132_真里姉と逆襲の平穏
本日、無事第2巻発売となりました。これも偏に、1巻をお手に取って頂いた皆様、応援頂いた皆様のおかげです。
本当に、ありがとうございます。上記とは別に、ご報告が2つ。
1つ目は、コミカライズの連載開始日が10月1日で確定しました! スクウェアエニックス様のマンガUP!にて、綾瀬様により描かれます。物凄い熱量を籠めて頂いた物語、ぜひお楽しみに!!
2つ目は、2巻発売と同時に3巻の発売が確定しました! それは、”彼”が出てくる物語。
時期はもう少し先ですが、改稿作業を全力で行っています。こちらも楽しみにして頂けましたら、幸いです!!
早速回収されたフラグにぐったりしながら他のお店を眺めていると、お米を見付けた。
カルディアでは見なかったのに……あっ、重く嵩張る割りに、単価が低いから?
調味料なら異国の味として伝え易く、単価も高い。
現実では安く買えるけれど、昔はお米に比べ三〜四倍は高かったらしい。
大和から運ぶ船の積載量に限りがあるとすれば、どちらを優先するかは考えるまでもない。
実際、売っているお米の量も多くはなかった。
それ程高くないし、迷わず全部購入。
これで和食を作れるなあと思っていたら、数軒先の建物に人集りができていた。
その中央で、お店の主人らしき人が声高に叫ぶ。
「皆様お待ちかねの物が、先日カルディアから届きました!」
「ようやく来たか!」
「早く、早く見せてくれ!!」
「この日のために、有り金持ってきたぞ!!!」
カルディアから先日というと、私達が乗っていた船かな?
異常な盛り上がりを見せるお客さんを目にし、興味を引かれ覗いてみることにした。
そんな私の前に現れたのは、どこか見覚えのある、厳重に封をされた木箱。
あれは、船に乗る時一緒に積み込まれていた箱?
高いお酒でも入っているのかと、想像した気がする。
しかし封を解かれ、中にあった物は……。
「ふふ、ふふふ……そうきたかあ。さっき感じたフラグは、ダミーだったんだね。まさか、本命が控えていたなんて…………」
箱の中にあったモノ、それは木彫りのミニ御神体。
カルディアだけでなく、他国にまで出回っていることを知り卒倒しそうになっていると、何やらグレアムさん達の様子がおかしい。
「……あの、どうかしたんですか?」
「教祖様……大したことではないのですが、あそこに並ぶ御神体。どうもカルディアの教会に置かれていた物とは、造形が違うようなのです」
なるほど、確かに私にとって大したことではないけれど、言葉とは裏腹に、グレアムさんは大したことになっていた。
奥歯を噛み締め、目の前のミニ御神体に飛び付きたい思いを、必死に我慢しているように見える。
拳は強く握り締められており、放っておいたら出血しそうな感じだった。
そんな中、教団の人達の呟きが聞こえた。
「リベルタ向けの限定品か?」
「流れるような髪の表現……作ったのは子供達ではなく、職人だな」
「見ろ、あの穏やかな微笑みを」
皆さん、とても詳しいんですね……。
これ以上精神的なダメージを負う前にその場を離れようとしたけれど、教団の人達の足が動かない。
正確には、動かそうとしても足が動かない、そんな感じだった。
「……大丈夫、ですか?」
さすがに心配になって尋ねてみると、
「だいじょうぶないですよ!」
全く大丈夫ではなかった。
というより、既に言語レベルで意思に迷いが表れている。
ほんの少し可哀想に思ってしまったのは、甘いのかな。
自分自身に問いかけながら、そこでふと、隣のギルスとヴェルを見て閃いた。
天啓が降りたと思った。
「リベルタの方に手に取ってもらうのも嬉しいんですけれど、私としては、日頃お世話になっている教団の皆さんにと、そう思うんです」
言いながら、それなりの額をグレアムさんに渡した。
「教祖様!?」
「私がここに来たのは王様の代理で、名目だけのものです。だからグレアムさん達も、あまり気にしないでください。それに、ギルスとヴェルもいてくれますから」
腕組みをしたギルスが、無言で任せろと訴えている。
ヴェルはギルスの上で同じ格好をしようとして、翼だから上手くいかないようだった。
なおも渋るグレアムさん達を、文字通りギルスに背中を押してもらう。
競売のようだし、これでグレアムさん達も心置きなくミニ御神体に注力できるはず。
心配そうに何度もこちらを振り返るグレアムさん達だったけれど、競売が熱を帯びるに従い、頻度が減っていく。
私はその隙に、距離を広げていく。
やがてグレアムさん達の視界から完全に外れ、私は大きく息を吐いた。
これで目立たず散策できるようになったし、互いの思惑を考えれば、一石二鳥と言えるんじゃないかな?
めでたしめでたし……なわけないよね。
大丈夫、ただの逃避だと、自分でも分かっているから…………。
平穏、消えるの早かったなあ。
というより、不穏へのクラスチェンジが早過ぎると思う。
ザグレウスさん、もう少し条件を厳しくしてもらっていいですか?
心の中で語り掛けてみたけれど、いつまで経っても返事が来ることはなかった……。
お読み頂いた皆様、そして応援、ご感想頂いた皆様、ありがとうございます。
前書きにて多くのことを書きましたので、ここでは、改めて感謝を述べさせて頂きたく存じます。
この物語は私の想いから作られたものですが、皆様がいらっしゃらなければ、ここまで続き、そして育つことはなかったと思っています。
本当に、ありがとうございました。幸いなことに、3巻の発売も確定しています。その先のことは分かりませんが、どんな形であれ、思い描いている完結の、最後の一幕をお届けできるよう、書いていくつもりです。
引き続き、のんびりとお付き合い頂けたら幸いにございます。
なお、本日発売される第2巻、紙の書籍について、誤植の報告があります。(電子版は問題ありません)
一部送り仮名のミスが見付かっており、具体的には257Pの11行目、「来られた」が「来らた」となっています。
お手に取って頂いた皆様、誠に申し訳ありません。
今回の件は私が知得できない段階で発生したため、どうにもなりませんでした。
次巻を発刊する際は、対策を行った上で皆様にお届けできればと考えております。
なお、公式サイトでも上記について触れられる予定です。
重ねて、この度は申し訳ありませんでした。