
「だからさ、この二学期はあと二か月以上も残ってるってのに、目に付くようなイベントが無い。これじゃ、作戦を立て辛いじゃねえか」
二人は俺の話に「なるほど」と頷いた。俺は話を続ける。
「いやまあ、別にそんなことで、まるっきり作戦が浮かばなくなるわけじゃあねえんだが。何せ俺のことだからな――」
「いや待て! まだ大きなイベントが一つ控えてるぜ」
水島は何か思い出したかのように突然大きな声を出した。
「おい、脅かすなよ。で、それはなんだよ?」
いったい何のことかと思ったが、水島の口から出た言葉は正直言って期待外れだった。
「生徒会選挙だよ」
「あー、駄目だそんなもん」
「ほう、珍しいな」
中野は俺の返事に意外だという反応をした。俺はそれに文句を言った。
「おいおい、そんなに俺が牛乳パックでコースター作ったり、公園のハト捕まえて食ったりする奴に見えるってのか?」
「駄目だぞ永井、いくら腹が減ったとしても、そこら辺のハトでも勝手に捕まえるのは法律で禁止されている」
「分かってるんだよそんなことは! ……っていうか中野、お前には俺がそういう風に映ってたのか!?」
「いや、そんなことは思っとらんし、君が訳の分からない例えを出してきたわけだが?」
…………。俺はこの話をこれ以上するのは止めにして話を戻すことにした。
「とにかく生徒会選挙は使い物にならない。これを利用するってなると俺が立候補するか、立候補した美少女をサポートするかの二択になることが考えられる。
だが、俺は生徒会になんか入りたくねえ。あそこは風紀委員の傀儡だからな。
となるとやるなら後者だが、後者は後者で俺好みの立候補者が出ない可能性とか、そもそも選挙と言っても名ばかりの風紀委員による出来レースだから、俺のサポートのおかげで選挙に勝てたという、最も俺に惚れる要素になり得るものが発生しない訳だから、こっちも根本的な問題があるってわけだ」
この説明で二人は納得したように「へえ」と言った。
とまあ、これがつい先日の話で、俺は生徒会選挙については完全無視のガンスルーを決め込むつもりだった。あの事を知るまでは――。
その日は十一月の第一月曜日だった。毎月第一月曜日の朝には毎度のこと全校集会が行われ、無論俺も仕方がなくクラスの列に混じっていた。
しかし、今日の全校集会は他の月とは少し違う。それは、例の生徒会選挙に立候補する生徒のお披露目があるということだ。そんな下らない事で、その分グラウンドで立ってる時間が伸びるってんだから、朝っぱらから文句の一つも言いたくなる。
おかげで巨乳美少女ウォッチングが捗ってしょうがない。なんか台に乗って喋ってる禿げ頭のおっさんや、シワとシミだらけのおばさんの話なんてちっとも聞く気になれない。それは、生徒会選挙立候補者の軽い自己紹介が始まっても同じことだった。
そんな中、俺は一つの異常に気付いた。
――西城が居ない。なんだよぉ、これじゃ女神西城の素晴らしき胸の谷間を拝めねえじゃねえか。……しょうがない、城ケ崎で我慢するか。
俺は強化人間の空間把握能力を使い、五つ前に居る城ケ崎の胸を凝視した。
……ほう、よく見るとシャツのボタンの隙間からちょっと中が見えますなあ……って、肌着着てんのかよ城ケ崎……っ。
「ちょっと永井君、落ち着いて」
悔しがっていると、見回りをしていた優子先生に注意されてしまった。おのれ城ケ崎め……っ。こうなったら空間把握能力で帆風のパンツを覗くしかねえか……?
「……いやだから、――ほら前見て。四人目、最後に西城さんが挨拶してるよ」
優子先生は俺の肩を叩いて、前の朝礼台を指さす。俺は先生の発言にビックリたまげて、思わず真面目な生徒の様に朝礼台の方を向いてしまう。すると朝礼台の上には、紛れもなくあの女神西城が立っていて、軽い自己紹介をしていたのだ。
だからこの列の中に居なかったのか。だがどうして? ギャル系で胸の谷間を晒している西城も別に馬鹿というわけじゃあない。生徒会が風紀委員の傀儡ってことくらいは分かっているはずだ。この学校の生徒なら誰でも知っていることだ。それに彼女は生徒会長ってガラか? 全く持って想像がつかない。
だが数秒後、西城は俺の疑問に答えた。
「――風紀委員による恐怖と、セクハラに支配されたこの学校の構造は、正さなければなりません。よって私は生徒会長に立候補しました」
なるほど、打倒風紀委員のために立候補したのか。いくらセクシーに制服を着崩している西城でも、セクハラは容認できないってわけか。いやセクハラを容認できる人間は普通居ないか。
そしてこれを聞いた女子生徒は口々に「良さそう」とか「嬉しい」といった言葉を漏らした。女子生徒からはウケがよろしいご様子。西城は有力候補になり得るかもしれん。
だが――。
俺は早くも西城のことが心配になってきた。こんな大っぴらに風紀委員を敵に回すと発言して大丈夫なわけがない。きっと奴らからブラジャーを、いや下手したらパンティーまでをも狙われかねん。さすがに命は取らんと思うが。
いや待て! 女神西城のブラジャーとパンティーは、彼女の谷間を日ごろ拝んできた俺たちにとっては命みたいなもの。そう俺たちの命だ。つまり俺たちの命が狙われる。こ、こいつは危険すぎる……っ。西城は果たしてこの選挙を勝ち抜くことができるのか……? いったいどんな算段があって、選挙に勝てると思ってるんだ西城は?
そこへ、またしても(続きを聞いたら)西城は俺の疑問に答えてくれた。
「――そして私が生徒会長になった暁には――」
ここで西城は一呼吸置いた。
「――脱ぎます!」
『うおおおおおおおおおっっっ!!!』
その瞬間、全学年全クラスの男という男たちが吠えた。無論俺も吠えた。女子の中にはドン引きしている人も居たが、男たちは構わず吠えた。興奮に包まれ、体は熱を帯び、目頭が熱くなった。
「ぬ、脱ぐというのは!?」
生徒会選挙のまとめ役っぽい男教師が、取り乱した様子でマイクを使って西城に問う。それに西城は堂々と答えた。
「はい! 私が脱ぎます! 全裸になります!」
『うおおおおおおおおおっっっ!!!』
再び男たちの歓声が上がった。これはもう、俺たちの勝利だ……っ!
俺たち男は涙をぬぐった。いまだかつて、こんな選挙と女性立候補者があったであろうか? いやない。女神だ。まさしく女神だ! 女神が俺たちの目の前に在らせられるのだ! これで女神西城が当選しなかったら民主主義の敗北だ!
今日、俺は生まれて初めて意義のある全校集会を経験した。




