136_真里姉と弟妹に伝える海
小説第3巻、3月19日発売です!
Amazon様等で予約開始されておりますが、公式サイトでの情報が解禁され次第、別途ご報告したく存じます。
3冊目まで世に出せること……これはひとえに、読んで下さりお手に取って頂いた皆様のおかげです。
この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
貿易に関する交渉はもう数日掛かるということで、離島に戻った私達は次にログインする日時を決め、一度ログアウトすることにした。
現実の時間はちょうど深夜に差し掛かろうとしており、そのまま眠りに就き、翌朝。
朝食を終えた後、私はリビングのソファーで真人と真希に海で遊んだことを話した。
足の裏で感じた、焼ける白砂の熱さ。
ひんやりと心地よい、海水の冷たさ。
海に浮かび見上げた、広い空の青さ。
余計な力を抜き海と空に抱かれた解放感は、今思い出しても夢のよう。
その後ギルスと海水を掛け合ったり、ヴェルが流されたことを話すと、二人は楽しそうに笑ってくれた。
「お姉ちゃんが楽しめたのなら、何よりだね! ところで海に入ったということは、水着を着たの?」
「えっと……うん、まあ」
思わず言葉を濁す、私。
あの水着については、できれば触れて欲しくない。
そのまま詮索されないことを期待したけれど、こんな時の弟妹は敏感だった。
即座に身を寄せて来た真希が、強攻撃しながら私の肩に腕を回し『逃さない』という意志表示。
真人は正面に座り直し、ソファーテーブルに肘をついて両手を組み、口元を隠し問い詰める構え。
「どんな水着だったか正直に答えてくれるよね、お姉ちゃん」
「これも家族の務めだ、真里姉」
そう言う二人の表情は、いたって真剣。
真人は私を心配してのことだと、分かる。
ただ、真希は単に理性と欲望の狭間で真顔になっているだけだと、お姉ちゃん知っているんだよ?
無言を貫こうとした私の抵抗は、けれど増大する二人の圧に耐えられず、仕方なく水着について話をした。
その結果……。
「さすがルレットさん! スクール水着を選ぶなんて、良い仕事だね!! お姉ちゃんの名前をカタカナじゃなく、ひらがなにしたところも高ポイント!!!」
「あのタイプなら露出も控え目だし、大丈夫か……いや、本当に大丈夫なのか?」
大絶賛の真希と、訝しむ真人。
心情的には私も真人寄りで、あの場にいて援護射撃をして欲しかった。
もっとも、ルレットさんに抗えたのかは疑問だけれど……。
あれ? そう言えば私、ルレットさんの名前を真希に教えていたっけ??
これまで色んなことを話したから、そこで出たのかな。
一番仲の良いお友達だし。
ただ『本職は違うね!』と繋げられた真希の言葉に、生産で裁縫をメインにしているのとは違った意味合いを感じたのは、気のせいだろうか……。
「でも聞けば聞く程、その時のお姉ちゃんを見たかったなあ」
「イベントの時みたいに、動画を探してみるか」
うん、止めようね。
「ふふふ、馬鹿だね真兄は。結城さんを強請……頼ればいいんだよ!!」
「本当に止めようね!?」
本当に連絡しようとする真希を真人に止めてもらったけれど、真希の目に諦めの色は見えない。
これ、あの人達と同じでどうにもならないやつだ……。
心を無にし、諦めの境地に入る私。
そんな中、ふと心に引っ掛かるものがあった。
それはあの飄々とした、ジェイドと名乗った人。
あの人のことを思い出すと、どうにも心がざわつく。
しかもどちらかと言えば、不快な方向に。
別に悪い人ではなさそうなのに、なぜだろう……。
けれど弟妹に何と伝えていいか分からず、私は一先ず胸にしまった。
いつもお読み頂き、感想、応援頂いている皆様。
また誤字報告を頂いている皆様。
ありがとうございます。
今回は久しぶりに、弟妹揃ってのお話となりました。
連休の中、脱力して楽しんで頂けたら嬉しいです。またお仕事されている方には、忙しい合間の一服となりましたら幸いです。
昨今、なかなか情勢が落ち着きませんが、皆様の心身が健やかでありますように。
引き続き、のんびりとお付き合いくださいませ。