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3

 夕方になって、ようやく遊びを切り上げ旅館に戻ることになったが、海に入ったせいで体がべとべとの俺以外の皆は、海近くのシャワー室では満足いくまで流せなかったらしく、飯前に風呂に入る流れになった。

 ここでアタックチャーンス。まあ色々な表現をすることが出来るが、要は覗きをしようということだ。覗きは犯罪だが、女子の裸を見たいのが男の性。この機会を棒に振れるわけがない。


 俺ら学生が、そんな風呂付の個室なんて取ってるわけがない。男女一緒の八人部屋に、大浴場に遠征だ。

 だが、今回ばかりはこの金の無さに感謝だ。おかげで女子の寝顔を簡単に見られるし、それぞれの部屋に風呂を覗きに行く手間を省けるのだからな。


 八人全員が部屋に入ると、


「ちょっと、下着とか出すから」


 帆風はそう言って俺たち男子を部屋の半分に押し込み、仕切りとして部屋の真ん中のふすまを閉めた。旅館の大部屋というだけあって畳の和室なわけです。当然そういう仕切り方になる。で、下着見られるのも気になるくせに、何故四人部屋を二つ取らなかったかというと、簡単な話で八人部屋の方が安かったからである。


「まあ、見られたくないものがあるのはこっちも同じだ。中野」


 俺は中野の方を見た。

 中野は、俺の期待通りばっちりブツを用意してくれていた。事前に伝えてなくてもこれだもんね。

 そして二階が、中野がカバンから取り出した大きな布が何なのか質問してきたが俺は無視した。


「俺たちはちょっと用事があるから、二階は先に行ってろ」


 俺はそう言って、半ば強引に二階を部屋の外に押し出した。余計な奴に話を聞かれたら、後で面倒なことになるかもしれないからな。

 部屋に再び戻ると、水島は布を興味深そうに眺めていた。


「へえ、これがうわさに聞く透明マントか。人数分あるな」


「その通りだ。しかも防水加工」


 中野は腕を腰に当て、踏ん反り返って答えた。

 正直この被るだけで透明になれるって発明は、それだけ偉そうに出来るもんだと俺も思う。

 よし、じゃあ実行前に一つ聞いておくか。


「やはり女子と一つ屋根の下と言ったら覗きは鉄板だ。しかし、覗いたからといって彼女が出来るわけじゃないし、寧ろバレたら出来なくなるかもしれん。だが、それでも男なら覗きをやる意義は十分理解してくれると思う。もちろんやるよな?」


 俺の問いに、水島と中野は何も言わずただ頷いた。俺たちの心は一つだった。




 俺たちは全裸になると、ビデオカメラとタオルや着替え類を持ってから透明マントを被り、まずは男風呂を目指した。

 覗きが終わったらその足で男風呂に入る予定だ。ちゃんと風呂に入ったと分かる状態で男風呂から出てこないと、女子たちに怪しまれてしまう。だから覗き前に、一度着替えを男風呂脱衣所に置いておく必要がある。それから女風呂に潜入だ。

 ビデオカメラは、思い出はカメラに撮っておいた方が後で懐かしめるという配慮から持ち込むことにした。確かに刹那的覗きの方が、食い入るように命に代えても本気で覗く意欲が湧くかもしれない。そういう考えでいくと、後でいつでも見返せるようにするというのは甘えだろう。

 だが実際、後で見返せるほうが絶対得なので、ビデオカメラは誰が何と言おうと持ち込むぞ俺は。大丈夫、部外者が映ったらちゃんと顔にモザイク入れるから。あ、それと下半身にも。




 そして事前準備を済ませた俺たち三人は、満を持して女風呂に潜入した! 透明マントは現在も正常に作動しているようで、誰にも気づかれた気配はない。覗きは犯罪と言ったが、バレなきゃ犯罪じゃないんだよ!


