42_真里姉と第1回公式イベント(現状と打開策)
いつもお読み頂いている皆様、ありがとうございます。
おかげさま今日中にPVが4万を超える見込みです。
なろうに投稿してからちょうど1月。
ここまで読んで頂けるとは、正直予想しておりませんでした。
改めて、ありがとうございます。
そしてこれからも、どうぞよろしくお願い致します。
「よお大丈夫か……ってなんだお前、そんな疲れた顔して」
マレウスさんがやって来たのは、ジャーキーを配り終えて間もなくのことだった。
カンナさんはルレットさんの様子を看に行き、グレアムさんは団員さんにジャーキーを渡しに行くと言っていた。
……ちゃんと渡すつもりだよね?
後で確かめようと心に誓っていると、マレウスさんが状況を説明してくれた。
「取り敢えず、俺とカンナでフォローした連中と、元から警戒して残っていた連中、それからお前が連れて来た連中で守りを固めてる。特にお前が連れてきた連中、土系統の魔法が使える奴が結構いて助かったぜ」
「土系統の魔法って何ができるんですか?」
「MWOじゃ、特別なオブジェクトや特定の地域を除いて、地形や環境とか、そういったもんにプレイヤーが作用できるんだ。つっても一時的だけどな。それを活かして突貫だが土系統の魔法で堀を作り、そん時生まれた分の土も使って壁を作った。強度を出すために工夫が必要だったが、おかげで今のところ被害は最小限度に抑えられてる」
そっか、あの時の私の行動は、こんな形で繋がることもあるんだね。
ふっと、嬉しさが込み上げてきた。
「何しろレイドが組めねえからな。こうして拠点を造って意思を共有できるのはでけえ。今の状況でバラバラに戦っても、下手したら味方のはずのプレイヤーから攻撃を食らう可能性がある。フレンドリーファイアだな」
「フレンドリーファイアって、何ですか?」
「お前そんな事も知らねえのか……って、そういえばゲーム初心者だったな。斜め上にズレた行動してくるからすっかり忘れてたぜ」
「えっ、私貶されてます?」
「いや、むしろ褒め……てるかは置いといて」
「はぐらかされた!?」
「置いといて! フレンドリーファイアってのは、日本語で言えば同士討ち。MWOだとパーティー外からのプレイヤーの攻撃は普通に食らうのが仕様だ。ルレットの“アレ”は例外だが」
「そんな設定があったんですね」
「むしろそれを知らないで良くあの状況を切り抜けたな」
「それは褒めてますか?」
「褒めて……やらんでもない」
「もうマレウスちゃんたら、またそうやってツンツンしちゃうんだから。ワタシ達女にとってはね、素直にデレてくれた方が時にはぐっとくるのよ? お気に入りのマルシアちゃんも、そう言ってたわ」
カンナさんが戻ってきたと思ったら、またマレウスさんのナイーブなところを。
あれかな、やっぱり女の人は恋話が好きだから弄ってしまうのかな?
でも私はカンナさんのナイーブなところは弄らないよ。
今は止めてくれるルレットさんもいないし。
「マジかよっ! ってバカ、そんなんじゃねえって俺は何度も!!」
「はいはい、とにかく今はこれからの対策よ」
自分で弄っておいてマレウスさんの反応はぶった斬るカンナさん、相変わらず容赦がない。
これで険悪にならないのだから不思議だ。
「ひとまず、この流れを作ったワタシ達に方針は任されたわ。グレアムさん達が積極的に賛同してくれたのも助かったわね。おかげで大きな反対も出なかったし」
「でも多少は反対されたんですよね?」
「あのねマリアちゃん。多くの人が集まり何かを決める時、反対する人は一定数出てくるのよ。特に理由がなくても、主導権を握られるのが気に食わないとかね。だから……
『なら代案出せゴルァッ!』
って、ほんのちょっぴり声を荒げちゃったら大人しくなったわ」
てへっ、っていう擬音が聴こえてきそうな仕草で舌を出すカンナさん。
あっ、今のとってもドスの利いた声が地声なんですね。
何度も言うけれど、見た目完全に女の人の口からそんな声が出たら、色んな意味で反対できる人はいないと思う。
「話を戻すわね。これまでの戦いから、大体の傾向は掴めたの。モンスターの名前はオーガ・クラウィス。武具は剣、斧、槍の3種で、常に一塊で行動するわ」
「一塊ですか……」
離脱することを優先したとはいえ、クーガーの突進を以ってしても、たぶん1体も倒せていなかったと思う。
それを3体同時に相手するとか、私にはどうすれば良いのか見当もつかない。
「剣は物理攻撃も魔法攻撃にもある程度の耐性がある、いわば壁役ね。斧の攻撃は防御力を無視してくるし、槍はこちらの遠距離魔法攻撃を打ち消してくるわ」
こちらの攻撃に耐性があって、攻撃が防御力無視で、遠距離魔法攻撃を打ち消してくるんだ、そうですか……。
言葉を反芻する私の眼は、きっと遠い彼方を向いていたと思う。
「遠距離攻撃の手段を持っていないことがせめてもの救いね。けどさらに問題なのが、体というかお腹の一際大きい、杖を持ったオーガ。名前をオーガ・パンドラという存在よ」
「オーガ・パンドラ……」
パンドラって、あの有名な箱がモチーフなのかな。
あまり良いイメージがないんだけれど。
「オーガ・パンドラはオーガ・クラウィスに常に守られる位置にいて、オーガ・クラウィスに回復を行うわ。そしてオーガ・クラウィスも、一定のダメージを受けるとオーガ・パンドラの守りを優先し、前に出て来なくなるの。このパンドラとクラウィスの連携のせいで、有効なダメージを与えるのがより難しくなってるわ。遠距離攻撃でパンドラを狙うにもクラウィスが邪魔だし、クラウィスを先に倒そうとしても、戻られてパンドラに回復されるから」
「聞けば聞くほど、打開策が見えてこないような気がするんですが」
「そこは考えがあるわ。ね? マレウスちゃん」
ウィンクを飛ばす先で、さっきの事が尾を引いているのか、マレウスさんが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「ったく……打開策なら、ある」
「あっ、そうなんですか? それなら良…」
「ちなみにその鍵はマリア、お前だ」
全然良くなかった!
そしてマレウスさんの言う打開策を聞かされた私は、その責任の大きさにまた意識を失いそうになった。
いつもお読みになって頂いている皆様、ありがとうございます。
新しく読んで頂いた皆様、楽しんで頂けたでしょうか?
今回新たに3人の方から文章・ストーリーに高い評価を頂くことができました。
そして6人の方に、ブックマーク頂くことができました。
大変嬉しく、物語を作るエネルギーになっております。
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