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7(終)

 ミスコンの方が終わると、他のエッチな出し物巡りをするために、俺たちは楽屋を発ち、まずはノーパン喫茶をやっている三年A組の教室に向かった。 


 そしてノーパン喫茶でエッチな写真を撮り終えたら、また次のエッチな出し物をやっている教室へ向かう。そしてそこでのエッチな写真の撮影が終わると、また次の教室へ向かうのを繰り返す。


 そうやってエッチな出し物をしている教室を転々としている最中、たまたま俺は一緒に楽しそうに談笑しながら廊下を歩いている城ケ崎、西城、帆風を見かけた。

 だが今は「もし俺もあの中に居たら」なんて思わないぜ。こうと決めたら進むのみの俺だ。今回はバッチリ、エッチな写真を横取りしてやるぜ。

 なーんて決意を確認してたら、ついに最後の映画研究部の部室まで来ちまった。もう撮るべきものは撮り尽くして、残すはこの映画研究部のエロ映画のみとなった。

 写真部エロ班リーダーの川中が、戸を開けながら挨拶をする。


「失礼します――あれ?」


 川中は部屋の中を見て疑問の声を出した。部屋の中には、上映に使う機器や椅子はあったが、人は客引きのためか熊の着ぐるみを着た人物が一人居るだけだった。


「他の部員や客は?」


 風紀委員護衛班リーダーの林が着ぐるみの人物に問う。すると着ぐるみの人物は申し訳なさそうな声で答えた。声は男のものだった。


「いやーすいません。他の皆は昼に食べたたこ焼きがあたったみたいで……。あ、お客さんが居ないのは、写真部さんに心置きなく撮影してもらうためです。はい」


「そうか、それはお大事に。ところで君?」


「はい、まだ何かありますか?」


「客を呼ばないんだったら着ぐるみを脱いだらどうだ? 暑いだろう?」


 林は着ぐるみにそう提案した、しかし着ぐるみはもじもじしながら答えた。


「いえ、わたくし、その、所謂恥ずかしがり屋でして、その……」


 林はそれを聞いて笑った。


「分かった分かった、そのままでいい」


「……ご理解ありがとうございます。ささ、皆さん座ってください」


 俺たち風紀委員と写真部は、着ぐるみに促されるまま椅子に座る。写真部はもちろんカメラを持って。椅子は教室にあるようなものではなく、見た目はマッサージチェアみたいな黒くて大きい椅子だった。

 全員が座り終えると、着ぐるみは言った。


「皆さんお席に着かれましたね。それでは座席についているシートベルトをお締めください。今回の上映は我が映画部初の4DXでの上映となっており、より臨場感を持ってエッチなシーンをお楽しみいただくことができます。しかし、揺れますので安全のためシートベルトをお締めください」


 それを聞いた写真部と風紀委員たちは、口々に「楽しみだ」「迫力ありそう」といった映画に対する期待の言葉を発しながら、喜んでシートベルトを締める。俺も指示に従いシートベルトを締めた。

 着ぐるみはその様子を眺め、皆がシートベルトを締めたのを確認すると、教室の窓という窓に付けられたカーテンを全て閉めた。教室が真っ暗になり、常人なら何も見えなくなる。

