123_真里姉と自分で蒔いていたフラグ(前編)
【告知です】
書籍化が確定していた本作、2021年4月19日(月)に第一巻の発売が決定しました。
イラストは人気絵師 藻様、出版元はHJノベルス様となります。
全体、及び各話の下の方にHJノベルス様公式ツイート(表紙絵あり)へのリンクを掲載しています。
素晴らしいイラスト共に、改めてお楽しみ頂けたら幸いです。
屋根の上で語らう二人を残し、私は静かにその場を離れホームへと向かった。
二人の邪魔をしたくなかったのもあるけれど、元々姿が見えず捜しただけで、何か用事があった訳じゃないしね。
二人が見付かり、しかも楽しそうにしているならそれでいい。
不意にできた一人の時間をどうしようかと考え、私は子供達に差し入れしようとしていたことを思い出した。
「差し入れ、何がいいかなあ」
甘い物にするのは確定として、子供にも喜んでもらえそうな物だとクッキー、プリン、あとは……。
「あっ、以前レイティアさんが市場で買ってきてくれたカボチャのケーキにしよう」
あの時はギルスを生むことに夢中になり過ぎた三人が餓死寸前で現れ、私も結局食べられなかったしね。
ホームに戻ると、接客を終えたレイティアさんが買い物に出掛けるところだった。
お勉強させてもらうと言っていたけれど、不敵に笑うレイティアさんは戦いに赴こうとしていようにしか見えない。
なんだろう、女鏖モードのルレットさんに似た凄みを感じるというか。
リベルタから来た商人さん、レイティアさんからは逃げられないようです。
私も出掛けることになったので、途中まで一緒に行くことにした……のだけれど。
ホームの扉に近付くと、何やら外が騒がしい。
今日分のカスレはもう売り切れているし、何事だろうとレイティアさんと首を傾げている間にも、騒ぎはどんどん大きくなっている。
とりあえず状況を確認しようと扉を開けた、その瞬間。
「あっ、出てきた!」
「うわぁ、生マリアちゃんだ!!」
「本当にちっさ可愛いな、あれ本当にプレイヤーか? NPCじゃねえの!?」
「PVなんて加工してんだろうと思ったが、むしろこっちの方が尊過ぎて語彙力」
ホームの敷地前に、数え切れない程の人が押し寄せていた。
発言内容が教団の人達を彷彿とさせるけれど、この人達の言葉には悪気も遠慮も無い、剥き出しの好奇心のようなものが感じられる。
教団の人達の言動に、私はそんな感じを覚えたことはない。
グレアムさんを筆頭に、振る舞いは基本的に紳士淑女のそれで、大事にしてもらっているのは分かるしね。
まあ大事にされるレベルを通り越し、もはや崇められている気がしないでも…………はっ!
いけない、気をしっかり持つんだ私!!
教祖様呼びに普通に反応している時点で手遅れだろう? とツッコまれた気もするけれど、全力で【スルー】スキルを発動するよ!!!
強引に心を落ち着かせた私は、よく見ると押し寄せている人達がホームの敷地には入っていないことに気が付いた。
それは良識ある行動からではなく、教団の人達が押し留めてくれていたからだった。
その中にはグレアムさんもいて、私もなんとかしようと思い近付こうとしたら、
「いけません教祖様! ここは我等に任せ早く中へ!!」
と映画やドラマでしか聞かないような台詞を口にし、制止させられた。
「戻りましょうマリアさん! あの方達の犠牲を、無駄にしてはいけません!!」
「レイティアさん……」
口調だけでなく、表情も真剣そのものだった。
ただあの、別にグレアムさん達は死んだりしませんからね?
街の中はセーフティの設定がされていますし……ツッコむのが憚られたので、言いませんけれど。
レイティアさんに手を引かれ、私はひとまずホームへ戻ることになった。
私的スキルがまた上がりそうな予感がする……いや、もう上がってしまっているかあ…………。
いつもお読み頂いている皆様、そしてもはや作品と言っても過言ではない感想をくださっている皆様、ありがとうございます。
今回新たに9件の感想を、23人の方から有り難い評価を、そしてお気に入りに登録頂けました。
またより良い表現への指摘を2件、誤字脱字の訂正を4件頂き、反映致しました。本当にありがとうございます。
これからも誤字脱字等、気になる点がありましたらご指摘の程、よろしくお願い致します。
引き続きのんびりと、お付き合いくださいませ。