 風呂の広さとか、どうでもいい情報はまあいいでしょう。

 他の女のことも別にいい、全員が全員イイ女ってわけでもない。

 それより、クラスメイトの美少女たちが裸であるということに注目したい! 四人とも全員、まだ湯船にはつからず体を洗っている。こいつは体をよく見る大チャンスだ。


 俺はまず、隣り合って体を洗っている西城と城ケ崎に目を付けた。

 水島と中野は誰から行ったのだろうか。透明マントのせいで、お互いどこに居るのか俺たちにも分からない。まあ、おかげでカメラに男が映らないんだから、寧ろ良い事か。そんなことより目の前に集中集中。


 さてさて、麗しき巨乳美少女たちを前から横から後ろから、目に焼き付けフィルムに焼き付けるってこれデジカメだったわ。

 しかしまあ、彼女らには目を見張る。肌は白くて荒れ一つなく綺麗。胸は、デカいだけでなく形も綺麗でピンクだし、ウエストも許容範囲内だし、確かに城ケ崎は尻もデカい。

 帆風、川上の所にも行かなくちゃならんが、中々足を踏み出す気に成れない。一生見てたいわこの光景。


 俺がずーっと二人を舐めまわすように見ていると、彼女たちは何やらおしゃべりを始めた。恋バナかもしれないし、俺のこと好きって話かもしれないので聞き耳を立てる。


「――でも、なんで断らなかったの? イメージと違ったっていうか……」


「だったらなんで誘ったのよ?」


 西城の質問に城ケ崎も質問で返した。どうやら、この旅行に城ケ崎がどうして参加したのかという話らしい。


「それは……」


 西城は返事に困っているようだった。正直に言うとマズい理由でもあるらしい。

 それを城ケ崎は鼻で笑った。


「分かってるわ。私がお金持ちだからでしょ?」


「それは……っ! ……そうだよ……」


 西城は否定しようとしたが諦めた。しかし、なんで金持ちだったら誘う理由になるんだ?


「でも、私はキャッスルちゃんと仲良くなりたいと思って――」


「利用するために? お金持ちとコネを持っていたら今後、有利でしょうからね」


 これに西城は今度は否定すらしなかった。

 利用するために? なんて不穏なワードなんだ。金持ちから利用と来て、良いイメージ一つも無し。誰にでも気さくに話しかけ、男子には谷間を見せてくれる女神のような西城が、まさかこんなやつだったとは……。

 互いにしばしの沈黙。何やら重い雰囲気。なんで夏休みのお遊び旅行でこんなシリアスな会話してるの? やめてくれない? 覗きしてるこっちのことも考えてよ。


 少しして、城ケ崎が沈黙を破った。


「……ていうかキャッスルちゃんってなに? あだ名? いやどういうセンス?」


「え、普通に名前からとったんだけど?」


「分かるけど、もっとマシなのあったでしょう。それかお金持ちだからお姫様とかお嬢様とかさあ」


「いや、それは無くない?」


「はあっ!?」


 その西城の返事に、城ケ崎は顔を真っ赤にして拳を振り上げた。

 シリアス短かったな。西城のあだ名センス、ホント無いからな。俺、ただのハジメで良かったわ。


「というか、それだったら西城さんだってキャッスルちゃんでしょ? 私、今度からあなたのことキャッスルちゃんって呼ぶから! それでもいいの!?」


「別にいいけど?」


「良くないわ! こんな恥ずかしい呼び方出来るか! 私まで頭おかしいみたいじゃない!」


 二人の言い争いは、ここから更なるエスカレート――かと思いきや、ふとした瞬間に城ケ崎が周りの視線に気づいた様子を見せ、静かになった。

 そんな城ケ崎に西城は訊ねる。


「でもそこまで分かってて、どうして断らなかったの?」


 これに城ケ崎は諦めたように、ため息をついて答えた。


「実は前にお父様に叱られたの。庶民だからって見下さず、もっと人に優しく広い心を持ちなさいって」


 それを聞いて俺は感動した。

 なんだ親父はいい人じゃないか。あの心の冷たさは親譲りじゃなかったんだな。だからちゃんと親父の言う事を聞いて、クラスメイトを無下に扱わず誘いを受けたんだな。よし、お前が冷たい心を捨てるの、俺も応援するぜ。そして俺にも優しくして。


「でもそれは理由じゃなくて、最近無駄な買い物が多すぎるから、庶民的金銭感覚を身に付けなさいって、その時一緒に叱られたの。だから、この夏休みはいつもの別荘じゃなくて、あなた達と安旅館に泊まることにしたのよ」


 なんだよ俺の感動返せよ。

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