 着ぐるみの声が聞こえる。


「それでは間もなく上映いたしますので、皆様静かに落ち着いてお待ちください」


 この指示に、写真部風紀委員たちはあっさり従って、しばし無音が広がる。


 ――しかし突如、その無音を叫び声が破った。


「あっ! カメラを盗られたっ!」


 川中のその一言に皆が焦り動揺した。


「それは本当か?」 

「いったい誰に?」

「だとしたら早く撮り返さなくては!」

「シートベルトを外して犯人を捜さなくては!」


「ああっ! お、おれのカメラもだ!」


 そして、皆が動揺している間にまたしてもカメラが盗まれる。これで二人目、盗まれていないのはあと一人だけ。


「早く取り返せ!」


 風紀委員は焦った声で叫ぶ。しかしどうすることもできない。なぜなら。


「シートベルトが外れない!」


 風紀委員たちは、シートベルトを外そうとガチャガチャ激しく弄るが、シートベルトは一向に外れない。叩いても引っ張ってもビクともしない。


 皆が焦り、不安、怒りに包まれる中ついに――。


「くそっ! 俺のカメラも撮られちまった!」


 この事態に、ついに風紀委員護衛班リーダー林は叫んだ。


「おい着ぐるみの男、今すぐ電気を付けろ! このままでは何も見えない。犯人を逃がしてしまう!」


 しかし返事はせず、電気が付くこともなかった。

 林は叫んだ。


「くそっ、きっとあの着ぐるみの映画研究部員が犯人だ!」




 それから少しして皆が暗闇に慣れてきて、少しだけ周りの様子が確認できるようになると、犯人が誰なのかすぐに分かった。悔しそうな声で林は言った。


「くそ、やっぱりあの着ぐるみが犯人だ」


 教室のどこを見ても、あの着ぐるみを着た男の姿はなかった。どこからか、おそらく窓あたりだろう、そこから脱出したのだと皆が判断した。

 だが、俺はずっと前から着ぐるみが犯人だと分かっていた。俺は強化人間、あの程度の暗闇で周りが見えなくなるわけがない。それでも俺は着ぐるみを自由にさせた。

 もちろんそれには理由があった。皆が怒り悔しむ中、俺は周りに笑いそうになるのを悟られない様にするのに苦労した。




 シートベルトはそれから三十分ほどして勝手に解除された。体が自由になるや否や、林は風紀委員たちに指示を出す。


「早く奴を追うんだ! しらみつぶしに探せ! 俺は上に報告してくる!」


 指示を受けた風紀委員たちは、映画研究部部室を飛び出し方々に散った。俺も指示に従い教室を飛び出して探すふりだけした。

 しかし結局見つかったのは、脱ぎ棄てられたクマのぬいぐるみと、映画研究部部室横の機材置き場で縛られていた本当の映画研究部員たちだけで、風紀委員たちは肝心のぬいぐるみの中身は見つけられなかった。




 文化祭終了時刻になっても犯人を見つけられなかった風紀委員たちは、一度捜索を打ち切り、他の生徒と同じく下校時刻に帰ることになった。

 俺は深い満足感に包まれながら、水島と中野と一緒に俺の家に帰った。いや、満足していたのは俺だけでなく水島と中野もだが。

 



 三人して家に入ると、水島はポケットから得意げに、フィルムの入った三つのフィルムケースを取り出した。水島は俺に問う。


「どうだった、俺の手並みは?」


 俺は答える。


「いやどうだったかな。あまりに演技が下手なんで、着ぐるみは熊じゃなくて大根にした方が良かったんじゃないかと思ったぜ」


「おい、そいつはひでえや。俺が居なかったら作戦は成立しなかったんだぞ?」


 確かにこの作戦は水島が居なければ成立しなかった。水島が今持っているフィルムは、何を隠そう写真部エロ班から奪い取ったあのエロ写真たっぷりエロフィルムなのだ。

 ――そう、あの熊の着ぐるみの中身は水島だった。


 今回の作戦はこうだった。最後に撮る映画研究部になり替わって風紀委員たちの油断を誘い、その隙をついてフィルムを奪うというもの。これは中野の偽レントゲンからヒントを得た。

 やることはまず、本当の映画研究部員が邪魔なのでどこかに閉じ込めておく。

 これは映画研究部員が昼休憩中、部室で昼飯を食うタイミングは客が来ず人目に付かないので、ここを狙って着ぐるみを着た水島が「屋台の試食」と騙って、眠り薬入りのたこ焼きを部員どもに食わせる。


 眠った後は縛り上げ、部室横の機材置き場に移動させる。次に、あらかじめ秘密機関の研究所の物置から学校に運び出しておいた拷問椅子を、透明マントをかけてバレない様に部室まで運搬し、元々そこにあった椅子とすり替える。

