表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/210

179_真里姉と思わぬ報せ


 隠し扉から王様が城へ戻るのを見送った後、私達は自分の成長を確かめるべく、試しにモンスターと戦うことになった。

 

 ただどこへ行くかは未定で、近場にする方向で決まりかけた……その時。


「マリアさん、マリアさんっ!!」


 激しいノックと共に、名前を呼ばれた。


 只事ではなさそうな声は男性のもので、私の聞き間違いでなければ……。


 念のため三人に確認を取ってから扉を開くと、そこには予想通り、教団所属のバルトさんが居た。


「慌てた様子で一体どうし……っ!?」

 

 尋ねるつもりが、バルトさんを見て言葉を失った。


 装備の至る所に傷があり、バルトさん自身もあちこち怪我を負っている。


「先ずは話の前に回復ね!」


 マレウスさんがバルトさんを椅子に座らせ、カンナさんが回復魔法をかける。


 ルレットさんはMPポーションを飲ませ、私も照り焼きサンドを手渡した。


 怪我は魔法で直ぐに治ったけれど、食べるのには時間が必要で、私達はしばし待つことに。


 余程気が()いているのか、咀嚼(そしゃく)した照り焼きサンドを、清涼感のあるMPポーションで流し込んでいる。


 正直、味の組み合わせは悪いと思う。


 ただそれにも増して、時間が惜しいらしい。


 その様子に、私達まで落ち着かなくなる。


「すまない、突然押し掛けた上に助けてもらって」


 食べ終えるなり、バルトさんは謝罪の言葉を口にした。

 

「それはいいんですけれど、何があったんです?」


 バルトさんがこんな状態になるなんて、余程のことだと思う。


 レギオスとの戦いでも素早い動きで相手を翻弄し、攻撃の殆どを避けていたしね。


 バルトさんの発言を固唾を飲んで待っていると、思いもよらぬ言葉が飛び出した。


「“大魔(たいま)の樹海”の奥地から、大型モンスターの姿が消えたんだ」


 “大型モンスター”という単語に身構え、続く“姿が消えた”に困惑。


 いや、何か異常が起きているんだとは思うよ?


 ただ怪我を負った状態から、てっきり沢山の大型モンスターが現れたんだと思った。


 けれど実際は逆で、姿が見えないという。


 だとしたら、その怪我はどこで負ったのだろうか。


 疑問に思ったのは私だけではないらしく、ルレットさん達も首を捻っている。


 その点を尋ねると、またも予想だにしない答えが返された。


「これはレギオスから雪中行軍している時に負ったもので、今回のこととは無関係だ」


 どうしよう、ツッコみどころが多過ぎてどこから指摘していいのか分からない。


「レギオスからの雪中行軍って、あなた何でそんなことをしたのよ」


 戸惑う私をよそに、ズバッと切り込むカンナさん。


 こうい時は実に頼もしい……暴走する場合もあるけれど。


「団長の提案で、教団はカルディアに戻った後レギオスで鍛え直すことになった。国王が根回ししてくれたおかげで、俺達はすんなり受け入れられたものの訓練は地獄のようで……」


 遠〜〜〜〜くを見詰めるバルトさんにその過酷さが窺え、皆無言。


「…………そして最後の訓練が、雪中行軍。具体的には雪山を踏破し樹海に抜け、王都へ帰還すること。雪山には樹海に劣らぬ凶悪なモンスターが出没し、俺達は何度も死に掛けたが、なんとか全員辿り着いた。ただ吹雪を避けたせいで、予定よりも樹海の奥へ出てしまったんだ。さすがに全員ボロボロで、ここまでかと思った矢先」


「大型モンスターの姿が見えないことに気付いたのね?」


「ああ。慎重に周囲を探ったが、影も形もない。それで俺だけ王都へ報告に戻り、残りの団員は引き続き調査することになったんだ」


「状況は大体理解したわ。まずは急いで支援に向かった方が良さそうね。バルトちゃんでこの様子なら、他も似たようなものでしょうし」


「正直助かる。アイテム含め、余力は殆どなかったから」


「では手分けしましょうかぁ。ポーション類は私達で集めますのでぇ、料理はマリアさんにお願いしてもぉ?」


「ええ、任せてください」


 私は胸をぽんと叩いて、請け負った。


 食堂で出す明日分の料理を減らせば、直ぐに対応できる。


 減った分は、戻ってから作ればいいしね。


 慌ただしい展開の元、こうして私達は“大魔の樹海”を目指すことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 団員「○の進軍氷を踏んで」 団長(私も女神様に踏まれたい)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