 あとは写真部たちの到着を待ち、映画研究部員のふりをして椅子に座らせ、あとはさっきの通りというわけだ。最後のは、着ぐるみを着た水島が映画研究部員ではないとバレるかもしれないが、作戦が終わった後なのでそこでバレても問題は無いし、犯人が誰なのかが分かるわけでもない。


 しかしこれだと「エロ映画の写真が撮れていないので、作戦のタイミングに問題があるのでは?」と思う人も居るかもしれない。

 だがご安心。エロ映画の方は水島にデータのコピーをさせておいた。全く穴のない作戦だ。事実、全く穴のない作戦だった。フィルムは俺たちの手元にある。


 ――え? 「こんだけ引っ張っておいて結局着ぐるみかよ」って? 「透明マントの代わりが着ぐるみって、グレードダウンしすぎ、しょぼすぎ」だって? うるせえ! 風紀委員たちの隙を作れたらなんでも良いんだよ!



 それから俺たちは飲み物を用意すると、作戦成功を祝って乾杯した。三人とも楽しげに笑う。

 俺は言った。


「写真部のエロ写真、中野の裸写真、これでエッチな写真が両方俺たちの手にあるってわけだ」


 水島は言った。


「こうも上手く行くとはな」


 そして中野。


「我輩抜きでこれだけの作戦を成功させるとは、さすがだな」


「あたぼうよ! 俺たちにかかればこのくらい軽い軽い! なあ水島?」


「そ、の、と、お、り」


 と、弾んだ声の水島。


「いやー、でも中野もすげえよ。単独で百枚も女の子の裸写真を撮るなんて」


 俺は中野を称賛した。


「あんまり褒めるな。面映ゆいぞ」


 中野は照れた様子だが、しかし声には確かな満足感が感じられた。

 おいおい、謙遜しても本音が漏れてるぜ。どうせなら、調子に乗るときは思いっきり調子に乗らなくっちゃ。ああ、写真部たちの吠え面、悔しがる顔が目に浮かぶぜ!

 愉快な気分の俺は笑いながらさらに言った。


「ま、俺、水島、中野、俺たち三人にかかればこのくらい朝飯前。できて当たり前。不可能は無いってことだな!」


 これに水島は言った。


「ホント、彼女作りもこれくらい簡単に出来たらいいんだけどなあ!」


「ハハハ、彼女作り以外はできる男たちか、我輩たちは!」


「…………」

「…………」

「…………」


 言った直後、中野はしまったという表情になり、三人とも思い出してはいけない事を思い出したかのような暗い沈黙に包まれかけた。だが――。


「…………ははははは!」


 俺は笑った。そんな雰囲気を一瞬で吹き飛ばした。

 中野の発言を誤魔化すわけではなく、ただ単純におかしかったから笑った。


「……ふふふ」

「……ははは」


 つられるようにして二人も笑う。

 

 彼女作り以外は――か。

 なに、今回はちゃんと今回の目的を達成できたからこれで良いんだ。彼女については、次こそは絶対に作ってやるからな。大丈夫だ、これだけのことをやってのける俺たちだ、彼女作りだって同じく成功させるさ!

第十三話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


文化祭をスルーするわけにもいかないと思ったのですが、良い話が浮かばなかったので別の話と合体させました。


話の終わらせ方も少し悩みましたが、一番は横取りの方法でした。

透明マントの代わりが着ぐるみってやっぱりしょぼいし、これくらいすぐ思い付けよと自分でもツッコミを入れたくなってしまいますね。大抵一人で答えを出してしまうので、偶には主人公がお話の流れからヒントを得て答えを出すというのをやった方が良いかなと思ってそうしたのですが、こいつ天才設定なんだからそんなことしなくても良かったかな、とも思ったり。

まあ、偶にはということで。きっと灯台下暗しだったんでしょう。

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